相続財産の調査|自分で亡くなった人の財産を調べる方法

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


相続が発生した場合、まず行うべき重要な手続きの一つが「相続財産の調査」です。

相続財産の調査では、亡くなった人が持っていたすべての財産を調べて洗い出し、金銭的に評価します。

しかし、実際には「亡くなった人の銀行口座がわからない」「借金があるかどうか不明」「どこに不動産があるのかわからない」といったケースも少なくありません。

相続財産の調査を正しく行わないと、思わぬ借金を相続してしまったり、遺産分割のやり直しが必要になったりするリスクがあります。

この記事では、相続実務を扱う弁護士の立場から、具体的な相続財産の調べ方、ポイント、専門家に依頼すべきケース等について、体系的にわかりやすく解説します。

相続財産の調査とは?

相続財産の調査とは?

相続財産の調査とは、亡くなった方(被相続人)が持っていたすべての財産(プラスの財産とマイナスの財産)を洗い出し、それらを金銭的に評価する手続きのことです。

相続人は原則として、プラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産も引き継ぎます(民法第896条)。

そのため、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含めて漏れなく洗い出すことが大切です。

 

プラスの財産

プラスの財産には次のようなものがあります。

  • 預貯金
  • 不動産(土地、建物、マンション等)
  • 有価証券(株式、社債、国債、投資信託等)
  • 仮想通貨(暗号資産)
  • 自動車
  • 美術品、貴金属、骨董品
  • 他人への貸付金、売掛金、損害賠償請求権
  • 著作権、特許権
  • ゴルフ会員権 など

 

マイナスの財産

マイナスの財産には次のようなものがあります。

  • 銀行ローン・住宅ローン
  • 消費者金融の借金・ローン
  • クレジットカード債務
  • 個人からの借金
  • 連帯保証債務
  • 未払いの税金
  • 未払いの賃料
  • 未払いの水道光熱費 など

 
 

相続財産の調査が問題となる典型的な場面

相続財産の調査が問題となる典型的な場面として、次のような場面があげられます。

 

借金がどれだけあるかわからないケース

借金のようなマイナスの財産も相続財産に含まれ、相続人に引き継がれます。

借金がどれだけあるのかわからないケースでは、相続放棄や限定承認(※)の判断を適切に行うために、相続財産の調査によって借金の総額を把握する必要があります。

※ 相続放棄:一切の遺産(プラスの財産・マイナスの財産のどちらも)の相続を辞退するための手続きのことです。

限定承認:プラスの財産がマイナスの財産を上回る限度で遺産を相続するための手続きのことです。

 

遺産分割協議を行うケース

遺産分割協議(相続人全員で、誰がどの遺産を取得するかを話し合って決める手続きのことです。)を行うケースでは、相続財産を漏れなく洗い出すことができているか、相続財産が適正に評価されているか、が問題となります。

相続財産の把握漏れがある場合には遺産分割協議のやり直しが必要になる可能性があります。

また、相続財産の評価の適切性・妥当性をめぐって相続人同士でトラブルになるケースもあります。

 

相続人同士の仲がよくないケース

相続人同士の仲が良くないケースでは、「一部の相続人が遺産を隠しているのではないか」「遺産を使い込んでいるのではないか」「相続財産の調査が正しく行われていないのではないか」といった疑心暗鬼を招き、相続財産の調査をめぐってトラブルが発生する可能性があります。

 

相続税の申告が必要なケース

相続税の申告が必要なケースでは、前提として相続財産の調査・評価が正確に行われる必要があります。

また、相続税の申告は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。

財産の把握漏れや評価ミスがあった場合、期限内に申告が行われなかった場合には追徴課税等のペナルティを受けるリスクがあります。

 

 

財産調査が必要な3つの理由

相続財産の調査が必要な理由は、大きく次の3つです。

  1. ① 遺産分割協議を適正に行うため
  2. ② 相続放棄の判断を適切に行うため
  3. ③ 相続税の申告手続きに必要なため

 

①遺産分割を適正に行うため

公平・適正な遺産分割(どの相続人がどの遺産を取得するのかを決める手続きをいいます。)を行うためには、相続財産の内容が確定している必要があります。

どのような相続財産がどれだけあるのかがわからない状態では、どの財産をどの相続人に取得させるのがよいかを決めることができません。

 

②相続放棄や限定承認の判断を適切に行うため

相続放棄や限定承認をすべきかどうかを適切に判断するためには、被相続人のプラスの財産とマイナスの財産がどれだけあるかを正確に把握しておくことが重要です。

相続放棄・限定承認をするためには、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に裁判所で手続きをする必要があります。

この期限を過ぎると借金を含めてすべての財産を相続することになります(単純承認)。

相続放棄をすべきかの判断を誤ると、例えば次のような不利益を受ける可能性があります。

  • 被相続人には多額の借金があると思って相続放棄をしたら、実は借金の額はそれほどではなく、むしろ価値のある不動産を所有していた
  • 被相続人に多額の借金があることを知らずに遺産を相続したら、被相続人には見るべき財産がなく多額の借金があった(相続人自身の財産で借金を返済しなければならなくなった)

このような事態を避けるためには、事前にしっかりと財産調査を行う必要があります。

 

③相続税の申告手続きに必要なため

相続税の申告を適正に行うためには、その前提として相続財産の調査が正確に行われていることが必要です。

財産の把握漏れがあると相続税の申告漏れにつながり、追徴課税等のペナルティを受けるリスクがあります。

 

 

財産調査をしない場合のデメリットとは?

財産調査をしない場合には、次のようなデメリットがあります。

 

想定外の借金を背負うリスクがある

財産調査をしない場合には、被相続人の多額の借金や保証債務等が後から判明し、相続放棄の機会を逃す可能性があります。

その結果、想定外の借金を背負うこととなるリスクがあります。

 

遺産分割協議がまとまらない

財産調査をしない場合には遺産の総量がわからず、どの相続人がどの遺産を取得するのが良いかを適正・公平に判断することができません。

そのため、遺産分割協議がまとまらない(長期化する)おそれがあります。

 

再度の遺産分割協議が必要となる可能性がある

遺産分割協議の成立後に新たな遺産の存在が判明すると、その遺産について再度の遺産分割協議が必要となる可能性があります。

 

税務上のペナルティを受ける可能性がある

財産調査を行わなかったことによって財産の把握漏れが発生すると、相続税の申告漏れにつながり、追徴課税等のペナルティを受ける可能性があります。

 

財産が放置される可能性がある

財産調査をしない場合には、相続財産の存在が誰にも知られないまま放置され、状況によっては価値が低下するなどのリスクがあります。

 

 

亡くなった人の財産(遺産)の調べ方とは?

以下では、一般的に相続財産(遺産)に含まれることが多い財産について、その種類ごとに調べ方を解説します。

 

預貯金の調べ方

ほとんどの方は、複数の銀行・支店に口座を開設しているのが通常です。

被相続人の持っているすべての口座を特定し、預貯金残高を確認する必要があります。

預貯金の調査は以下の手順で行います。

  1. ① 遺品等を手がかりに口座のある銀行の目星をつける
  2. ② 全店調査を依頼する
  3. ③ 残高証明書・取引履歴を取得する

 

①遺品等を手がかりに口座のある銀行の目星をつける

まずは、被相続人の自宅に保管されている通帳・キャッシュカード・郵便物などを手がかりに、口座を開設している可能性がある銀行の目星をつけます。

近年は通帳を発行しないネット銀行も増えています。

そのため、可能であれば被相続人のパソコンやスマートフォンにログインし、銀行アプリ・メール履歴・Web履歴(お気に入り登録)等を確認することが望ましいです。

通帳等の手がかりがなく目星がつかない場合には、被相続人の自宅や職場の近隣の銀行に問い合わせをするなどして地道に調査するほかありません。

 

②全店調査を依頼する

取引のありそうな銀行の目星がついたら、その銀行に全店調査を依頼することをおすすめします。

全店調査とは、特定の銀行に保有している全支店の口座(普通預金・定期預金など)をまとめて調査する手続きのことで、「全店照会」あるいは「名寄せ」と呼ばれることもあります。

例えばA銀行のX支店の口座があることがわかった場合に、A銀行に対して、X支店以外の支店の口座があるかどうかを調べてもらうことができます。

ただし、全店調査の依頼は各銀行ごとに行う必要があり、一度の手続きでまとめて全銀行の全口座の調査依頼を行うことはできません。

例えば、被相続人がA銀行、B銀行、C銀行にそれぞれ口座を持っている可能性がある場合、それぞれの銀行に依頼を行う必要があります(3回の手続きが必要です)。

また、一部全店調査に対応していない金融機関もあるため、事前に確認することをおすすめします。

 

マイナンバーによる一括照会(相続時預貯金口座照会)

2024年4月に、マイナンバーと預貯金口座を結びつける口座管理法(正式名称「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」)が施行されました。

これによって、預金者は自分の預金口座をマイナンバーに紐づけて管理すること(預金口座への付番)を金融機関に申請できるようになりました。

預金者(被相続人)がすべての金融機関の口座をマイナンバーと紐づけて管理していた場合、相続人は1つの金融機関の窓口で、マイナンバーと紐づけられているすべての金融機関・支店の口座を確認することができます(相続時預貯金口座照会)。

なお、預金者がマイナンバーとの紐づけを行っていない口座については情報を取得することができません。

 

③残高証明書・取引履歴を取得する

上記①、②の手続きによって口座のありかが判明したら、それぞれの口座について、被相続人の死亡日時点での残高証明書の発行を請求します。

残高証明書とは、特定の時点における預金口座の残高を証明するものです。

相続税の申告等においては、相続開始日(被相続人の死亡日)時点での預金残高をもとに評価額が決定されるため、同日時点の残高証明書を請求することが大切です。

また、一部の相続人等による口座の不正な使い込みなどがないかどうかを確認するため、相続開始前の数年分の取引履歴をあわせて取得することをおすすめします。

相続開始の直前に多額の預金が引き出されている場合もあり、残高証明書ではそのようなケースを把握することができないためです。

通帳がある場合は記帳によって確認することもできますが、口座が凍結されている場合には記帳できないケースもあります。

 

負債等(借金・ローン等)の調べ方

相続の対象となる負債等(マイナスの財産)には、被相続人の借金・ローンのほか、連帯保証人になっている場合の連帯保証債務、未払いの税金、滞納している家賃・水道光熱費等が含まれます。

これらの負債等をすべて特定して、負債の総額を確認する必要があります。

負債等の調査は以下の手順で行います。

  1. ① 遺品等を手がかりに負債等の目星をつけ、負債の有無と金額を確認する
  2. ② 信用情報機関に開示請求する

 

①遺品等を手がかりに負債等の目星をつけ、負債の有無と金額を確認する

被相続人の自宅に保管されている金融機関等からの郵便物(督促状、滞納通知、利用明細書等)、契約書類(消費貸借契約書、借用書、クレジットカードの利用約款等)を確認し、これらを手がかりに負債等や借入先等の目星をつけます。

通帳の取引履歴に定期的に「借入」や「保証料」等の文字が印字されている場合にも、負債を特定する手がかりとなります。

また、被相続人が不動産を所有している場合、登記事項証明書(登記簿謄本)の「乙区」に「抵当権」や「根抵当権」の記載がある場合には、銀行等から借入をしている可能性が高いといえます。

さらに、被相続人が会社を経営していた場合には、被相続人個人が会社の借入れ等について連帯保証人になっている(連帯保証債務がある)可能性があります。

このような場合には、会社の契約書等も漏れなくチェックし、被相続人が連帯保証人等になっていないかを確認することが大切です。

借入先等の目星がついたら、それぞれに問い合わせて金額を確認します。

金融機関からの借金・ローン等については、次の項目で解説する信用情報機関への開示請求によって確認することができます。

個人からの借金や未払いの税金、滞納家賃・水道光熱費等の、金融機関以外に対する負債については、金銭の貸主や賃貸人、電力会社、水道会社、税務署等に直接問い合わせをして個別に負債の残額を確認する必要があります。

 

②信用情報機関に開示請求する

金融機関(銀行・クレジット会社・消費者金融等)からの借金・ローン等については、信用情報機関への開示請求によって、契約先会社名(借入先)や契約年月日、借入等の残高、返済状況(延滞の有無等)を確認することができます。

「信用情報機関」とは、消費者個人のクレジットカードやローン等の契約内容、利用・返済状況など、個人の経済的信用に関する情報(個人信用情報)の収集・管理・提供を行う機関です。

代表的な信用情報機関は次の3つで、それぞれに収集できる情報が異なるため、すべてに問い合わせをするのが確実です。

信用情報機関 収集できる情報
CIC(株式会社シー・アイ・シー) クレジットカード・信販会社、携帯割賦、自動車ローン等の情報
JICC(株式会社日本信用情報機構) 貸金業者(消費者金融等)・クレジット会社、銀行系カードローン、
KSC(全国銀行個人信用情報センター) 銀行ローン、住宅ローン、奨学金等

請求方法は各信用機関によって異なるため、それぞれのホームページ等でご確認ください。

 

有価証券(株式、社債、国債、投資信託等)の調べ方

被相続人の持っているすべての有価証券を特定し、その金額を確認する必要があります。

有価証券の調査は以下の手順で行います。

  1. ① 遺品等を手がかりに証券会社等の目星をつける
  2. ② 証券保管振替機構(ほふり)に開示請求する
  3. ③ 残高証明書を取得し、評価する

 

①遺品等を手がかりに証券会社等の目星をつける

株式や社債、国債、投資信託については、被相続人の自宅に証券会社や信託銀行等の金融機関からの郵便物(取引残高報告書、配当金計算書、年間取引報告書、株主総会招集通知等)がないか確認してみましょう。

非上場株式については金融機関が管理していないため、株式会社からの上記のような郵便物がないかを確認します。

証券会社の口座開設に関する書類(申込書控等)、株券、預貯金の引落し履歴、メモなども手がかりになります。

また、スマートフォンの証券アプリやパソコンで取引している場合もあるため、可能であれば被相続人のスマートフォンやパソコンにログインして確認します。

これらの手がかりをもとに、取引のある証券会社等の目星をつけます。

 

②証券保管振替機構(ほふり)に開示請求する

手がかりが見つからず、証券会社等の目星がつかない場合には、証券保管振替機構(通称「ほふり」)への開示請求をします。

非上場株式であっても証券会社を通じてほふりに預けられている場合には開示請求の対象となりますが、預けられていない場合には対象外です(ほふりは所在を把握していません)。

 

③残高証明書を取得し、評価する

上記①、②の手続きで取引のある証券会社等が判明したら、それぞれの証券会社等に対して被相続人の死亡日時点での残高証明書の発行を請求します(有価証券は原則として被相続人の死亡日時点の時価で評価されるため)。

非上場株式については直接会社に残高証明書の発行を請求します。

有価証券の金銭的な評価は複雑で、特に非上場株式については一般の方が自力で評価をするのはかなりハードルが高いです。

有価証券の評価については、相続に強い弁護士・税理士などの専門家に依頼するのがおすすめです。

 

不動産の調べ方

被相続人の持っているすべての不動産を特定し、金銭的に評価する必要があります。

不動産の調査は以下の手順で行います。

  1. ① 所有不動産記録証明制度を利用して不動産を特定する
  2. ② 名寄帳を取得して不動産を特定する
  3. ③ 遺品等を手がかりに不動産を特定する
  4. ④ 登記事項証明書(不動産登記簿謄本)を取得する
  5. ⑤ 不動産の価値を評価する

 

①所有不動産記録証明制度を利用して不動産を特定する

2026年2月から開始された所有不動産記録証明制度を利用することで、被相続人が所有者として登記されている全国の不動産を特定することができます。

所有不動産記録証明制度とは、特定の人が所有する全国の不動産の情報を一覧的にリスト化して、証明書として交付する制度です。

この制度が作られるまでは、各市区町村に対して、その市区町村が管理している「名寄帳」を請求する必要がありました。

また、固定資産税の対象とならない不動産(例えば、自宅前の私道や価値の低い山林など)は名寄帳の管理対象外であったため、しばしば把握漏れが発生していました。

所有不動産記録証明制度では、固定資産税の対象となるかどうかを問わず、全国の不動産の情報を最寄りの法務局で一括して請求することができます。

窓口での申請のほか、郵送・オンラインでの請求申請が可能です。

参考:所有不動産記録証明制度について|法務省

 

②名寄帳を取得する

概ね被相続人の所有している不動産の目星がついており、所有不動産記録証明制度を利用する必要性が薄い場合には、各市区町村に請求して名寄帳(なよせちょう)を取得する方法(従来どおりの方法)によることもできます。

「名寄帳」とは、特定の人が各市区町村内に所有している固定資産税の対象となる不動産を、所有者ごとに一覧表にまとめた書類のことです。

名寄帳の取得による場合には、所有不動産記録証明制度を利用する場合よりも費用を安く抑えられる、固定資産評価額が記載されるため相続税や贈与税の申告に利用できる場合がある、等のメリットがあります。

デメリットとしては、各市区町村ごとに請求しなければならない、固定資産税の対象とならない不動産の把握が漏れるリスクがある、などがあげられます。

なお、不動産の目星をつけて名寄帳を取得するためには、被相続人の自宅に保管されている固定資産税の納税通知書(固定資産税の対象となる不動産の所有者に対して各市区町村が送付する書類です。)・権利証(登記済証)・登記識別情報通知書、不動産の売買契約書等が重要な手がかりとなります。

 

③遺品等を手がかりに不動産を特定する

被相続人が先代から相続した相続登記未了の不動産、未登記の建物などは、所有不動産記録証明書や名寄帳によっても把握することができません。

このような不動産については、被相続人の自宅に保管されている以下のような書類から確認できる可能性があります。

  • 権利証(登記済証)・登記識別情報通知書
  • 売買契約書
  • 過去の相続税申告書類
  • 過去の遺産分割協議書 等

 

 

④登記事項証明書(不動産登記簿謄本)を取得する

①〜③のプロセスによって不動産を特定したら、その不動産の登記事項証明書(不動産登記簿謄本)を取得します。

相続税の計算や相続した不動産の名義変更(相続登記)を行うためには、登記事項証明書が必要となります。

また、登記事項証明書の記載(特に「乙区」の記載)は、銀行等からの借入れ(借金)の存在を把握する手がかりになります。

 

⑤不動産の価値を評価する

最後に不動産の価値を評価します。

不動産の評価方法は建物の場合と土地の場合とで異なり、また、目的に応じていくつかの評価方法があります。

目的 評価方法
建物 土地
遺産分割の話し合い 相続人同士の話し合いで自由に決めることができる

  • 現在の時価(最も多く選択される)

以下によるケースも

  • 固定資産評価額
  • その他の評価額
相続人同士の話し合いで自由に決めることができる

  • 現在の時価(最も多く選択される)

以下によるケースも

  • 公示価格
  • 路線価を元にした評価額
  • 固定資産評価額を元にした評価額
  • その他の評価額
相続税の計算
  • 固定資産評価額
  • 路線価を元にした評価額
  • 固定資産評価額を元にした評価額

どの評価方法によるかによって評価額が変わるため、評価方法をめぐって相続人同士の争いになることもあります。

不動産の価値を正確に評価するためには専門的な知識が必要となるため、専門家に依頼するのがおすすめです。

 

 

相続財産の調査はいつまでにすべき?

「相続財産の調査をいつまでにすべき」という期限は定められていません。

しかし、相続が開始したらすみやかに(相続開始から1〜2ヶ月以内が目安)相続財産の調査を行うことを強くおすすめします。

特に、相続放棄・限定承認は自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に裁判所で手続きをする必要があることから、その前に相続財産の調査を完了させておく必要があります。

相続調査の一環として金融機関や役所で手続きを行う場合には、結果が届くまでに数週間〜1ヶ月程度かかる場合があります。

また、申請を行うための必要書類の手配にも時間がかかります。

そのため、相続が開始したらできるだけ早く相続調査を開始することが大切です。

 

 

相続財産の調査は自分でできる?

相続財産の調査は自分で行うことができます。

ただし、調査漏れのリスクがあるケース、相続財産の評価が難しいケース、相続トラブルのリスクがあるケースなどでは、専門家に依頼するのがおすすめです。

以下では、相続財産の調査を自分で行いやすいケース、専門家への依頼をおすすめするケースについて解説します。

 

自分でできそうなケース

自分自身での調査を比較的行いやすいケースは、次の3条件をすべて満たすケースです。

 

①相続財産の内容がシンプル

相続財産が数口座の預貯金(利用している金融機関も明らか)のみの場合、市場価格のわかりやすい自動車や時計などが数個のみの場合など、相続財産の内容がシンプルなケースでは、相続財産の調査(把握)・評価が比較的容易なため、自分で行いやすいです。

ただし、相続財産に不動産や有価証券が含まれるケースでは財産の評価が難しいため、数が少なくても専門家への依頼をおすすめします。

 

②負債(借金等)がないことが明らか

被相続人と同居していたなど被相続人の生活状況を十分にしている場合で、被相続人に負債(借金等)がないことが明らかなケースでは、負債の調査を行う必要がなく、相続放棄の要否も判断しやすいことから、相続調査を自分で行いやすいです。

 

③相続人間でトラブルになるおそれがない

他に相続人がおらず1人ですべての遺産を相続するケースや相続人同士の関係が良好でトラブルになるおそれがないケースです。

これらの条件を1つでも欠く場合は専門家への依頼をおすすめします。

 

専門家への依頼をお勧めするケース

次のようなケースでは、専門家への依頼をおすすめします。

 

相続財産が多岐にわたる/権利関係が複雑なケース

相続財産の数や種類が多いケースや権利関係が複雑なケース(共有状態の財産が含まれる、財産が海外にある等)では、正確に相続財産の調査を行うためには膨大な時間と労力がかかります。

 

相続財産に不動産や有価証券が含まれるケース

相続財産に不動産や有価証券が含まれるケースでは財産の金銭的評価が難しいため、相続人同士のトラブルにつながる可能性があります。

これらの財産が含まれるケースでは、相続に強い弁護士等の専門家に依頼するのがおすすめです。

 

借金等がある可能性があるケース

被相続人に借金がある可能性がある場合、相続放棄や限定承認を行うべきかを適切に判断するために、借金等の有無と金額を正確に把握する必要があります。

そのため、このようなケースでは専門家に調査を依頼し、相続放棄や限定承認をすべきかどうかについて相談されることを強くおすすめします。

 

相続トラブルが発生しやすいケース

相続人同士の仲が悪いケース、一部の相続人による遺産隠し・使い込みの疑いがあるケース、連絡のつかない相続人がいるケースなど、相続トラブルが発生しやすいケースでは、相続財産調査の段階から専門家に依頼することをおすすめします。

このようなケースでは、非協力的な相続人が現れて調査が難航したり、他の相続人から調査に難癖をつけられてトラブルになったりするリスクがあるためです。

 

相続財産調査をする時間がないケース

相続手続きの中には相続放棄・限定承認や相続税の申告のように期限が定められている手続きがあり、期限を過ぎると不利益を受ける可能性があります。

期限内に適切な形で手続きを完了させるためには、その前提として相続財産調査が完了している必要があります。

そのため、仕事が忙しいなどの理由で相続財産調査のための時間を捻出することが難しいケースでは、専門家に依頼することをおすすめします。

 

 

相続財産の調査のポイントとは?【自分で行う場合】

相続財産の調査は順番を工夫して効率的に

財産調査は、以下の順で行うことで、効率的に進めることができます。

財産調査の順番

まず、預貯金の送金・口座引き落としなどの取引履歴を把握することで、他の財産を把握する手がかりを見つけることができます。

次に、負債(特に借金)の調査を行います。

相続放棄・限定承認には3ヶ月の期限がありますが、早めに負債の金額を把握することで判断がしやすくなります。

その他の財産については、調査・評価に時間のかかりそうなもの(不動産・株式)などを優先して着手するのがポイントです。

 

口座の凍結に注意

預貯金の調査を行う際には、銀行への問い合わせによって口座が凍結される可能性があることに注意する必要があります。

銀行は、相続が発生したこと(被相続人が亡くなったこと)を把握した場合、一部の相続人による預貯金の使い込み等の不正使用を防止するために口座を凍結します。

被相続人の口座が水道光熱費や家賃の自動引き落としに利用されていた場合には、これらがすべてストップしてしまいます。

預貯金の調査を行う場合には、事前に口座変更等の手続きを行うなどの対策をしておくことが大切です。

 

財産目録を作成する

相続財産調査を完了した場合には、財産目録を作成することを強くおすすめします。

これによって遺産の全体像を把握することができるため、その後の相続手続きを円滑に進めることができます。

 

 

相続財産の調査は誰に頼む?相談窓口と費用

財産調査は相続に強い弁護士がおすすめ

財産調査は相続に強い弁護士に依頼するのがおすすめです。

 

財産調査を弁護士に依頼するメリット

財産調査を弁護士に依頼するメリットとして、以下をあげることができます。

スムーズかつ正確な財産調査が可能

弁護士は、弁護士会照会等の強力な調査権限により、スムーズかつ正確な財産調査を行うことができます。

弁護士会照会とは、弁護士が受任した案件の調査のために、所属する弁護士会を通じて官公庁や銀行、保険会社その他の企業に情報開示を求めることができる法律上の制度です(弁護士法第23条の2)。

 

相続放棄・限定承認の判断についてアドバイスをもらえる

相続財産調査の結果を受けて、専門的な見地から相続放棄・限定承認をすべきかどうかについての適切なアドバイスをもらうことができます。

 

相続トラブルの予防・解決について相談できる

相続財産調査をきっかけに相続トラブルが発生するケースは少なくありません。
相続に強い弁護士に相談することで、こうした相続トラブルの予防や解決について適切なアドバイスをもらうことができます。

相続トラブルの相談を受けることができるのは基本的に弁護士だけで、それ以外の士業は相談を受けることができません(違法です)。

 

財産調査の弁護士費用

財産調査を弁護士に依頼する場合の費用相場は、財産目録の作成を含めて10万円〜30万円程度です。

ただし、相続財産の数や複雑さによって価格は変動し、また各事務所によっても価格設定は異なります。

必ず事前に費用の見積もりをもらって確認することが大切です。

 

司法書士のデメリット

司法書士は登記の専門家であり、相続の場面では相続登記に関する業務を中心に行います。

他の相続人との交渉の代理、相続トラブルへの対応、相続放棄・限定承認に関するアドバイス等は基本的に業務の範囲外です。

これらについて相談する必要が出てきた場合には、最終的に弁護士への相談に切り替える必要があります。

 

税理士のデメリット

税理士は税務の専門家であり、相続の場面では相続税の申告に関する業務を中心に行います。

相続税の申告に関連しない問題については、他の士業への相談に切り替える必要があります。

 

 

相続財産の調査についてのQ&A

遺産を隠されたらどうすればいい?


遺産を管理している一部の相続人が遺産を隠していることが疑われる場合、まずはその相続人に「ほかに遺産があるのではないか」と確認し、遺産の開示を求めることが考えられます。

当事者同士のやり取りでは応じてもらえない可能性が高い場合には、弁護士を通じた交渉も検討してみましょう。

開示に応じてくれない場合には、この記事で解説した方法で相続財産の調査を行い、独自に遺産(相続財産)の有無や価値を確認します。

遺産分割協議の成立後に遺産隠しが発覚した場合には、相続人全員の合意を得て遺産分割協議のやり直しを行うことになります。

相続人間でやり直しの合意が取れない場合には、裁判所での調停・訴訟等によって解決する必要があります。

遺産隠しが疑われるケースでは相続トラブルに発展する可能性が高いことや、一般の方がご自身で相続財産の調査を行うのはハードルが高いことから、相続に強い弁護士に相談することを強くおすすめします。

 

故人の借金を調べる方法はありますか?


この記事の「亡くなった人の財産(遺産)の調べ方とは?」の「負債等(借金・ローン等)の調べ方」の項目で解説したとおり、大きく以下の2つの方法があります。

1つ目は、郵便物(督促状、滞納通知、利用明細書等)、契約書類(消費貸借契約書、借用書、クレジットカードの利用約款等)、不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)の「乙区」の記載等から貸主の目星をつけ、貸主に対して借金の有無を確認する方法です。

2つ目は、信用情報機関(CIC、JICC、KYC)に開示請求を行い、借金のある金融機関とその残高を確認する方法です。

このほか、故人が事業を行っており顧問税理士を雇っていた場合には、顧問税理士に確認する方法もあります。

借金の調査について少しでもわからないことや不安がある場合には、相続に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

まとめ

  • 相続財産の調査とは、被相続人(亡くなった方)のプラスの財産、マイナスの財産(借金・ローン等)を漏れなく洗い出し、金銭的に評価する手続きをいいます。
  • 相続財産調査の目的は、主に①遺産分割協議を適正に行うため、②相続放棄の判断を適切に行うため、③相続税の申告手続きに必要なため、の3つです。
  • 相続財産の調査は、それぞれの財産ごとに行います。

①預貯金→②負債、③それ以外の財産(不動産、有価証券等)の順で行うのが効率的です。

  • 相続財産の調査は相続手続きの起点となる重要な手続きであり、相続トラブルの原因にもなることから、相続に強い弁護士に依頼するのがおすすめです。
  • 当事務所では、相続に強い弁護士で構成する相続対策専門チームを設置しており、相続財産の調査をはじめ、遺言書の作成、遺産分割協議、相続登記、相続税の申告・節税対策など、相続全般に関する幅広いご相談をうけたまわっています。

遠方の方についてはオンラインでのご相談にも対応していますので、ぜひお気軽にご相談ください。

 

 

なぜ遺産相続のトラブルは弁護士に依頼すべき?

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