居住権を持つ親族を追い出したい!立ち退き請求・賃料請求の可否


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

居住権を持つ親族間の立ち退きや賃料の請求は、困難なケースが多いのが実情です。

しかし、状況(遺産分割の前後や賃貸契約の有無など)によっては、合法的に立ち退かせたり、賃料を請求できたりする可能性も十分にあります。

今回は、親族間の居住権トラブルについて、「長年住めば権利は強くなる?」という年数の誤解から、具体例、無理に追い出す場合のリスク、立ち退き料の相場まで、相続問題に注力した弁護士が分かりやすく解説します。

居住権はどのくらい強い?立ち退きを拒否できる法的根拠

居住権の強さは、根拠となる権利の種類によって異なります。

居住権とは、家屋に住み続けることができる権利の総称であり、共有持分や使用貸借契約、配偶者居住権、賃貸借契約など、住み続けるための権利をまとめて指す言葉です。

共有持分・賃貸借契約・配偶者居住権に基づく権利は法律でしっかり守られており、正当な理由がなければ簡単に立ち退きを求められません。

一方、使用貸借契約(無償の貸し借り)に基づく権利は、契約の内容次第で立ち退きを求められる可能性があります。

ご自身がどのケースに当てはまるか、以下の4つのパターンから確認してみましょう。

 

親族が立ち退きを拒否できる4つのケース

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親族が立ち退きを拒否できる4つのケース

 

相続人の一人が実家に住み続けている場合(共有持分)

相続が発生すると、遺産分割が終わるまでの間、亡くなった方の家は相続人全員の共有状態になります。

この間は、実家に住み続けている相続人にも、共有持分に応じて建物を使用する権利が認められます。

 

親から無償で家を借りて住んでいる場合(使用貸借契約)

親などから無償で家を借りて住んでいるケースは、法律上「使用貸借契約」にあたります。

使用貸借契約は、貸主が借主に対して、無料で物件の使用や収益を認める契約で、賃貸借契約との違いは賃料の有無です。

 

配偶者として住み続けている場合(配偶者居住権)

相続が発生した場合、被相続人(亡くなった方のこと)の配偶者には、配偶者居住権や配偶者短期居住権が認められることがあります。

 

親族に家賃を払って住んでいる場合(賃貸借契約)

親族に家賃を払って住んでいるケースは、法律上「賃貸借契約」にあたります。

賃貸借契約とは、貸主(物件の所有者等)が借主に対して、その物件の使用や収益を認め、借主がその対価として「賃料」を支払うことを約束する契約のことです。

 

 

居住権を主張する親族に立ち退きや賃料の請求はできる?

ケースによって結論が異なります。4つのケースごとに見ていきましょう。

共有持分の場合

具体例 共同相続人の1人であるAが相続財産である建物に居住し、A、B、Cの相続分はそれぞれ3分の1だった場合

立ち退き請求は可能?

 

相続などによって、不動産が親族同士の共有名義になっているケースです。

この場合、共有持分を持っているAは、不動産を使用する権利を持っています。

したがって、他の共有者(BやC)が「出て行ってほしい」と単独で立ち退きを請求することは原則としてできません。

しかし、特定の親族だけが不動産を独占して使っている場合、他の共有者は自分が利用できない不利益を被っています。

そのため、自分の持分の割合に応じた家賃相当額(不当利得といいます。)の支払いを請求できる可能性があります。

根本的な解決のためには、遺産分割協議などで所有権を確定させることが重要です。

 

使用貸借契約の場合

親族間では、家賃のやり取りをせずに住まわせているケースが多く、この場合は使用貸借契約が成立していると考えられます。

使用貸借契約は、あらかじめ決めた期間が終わったり、使用する目的が達成されたりすれば終了します。

契約が終了すれば、立ち退きを求めることができます。

なお、無償での貸し借りであるため、過去にさかのぼって賃料を請求することはできません。

具体例
例えば、上の例で、共同相続人であるAが相続開始前から被相続人Dの許諾を得て、遺産である建物にDと同居していた場合、他の相続人BがAが自己の相続分を超えていると主張して、賃料を請求するケースがあります。このような場合、D死亡後、遺産分割で建物の所有権が確定するまでの間は、Aに建物を無償で使用させる合意があったものと推認されるため、賃料を請求することはできません。

裁判例も、このような事案について、「被相続人と同居の相続人との間において、相続開始を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される」として、他の相続人からの不当利得返還請求を認めていません(最判平8.12.17)。

他方、このような無償で使用させる合意が推認されないケースでは、占有する相続人は、自己の相続分および管理費用を超える使用収益を得ている場合、他の相続人に対し、対価相当分を支払うのが相当と考えられます。

判例 平成 8年12月17日 最高裁第三小法廷 平5(オ)1946号
共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。

参考:判例検索|最高裁判所

 

配偶者居住権の場合

配偶者居住権とは、亡くなった方の配偶者が、相続発生後も無償でその建物に住み続けることができる権利のことです。

この権利は法律によって強く保護されています。

したがって、配偶者が配偶者居住権を取得している場合、他の相続人や建物の所有者は、立ち退きを求めることはできません。

また、配偶者居住権は無償で住める権利であるため、賃料の請求も認められません。

 

賃貸借契約の場合

賃貸借(ちんたいしゃく)契約とは、毎月決まった家賃を支払って不動産を借りる契約のことです。

親族間であっても、家賃のやり取りがある場合は賃貸借契約となります。

賃貸借契約の場合、借主は「借地借家法(しゃくちしゃっかほう)」という法律で強く保護されています。

したがって、貸主からの一方的な理由で契約を解除し、立ち退きを求めることは非常に困難です。

立ち退きを求めるためには、貸主側にどうしてもその家が必要であるといった「正当事由(せいとうじゆう)」が必要になります。

なお、家賃の支払いがある契約であるため、滞納があれば当然に未払い賃料の請求が可能です。

 

 

居座る親族に賃料(お金)の請求はできる?

例えば、共同相続人であるAが相続開始前から被相続人Dの許諾を得て、遺産である建物にDと同居していた場合、他の相続人BがAが自己の相続分を超えていると主張して、賃料を請求するケースがあります。

賃料を請求できる?

このような場合、D死亡後、遺産分割で建物の所有権が確定するまでの間は、Aに建物を無償で使用させる合意があったものと推認されるため、賃料を請求することはできません。

裁判例も、このような事案について、「被相続人と同居の相続人との間において、相続開始を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される」として、他の相続人からの不当利得返還請求を認めていません(最判平8.12.17)。

他方、このような無償で使用させる合意が推認されないケースでは、占有する相続人は、自己の相続分および管理費用を超える使用収益を得ている場合、他の相続人に対し、対価相当分を支払うのが相当と考えられます。

判例 【平成 8年12月17日 最高裁第三小法廷 平5(オ)1946号】

共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。

 

 

親族間の立ち退きトラブルを未然に防ぐ「生前対策」

ここでは、まだ相続が発生していない場合で、将来に備えた、親族間のトラブル予防法について、ご紹介します。

 

遺言書を作成しておく

遺言書があれば、基本的には相続人はその遺言内容に従わなければなりません。

そこで、遺言書の中で、当該不動産の処分方法について、記載しておくことで、立ち退きトラブルを予防できることとなります。

例えば、不動産を「現在居住している者に相続させる」旨の遺言書を作成します。

この場合、相続発生時に、当該不動産の所有権が居住者に移ります。

こうすることで、親族間の立ち退きトラブルがなくなります。

 

使用貸借契約書を作成する

使用貸借契約について、期間を明記した契約書を作成しておくことでも、トラブルの予防につながります。

例えば、居住させる際に、使用貸借の期間を「貸主(被相続人)が死亡するまで」としておけば、相続開始と同時に、使用貸借契約が終了します。

 

 

居住権を主張して居座る親族との立ち退きトラブルを解決する方法

では、事前の対策ができず、すでにトラブルになっている場合はどうすればいいのでしょうか。

居住権トラブルの解決方法

 

遺産分割協議の実施

親族との居住権のトラブルが発生するのは、まだ遺産分割が確定していないからです。

そのため、遺産分割を成立させることを第1に考えるべきです。

遺産分割の方法には、家裁の調停を利用する方法もあります。

しかし、家裁の手続は、一般的に解決まで長年月を要します。

また、家裁まで何回も行くのは、相当な労力を要します。

そのため、まずは遺産分割協議を実施されることをお勧めいたします。

 

遺産の調査と評価

遺産分割協議を成立させる前提として、まず遺産にどのようなものがあるかを調査し、その範囲を適切に評価する必要があります。

特に不動産が遺産となる場合は、路線価や固定資産税評価額ではなく、時価を基準に評価しなければなりません。

路線価や固定資産税評価額はあくまで課税の局面での評価であり、遺産分割の際の評価とは異なるため、遺産価値と誤解しないよう注意が必要です。

 

 

絶対にやってはいけない!強行手段とリスク

そもそも居住者に居住権が認められる場合、その居住者の意向を無視して強制的に追い出すことはできません。

また、居住権がなかった場合でも、勝手に荷物を撤去する行為は違法となります。

このような場合、裁判所の手続きを経て、強制執行しなければなりません。

 

 

親族間の居住権トラブルについてのよくあるQ&A

ここでは、親族間の居住権トラブルについてのご質問をご紹介します。

 

居住権で立ち退きを拒否できますか?


居住者が相続人の場合、遺産分割が成立するまで立ち退きを拒否できます。

また、配偶者の場合、配偶者居住権によって、立ち退きを拒否できる場合があります。

 

親族間の立ち退き料の相場は?


立ち退き料について、法律上の明確な規定はありません。

立ち退きの交渉を行う場合、引っ越し代に加えて、引っ越し先の賃料の半年分を負担するなどと提案することで、穏便に済むケースもあります。

ただ、ケース・バイ・ケースですので、くわしくは相続に強い弁護士に相談されることをお勧めいたします。

 

 

まとめ

以上、相続時の建物明け渡しや賃料請求の問題について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか?

親族との居住権をめぐるトラブルを根本的に解決するためには、遺産分割を行う必要があります。

そして、遺産分割をできるだけご負担が少なく解決するためには、協議による解決がお勧めです。

しかし、遺産分割は、その前提として、遺産を調査し、かつ、適切に評価する必要があります。

これらは相続の専門家でなければ難しい場合があります。

また、相続人間では感情的な対立があり、遺産分割の協議が難しいというケースがあります。

このようなケースでは、専門家に間に入って交渉してもらうという方法も検討されると良いでしょう。

当事務所の相続対策チームは、相続問題に注力する弁護士・税理士のみで構成される専門チームであり、居住権トラブルや遺産分割に関するノウハウを共有しています。

居住権トラブルでお悩みの方は、当事務所までお気軽にご相談されてください。

なお、ご自宅の近くに専門の弁護士がいない方に対して、当事務所ではLINEなどを活用したオンラインによる相談を実施しています。

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