自己破産すると車はどうなる?弁護士がわかりやすく解説

  • 破産すると車は乗れなくなりますか?
  • 通勤などで車がないと不便です。
  • ローンが残っている車はどうなりますか?

破産すると、自動車に乗れなくなると誤解されている方が大勢いらっしゃいます。確かに、破産は、めぼしい財産があれば現金化されて債権者に配当されることがあります。

しかし、絶対に自動車に乗れないというわけではありません。

以下、ケース別に解説します。

自動車ローンが残っている場合

ローンが残っている場合、ローン会社との契約によりローンを完済するまでの間、自動車の所有権がローン会社に留保されていることが通常です(車検証を見ると所有者の欄がローン会社になっていることが多いです。)。

そのようなケースでは、返済不能の状態となると、ローン会社は、当該自動車を引き揚げてしまうことが多く、基本的には自動車を諦めなくてはなりません

また、自動車を引き揚げられないようにするために、当該ローン会社に対してのみ、ローンを支払うことも考えられますが、これは特定の債権者のみ特別扱いするもので、債権者平等の原則に反するので法律上禁止されています。

第三者(配偶者など)が当該債権者の同意を得て、自動車ローンを返済するケースもありますが、例外的な場合なので、基本的には自動車の維持は難しいと考えられます。

 

自動車ローンが残っていない場合

この場合、管財事件となるかならないかで、大きく異なります。

すなわち、個人破産を申立てる方の中には、不動産、相当な価値の車、多額の預貯金等のめぼしい財産を保有されているケースがあります。

このような、めぼしい財産があるケースでは、裁判所がその財産を売ってしまうなどして現金化(これを「換価」といいます。)して、債権者に公平に分配しています

そのような換価の業務を行うのが破産管財人であり、破産管財人が選任される破産手続のことを管財事件、それ以外の事件を同時廃止といいます。

多くの裁判所の管財事件において、車の換価が不要とされるのは以下の場合です。

処分見込額合計が20万円以下である場合に限る。

ただし、初度登録から5年を経過した自動車については、なお相当な価値があることが類型的にうかがわれるもの(ハイブリッド車、電気自動車、外国製自動車、排気量2500ccを超えるものなど)を除き、価額を0円とみなすことができるものとする。

上記は、福岡地裁の破産係が示している換価基準ですが、多くの裁判所で同じような換価基準が採用されています

したがって、初度登録から5年以上の国産自動車(ハイブリッド、電気自動車、2500cc以下)であれば、換価不要であり、売却される心配はありません

しかし、車の鍵については、注意が必要です。

破産手続開始決定により、破産者の車の管理権及び処分権は,破産管財人に帰属します(破産法34条、78条)。

破産者が法人でなく、一般人である場合、上記の換価基準に照らすと処分される対象から外れている車の場合であっても、一旦は破産管財人が車の管理や処分をする権利を持つことになります。

破産者が車を自由にできるのは、破産管財人が、破産財団から車という財産を放棄することを決めてからです。

他方、破産管財人は、交通人身事故による運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)の負担を避けるために、破産財団に含まれる車の管理に注意する必要があります。

そのため、破産者の代理人となる弁護士は、破産者が車を持っている場合には、車の扱いについて破産者に説明をした上で、場合によっては車の鍵を預かるなどの手段を取って、破産者に車を使用させないように、裁判所から指導をされることがあります。

もちろん、絶対に鍵を預けさせられるという話ではなく、このような運用は破産手続開始決定後に換価対象となる車の場合や、車について任意保険契約が締結されていない場合などに限られます。

したがって、換価が不要となる古い国産自動車などであったとしても、対人賠償無制限などの任意保険が締結されていない場合、交通事故等の危険があるため弁護士が鍵を預かる必要があります

有効な任意保険を締結するか、破産手続が終了するまでの間、自動車に乗ることができない可能性があるということには注意をしておきましょう。

換価が必要な場合で自動車の使用を希望するとき

申立人が自動車の使用等を希望するとき、破産管財人において速やかに財団からの放棄について判断することができるように、当該自動車が換価基準により換価を要しない場合を除き、申立てに関与する弁護士は、申立て時に、自動車の査定書等自動車の価値を示す書面を準備するなどしておけば、比較的早く自動車の使用が可能となります。

破産手続については、まずは破産問題にくわしい、地元の弁護士にご相談されることをお勧めします。

 

 

その他の債務整理で車の売却は必要?

ここまでは自己破産を行う場合の車の処理について解説を行いましたが、他の債務整理の場合にはどのような扱いになるのかも合わせて解説しておきます。

他の債務整理の手段としては、任意整理と個人再生の2つがあります。

 

任意整理の場合

任意整理の場合には、どの債権者との間で交渉を行うかを自由に選択することができます。

そのため、車のローンを支払っている会社を任意整理の対象から外し、なおかつローンの支払いが滞ることがなければ、ローン会社に車を引きあげられることはありません

このような場合であれば、車を売却する必要はなく、その後も乗り続けることができます。

 

個人再生の場合

個人再生は、自己破産と同様に全ての債権者を対象として手続きを進めなければなりません。

そして手続きを進める上で車のローンの支払いも止めなければなりませんので、基本的にはローン会社に車を引きあげられてしまうことになるでしょう

 

 

自動車についてのよくあるQ&A

10年落ちの車でも手放さないといけませんか?

車のローンが残っている場合には、自動車が引きあげられることが大半です。

これはたとえ車が10年落ちであっても変わりません

それでは、車のローンが残っておらず、なおかつ10年落ちの車であるという場合にはどうでしょうか。

車については、初度登録から5年を経過していれば、なお相当な価値があることが類型的に窺われるもの(ハイブリッド車、電気自動車、外国製自動車、排気量2500CC以上など)以外は換価対象となりません。

つまり、ハイブリッド車などでなければ、10年落ちの車の価値は0円として算出されることになりますから、手放す必要はないということになります。

 

ローンがついている車はいつ引き上げられますか?

ローンがついている車がある状態で自己破産をしようとする場合、車がいつ引きあげられるのかが気になるところです。

ローン会社が車を引きあげるのは、債務者が支払不能の状態になってしまったことを確認してからです。

それでは、ローン会社が債務者が支払不能の状態になったことを認識できるかというと、それは弁護士からの受任通知を確認してからということになります。

弁護士からローン会社に受任通知を送ってから、数日〜2週間程度の間にローン会社から連絡があり、車を引き上げる日程調整を行うことが一般的です。

そのため、弁護士に依頼をしてから、およそ1か月くらいを目安に車が引き上げられると考えておくべきかもしれません。

ローンがついている車がある状態で自己破産をするときは、いつまで車が必要かも考えて弁護士への依頼時期を決めてもよいかもしれませんね。

 

自己破産後に車を買うときローンを組めますか?

自動車ローンは、普通の借金と同様に、債務者に信用があることを前提とした支払い方法になります。

自己破産をすると、信用情報機関に自己破産をしたという事実(事故情報といいます。)が掲載されてしまいます。

ローン会社は、ローンの審査を行う際にこの信用情報機関の情報を必ずと言っていいほどチェックしています。

そうすると、自己破産をした後に自動車ローンを組もうとしても、多くのローン会社は事故情報が掲載されていることを確認して審査を通さないでしょう

そのため、自己破産後に車を買うとき、ローンを組める可能性は低いと認識しておくべきだといえます。

もしもローンでないと支払いが行えないという場合には、信用情報に問題がない配偶者などの家族名義で購入し、家族の代わりに自分が支払いを行なっていくといった方法を取ることを検討してみてください。

 

車を家族名義に変更できないですか?

自己破産の手続きによって車が売却されることを避けるために、自己破産申立前に所有している車を家族名義に変更したいと考える方は一定数いらっしゃいます。

しかしながら、結論としてはこのような方法で車の処分を回避することは難しいでしょう。

まず、自己破産の手続きを行う場合には、自分が所有している財産を正直に申告しなければなりません。

自分が所有していた車ももちろん財産に含まれますから、自己破産を行う前に名義を変えるような行為は財産を隠す行為とみなされてしまいます

財産を隠す行為は、自己破産における免責不許可事由に該当することになり、せっかく自己破産をしたのに借金を免除されないということになりかねません。

「車が売却されるのは初度登録から5年以下の場合だけだから、0円として算定される場合には名義を変えていても問題ないのではないか?」と考える方もいるかもしれません。

たしかに車の価値が0円として算出されるような場合には、名義変更をしただけで財産を隠した、免責不許可事由に当たる、と評価されることはないかもしれません。

しかしながら、裁判所から見れば、そのほかにも同じように資産を他のところに移動している可能性があるのではないかと疑われてしまうことでしょう。

そうすると、本来であれば同時廃止になることが見込まれていたような事件であっても、裁判所が破産管財人を選任した上で徹底的に財産調査を行われることになるかもしれません。

また、価値が0円と判断されるような車であれば、名義をそのままにしておいても何の不利益もありません

自己破産の手続き前に車の名義変更を行うことは、どの観点から見てもリスクしかありませんから、絶対に行わないことをお勧めします。

 

 

 

まとめ

自己破産をした場合の車の扱いについて、解説は以上となります。

車は生活をしていく上で重要な資産ですから、なるべく手元に残しておきたいと考える気持ちは十分に理解できます。

しかしながら、自己破産をする上でまず優先されるべきなのは、手続きのルールに従って債権者に財産を公平に分配することです。

自己破産の手続きのルールに違反してしまうと、車を手放すよりも大きい痛手を負うことになってしまいます。

車を一度手放すことになったとしても、自己破産の手続きが終われば、再び車に乗ることができる方法はいくらでもありますから、早まった行動を取らないようにしてください。

また、自分の場合に車がどのように処分されることになるのかは、専門家でなければなかなか分かりにくいところもあるでしょう。

車をお持ちの方で自己破産を検討されている方は、まずは債務整理の専門弁護士に相談されることをお勧めいたします。

なお、デイライトには債務整理チームが設置されており、債務整理専門の弁護士が複数在籍しております。

オンライン相談等によって全国対応も可能となっておりますので、お困りの方はぜひデイライトにご相談ください。

 

 

 


なぜ借金問題は
弁護士に相談すべき?

続きを読む

まずはお気軽にご相談ください
初回相談無料
(対面・オンライン相談の場合)