破産犯罪について

破産手続きとは何か

お金破産手続きは、以下を目的とする手続です。

  1. 破産管財人という公的機関が、破産者の財産を、適正且つ公平に清算することにより、債権者の満足を可能な限り実現すること
  2. 破産者を免責(借金から解放)して、破産者に経済生活再生の機会を与えること

破産手続きを妨害するような行為は、多くの被害者を生み出してしまうことから、処罰規定が設けられています。

 

 

破産犯罪の対象となる者は誰か

破産手続に登場する人それぞれに、破産犯罪の成立可能性があります。

破産者

債権者の財産的損害を防止するため、さらには迅速かつ公正な破産手続を達成するため、破産者本人は当然ながら破産犯罪の対象になります。

破産管財人

不公正な行為や、国民の信頼を裏切る行為を防止するため、破産財産の清算分配を行う破産管財人を対象とした破産犯罪もあります。

債権者

破産者につきまとい、破産者の更正の機会を阻害することを防止するため、債権者を対象とした破産犯罪もあります。

 

 

破産者に対する罪について

詐欺破産罪について

破産者に対する罪として代表的なのが、詐欺破産罪です。破産法第256条1項に以下のように規定しています。

「破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者について破産手続開始の決定が確定したときは、10年以下の懲役若しくは 1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第4号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。

  1. 債務者の財産を隠匿し、又は損壊する行為
  2. 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
  3. 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
  4. 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為」

破産者が財産を隠すと、債権者に分配される額が減り、債権者に財産的損害が生じてしまいますから、財産隠しをさせないよう、罰則規定が設けられています。

お金を隠す男性刑法上の詐欺罪とは異なり、「欺もう行為」(相手方を騙す直接的な言動)は必要とされていません。

犯罪成立要件は、債権者を害する目的、上記1号から4号のいずれかに該当する行為です。

詐欺破産罪は、債務者に協力した者に対しても成立する可能性があります。

「債務者の財産を債権者の不利益に処分し、または債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為」の相手方になった場合や(破産法265条1項)、「破産手続開始の決定がされ、または保全管理命令が発せられたことを認識しながら、債権者を害する目的で、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その債務者の財産を取得し、または第三者に取得させた者」である場合です(破産法265条2項)。

 

その他の罪

  • 説明及び検査の拒絶の罪(破産法268条)
  • 重要財産開示拒絶の罪(破産法269条)
  • 業務や財産状況に関する物件の隠滅等の罪(破産法270条)
  • 審尋における説明拒絶の罪(破産法271条)

これらの破産犯罪については、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はそれらの併科という法定刑が定められています。

破産法第266条に以下の罰則規定があります。

「債務者が、破産手続開始の前後を問わず、特定の債権者に対する債務について、他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって債務者の義務に属せず又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをし、破産手続開始の決定が確定したときは、5年以下の懲役若しくは 500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」

特定の債権者に偏って弁済をする偏頗弁済の中でも悪質性の強いものについては、この罰則規定に従って処罰される可能性があります。

事前に弁護士に相談することをお勧めします。

 

破産犯罪を行なった場合の効果

逮捕上記の破産犯罪を行なった場合、刑事処罰を受けるだけでなく、免責不許可事由に該当する可能性があります(破産法252条1項各号)。

免責不許可事由に該当したとしても、裁判所の裁量で免責許可をすることはできますが(破産法252条2項)、破産犯罪に該当する場合、違法性が特に高い類型と考えられますので、そのような場合に裁判所が免責許可をするとは考えにくいです。

せっかく破産の手続きを行うために費用と時間をかけたにもかかわらず、借金の支払義務は残り続けるということになりかねません。

 

 

債権者に関する罪について

破産法第275条に、破産者等に対する面会強請等の罪があります。

「破産者又はその親族その他の者に破産債権を弁済させ、又は破産債権につき破産者の親族その他の者に保証をさせる目的で、破産者又はその親族その他の者に対し、面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、3年以下の懲役若しくは 300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」

取引先が破産してしまった場合、可能な限りの債権回収をするために状況の確認をしたいと考える経営者は多いでしょう。

しかし、上記条文によって、場合によっては罪に問われてしまうこともあります。

 

 

弁護方針

破産手続開始決定がされるまで、破産目前の債務者は、破産を免れるために、重要財産を売却しながら、再建に取り組むことになります。

そのこと自体は正当な事業活動であり、処罰されるべきことではありません。

しかしながら、売却後に再建できず破産してしまうと、売却時から犯罪の故意があったのではないかと疑われることになります。

このように、「債権者を害する目的」があったのかについて、判断が微妙な事例が多く存在します。

弁護士牟田口裕史破産犯罪の嫌疑をかけられた場合、専門家を交えて入念にリーガルチェックをする必要があります。

破産者の行為が犯罪行為に当たるのか、正しい見通しを立ててこそ、適切な対応を図ることができるのです。

刑事事件に発展してしまった場合、当事務所にご相談いただければ、刑事事件チームと企業法務チームで連携して対応することが可能です。

また、破産目前まで追い込まれたが、何とか破産を免れるために重要財産を売却したいとお考えの経営者の方も、破産犯罪に該当しないか不安な場合は、事前に当事務所にご相談ください。

 

 

専門性の高い分野、まずは弁護士に相談を

破産者、債権者のいずれにとっても、破産手続きが行われている状況で冷静に対処できないことは多いでしょう。

そのような状況下で安易に破産犯罪に該当する行為を行ってしまうと、後になって後悔する可能性があります。

弁護士バッジのイラスト当事務所には破産・再生手続きに特化した弁護士や刑事事件に特化した弁護士が在籍しております。

破産事件でお困りの方は、まずはお気軽に当事務所にご連絡ください。

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