債務超過とは?意味・原因や対処法をわかりやすく図解

債務超過とは
債務超過とは、企業や個人の持つ資産の総額よりも負債の総額の方が大きい状態を指します。

つまり、企業や個人が抱えている借金や買掛金などの支払義務(負債)が、現金や預金、不動産、売掛金などの資産の合計額を上回っていると、債務超過の状態といえます。

それでは、債務超過と赤字、資金ショートとの違いはどこにあり、債務超過の原因や、その対処法にはどのようなものがあるのでしょうか。

この記事では、債務超過に関する疑問点について、弁護士がわかりやすく解説していきます。

債務超過とは?

債務超過とは

 

債務超過の意味

債務超過とは、企業や個人の持つ資産の総額よりも負債の総額の方が大きい状態を指します。

つまり、企業や個人が抱えている借金や買掛金などの支払義務(負債)が、現金や預金、不動産、売掛金などの資産の合計額を上回っていると、債務超過の状態といえます。

事業者は、事業を運営するために様々な資金調達を行う必要があります。

事業者の資金には、自己資金だけでなく、金融機関からの借入や社債の発行など、外部からの出資も重要な資金調達の手段です。

これらの外部からの資金調達は、企業の負債として貸借対照表に計上されます。

一方で、企業は事業活動を通じて利益を上げ、その利益を内部に留保したり、新たな資産を取得したりします。

これらの資産と負債のバランスが、企業の財務状況を示す重要な指標となります。

そして、債務超過は、企業や個人の財政の健全性が著しく損なわれた状態であるといえます。

なぜなら、もし企業が清算された場合、資産をすべて売却しても負債を完済することができない状態だからです。

そのため、債務超過に陥ると、金融機関からの新たな融資が難しくなったり、取引先からの信用を失ったりする可能性が高まります。

また、株主からの追加出資も期待しにくくなるため、事業の継続自体が危ぶまれる状況に陥りかねません。

債務超過は、一時的な業績悪化によって発生する場合もありますが、その状態が長期間にわたると、企業の存続に関わる深刻な問題となります。

そのため、企業は常に自身の財務状況を把握し、債務超過に陥らないように経営努力を行う必要があります。

もし債務超過に陥ってしまった場合には、早急にその原因を分析し、適切な対処法を講じることが求められます。

必要に応じて、専門家である弁護士や会計士などに相談することも重要となります。

債務超過は、企業にとって非常に厳しい状況であることを理解し、早期の対応を心がけることが大切です。

 

債務超過を図解

債務超過の状態を視覚的に理解するために、貸借対照表(バランスシート)を簡略化した図を用いて解説します。

貸借対照表は、企業の一定時点における資産、負債、純資産(自己資本)の状態を示す財務諸表です。

企業の財務状況が正常な場合、貸借対照表は次のようになります。

 

通常の健全な財務状況

貸借対照表

資産:100万円 負債:80万円
流動資産(現金、預金、売掛金など)
固定資産(建物、機械、土地など)
流動負債(買掛金、短期借入金など)
固定負債(長期借入金、社債など)
純資産(自己資本):20万円
資本金
資本剰余金
利益剰余金
資産合計:100万円 負債・純資産合計:100万円

通常の健全な財務状態では、上記の図のように、資産の合計額が負債の合計額と純資産の合計額を合わせたものと等しくなります。

この場合、企業は100万円の資産を持っており、そのうち80万円が他人からの借金などの負債、残りの20万円が自己資本です。

もし企業が清算されたとしても、資産をすべて売却すれば負債を完済し、さらに20万円が株主に残ることになります。

そして、純資産がプラスの金額で存在していることが一般的です。

これは、企業がこれまでの事業活動で得た利益や株主からの出資によって、負債を上回る自己資本を保有している状態を示しています。

しかし、上記に対して、債務超過に陥っている企業の貸借対照表は次のようになります。

 

債務超過に陥っている財務状況

貸借対照表

資産:500万円 負債:800万円
流動資産(現金、預金、売掛金など)
固定資産(建物、機械、土地など)
流動負債(買掛金、短期借入金など)
固定負債(長期借入金、社債など)
純資産(自己資本):-300万円
資本金
資本剰余金
利益剰余金
資産合計:500万円 負債・純資産合計:500万円

この場合、企業が持つ資産は500万円であるのに対し、返済しなければならない負債は800万円です。

もし企業が清算されたとしても、資産をすべて売却しても300万円の負債が残ってしまいます。

これが債務超過の状況を示しています。

このように、貸借対照表をチェックすることで、債務超過とは資産よりも負債が大きい状態であり、純資産がマイナスになっている状態であることが一目で理解できます。

債務超過は、企業の財務的な脆弱性を示す重要な指標であり、経営改善や事業再生の必要性があると考えられます。

 

債務超過と赤字との違い

債務超過と似た概念に赤字という言葉がありますが、債務超過と赤字はどこが違うのでしょうか。

債務超過と赤字は、どちらも企業の財務状況が悪化していることを示す指標ですが、その意味合いと影響は異なります。

赤字(損失)とは、一定期間(通常は1年間)における企業の収益が費用を下回った状態を指します。

具体的には、損益計算書(P/L)において、売上高から売上原価や販売費及び一般管理費などの費用を差し引いた最終的な利益(当期純利益)がマイナスになった状態のことを指します。

したがって、赤字は、その会計期間における企業の経営成績が悪かったことを示しています。

これに対して、債務超過とは、企業の特定の時点における資産の総額が負債の総額を下回っている状態を指します。

資産と負債のバランスを示す貸借対照表(バランスシート)上は、自己資本がマイナスになっている状態を指します。

債務超過は、企業の財政状態が悪化し、返済義務のある負債に対して、保有している資産では賄いきれない状態を示しています。

例えば、一時的に市場環境が悪化したり、先行投資がかさんだりした場合などには、単年度で赤字を計上することがあります。

しかし、この赤字が一時的なものであり、翌期以降に黒字に転換できる見込みがあれば、直ちに債務超過に陥るわけではありません。

企業が保有する過去からの利益の蓄積(利益剰余金)や資本金などの自己資本が、一時的な赤字を吸収できるからです。

しかし、赤字が長期間にわたって継続すると、蓄積された利益剰余金が減少し、最終的には資本金などの自己資本を取り崩すことになります。

その結果、自己資本がマイナスとなり、負債が資産を上回る債務超過の状態に陥る可能性があります。つまり、毎期の赤字の累積が、債務超過を引き起こすことになります。

 

債務超過と資金ショートとの違い

債務超過と似た概念に資金ショートという言葉もあります。

債務超過と資金ショートとの違いは何なのでしょうか。

債務超過と資金ショートは、どちらも企業経営における深刻な問題を示唆しますが、その内容は全く異なります。

資金ショートとは、企業が事業活動に必要な現金を必要な時に確保できなくなる状態を指します。

具体的には、売掛金の回収が遅れたり、在庫が増加したり、予定外の支出が発生したりすることによって、手元の現金や預金が不足し、買掛金の支払いや給与の支払いなどが滞ってしまう状況です。

資金ショートは、企業の短期的な支払い能力の問題であり、「黒字倒産」という言葉があるように、損益計算書上は利益が出ている企業でも、資金繰りが悪化することで倒産してしまう可能性があります。

これに対して、債務超過とは、既に述べたように、企業の資産の総額が負債の総額を下回っている状態を指します。

これは、企業の累積的な経営活動の結果、自己資本がマイナスになっている状態であり、企業が保有する資産をすべて売却しても、負債を完済できない状態を意味します。

したがって、資金ショートは短期的な現金の流れの問題、債務超過は長期的な資産と負債のバランスの問題に注目しています。

資金ショートは、一時的な資金繰りの悪化によって発生することがありますが、適切な資金調達や資産の売却などによって比較的短期的に解消できる可能性があります。

例えば、売掛金の早期回収を交渉したり、短期の融資を受けたり、不要な資産を売却したりするなどの対策が考えられます。

一方、債務超過は、累積的な損失によって自己資本が大きく毀損している状態であるため、解消するには抜本的な対策が必要となる傾向があります。

 

 

債務超過の原因

債務超過の原因

 

慢性的な赤字経営

債務超過の最も一般的な原因の一つとして挙げられるのが、長期間にわたる赤字経営の常態化です。

企業が事業活動を通じて得られる収益が、人件費、原材料費、販売管理費などの費用を継続的に下回る状態が続くと、その損失は累積し、企業の内部留保である利益剰余金を徐々に減少させていきます。

一時的な赤字であれば、過去に蓄積された利益剰余金や、株主からの出資によって構成される自己資本によって吸収できる場合があります。

また、短期的な資金繰りによって事業を継続することも可能です。

しかし、赤字が慢性的に続くと、これらの自己資本は底を尽き、最終的には負債の総額が資産の総額を上回る債務超過の状態に陥ります。

特に、中小企業やスモールビジネスにおいては、少ない資本金で事業を開始するケースも多く見られます。

このような場合、わずかな赤字でも自己資本に対する影響が大きく、早期に債務超過に陥るリスクが高まります。

たとえ一時的な赤字であっても、その後の経営改善が見られない場合、金融機関からはビジネスモデルそのものに問題があると判断される可能性もあります。

 

投資したコストを回収できない

事業拡大や新規事業への参入、設備の増強などを目的として多額の投資を行うことは、企業の成長戦略において重要な要素です。

しかし、これらの投資が計画通りに収益を生み出せず、投資資金を回収できない場合、債務超過を引き起こす大きな要因となります。

特に、投資資金を外部からの借入に大きく依存した場合、そのリスクは増大します。

借入金は、投資の成否に関わらず、原則として返済義務を伴います。

もし投資が失敗に終わり、期待された収益が得られない場合でも、借入金は期限までに返済しなければなりません。

その結果、企業の資金繰りは悪化し、手元の資産が借入金などの負債を下回る債務超過の状態に陥りやすくなります。

 

財務管理が十分にできていない

適切な財務管理を怠ることも、債務超過を引き起こす要因の一つです。

特に、日々の取引や経営活動に伴う財務状況の変化を正確に把握していなければ、債務超過の兆候に気づくのが遅れ、適切な対策を講じることができなくなります。

例えば、売上高の減少、売掛金の回収遅延、在庫の増加、買掛金の支払遅延、借入金の増加など、財務諸表に現れる様々な変化は、企業の財政状態が悪化している可能性を示しています。

これらのサインを早期に把握し、その原因を分析することで、債務超過に至る前に対応策を検討・実行することが可能となります。

しかし、本業に忙殺されるあまり、経理処理が遅れたり、財務諸表を十分に確認しなかったりすると、これらの重要な兆候を見逃してしまう可能性があります。

「まだ何とかなるだろう」といった安易な考えで問題を放置してしまうと、事態は悪化の一途を辿り、気づいたときには既に債務超過に陥っていたというケースも少なくありません。

 

 

債務超過はどこを見る?判断基準とは?

貸借対照表を見る

債務超過の最も明確な判断基準となるのが、貸借対照表(バランスシート)です。

貸借対照表は、企業の一定時点における資産、負債、そして純資産の状態を示しており、このバランスを見ることで、企業が債務超過に陥っているかどうかを直接的に判断することができます。

貸借対照表の左側には、企業が保有する現金預金、売掛金、有形固定資産(建物、機械など)、無形固定資産(特許権、ソフトウェアなど)といった資産の総額が記載されます。

一方、右側には、買掛金、短期借入金、長期借入金、社債などの負債の総額と、株主資本(資本金、資本剰余金、利益剰余金)などの純資産の総額が記載されます。

会計の原則として、「資産の合計」は常に「負債の合計」と「純資産の合計」を足した金額と一致します(資産合計 = 負債合計 + 純資産合計)。

債務超過の状態とは、この貸借対照表において、「負債の合計」が「資産の合計」を上回っている状態を指します。これは、純資産の部がマイナスの金額で表示されることによって示されます。

 

保有している資産価値を適切に評価しておく

債務超過の判断においては、資産の評価にも注意が必要です。

例えば、固定資産の中には、帳簿上の価格と実際の市場価格が大きく乖離しているものも存在します。

債務超過の状況をより正確に把握するためには、必要に応じて資産の再評価を行うことも有効な手段です。

いずれにしても、貸借対照表の純資産の部の金額は、企業が債務超過に陥っているかどうかを判断する上で、最も直接的で分かりやすい指標となります。

定期的に貸借対照表を確認し、純資産の金額の変化をチェックしておくことが重要となります。

 

 

債務超過時に気をつけること

債務超過時に気をつけること

 

銀行からお金を借りにくくなる

債務超過が企業にもたらす深刻な影響の一つとして、金融機関からの新たな資金調達が困難になることが挙げられます。

銀行や信用金庫などの金融機関は、融資の可否を判断する際に、企業の財務状況を厳密に審査します。

貸借対照表において負債が資産を上回る債務超過の状態は、金融機関にとって「自己資本が毀損しており、借入金を返済する能力がないのではないか」と判断される大きな要因となります。

 

取引先からの信用低下と取引条件の悪化

債務超過は、金融機関だけでなく、取引先との関係にも負の影響を及ぼす可能性があります。

特に、新規の取引先との間で取引を開始する際には、相手方企業がリスク管理の一環として、取引先の財務状況を確認することがあります。

この際、債務超過の状態であることが判明した場合、「経営基盤が脆弱であり、将来的に契約を履行できなくなるリスクがある」、あるいは「連鎖倒産のリスクがある」といった懸念を持たれ、取引を見送られる可能性が高まります。

 

事業の継続が困難になる

金融機関からの資金調達の困難性や取引先からの信用低下は、最終的に企業の資金繰りを著しく悪化させ、事業継続そのものを危機に晒す可能性があります。

債務超過の状態では、新たな借入が難しいため、日々の事業活動に必要な資金を確保することが困難になります。

売掛金の回収が遅れたり、予期せぬ支出が発生したりした場合、たちまち資金ショートに陥るリスクが高まります。

資金ショートが発生すると、買掛金の支払いや従業員の給与の支払いなどが滞り、企業の信用はさらに失墜します。

このような状況が続けば、事業活動の縮小を余儀なくされ、事業の継続が困難となり、ひいては倒産という事態を招きかねません。

 

 

債務超過時の対処法

破産や再生を早期に検討する

債務超過の状態が深刻で、自力での立て直しが困難であると判断される場合、破産や民事再生といった法的な手続きを早期に検討することが重要な選択肢となります。

これらの手続きは、企業の現状を整理し、再出発を図るための法的な枠組みを提供するものです。

破産は、企業の資産を全て換価し、債権者に公平に分配する手続きです。

債務超過が著しく、事業の継続が不可能と判断される場合に選択されます。

破産手続きが開始されると、企業の事業活動は原則として停止し、清算へと進みます。

一方、民事再生は、債務超過の状態にある企業が、事業を継続しながら再建を目指すための法的な手続きです。

裁判所の監督のもと、債権者との間で債務の減免や返済方法などを定めた再生計画を策定し、その計画に基づいて事業を再生していきます。

どちらの手続きを選択すべきかは、企業の負債状況、資産状況、事業の将来性、経営者の意向など、様々な要素を総合的に考慮して判断する必要があります。

早期に専門家である弁護士に相談し、現状分析を踏まえた上で、最適な手続きを選択することが、関係者への影響を最小限に抑え、将来に向けた最善の道を選ぶために重要となるでしょう。

 

企業倒産に強い弁護士に相談する

債務超過に陥った場合、早期に法人破産や事業再生に強い弁護士に相談することが、事態を適切に解決するための最も重要なステップとなります。

弁護士は、法律の専門家として、企業の現状を正確に分析し、法的な観点から最適な解決策を提案することができます。

債務超過の状態は、法的な問題と密接に関連しています。

債権者からの取り立て、担保権の実行、訴訟のリスクなど、様々な法的問題が発生する可能性があります。

弁護士に相談することで、これらの法的リスクを適切に評価し、対応策を講じることができ、また、債権者との交渉を代行してもらうことで、精神的な負担を軽減し、より冷静に事態に対処することが可能になります。

 

 

債務超過についてのQ&A

債務超過の企業は銀行から融資を受けられるの?

企業が債務超過に陥っていると、銀行などの金融機関から融資を受けることは困難になります。

ただし、経営改善計画を策定したり、自治体の制度融資を活用したりすることで、経営が改善する見込みがある場合には、融資を受けられる可能性があります。

 

債務超過の企業でも売却は可能なの?

債務超過の会社でも、事業を一部売却したり、M&Aによって会社を売却したりすることは可能です。

ただし、債務超過の状況や債権者との関係などによって、売却が実現できるかどうかは異なります。

 

 

まとめ

債務超過とは、企業や個人の持つ資産の総額よりも負債の総額の方が大きい状態を指します。

つまり、企業や個人が事業活動を行う上で抱えている借金や買掛金などの支払義務(負債)が、現金や預金、不動産、売掛金などの資産の合計額を上回っていると、債務超過の状態といえます。

資産と負債のバランスを示す貸借対照表(バランスシート)上は、自己資本がマイナスになっている状態を指します。

企業が債務超過に陥る場合、以下のような原因が考えられます。

  • 慢性的な赤字経営
  • 投資したコストを回収できない
  • 財務管理が十分にできていない

債務超過の場合には、すぐに弁護士に相談するようにしてください。

弁護士は、法的な手続きだけでなく、私的な整理や事業再生に向けたアドバイスも行うことができます。

企業の財務状況や事業内容を詳細に分析した上で、具体的な改善策や事業再編の提案、金融機関との交渉戦略などを立案し、実行を支援します。

当事務所では、破産再生チームを設けており、企業・個人の倒産問題・債務整理に尽力する弁護士たちが皆様の相談にお応えしています。

企業法務部もあり、倒産に伴う労働問題、税金問題、知的財産の問題、M&Aに関する相談対応、倒産を回避するための経営コンサルティング、資金繰りのサポートなども行っております。

お困りの方は、ぜひ一度当事務所までご相談ください。

あわせて読みたい
ご相談の流れ

 

 


なぜ借金問題は
弁護士に相談すべき?

続きを読む

まずはお気軽にご相談ください
初回相談無料
(対面・オンライン相談の場合)