
福岡地裁では、原則として認められていません。
破産を希望する方は、破産に要する費用(依頼した弁護士への報酬や裁判所に支払う予納金等)を支払わなくてはなりません。
この破産に要する費用が準備できなければ、そもそも破産の申立てができません。
しかし、破産を希望する方は、多重債務者ですので、数十万円もの費用を一括で準備できるケースは決して多くありません。
もっとも、多重債務者の方の中には、過払い金を返還請求できる方もいらっしゃいます。
例えば、A社、B社、C社への負債が合計1000万円ある方が、D社に200万円の過払い金があったとします。
このようなケースでは、弁護士として、まずD社に過払い金の返還請求をして、それから破産を申立てるということが考えられます。
仮に、破産費用を50万円とすると、200万円を回収して、その中から50万円を破産の費用に当てて、別に過払い金返還請求の弁護士報酬として40万円(200万円☓20%)を受け取ると、残額110万円を預り金として、破産を申立てることが可能です。
しかし、現在、このようなスキームを裁判所は認めていません。
すなわち、大手のサラ金業者に対する回収確実な未収金については、破産管財人が行うのが相当であるというのが裁判所のスタンスです。
そのため、上記の事案では、弁護士は自ら過払い金を回収せずに、破産管財人に引き継ぐのが基本となります。
しかし、それでは破産申立費用が準備できないという問題があります。
このようなケースでは、破産費用のうち、弁護士に支払う分については、依頼者に積み立てをしてもらうという方法が考えられます。そして、予納金については、裁判所と事前に調整して、進めるのが望ましいと思われます。
福岡地裁のスタンス
福岡地裁では、破産手続が円滑に進むように、福岡県弁護士会所属の弁護士に対して、破産レターを発送しています。
以下の文章は、2015年3月に福岡地裁が発出した破産レター(4)のうち、申立代理人夜資産換価についての記事を抜粋したものです。
申立代理人による資産換価について
(1) 申立代理人による資産換価の原則禁止
申立代理人がどのような場合に、どの程度まで資産を換価することができるかについて法令上明文の定めはありませんが、別表②の裁判例が「申立代理人弁護士による換価回収行為は、債権者にとって、それが行われなければ資産価値が急速に劣化したり、債権回収が困難になるといった特段の事情がない限り、意味がないばかりか、かえって、財産価値の減少や隠匿の危険ないし疑いを生じさせる可能性があるのであるから、そのような事情がないにもかかわらず、申立代理人弁護士が換価回収行為をすることは相当ではなく、換価回収行為は、原則として管財人が行うべきである」と判示しているとおり、財産の回収・換価は原則として管財人が行うべきものであり、許容されるのは、上記判示のような場合のほか、相当な申立費用・管財費用を捻出するなどの必要性がある場合で、かつ、換価行為が相当である場合に限られると考えられます。
(2)換価に関する裁判所の対応
ア 申立代理人による換価行為が行われている場合には、上記のとおり、換価行為の必要性、相当性が問題となりますので、当部では、申立書等において、その説明を求めています。
例えば不動産の売却であれば、売却の必要性、価格の相当性及び売却代金の使途等の説明が必要となります。
上記必要性、相当性が明確になっていない場合には、否認調査の必要が生じるため、「同時廃止基準について」における否認対象行為調査型に該当することとなり、原則として管財事件として進行することとならざるを得ません。また、換価に時間を要した場合には、前記1に述べた申立て遅延の問題も生ずることとなります。
イ さらに、管財人の調査の結果、申立代理人による換価行為が必要性・適切性を欠くものと認められるような場合には、事情に応じて、管財人から、当該換価行為そのものや当該換価行為に係る報酬について否認権を行使する必要が生じることがあります(別表の裁判例②及び当庁での実例①⑤参照)。
ウ したがって、申立代理人において換価行為を行う場合には、上記のように必要やむを得ない場合に限って行うこととし、かつ、換価行為の相当性を明確に説明できるようにしておく必要がありますのでよろしくお願いします。
(3)回収確実資産がある場合の取扱い
大手消費者金融会社に対する未回収過払金や保険解約返戻金等回収確実資産がある場合には、申立代理人ではなく、管財人がこれら資産を換価して管財費用に充てるのが相当と考えられますので、管財費用を準備する名目で申立代理人において、資産換価を行う必要はありません。こうした回収確実財産がある場合には、申立代理人において換価することなく、管財人に引き継ぐようにお願いします。

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