◎ 破産すると車は乗れなくなりますか?

◎ 通勤などで車がないと不便です。

◎ ローンが残っている車はどうなりますか?

破産すると、自動車に乗れなくなると誤解されている方が大勢いらっしゃいます。確かに、破産は、めぼしい財産があれば現金化されて債権者に配当されることがあります。

しかし、絶対に自動車に乗れないというわけではありません。

以下、ケース別に解説します。

 

自動車ローンが残っている場合

ローンが残っている場合、ローン会社との契約によりローンを完済するまでの間、自動車の所有権がローン会社に留保されていることが通常です(車検証を見ると所有者の欄がローン会社になっていることが多いです。)。

そのようなケースでは、返済不能の状態となると、ローン会社は、当該自動車を引き揚げてしまうことが多く、基本的には自動車を諦めなくてはなりません。

また、自動車を引き揚げられないようにするために、当該ローン会社に対してのみ、ローンを支払うことも考えられますが、これは特定の債権者のみ特別扱いするもので、債権者平等の原則に反するので法律上禁止されています。

第三者(配偶者など)が当該債権者の同意を得て、自動車ローンを返済するケースもありますが、例外的な場合なので、基本的には自動車の維持は難しいと考えられます。

 

自動車ローンが残っていない場合

この場合、管財事件となるかならないかで、大きく異なります。

すなわち、個人破産を申立てる方の中には、不動産、相当な価値の自動車、多額の預貯金等のめぼしい財産を保有されているケースがあります。

このような、めぼしい財産があるケースでは、裁判所が当該財産を売却等の処分によって現金化(これを「換価」といいます。)して、債権者に公平に分配しています。

そのような換価の業務を行うのが破産管財人であり、破産管財人が選任される破産手続のことを管財事件、それ以外の事件を同時廃止といいます。

福岡地裁の管財事件において、自動車の換価が不要とされるのは以下の場合です。

処分見込額合計が20万円以下である場合に限る。

ただし、初度登録から5年を経過した自動車については、なお相当な価値があることが類型的にうかがわれるもの(ハイブリッド車、電気自動車、外国製自動車、排気量2500ccを超えるものなど)を除き、価額を0円とみなすことができるものとする。

上記は、福岡地裁の破産係が示している換価基準です。

したがって、初度登録から5年以上の国産自動車(ハイブリット、電気自動車、2500cc以下)であれば、換価不要であり、売却される心配はありません。

しかし、自動車の鍵については、注意が必要です。

すなわち、破産手続開始決定により、破産者の自動車の管理権及び処分権は,破産管財人に帰属します(破産法34条、78条)。

車破産者が自然人の場合、換価基準により破産管財人によって換価しないとされる自動車の場合であっても、破産手続開始決定後、当然に破産者が管理権及び処分権を有するものではなく、破産管財人の財団からの放棄があってはじめて(100万円以上の場合には,放棄について裁判所の許可が必要です。)、破産者がこれらの権利を有することになります。

他方,破産管財人は、交通人身事故による運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)の負担を避けるために、破産財団に含まれる自動車の管理に注意する必要があります。

そのため、破産申立てに関与する弁護士は、申立人(破産者)所有の自動車がある場合、当該申立人(破産者)に上記を説明し、破産手続開始決定後の換価が見込まれる場合や、当該自動車について有効な任意保険契約が締結されていない場合などにおいては、自動車の鍵を預かるなどして、破産手続開始決定後,破産者等(破産者たる自然人、破産者たる法人の代表者や従業員等)において自動車を使用等しない措置を講じるよう裁判所から指導されています。

したがって、換価が不要となる古い国産自動車などであってとしても、対人賠償無制限などの任意保険が締結されていない場合、交通事故等の危険があるため弁護士が鍵を預かる必要があります。

そのため、申立人は有効な任意保険を締結するか、破産手続が終了するまでの間、自動車に乗ることができません。

 

換価が必要な場合で自動車の使用を希望するとき

申立人が自動車の使用等を希望するとき、破産管財人において速やかに財団からの放棄について判断することができるように、当該自動車が換価基準により換価を要しない場合を除き、申立てに関与する弁護士は、申立て時に、自動車の査定書等自動車の価値を示す書面を準備するなどしておけば、比較的早く自動車の使用が可能となります。

破産手続については、まずは破産問題にくわしい、地元の弁護士にご相談されることをお勧めします。

 



弁護士が解説!債務整理についてよくある相談Q&A



なぜ債務整理は弁護士に相談すべき?

続きを読む

債務整理についてもっとお知りになりたい方はこちら