執筆者:弁護士宮崎晃

破産した場合、保険は破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に属するものとして、破産財団に属することとなります。

◎ 破産すると保険金は受け取れませんか?

◎ 受取人になっている保険も裁判所に報告すべきですか?

◎ 保険の受取人になっている場合、注意すべきことはありますか?

従来の取扱と最高裁判決

従来、裁判実務において、生命保険契約に関して第三者が保険契約者で、債務者が保険受取人の場合について、どのように処理すべきかが不明確な状態でした。

この論点に関して、平成28年に最高裁判決が出ているので、破産申立においても、その最高裁判決を踏襲するようになりました。

【最高裁平成28年4月28日第一小法廷判決・民集70巻4号1099頁】

破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき、破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は、破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に属するものとして、上記死亡保険金受取人の破産財団に属する旨判示しました。

 

 

最高裁判決後の裁判実務

上記判決後、福岡では、裁判所(福岡地裁第4民事部)から、福岡県弁護士会所属の弁護士に対して、以下の指導がなされています(破産法レター(9))。

【破産法レター(9)抜粋】

「上記判決が出されたことに伴い、破産手続開始の申立てに関与する弁護士の皆様方におかれては、今後、申立ての段階で、債務者以外の者によって、債務者を保険金受取人として、破産手続開始前(申立前)に保険契約が締結されていることについて、債務者の認識の範囲又は債務者において調査可能な範囲で、申立書添付の保険目録(法人用。『破産法実務』141頁)又は資産目録詳細説明書の「保険」欄(自然人用。同書177頁)に記載するともに、破産手続開始決定後に以上のような保険金請求権が存することが判明した場合、その旨を破産管財人に報告するようお願いいたします。」

そのため、現在では、破産申立ての際、債務者が保険金の受取人となっているか否かについて、調査し、かつ、裁判所に報告しなければなりません。

 

 

破産手続きにおける処理はどうなる?

破産者が保険金の受取人の場合、申立後の処理について、福岡地裁の破産係は以下のように指導しています。

【破産法レター(9)抜粋】

「さらに、第三者が債務者を受取人として保険契約をした場合や債務者が保険料掛捨ての保険契約をした場合等では、債務者が有する保険金請求権(債権)は、保険事故(保険金請求権発生の原因)の発生時まで、抽象的なものにとどまり、具体的な金銭支払請求権とはならない一方、保険解約返戻金請求権という形で換価することができませんので、破産手続内におけるこれらの保険金請求権の処理が問題となります(ちなみに、債務者が保険契約者の場合で、将来発生する保険料について先払いしているときや残りの保険期間に相当する保険料相当額が返還されるときは、破産管財人において、解約による保険料の返還について検討していただく必要があります。)。

破産管財人において、このような保険契約の存在を認識したときは、保険事故の発生について注意していただき、具体的な金銭請求権となった場合には財団に含まれるものとして処理していただくことはもちろんですが(ただし、債務者が自然人の場合、保険契約の内容や債務者の生活状況等に照らし、債務者の自由財産の範囲の拡張として扱うことも多いと思われます。)、これらの保険金請求権について換価できないときは(状況からして、換価が困難な場合が多いように思われます。)、しかるべき時期での放棄も検討していただく必要があります。放棄する場合の時期としては、債務者に不当な財産を残さないという趣旨と破産手続の進行の円滑化等に照らし、財団確定時が目安となると思われます。

破産管財人におかれては、以上のような運用について、ご協力をよろしくお願いいたします。」

要するに、仮に、保険事故が発生した場合は具体的な金銭請求権となるため、財団債権として処理されますが、保険事故が発生するのは稀なので、通常の場合は、放棄されることとなります。

そのため、多くの事案では、破産者には特に影響がないと思われますが、申立代理人である弁護士は、保険の受取人になっているかも目を配る必要があります。

また、破産管財人についても、保険事故の発生に注意するとともに、保険事故が発生ない場合はその放棄についても検討が必要となります。

破産手続については、まずは破産問題にくわしい、地元の弁護士にご相談されることをお勧めします。

 

 

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