葬式費用を銀行に直接請求できる?【弁護士が解説】


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

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一定額については銀行に直接請求することができます。

事例をもとに解説します。

 

相談事例
先日、夫が亡くなりました。
相続人は、妻である私(Aさん、62歳)のほか、長男(Bさん、32歳)、長女(Cさん、30歳)の3人です。夫の遺産は、以下の預貯金だけです。妻の場合、法定相続分は2分の1ですので、預貯金のうち、少なくとも500万円は取得したいと考えています。現在、早急に対応しなければならないのは夫の葬儀に要する費用の200万円です。私は資金がないため、可能であれば亡き夫の預貯金から引き出したいと考えていますが、可能でしょうか?また、葬儀に要する費用を子供たちで分けることはできないのでしょうか?

なお、子供たちとは仲違いしており、預貯金からお金を引き出すことには協力してくれないと思います。

 

改正法の内容

これまで、遺産分割前に預貯金を引き出すためには、分割前の仮処分を家裁に申立てなければなりませんでした。

もっとも、分割前の仮処分の要件は厳格であり、現実には遺産分割前の預貯金債権の行使は難しいという問題がありました。

そこで、家事手続法が改正され、2019年7月1日以降、預貯金については、仮処分の要件が緩和されました。

これにより、家裁への仮払いの申立てが従来よりは、多少容易になりました。

もっとも、要件が緩和されたとはいえ、家裁に申立てが必要となると、相続人には大きな負担となります。

時間的にも早くても最低1ヶ月以上はかかると思われます。

そのため、葬儀費用など、亡くなってからすぐに必要となる費用については、家裁に申し立てるより、直接銀行に請求することを認める必要性があります。

このような状況に鑑み、民法が改正され、2019年7月1日以降、一定の上限を設けた上で、裁判所の判断を得ることなく、金融機関の窓口において預貯金の払い戻しを受けることができるようになりました。

 

 

銀行への直接請求する金額の上限

改正された民法909条の2は、銀行に直接請求できる金額の上限について、次のとおり規定しています。

規定

① 相続開始の時の債権額の3分の1に法定相続分を乗じた額

② ただし、標準的な当面の必要性経費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする

したがって、銀行等ごとに、各人が引き出しを請求できる金額は、原則として次の計算式によって算出されます。

引き出しができる額 = (相続開始時の口座残高) ☓ 1/3 ☓ 引き出しを求める相続人の法定相続分

本事例の場合は、預貯金の額が1500万円、葬儀費用を引き出したい妻Aさんの法定相続分は2分の1ですので、250万円まで直接請求が可能となります。

1500万円 ☓ 1/3 ☓ 1/2 = 250万円

もっとも、②により、法務省令によって限度額が定められることとなります。

電卓と通帳そして、11月21日に交付された下記の法務省令によれば、その額は150万円となっています。

 

民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令

民法第909条の2に規定する法務省令で定める額は、150万円とする。

なお、この150万円の妥当性については異論がある方もいらっしゃるかと思いますが、交通事故の損害賠償基準(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)においても死亡事故の場合の葬儀費用として認められている損害額が150万円ですので、それと同じ基準を採用しているといえます。

本事例では、Aさんは葬儀費用として200万円を必要としていますが、上記②により、結局は150万円までしか引き出しができないこととなります。

 

同じ銀行に2つ口座があった場合はどうなる?

本事例において、もし、被相続人の口座が同一銀行に2つあった場合はどうなるでしょうか?

民法909条2項は「債務者ごとに法務省令で定める額」と規定しています。

したがって、同一金融機関であれば、引き出しの上限は150万円ということになります。

 

 

銀行実務の対応について

2016年に最高裁判決によって、預貯金債権は遺産分割の対象となると判示され、判例が変更されました。

判例が変更される前も、銀行は、二重払い等のトラブルを防止するために、相続人の単独での権利行使を簡単には認めてくれませんでした。

今回、民法改正によって、相続人が銀行に対して、上記の上限額について、直接払い戻しを請求できるようになったことから、今後、銀行がどのような対応をするのかが注目されます。

例えば、定期預金などの場合、約款において、一定期間は払い戻しができないような規定がある場合、その約款を根拠として払い戻しを拒むことも想定されます。

 

 

まとめ

遺産の問題を適切に解決するためには、相続法に関する専門知識やノウハウが必要です。

また、具体的な状況によって取るべき戦略は異なってくるため、可能であれば、相続に精通した弁護士に助言を求め、適切な解決となるよう注意すべきです。

弁護士宮崎晃当事務所の相続対策チームは、最新の相続法令を踏まえ、親身になって解決方法をご提案いたします。

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