
準確定申告に必要な書類とは、申告書や付表などの基本的な書類と、これと合わせて提出すべきさまざまな書類のことを指します。
相続人は、被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、被相続人に代わって申告(準確定申告)する必要があります。
準確定申告には、申告書や付表などの基本的な書類に加え、所得証明書類や控除証明書類などのさまざまな書類が必要となります。
必要書類が不足していると、申告が受理されなかったり、追加の手続きが必要になったりする可能性があります。
また、適切な書類を揃えることで、被相続人が受けられるはずだった控除や還付を漏れなく申告することができ、相続人の税負担を適正に保つことができます。
この記事では、準確定申告に必要な書類について、基本的な書類から所得状況に応じた書類、各種控除に必要な書類まで、弁護士が解説します。
目次
準確定申告の必要書類とは?

準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)の死亡の日の属する年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が行う確定申告のことです。
通常の確定申告は本人が行いますが、被相続人は既に亡くなっているため、相続人が代わりに申告を行う必要があります。
準確定申告を行うためには、さまざまな書類が必要となります。
申告書そのもののような基本的な書類に加え、被相続人の所得状況に応じて必要となる書類や、各種控除を受けるために必要となる書類などがあります。
準確定申告は、被相続人の死亡を知った日から4か月以内に行わなければなりません。
書類の準備が不十分だと、申告が受理されなかったり、追加の手続きが必要になったりする可能性があります。
また、準確定申告を行わないと、本来還付されるべき税金が戻ってこなかったり、逆に追徴課税されたりするリスクもあります。
そのため、必要な書類を正確に把握し、期限内に準備することが大切です。
準確定申告の必要書類のまとめ|チェックリスト
準確定申告には、主に次のような書類が必要です。
ただし、実際にどのような書類が必要になるかは、被相続人の状況に応じて異なります。
ご自身のケースに合わせてご確認ください。
基本的な書類
- 確定申告書
- 確定申告書の付表
- 準確定申告の確認書
- 委任状
- 相続人全員のマイナンバー確認書類
- 申告手続きを行う人の本人確認書類
被相続人の所得状況に応じて必要となる書類
- 給与所得・公的年金等の源泉徴収票
- 支払調書
- 青色申告決算書または収支内訳書
- 年間取引報告書
各種控除を受けるために必要となる書類
- 医療費控除の明細書
- 社会保険料の控除証明書・領収書
- 生命保険料控除証明書・地震保険料控除証明書
- 寄附金の受領証
準確定申告の必要書類の入手方法
準確定申告に必要な書類の入手方法について、書類ごとに解説します。
各書類の入手先や取得方法を知っておくことで、スムーズに準確定申告の準備を進めることができます。
確定申告書とは?

確定申告書は、所得税の申告を行うための基本的な書類です。
準確定申告の場合も、通常の確定申告と同じ様式の確定申告書を使用します。
確定申告書は第一表と第二表から構成されており、第一表には所得金額や税額の計算、第二表には各種所得の内訳や控除の明細を記入します。
確定申告書の入手方法
確定申告書は、税務署の窓口で配布されています。
また、国税庁のホームページからもダウンロードすることができます。
参考:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
確定申告書の書き方のポイント
確定申告書の書き方には、いくつかのポイントがあります。
まず、被相続人の氏名・住所を正確に記入することが重要です。
申告書の一番上にある「申告書」という記載の前に「準確定」と手書きで追記し、「準確定申告書」とします。
相続人が1人の場合は、被相続人の死亡年月日を氏名欄の上部などの余白に記入します。
一方、相続人が2人以上で「確定申告書の付表」を提出する場合は、付表に専用の記入欄があるため、申告書本体への記入は不要です。
所得金額は、1月1日から死亡日までの分を計上します。
給与所得や年金所得の計算では、源泉徴収票に記載された金額をそのまま使えない場合があります。
これは、所得が支払われた日(支給日)を基準に計算する必要があり、死亡日より後に支払われた給与や年金は故人の所得ではなく相続財産として扱われるためです。
したがって、給与明細などをもとに正確に計算する必要があります。
確定申告書の付表とは?
確定申告書の付表は、相続人が2人以上いる場合に、準確定申告に添付する必要がある書類です。
この書類には、相続人全員の氏名・住所・相続分などを記入し、それぞれが納めるべき税額や還付される金額を計算して記載します。
また、税務署からの書類を受け取る代表者を指定する役割も兼ねています。
確定申告書付表の入手方法
確定申告書の付表も、確定申告書と同様に税務署の窓口で受け取ることができます。
また、国税庁のホームページからもダウンロードすることが可能です。
参考:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
準確定申告の確認書とは?
準確定申告の確認書は、e-Tax(電子申告)を利用し、かつ相続人が2人以上いる場合に提出が必要となる書類です。
各相続人が申告内容を確認し、提出を代表者に委託したことの証明として使用します。
書面で提出する場合や、相続人が1人の場合は不要です。
準確定申告の確認書の入手方法
準確定申告の確認書の書式は、国税庁のホームページで提供されています。
参考:所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について|国税庁
委任状とは?
委任状は、相続人が複数いる場合に、準確定申告によって還付される税金の受領を代表者一人に委任するための書類です。
準確定申告は、基本的に相続人全員が連名で行うことが多いです。
還付金の受領口座を代表者一人のものにまとめる場合などに、他の相続人からその権限を委任されていることの証明として、委任状が必要となります。
なお、申告手続きそのものの代表者の指定は「確定申告書の付表」で行います。
委任状の入手方法
委任状の様式は、国税庁のホームページで参考様式が公開されています。
参考:所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について|国税庁
委任状の書き方のポイント
委任状には、被相続人、委任を受ける相続人代表、その他の相続人の氏名・住所などを記載します。
還付金の振込先となる「還付金受取場所」には、受任者名義の金融機関口座を正確に記入してください。
どの年分の申告に関する還付金の受領を委任するのかを、書面上で明確にするようにしましょう。
相続人が複数いる場合は、代表者となって手続きをする人以外の、相続人全員からの委任が必要です。
源泉徴収票とは?
源泉徴収票は、給与や年金などの所得から源泉徴収された所得税額を証明する書類です。
被相続人が給与所得者や年金受給者であった場合、準確定申告には源泉徴収票が必要となります。
源泉徴収票には、給与所得の源泉徴収票と公的年金等の源泉徴収票の2種類があります。
源泉徴収票の入手方法
給与所得の源泉徴収票は、被相続人が勤務していた会社や団体から発行されます。
被相続人の死亡後、勤務先に連絡して源泉徴収票の発行を依頼しましょう。
公的年金等の源泉徴収票は、年金を支給していた機関(日本年金機構など)から発行されます。
年金事務所や年金相談センターに、源泉徴収票の発行について問い合わせてみるとよいでしょう。
なお、源泉徴収票がすでに被相続人に送付されている場合は、被相続人の遺品の中から探してみましょう。
支払調書とは?
支払調書は、原稿料や講演料などの報酬の支払いを証明する書類です。
被相続人にこれらの所得があった場合に必要となります。
支払調書の入手方法
報酬を支払った企業や団体に連絡して、発行を依頼します。
その際、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)の提示を求められることがあります。
この書類も、被相続人の遺品の中に保管されている可能性があるため、確認してみましょう。
青色申告決算書・収支内訳書とは?

青色申告決算書や収支内訳書は、事業所得や不動産所得がある場合に必要となる書類です。
被相続人が事業を営んでいた場合や、不動産を賃貸していた場合、これらの書類を作成して確定申告書に添付する必要があります。
青色申告決算書は青色申告者が、収支内訳書は白色申告者が作成する書類です。
青色申告決算書・収支内訳書の作成・入手方法
青色申告決算書や収支内訳書の様式は、税務署の窓口で入手することができます。
また、国税庁のホームページからもダウンロードすることが可能です。
参考:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
これらの書類は、被相続人の帳簿や領収書などに基づいて作成します。
被相続人が生前に会計ソフトを使用していた場合は、そのデータを活用することもできます。
作成が難しい場合は、税理士に依頼することも検討しましょう。
年間取引報告書とは?
年間取引報告書は、株式や投資信託などの金融商品の取引内容や、その年に受け取った配当金などを証明する書類です。
被相続人が証券会社などで投資を行っていた場合に必要となります。
年間取引報告書の入手方法
被相続人が口座を開設していた証券会社に連絡して発行を依頼します。
その際、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)が必要となる場合があります。
医療費控除の明細書とは?
医療費控除の明細書は、被相続人の医療費について所得控除を受ける際に必要となる書類です。
準確定申告の対象となるのは、その年の1月1日から死亡日までに被相続人が支払った医療費です。
これらを申告することで、所得税の負担を軽減できる可能性があります。
医療費控除の明細書の作成・入手方法
明細書の様式は、税務署の窓口や国税庁のホームページで入手できます。
作成にあたっては、まず健康保険組合などから送付される「医療費通知(医療費のお知らせ)」がないか確認しましょう。
この通知を添付すれば、明細書への転記だけで済むため、領収書からの集計作業を大幅に簡略化できます。
医療費通知がない場合は、領収書を基に「医療を受けた人」や「病院・薬局」ごとに金額を集計し、明細書に記入します。
なお、申告の際に領収書の提出は不要ですが、税務署から確認を求められる場合に備え、5年間は自宅で保管する必要があります。
各種控除証明書とは?
各種控除証明書は、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除などを受ける際に必要となる書類です。
被相続人が支払った社会保険料、生命保険料、地震保険料などについて、控除を受けることで所得税の負担を軽減できる可能性があります。
各種控除証明書の入手方法
社会保険料の控除証明書は、社会保険料を徴収した機関(年金事務所、健康保険組合など)から発行されます。
生命保険料や地震保険料の控除証明書は、保険会社から発行されます。
これらの証明書は、通常、年末に被相続人宛に送付されているため、被相続人の遺品の中から探してみましょう。
見つからない場合は、各機関や保険会社に連絡して再発行を依頼することができます。
準確定申告の必要書類の取得費用
準確定申告に必要な書類の多くは、無料で入手することができます。
しかし、一部の書類については取得に費用がかかる場合があります。
ここでは、準確定申告の必要書類の取得にかかる費用について解説します。

確定申告書や付表、各種明細書などの書類
確定申告書や付表、各種明細書などの税務署で入手できる書類は、取得費用は無料です。
国税庁のホームページからダウンロードして印刷する場合も、印刷代以外の費用はかかりません。
戸籍謄本や住民票などの公的書類
一方、戸籍謄本や住民票などの公的書類は、取得に手数料がかかります。
戸籍謄本は1通あたり450円程度、住民票は1通あたり300円程度の手数料が必要です。
また、相続人が多い場合や、被相続人と相続人の関係を証明するために複数の戸籍謄本が必要になることもあり、その場合は費用が増加します。
源泉徴収票や支払調書などの再発行
源泉徴収票や支払調書の再発行は、通常無料ですが、発行元によっては手数料がかかる場合があります。
医療費の領収書の再発行も、医療機関によっては手数料がかかることがあります。
準確定申告の必要書類の提出先
準確定申告の書類は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に提出します。
提出方法には、直接持参する方法と郵送する方法があります。
直接持参する場合は、税務署の窓口の受付時間内(通常は平日の8:30から17:00まで)に提出します。
郵送で提出する場合は、簡易書留や特定記録郵便など、配達の記録が残る方法で送付することが望ましいです。
郵送の場合、消印日が提出日となりますので、期限に余裕をもって投函しましょう。
また、e-Taxを利用して電子申告することも可能です。
e-Taxを利用するには、事前に電子証明書(マイナンバーカード)の準備が必要です。
相続人がe-Taxの利用者であれば、被相続人の準確定申告もe-Taxで行うことができます。
なお、準確定申告の期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から4か月以内です。
期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課される可能性がありますので、注意が必要です。
準確定申告の必要書類は自分で集めることができる?
準確定申告の必要書類を自分で集めることは可能ですが、いくつか注意すべき点もあります。
まず、基本的な書類(確定申告書や付表など)は、税務署や国税庁のホームページから比較的簡単に入手することができます。
これらはあくまで記入用の書式にすぎませんので、広く配布されており、入手も容易です。
しかし、源泉徴収票や支払調書などの、被相続人の所得状況に応じて必要となる書類については、入手に苦労する可能性があります。
たとえば、被相続人の勤務先や取引先との連絡が必要な場合に、相続人がそれらの連絡先を把握していないと、情報収集から始める必要があります。
また、金融機関や証券会社から書類を取得する際には、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)の提示を求められることもあります。
さらに、被相続人が複数の金融機関や証券会社と取引していた場合、それぞれから書類を取得する必要があり、手続きが煩雑になります。
医療費控除や各種保険料控除を受ける場合も、被相続人が支払った医療費の領収書や保険料の控除証明書を集める必要があります。
これらの書類が被相続人の遺品の中に整理されていれば良いですが、そうでない場合は医療機関や保険会社に連絡して再発行を依頼することになります。
このように、準確定申告の必要書類を自分で集めることは可能ですが、時間と労力がかかる場合があります。
特に、被相続人の所得状況が複雑であったり、控除を多く受ける予定であったりする場合は、税理士や弁護士などの専門家に依頼することも検討すべきでしょう。
専門家に依頼するメリットとしては、必要書類の把握や入手だけでなく、書類の作成や申告手続きを代行してもらえることが挙げられます。
税理士に依頼することで、税金の計算や節税対策のアドバイスなど、全面的なサポートを受けることができます。
準確定申告の必要書類の相談窓口
準確定申告の必要書類について相談したい場合、いくつかの窓口があります。
ここでは、相談窓口の種類とそれぞれの特徴について解説します。

税務署
まず、最も基本的な相談窓口となるのは税務署です。
税務署では、準確定申告に必要な書類や手続きについて相談に応じています。
確定申告期間中(2月16日から3月15日まで)は、相談窓口が拡充されることが多いものの、混雑も予想されます。
準確定申告の期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から4か月以内です。
このため、被相続人の死亡時期にもよりますが、できれば上記の混雑時期を避けるとよいでしょう。
また、国税庁のホームページでは、「タックスアンサー」というコーナーで、税金に関するさまざまな質問と回答が掲載されています。
準確定申告に関する基礎的な情報も多く掲載されているため、まずはこちらで調べてみるとよいでしょう。
相続全般は相続に強い弁護士に相談
相続全般に関する相談は、相続に強い弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、相続に関する法律問題全般に対応することができます。
弁護士に相談することは、準確定申告に限らず、相続全般に関するさまざまな問題の解決に有効です。
たとえば、遺産分割協議や遺留分の請求、遺言書の有効性の確認、相続人間のトラブル対応など、法律的な観点から総合的なサポートを受けることができます。
特に、相続人間でトラブルがある場合や、相続財産が複雑な場合、遺言書の解釈に問題がある場合などは、弁護士の専門知識が役立ちます。
相続は複雑で、思わぬトラブルや見落としが発生しやすい手続きです。
早い段階で弁護士に相談しておくことで、安心して手続きを進めることができるでしょう。
相続問題を弁護士に相談するメリットについては、以下のページをご覧ください。
準確定申告の相談だけなら税理士
準確定申告の手続きや必要書類についての相談だけであれば、税理士に相談するのが適切です。
税理士は、税務のプロフェッショナルです。
準確定申告に必要な書類の収集方法や作成方法、申告手続きなどについて詳しいアドバイスを受けることができます。
特に、被相続人に事業所得があったり、株式取引を行っていたりした場合などの複雑なケースでは、税理士のサポートが役立ちます。
相続の全般的な相談ではなく、税務に特化した相談であれば、税理士に相談するのが適切です。
準確定申告の必要書類についてのQ&A
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準確定申告で医療費の領収書は必要ですか?
ただし、医療費の領収書は5年間保存する必要があります。
準確定申告に添付する必要はありませんが、税務署から求められた場合には提示する必要があります。
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準確定申告書に添付する書類としてマイナンバーカードが必要?
ただし、マイナンバーカード自体を添付する必要はありません。
申告書を提出する際に、申告手続きを行う人の本人確認書類の提示が求められますが、マイナンバーカード以外の運転免許証なども利用できます。
また、準確定申告をe-Taxで行う場合は、マイナンバーカードの準備が必要です。
まとめ
この記事では、準確定申告について、基本的な書類から所得状況に応じた書類、各種控除に必要な書類まで解説しました。
記事の要点は、次のとおりです。
- 準確定申告には、基本的な書類(確定申告書、付表、委任状など)、所得状況に応じた書類(源泉徴収票、青色申告決算書など)、各種控除用の書類(医療費控除の明細書、各種控除証明書など)が必要である。
- 必要書類は税務署、国税庁ホームページ、勤務先、金融機関、保険会社などから入手できる。
- 準確定申告の書類は被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に提出し、期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から4か月以内である。
- 準確定申告の必要書類を自分で集めることは可能だが、被相続人の所得状況が複雑な場合は専門家への相談が望ましい。
- 相続全般の相談は弁護士に、準確定申告の手続きや必要書類についての相談は税理士に依頼するのが効果的である。
当事務所では、相続に注力する弁護士及び税理士からなる専門チームを構築しています。
相続対策チームは、相続に関する専門知識やノウハウを活用し、相続問題の解決に尽力しています。
遠方にお住まいの方でもお気軽に当事務所の専門サービスをご利用いただけるように、LINE、Zoom、などを活用したオンライン相談をご提供しております。
相続問題については、当事務所の相続弁護士までお気軽にご相談ください。
