遺族年金をもらえる人は、遺族の中で、亡くなった方と一定の関係にあった(例:配偶者、子など)、亡くなった方に生計を維持されていたなど一定の条件を満たす方に限られます。
定められた要件を満たさなければ、配偶者を亡くした場合でも、遺族年金をもらえなかったり、途中で遺族年金を打ち切られてしまったりすることがあります。
また、生前の対策不足のために、遺族年金を受け取ることができなくなる方もおられます。
遺族年金のことを、「家族が亡くなれば当然もらえるもの」と思っている人も少なくないと思われます。
しかし、実際には、必ずしもそうとは限りません。
遺族年金を間違いなくもらえるようにするためには、相続と同様、元気なうちからきちんと対策しておくことが重要です。
今回の記事では、遺族年金をもらえる人は誰か、遺族年金をもらえる人の条件、受給額、遺族年金がもらえないケース、遺族年金をもらえるようにするために注意すべき点などを取り上げていきます。
目次
遺族年金をもらえる人とは?
遺族年金をもらえる人は、遺族年金を受給できる条件を満たした人です。
遺族年金をもらえるための条件には、亡くなった方との親族関係だけでなく、亡くなった方に生計を維持されたこと、子の有無なども関わってきます。
それ以外にも、以下のような点についての事情も、遺族年金を受給できるかどうかに影響します。
- 亡くなった方が生きていた間の保険料納付済期間
- ご遺族の年齢・年収
- 子の年齢
- 亡くなった方と同居していたか
- 亡くなった方と別居していた(施設に入居していた場合を含む)場合、定期的な訪問・音信があったか
- 亡くなった方から生活費をもらっていたか など
上のような様々な条件があるので、遺族年金は、亡くなった人の配偶者や子であっても、必ずもらえるとは限らないものとなっています。
そもそも遺族年金とは?

遺族年金は、国民年金・厚生年金保険に加入していた人(被保険者)(又は被保険者であった人)が死亡した場合に、亡くなった方に生計を維持されていた一定の遺族に支払われる年金です。
つまり、遺族年金は、少なくとも、①亡くなった方が国民年金・厚生年金保険の被保険者であったことがある、②遺族が亡くなった方に生計を維持されていた、という要件を満たさないと、もらえません。
ほかにも、後からご説明するとおり、ご遺族や亡くなった方の子の年齢など様々な条件がありますし、年金の種類によっても条件は変わってきます。
「親や配偶者が亡くなれば、必ず遺族年金が支給される」という制度とはなっていませんので、その点には注意が必要です。
遺族年金には2種類ある
遺族年金には、次の2種類があります。
- 国民年金から支給される遺族基礎年金
- 厚生年金から支給される遺族厚生年金
参考:[年金制度の仕組みと考え方] 第13 遺族年金|厚生労働省
遺族基礎年金は自営業者などが対象
遺族基礎年金は、国民年金から支払われる遺族年金です。
自営業者の方など厚生年金に加入していなかった方は、もらえるのは遺族基礎年金だけになります。
遺族厚生年金は会社員などが対象
遺族厚生年金は、厚生年金から支払われる遺族年金です。
会社員の方は厚生年金に加入するので、遺族厚生年金の対象になります。
さらに、会社員の場合、国民年金保険にも加入していますので、条件を満たせば、遺族厚生年金と遺族基礎年金の両方がもらえます。
遺族年金の受給条件とは?
遺族年金の受給条件は、遺族基礎年金のものと遺族厚生年金のもので違いがあります。
それぞれの遺族年金の受給条件について解説していきます。
遺族基礎年金の受給条件
遺族基礎年金をもらえる人は、次の条件を満たす方になります。

それぞれの要件について、見ていきましょう。
参考:遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構
①亡くなった方に生計を維持されていた
①については、遺族厚生年金とも共通する条件ですので、後ほどまとめてご説明します。
②「子のある配偶者」又は「子」である
②にある「子のある配偶者」の「子」や「子」に当たるのは、一定の年齢までの子に限られます。
「子のある配偶者」の「子」や「子」に当たると認められる子の年齢は、以下のとおりです。
- 原則として、18歳になった年度の3月31日まで
- 子が障害年金の障害等級1級又は2級の状態にある場合は、20歳未満
*この記事では、「子」は、上記の年齢までの子を指します。
「子のある配偶者」と「子」のどちらが遺族基礎年金をもらえる?
次のいずれかに当たる場合には、「子」は遺族基礎年金をもらうことができません。
- 「子のある配偶者」が遺族基礎年金をもらっている
- 「子」が父又は母と「生計を同じく」している
そのため、以下のような理由で「子のある配偶者」が遺族基礎年金を受給できない場合でも、父又は母と「子」が生計を同一にしていると、「子」は遺族年金をもらえません。
- 「子のある配偶者」の年収が高く、遺族年金をもらえる要件の一つである収入要件を満たさない
- 生計を同一にしている親が再婚し、遺族基礎年金をもらえなくなった
- 離婚後に子を養育していた親が亡くなり、その後、子がもう一方の親に引き取られた(離婚が成立しているため、生きている親は亡くなった方の「配偶者」に当たらず、遺族基礎年金をもらえない)
- 祖父母などの直系血族(又は直系姻族)の養子になって、生計を同じくしている
なお、令和7年5月に法改正があり、「子」が遺族基礎年金を受け取れるケースが増えました。
法改正では、父又は母と生計を同じくしている子も、「子のある配偶者」が遺族基礎年金を受給していないのであれば、遺族基礎年金をもらえるように改められたのです(施行は令和10年4月)。
そのため、上に挙げたケースの場合、改正法が施行された後には、「子」が遺族基礎年金を受け取ることができるようになります。
③亡くなった方が国民年金の被保険者だったなど所定の要件を満たしている
遺族基礎年金をもらうためには、亡くなった方が以下の条件のいずれか1つに当てはまる必要があります。
- ①死亡当時、国民年金の被保険者だった
- ②死亡当時60歳以上65歳未満で、国民年金の被保険者であり、日本国内に住所を有していた
- ③老齢基礎年金の受給権者だった
- ④老齢基礎年金の受給資格を満たしていた
- ①②の場合、死亡日前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要(死亡日が令和18年3月末日までの場合、死亡した方が65歳未満なら、死亡日前日の時点で、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよい)
- ③④の場合、保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間並びに65歳以降の厚生年金保険の被保険者期間を合算した期間が25年以上あることが必要
遺族厚生年金の受給条件
遺族厚生年金の受給条件には、次のものがあります。

- それぞれの条件について簡単に説明していきます。
参考:遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構
①亡くなった方に生計を維持されていた
①については、遺族基礎年金とも共通する条件ですので、後ほどまとめてご説明します。
②遺族のうちで、優先順位が最も高い
遺族厚生年金をもらえる人は、以下の遺族のうち、最も優先順位が高い遺族になっています(番号は優先順位の順)。
- ① 子のある配偶者
- ① 子(「子のある妻」又は「子のある55歳以上の夫」が遺族厚生年金を受け取っている間は、子には遺族厚生年金は支給されない)
- ② 子のない配偶者
- ③ 父母(55歳以上である場合のみ受給可能。受給開始は60歳から)
- ④ 孫(18歳になった年度の3月31日までにある者、または20歳未満で障害年金の障害等級1級又は2級の状態にある者)
- ⑤ 祖父母(55歳以上である場合のみ受給可能。受給開始は60歳から)
加えて、②の「子のない配偶者」については、以下のような制限もあります。
- 子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給できる
- 子のない夫は、55歳以上である場合に限り受給できる。その場合、受給開始は60歳からになる(ただし、遺族基礎年金をもらえる場合は、55歳から60歳の間も遺族厚生年金を受給できる)
子のない配偶者が遺族厚生年金をもらえる条件については、令和7年5月の法改正による変更がありました(実施されるのは、令和10年4月から。女性については、同月から段階的に実施)。
変更後は、以下のような扱いとなります。
- 夫・妻いずれの場合でも、60歳未満で配偶者と死別したのであれば、原則的に、5年間に限り遺族厚生年金がもらえる
- 上記の5年間については収入要件は廃止し、生存している配偶者の年収に関係なく遺族年金がもらえるようになる
- 上記の5年間については、有期給付加算により、法改正前の遺族厚生年金の1.3倍の額をもらえるようになる
- 配偶者の死亡から5年が経過した後も、収入が不十分、障害状態にあるなど配慮が必要な場合には、遺族厚生年金の受給を継続できる
③亡くなった方が厚生年金保険の被保険者だったなど所定の要件を満たしている
亡くなった方が次のいずれかの要件を満たしていると、遺族厚生年金をもらうことができます。
- ①厚生年金保険の被保険者である間に死亡した
- ②厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やケガが原因で初診日から5年以内に死亡した
- ③1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っていた
- ④老齢厚生年金の受給権者だった
- ⑤老齢厚生年金の受給資格を満たしていた
- ①②については、死亡日前日時点で、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要(死亡日が令和18年3月末日までの場合は、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日前日の時点で、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよい)
- ④⑤については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間並びに65歳以降の厚生年金保険の被保険者期間を合算した期間が25年以上あることが必要
生計維持に関する要件について
遺族基礎年金も遺族厚生年金も、「亡くなった方に生計を維持されていた」遺族だけがもらうことができます。
生計を維持されていたと認められるには、原則的に、次の要件を満たす必要があります。

それぞれについて簡単にご説明します。
①生計を同じくしていること
生計を同じくしていると認められるのは、次の場合です。
- 住民票上同一世帯である
- 住民票上の世帯は異にしているが、住所が住民票上同一である
- 住民票上の住所は異なっているが、次のいずれかに該当する
- ① 現に同じ住まいに住んでおり、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められる
- ② 単身赴任、就学又は病気療養等のやむを得ない事情で住所が異なっているが、次のような事実が認められ、単身赴任等の事情がなくなったときは、同居して消費生活上の家計を一つにすると認められる
- ア 生活費、療養費等の経済的な援助(仕送りなど)が行われている
- イ 定期的に音信、訪問が行われている
- 住民票上同一世帯である
- 住民票上の世帯は異にしているが、住所が住民票上同一である
- 住民票上の住所は異なっているが、次のいずれかに該当する
- ① 現に同居し、かつ、消費生活上の家計を一つにしている
- ② 生活費、療養費等について生計の基盤となる経済的な援助(仕送りなど)が行われている
参考:「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」の一部改正について〔厚生年金保険法〕|厚生労働省
これをかみ砕いて説明すると、以下のようになります。
- ①亡くなった方と住民票上同一世帯となっていた場合、又は住民票上の住所が同じになっていた場合は、生計を維持されていたことが認められる
- ②①に当てはまらなくても、亡くなった方と同居しており、財布も一つになっていた場合は、生計を維持されていたことが認められる
- ③(配偶者・子の場合)
①②に当てはまらなくても、単身赴任、病気療養などの事情があって別居しており、仕送りがあった、定期的な音信・訪問があったなどの事情があれば、生計を維持されていたことが認められる
(父母、孫、祖父母、兄弟姉妹などの場合)
①②に当てはまらなくても、仕送りを受けていたのであれば、生計を維持されていたことが認められる
②収入要件を満たすこと
「生計を維持されていた」と認めてもらうためには、以下のいずれかの要件(収入要件)を満たす必要があります。
- 遺族の前年の収入が年額850万円未満である
- 遺族の前年の所得が年額655万5000円未満である
どちらの場合でも、一時的な所得は除く。
遺族年金はいくらもらえる?
次は、遺族年金はいくらもらえるかについてご紹介していきます。
遺族年金でもらえる金額は、遺族基礎年金と遺族厚生年金で異なりますので、それぞれの場合について解説していきます。
遺族基礎年金はいくらもらえる?
遺族基礎年金の年金額は、以下のとおりとなっています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 子のある配偶者の場合 | 83万1700円 + 「子の加算額」 (昭和31年4月1日以前生まれの場合、82万9300円 + 子の加算額) |
| 子の場合 | (83万1700円 + 2人目以降の「子の加算額」)÷ 子の人数 |
上の表の「子の加算額」は、以下のとおり
- 1人目・2人目の子の加算額 各23万9300円
- 3人目以降の子の加算額 各7万9800円
参考:遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構
なお、子の加算額は、令和7年5月の法改正で、1人につき年額28万1700円に引き上げることが決まりました(実施されるのは、令和10年4月)。
この法改正では、3人目以降の子の加算額も、1人目・2人目と同額とすることが決められています。
寡婦年金をもらえる場合
亡くなった夫が、自営業者などのように国民年金の第1号被保険者だった場合、妻が寡婦年金をもらえる場合があります。
寡婦年金がもらえるのは、次の条件を満たす場合です。
- 夫の死亡日前日時点で、夫の第1号被保険者としての保険料納付済期間及び国民年金の保険料免除期間(学生納付特例期間、納付猶予期間を含む)が10年以上(死亡日が平成29年7月31日以前の場合、25年以上)あった
- 夫と妻の婚姻関係が10年以上続いていた(事実上の婚姻関係を含む)
- 死亡した当時、夫が妻の生計を維持していた
- 夫が老齢基礎年金・障害基礎年金をもらったことがない
令和3年3月31日以前が死亡日の場合、亡くなった方が障害基礎年金の受給権者だった、又は老齢基礎年金をもらったことがあるときは支給されない
- 妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金をもらっていない
寡婦年金がもらえるのは、妻が60歳から65歳になるまでの間だけです。
妻が60歳未満の時に夫が亡くなった場合も寡婦年金はもらえますが、実際に支給が始まるのは、妻が60歳になってからです。
参考:寡婦年金|日本年金機構
寡婦年金の額は、次の計算式で算出します(保険料の全部又は一部の免除を受けていた期間がある場合は、計算方法が変わります)。
(計算式)夫の老齢基礎年金の額(令和7年4月からは83万1700円)× 納付済期間(月)/480 × 3/4
参考:老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額|日本年金機構
遺族厚生年金はいくらもらえる?
遺族厚生年金の額は、「亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分 × 3/4」となります。
報酬比例部分の額は、原則的に、以下のA、Bの金額を合算して算出します。
A 平成15年3月以前の加入期間に関する部分
計算式 平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 平成15年3月までの加入期間の月数
B 平成15年4月以降の加入期間に関する部分
計算式 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 平成15年4月以降の加入期間の月数
亡くなった人が以下の①~③のいずれかに基づく遺族厚生年金の場合は、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満でも、300月とみなす。
- ① 厚生年金保険の被保険者である間に亡くなった
- ② 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やケガが原因で、初診日から5年以内に死亡した
- ③ 1級・2級の障害厚生(共済)年金をもらっている方が亡くなった
遺族年金の具体的な金額については、以下のページの早見表をご覧ください。
配偶者自身が老齢厚生年金を受給する権利を有している場合
遺族厚生年金の受給権者が65歳以上で、自分の老齢厚生年金を受給する権利を有している場合は、次の2つのうち額の高い方が遺族厚生年金の額とされます。
- 亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額
- 亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額
中高齢寡婦加算がある場合
遺族厚生年金を妻が受け取る場合、以下のいずれかの条件を満たすと、40歳から65歳になるまでの間、中高齢寡婦加算(年62万3800円)を上乗せしてもらうことができます。
- ①夫が死亡した時点で40歳以上65歳未満であって、生計を同じくしている子がいない
- ②遺族厚生年金と遺族基礎年金をもらっていた「子のある妻」が、遺族基礎年金をもらえなくなった(例:子が18歳に到達する年度の末日に達した等)(妻が40歳に到達した時に、子がいるために遺族基礎年金を受給していたことを要する)
平成19年3月31日以前に夫が死亡し、遺族厚生年金を受給している場合は、①②にある「40歳」を「35歳」と読み替える。
ただし、亡夫が老齢厚生年金の受給権者だった(又は受給資格を満たしていた)場合は、亡夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年(中高齢者の期間短縮の特例などによって20年未満の被保険者期間で共済組合等の加入期間を除いた老齢厚生年金の受給資格期間を満たした場合については、その期間)以上あった場合に限り、中高齢寡婦加算を受けることができます。
経過的寡婦加算がある場合
次のいずれかに該当する場合には、経過的寡婦加算をもらえることになります。
- 昭和31年4月1日以前生まれの妻が、65歳以上で遺族厚生年金の受給権を得たとき
亡夫が老齢厚生年金の受給権者だった又は受給資格を満たしていた場合は、死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年(中高齢者の期間短縮の特例などによって20年未満の被保険者期間で共済組合等の加入期間を除いた老齢厚生年金の受給資格期間を満たした場合は、その期間)以上の場合に限られる
- 中高齢寡婦加算分をもらっていた昭和31年4月1日以前生まれの遺族厚生年金の受給権者である妻が、65歳に達したとき
経過的寡婦加算の額は、昭和61年4月1日から60歳に達するまで国民年金に加入した場合の老齢基礎年金の額と合わせて中高齢寡婦加算の額と同程度となるように定められています。
遺族年金はいつまでもらえる?
遺族基礎年金はいつまでもらえる?
遺族基礎年金は、以下の事情が生じるまではもらえます。
参考:遺族年金を受けている方が結婚や養子縁組などをしたとき|日本年金機構
配偶者が受給している場合
配偶者が遺族基礎年金をもらえるのは、次の要件のいずれかに該当するまでです。
② 結婚した(内縁関係を含む)
③ 直系血族又は直系姻族以外の人の養子になった
遺族基礎年金の受給権を有している全ての子が次の要件のいずれかに当てはまる
② 結婚した(内縁関係を含む)
③ 受給権者(配偶者)以外の人の養子となった
④ 亡くなった人と離縁した
⑤ 受給権者(配偶者)と生計を同一にしなくなった
⑥ 18歳になった年度の3月31日に到達した(障害等級1級・2級に該当する障害の状態にある子については、20歳に到達した)
⑦ 18歳になった年度の3月31日が過ぎた後に20歳未満で障害等級1級・2級の障害の状態に該当しなくなった
子が受給している場合
子が遺族基礎年金をもらえるのは、次の要件のいずれかに該当するまでです。
② 結婚した(内縁関係を含む)
③ 直系血族又は直系姻族以外の人の養子となった
④ 亡くなった人と離縁した
⑤ 18歳になった年度の3月31日に到達した(障害等級1級・2級に該当する障害の状態にある子については、20歳に到達した)
⑥ 18歳になった年度の3月31日が過ぎた後に20歳未満で障害等級1級・2級の障害の状態に該当しなくなった
遺族厚生年金はいつまでもらえる?
遺族厚生年金をもらえるのは、次の条件に当てはまるまでになります。
妻が受給している場合
妻が受給している場合は、妻自身が以下のいずれかの要件に当てはまると、遺族厚生年金をもらうことができなくなります。
② 結婚した(内縁関係を含む)
③ 直系血族又は直系姻族以外の人の養子になった
また、夫の死亡日が平成19年4月1日以降の場合、夫の死亡時に妻の年齢が30歳未満だと、次の場合にも遺族厚生年金を受け取ることができなくなります。
④ 遺族基礎年金・遺族厚生年金を受け取っていた妻が、30歳に到達する前に遺族基礎年金をもらえる権利を失い、その時から5年を経過したとき
夫が受給しているとき
夫が遺族厚生年金を受給している場合は、以下のいずれかの要件に該当すると、遺族厚生年金をもらえなくなります。
② 結婚した(内縁関係を含む)
③ 直系血族又は直系姻族以外の人の養子となった
子又は孫が受給している場合
子又は孫が受給している場合、以下のいずれかの要件に該当すると、遺族厚生年金をもらえなくなります。
② 結婚した(内縁関係を含む)
③ 直系血族又は直系姻族以外の人の養子となった
④ 亡くなった人と離縁した(孫の場合、離縁によって亡くなった方との親族関係が終了した)
⑤ 18歳になった年度の3月31日に到達した(障害等級1級・2級に該当する障害の状態にあるときは、20歳に到達した)
⑥ 18歳になった年度の3月31日より後になって、20歳未満で障害等級1級・2級の障害の状態に該当しなくなった
さらに、孫が受給している場合は、亡くなった人が死亡した当時胎児だった子が生まれたときにも、孫は遺族厚生年金をもらえなくなります。
父母又は祖父母が受給している場合
父母又は祖父母が受給している場合、以下のいずれかの要件に該当すると、遺族厚生年金をもらえなくなります。
② 結婚した(内縁関係を含む)
③ 直系血族又は直系姻族以外の人の養子となった
④ 亡くなった人と離縁した(祖父母の場合、離縁によって亡くなった方との親族関係が終了した)
⑤ 亡くなった人が死亡した当時胎児だった子が生まれた
遺族年金をもらえないケースとは?
遺族年金をもらえないケースは、遺族年金の受給要件を満たさないケースです。
たとえば、次のようなケースでは、遺族年金は受け取れません。

亡くなった方の保険料納付済期間などが足りない
亡くなった方の保険料納付済期間、保険料免除期間、国民年金加入期間などが短く、遺族年金を受け取るための要件を満たさない場合は、遺族年金をもらうことはできません。
遺族の年収が高い
遺族年金をもらうためには、ご遺族の収入が一定額を下回ること(収入850万円未満又は所得655万5000円未満)が必要です(収入要件)。
ご遺族にこの金額を上回る収入がある場合、遺族年金をもらうことはできません。
死亡した人と遺族が同居していなかった
死亡した人と遺族が同居していなかった場合、住民票上の世帯も住所も違う、仕送りや定期的な音信・訪問もなかったとなると、亡くなった人と遺族が生計を同じくしていたと認められず、遺族年金がもらえないおそれがあります。
別居している理由が単身赴任や進学、病気療養や介護施設入所である場合も、住民票上の世帯や住所が異なると、「同居していない」と扱われますので、注意が必要です。
こうした理由で別居している場合は、ご家族がご存命の間に、以下のような対策をとっておくことが重要です。
- 仕送りを受け、記録に残しておく(振り込みにするなど)
- 定期的に訪問したり、手紙や電話、メールなどで連絡をし、記録に残しておく
亡くなった方に子がいない(遺族基礎年金の場合)
遺族基礎年金は、亡くなった方に子がいない場合には支給されません。
ここで注意が必要なのは、亡くなった方の配偶者に自身の連れ子がいる場合です。
この場合、配偶者の連れ子は、亡くなった方と養子縁組をしていない限りは亡くなった方の子にはなりません。
そのため、配偶者には子がいる場合でも、その子が「亡くなった方の子」でなければ、配偶者や子は、遺族基礎年金をもらうことはできません。
遺族年金をもらえる条件については、以下のページもご覧ください。
遺族年金を具体例でシミュレーション
どのような遺族年金をもらえるかについて、具体例でシミュレーションしてみます。
自営業者の場合
自営業者で厚生年金に加入したことがない方が亡くなった場合、遺族がもらえるのは遺族基礎年金のみとなります。
遺族基礎年金をもらえるのは、亡くなった方に子がいる場合のみです。
なお、子がいない場合でも、亡くなったのが夫である場合は、妻に寡婦年金が支払われる可能性があります(子がいる場合でも、要件を満たせば寡婦年金を受け取れます)。
寡婦年金をもらうためには、婚姻期間が10年以上継続していたなどの要件を満たす必要があります。
会社員の場合
会社員は、国民年金のほか厚生年金保険にも加入します。
そのため、会社員が亡くなった場合には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方をもらうことができます。
遺族厚生年金には、条件を満たせば、中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算が上乗せされます。
ひとり親の父又は母が亡くなったとき
ひとり親として子を養育していた父又は母が亡くなった場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金は、子がもらうことができます。
老齢基礎年金のみをもらっている場合
老齢基礎年金のみをもらっている方が亡くなった場合、配偶者に遺族年金として支給される可能性があるのは遺族基礎年金のみとなります。
しかし、配偶者が子を養育していないのであれば、遺族基礎年金をもらうことはできません。
さらに、亡くなったのが夫であっても、夫が老齢基礎年金をもらっていたのであれば、寡婦年金は支給されなくなってしまいます。
そのため、子を養育していない限り、老齢基礎年金のみをもらっている方が亡くなっても、残された配偶者がもらえる遺族年金はありません。
老齢厚生年金をもらっている場合
老齢厚生年金(及び老齢基礎年金)をもらっている方が亡くなった場合、配偶者には、遺族厚生年金が支給されます。
ただし、配偶者が老齢厚生年金をもらっている場合、遺族厚生年金として支給されるのは、「遺族厚生年金」と「配偶者の老齢厚生年金」との差額のみとなります。
配偶者が受給している老齢厚生年金が遺族厚生年金よりも高額な場合は、遺族厚生年金は支給されません。
亡くなったのが夫の場合は、条件を満たせば、遺族厚生年金に経過的寡婦加算、中高齢寡婦加算が加算されます。
なお、遺族厚生年金は、亡くなった方の厚生年金の保険料納付済期間などが25年以上ある場合でなければ支給されませんので、注意が必要です。
一方で、遺族基礎年金は、前の項でご説明したとおり、子を養育していない場合は支給されません。
さらに、亡くなった方が老齢基礎年金をもらっていたのであれば、夫を亡くした妻であっても、寡婦年金をもらうことができません。
そのため、多くのケースでは、老齢厚生年金をもらっている方が亡くなった場合、もらえる可能性があるのは、遺族厚生年金のみとなります。
遺族年金は相続の対象となる?
遺族年金は、一身専属権となりますので、相続することはできません。
ただし、死亡時に既に支払日を過ぎていたにもかかわらず受け取ることができていない遺族年金がある場合、未払いの遺族年金を請求する権利は、相続の対象となります。
遺族年金についての相談窓口
遺族年金をもらえる人はだれかなどについての相談窓口としては、次のようなものがあります。
- ねんきんダイヤル(日本年金機構)
- 各地の年金事務所
- 社会保険労務士
- 街角の年金相談センター(日本年金機構から全国社会保険労務士連合会に委託して運営しているもの)
- 市区町村役場
- 国家公務員共済組合連合会
- 地方公務員共済組合連合会
- 日本私立学校振興・共済事業団 私学共済事業
相続について知りたければ弁護士
遺族年金にご関心がおありの方には、同じく死後についての問題である相続についても知りたい方が多いのではないでしょうか。
相続について知りたい方は、一度、相続にくわしい弁護士に相談してみることをおすすめします。
相続にくわしい弁護士に相談すれば、次のようなメリットが得られます。
- 自分の死後、相続がどのように進むかについて説明してくれる
- 自分の相続で、トラブルのもとになりそうな財産や問題はないかについて相談できる
- 遺言書の書き方についてアドバイスしてくれる
- 遺言書の内容をどのようなものにすればよいかについて提案してくれる
- 既に始まっている相続について、遺産分割をどのようにすすめればよいかアドバイスしてくれる
- 親族の争いを回避するためのポイントを教えてくれる
相談からさらに進んで、弁護士に相続に関する交渉などを依頼すれば、次のようなメリットがあります。
- 親族との交渉の窓口を任せることができ、自分で矢面に立たなくて済む
- 戸籍などの必要書類の収集、法的手続きの代行などを依頼することができる
- 遺産分割協議書を作成してくれる
- 遺産分割調停・遺産分割審判をすることになった場合も、引き続き対応を任せることができる
相続について弁護士に相談するメリットについては、以下のページもご覧ください。
遺族年金についての注意点

遺族年金対策は生前から
遺族年金の受給条件の中には、ご家族が亡くなった後では満たすことができないものがあります。
- 保険料の免除申請
- 厚生年金保険への加入
- 配偶者の連れ子などとの養子縁組
- 生計が同一であったと認められるための同居、住民票の移転、仕送り、定期的な音信・訪問などを行う
ご家族が亡くなった後で、こうした点への対策ができていなかったために遺族年金がもらえなくなってしまったことが分かっても、もはや打つ手がありません。
遺族年金については、ご家族が亡くなってから考えるのではなく、ご家族がご存命のうちから確認・対策を進めておくようにしましょう。
再婚や養子縁組をすると遺族年金がもらえなくなる
遺族年金をもらっている人が再婚(内縁関係を含む)や直系親族・直系姻族以外との養子縁組をすると、遺族年金をもらえなくなってしまいます。
「子のある配偶者」として遺族基礎年金をもらっている配偶者の場合、配偶者本人ではなく、子が結婚や養子縁組をすることで、遺族基礎年金をもらえなくなることもあります。
遺族年金をもらっている間に結婚や養子縁組を考えている場合は、一度相談窓口で相談し、結婚や養子縁組をしても遺族年金をもらい続けられかどうか確認することをおすすめします。
遺族年金についてのQ&A
![]()
遺族基礎年金をもらえない人は?
- 子がいない配偶者(配偶者自身の連れ子しかおらず、その子と亡くなった方が養子縁組をしていなかった場合も含む)
- 自分の収入が高く、収入要件を満たさない人
- 亡くなった方と同居しておらず、住民票上の世帯・住所も別々で、定期的な音信・訪問や仕送りのやり取りなどもなかった人
- 国民年金の保険料納付済期間などが条件を満たしていなかった方のご遺族 など
![]()
年金暮らしの夫が死んだら妻は年金をもらえるの?
たとえば次のような場合には、妻は遺族年金を受け取ることができません。
- 妻の収入が高く、収入要件を満たさない
- 夫と妻が別居(介護施設への入所、病院への入院を含む)しており、住民票上の住所・世帯も別で、定期的な音信や訪問、仕送りもなかった
- 亡くなった方に、妻以外の女性との間にできた子がおり、妻には子がいない
厚生年金に加入しておらず遺族基礎年金しかもらえないケースでは、以下のような場合も、妻は年金をもらうことができません。
- 夫の子がおらず(既に「子」と認められる年齢を過ぎている場合を含む)、かつ、妻が寡婦年金の受給要件を満たしていない
まとめ
今回は、遺族年金をもらえる人について取り上げました。
遺族年金は、亡くなった方の親族であれば必ずもらえるわけではなく、収入に関する要件や、亡くなった方との同居の有無、仕送りや音信、訪問の有無など様々な条件が関わってきます。
遺族年金をもらえる条件を満たすためには、社労士などの専門家に相談して、生前から準備することが重要です。
死後のことでは、相続も大きな問題になります。
相続については、早いうちから弁護士に相談し、アドバイスを受けておくことをおすすめします。
デイライト法律事務所では、相続対策チームに所属して数多くの相続問題に取り組んできた弁護士が、相続について疑問がおありの方やお悩みをおもちの方のご相談に幅広く対応しております。
電話だけでなく、LINEなどのオンライツールを用いて、全国どこからのご相談にも対応しております。
相続に関するお悩みやお困りごとがおありの方は、デイライト事務所まで、どうぞお気軽にご連絡ください。
