少年事件の流れとは?【刑事弁護士がわかりやすく解説】
目次
少年事件の基本概念
少年事件とは、20歳未満の「少年」が起こした犯罪行為に関する事件のことです。
成人による犯罪と異なり、少年事件では「更生」を重視した特別な手続きが取られます。
少年法という法律に基づいて、少年が健全に成長できるよう様々な配慮がなされています。
少年事件では、少年が行った犯罪行為のことを「非行」と呼び、非行を行った少年は「非行少年」と呼ばれます。
大人が同じ行為をした場合は普通の刑事裁判を受けますが、少年の場合は「少年審判」という特別な手続きを経ることになります。
少年審判は、家庭裁判所で行われる非公開の手続で、少年の更生に重点を置いた審理が行われます。
ただし、特に重大な事件を起こした16歳以上の少年については、家庭裁判所から検察庁に事件が送り返される「逆送」という手続きがとられ、大人と同じように刑事裁判を受けることもあります。
これは、事件の重大性や少年の性格・年齢などを考慮して、保護処分よりも刑事処分がより適切だと判断された場合に行われます。
少年事件の根底には、少年の可塑性(変化する可能性)を信じ、教育的・福祉的アプローチによって更生を促すという理念があります。
これは、単に罰を与えることよりも、少年が社会の中で健全に成長していくための支援を重視する考え方です。
少年事件とは
少年法第2条では、「少年」とは「20歳に満たない者」と定義されています。
2022年4月1日に民法改正により成人年齢が18歳に引き下げられましたが、少年法上の「少年」の定義は変わっていません。
そのため、18歳と19歳の人は民法上は成人ですが、少年法上はまだ「少年」として扱われることになります。
ただし、18歳・19歳の少年については、「特定少年」と呼ばれ、17歳以下の少年とは異なる扱いを受けることになります。
この「ねじれ」が生じた背景には、少年の更生と保護を重視する少年法の理念があります。
18歳・19歳の若者は、民法上は成人として扱われるとはいえ、社会経験や判断力がまだ発達途上にあることは間違いないでしょう。
こうした考えから、18歳・19歳の人々については、少なくとも刑事事件において完全に成人と同様の扱いをするのではなく、引き続き少年法による保護の対象としつつも、一部異なる扱いをするというバランスが取られたのです。
なお、「少年」という言葉が使われていますが、女子の場合でも少年法においては「少年」と呼ばれます。
これは法律用語としての「少年」であり、性別に関わらず20歳未満の者を指す言葉として使用されています。
少年の種類
少年事件において、「少年」は以下の4つに分類されます。
犯罪少年 | 14歳以上20歳未満で犯罪に該当する行為を行った少年 (※このうち、18歳・19歳の犯罪少年は、「特定少年」として扱われる) |
触法少年 | 14歳未満で、犯罪に該当する行為を行った少年 |
虞犯少年 | 18歳未満で、犯罪は行っていないが、その性格や環境に照らして将来的に犯罪に該当する行為をするおそれのある少年 |
特定少年 | 犯罪に該当する行為を行った18歳・19歳の少年 |
①犯罪少年
14歳以上20歳未満で、犯罪に該当する行為(非行)を行った少年のことを指します。
このうち、18歳及び19歳の少年は「特定少年」として、後述する特例の適用を受けます。
犯罪少年の場合、通常の刑事手続きと同様に警察による捜査が行われ、逮捕・勾留されることもあります。
ただし、その後は家庭裁判所に送致され、少年審判の対象となります。
刑事責任年齢は14歳からであるため、14歳以上の少年が犯罪を行った場合に「犯罪少年」に分類されます。
②触法少年
14歳未満で、犯罪に該当する行為を行った少年のことを指します。
触法少年は刑事責任能力がないとされるため、刑事処分の対象にはなりません。
しかし、犯罪に相当する行為を行った場合、児童相談所による指導や、必要に応じて家庭裁判所での少年審判の対象となります。
特に、重大な事件の場合は、児童自立支援施設などへの入所措置がとられることもあります。
③虞犯少年(ぐはんしょうねん)
犯罪は行っていないものの、その性格や環境に照らして将来的に犯罪に該当する行為をするおそれのある少年のことを指します。
「虞犯」という言葉は「グレ始めた」といった意味合いで理解するとわかりやすいでしょう。
まだ犯罪には至っていないものの、将来的に犯罪に走る可能性が高いと判断された少年に対して、予防的な観点から早期介入を行うための枠組みです。
虞犯少年は、具体的には以下のような事由がある少年を指します。
- 保護者の正当な監督に服しない性癖がある
- 正当な理由なく家庭に寄り付かない
- 犯罪性のある人や不道徳な人と交際している、または不健全な場所に出入りしている
- 自己または他人の徳性を害する行為をする性癖がある
なお、18歳及び19歳の特定少年は、既に民法上の成人として扱われることもあり、虞犯少年の対象とはなりません。
④特定少年
さらに、2022年の少年法改正により、18歳・19歳の少年は「特定少年」と呼ばれるようになりました。
特定少年は、民法上は成人ですが、まだ未熟な側面もあり、また若さゆえの更生可能性(「可塑性」(かそせい)といわれることもあります)に期待が持てることから、引き続き少年法の適用を受けます。
(検察官への送致についての特例)
第六十二条 家庭裁判所は、特定少年(十八歳以上の少年をいう。以下同じ。)に係る事件については、第二十条の規定にかかわらず、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
特定少年については、以下のような特別な扱いがなされます。
①原則逆送対象事件の範囲拡大
特定少年が犯した「死刑、無期又は短期1年以上の拘禁刑に当たる罪の事件」は、原則として検察官送致(逆送)の対象となります。
17歳以下の少年の場合、原則逆送対象は「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」に限られており、特定少年は通常の少年(17歳以下)の場合より厳しい扱いを受けることになります。
2 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、特定少年に係る次に掲げる事件については、同項の決定をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。
一 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るもの
二 死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる罪の事件であつて、その罪を犯すとき特定少年に係るもの(前号に該当するものを除く。)
これにより、例えば、現住建造物等放火罪、強制性交等罪、強盗罪などが新たに原則逆送対象事件となりました。
②保護処分の内容の変化
また、特定少年に対する保護処分は、①少年院送致、②2年間の保護観察(遵守事項違反時は少年院収容可)、③6か月の保護観察のいずれかに限定されています。
また、家庭裁判所は、犯した罪の責任を超えない範囲内でこれらの処分を選択します。
少年院送致の場合、収容期間は犯した罪の重さを考慮して3年以下の範囲内で定められます。
③実名報道の解禁
特定少年が犯した罪について逆送され正式起訴された場合(すなわち、略式請求された場合を除きます)、実名報道が解禁されます。
これまで少年事件では、少年のプライバシー保護や更生への配慮から実名報道は控えられてきましたが(少年法61条)、特定少年については一定の条件下で実名報道が認められるようになりました(同法68条)。
第六十一条
家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
第六十八条
第六十一条の規定は、特定少年のとき犯した罪により公訴を提起された場合における同条の記事又は写真については、適用しない。(略)
ただし、実務上は、各報道機関によって自主規制が行われており、対応は分かれています。
④刑事処分における取扱い
逆送され刑事裁判で有罪となった場合、特定少年は原則として20歳以上の者と同様に扱われます。
例えば、17歳以下の少年には、有期の拘禁刑が言い渡される場合に、最長15年以下の範囲で刑の長期と短期を定める不定期刑が言い渡されるのに対し、特定少年には20歳以上と同様に最長30年以下の範囲で定期刑が言い渡されます。
また、少年が17歳以下で罪を犯し、その結果として刑罰を科された場合、少年法第60条に定められた特別な規定の適用対象となることがあります。
この特例措置は、特定の職業についたり、一部の国家資格を取得したりすることを妨げる様々な法律による規定の適用を緩やかにする効果があります。
しかしながら、2022年4月1日の法改正により、特定少年に関しては少年法第60条の規定は適用されず(改正後の少年法第67条第6項)、20歳以上の成人と同様に、資格取得に関する法的な制約を受けることになりました。
(人の資格に関する法令の適用)
第六十条
1 少年のとき犯した罪により刑に処せられてその執行を受け終り、又は執行の免除を受けた者は、人の資格に関する法令の適用については、将来に向つて刑の言渡を受けなかつたものとみなす。
2 少年のとき犯した罪について刑に処せられた者で刑の執行猶予の言渡を受けた者は、その猶予期間中、刑の執行を受け終つたものとみなして、前項の規定を適用する。
3 前項の場合において、刑の執行猶予の言渡を取り消されたときは、人の資格に関する法令の適用については、その取り消されたとき、刑の言渡があつたものとみなす。
第六十七条
1〜5(略)
6 第六十条の規定は、特定少年のとき犯した罪により刑に処せられた者については、適用しない。
⑤虞犯少年としては取り扱われないこと
特定少年については、民法上は成人として扱われることなどを考慮し、将来罪を犯すおそれがあることを理由として行われる虞犯少年としての保護処分は行わないこととされています。
つまり、18歳・19歳の特定少年は、犯罪少年としての手続きのみが処分の対象となります。
少年事件の流れ
逮捕された場合の流れ
少年事件でも、事案によっては大人と同じように逮捕・勾留されることがあります。
逮捕から勾留までの期間は通常48時間 + 24時間(最大72時間)で、その後10日間(最大20日間)の勾留が可能です。
勾留が継続している間は、通常の刑事手続きと同じ扱いを受けますが、その後の流れが異なります。
通常の刑事事件との違い
通常の刑事事件では、検察官が起訴するかどうかを決めますが、少年事件では検察官が少年に対して何らかの処分を行うのが相当だと判断した場合、家庭裁判所に事件を送致します。
この送致は「全件送致主義」と呼ばれ、原則として全ての少年事件が家庭裁判所に送られることになっています。
家庭裁判所での手続き
家庭裁判所はこれを受けて、審判を行うかどうかを決定します。
審判不開始決定(不処分に相当するような軽微な事件の場合)や検察官送致決定(逆送)とならなければ、審判開始決定がなされます。
審判を行うことが決まると、家庭裁判所の調査官が少年本人や家族から事情を聞くなどして、少年の「要保護性」(更生のために保護や指導が必要な程度)について調査します。
調査官は、心理学や教育学、社会福祉学などの専門知識を持ち、少年の生育歴、家庭環境、学校や職場での様子、交友関係、生活態度、非行に至った経緯などを多角的に調査します。
観護措置
この調査には相応の時間がかかるため、必要があれば「観護措置」がとられることがあります。
観護措置とは、少年を少年鑑別所に送致し、一定期間収容しながら必要な調査を進めることです。
観護措置の期間は少年法第17条第3項により原則として2週間とされていますが、「特に継続の必要がある」場合には、家庭裁判所の決定により2週間の延長が可能です。
さらに、死刑、拘禁刑に当たる罪の事件において、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがある場合には、さらに延長が可能で、最大8週間まで収容できます(少年法第17条第4項)。
実務上は、多くの事件で4週間程度の観護措置が行われています。
少年鑑別所では、少年の行動観察、心理検査、面接などを通じて、少年の問題性や改善の可能性などが専門的に診断されます。
また、少年鑑別所での生活自体が、規則正しい集団生活を通じて少年の更生に向けた第一歩となることも期待されています。
少年審判
調査が終わると、観護措置は終了し、少年審判が開かれます。
少年審判は家庭裁判所の裁判官によって行われ、原則として非公開です。
審判では、裁判官、書記官、調査官、少年、付添人(選任されている場合)などが出席します。必要に応じて保護者や証人が呼ばれることもあります。
審判では、まず非行事実の有無が判断され、次に少年の要保護性が検討されます。
その上で、不処分、保護観察、少年院送致などの処分が決定されます。
在宅事件の流れ
身体拘束を伴わない「在宅事件」の場合は、観護措置がとられることは基本的にありません。
家庭裁判所から呼び出しを受け、調査官との面談を何度か行って調査が進められ、その後少年審判に移行します。
在宅事件では、少年が日常生活を送りながら調査や審判に対応することになります。
そのため、少年や家族の協力が特に重要になります。
調査官との面談には必ず出席し、真摯に対応することが求められます。
在宅事件では、逮捕・勾留というような強制的な身体拘束はありませんが、家庭裁判所の呼び出しに応じない場合などには、少年を家庭裁判所に同行することを命じる「同行状」が発せられることもあります。
少年事件の特徴
保護処分と刑罰の違い
少年審判で決定される「少年院送致」や「保護観察」などの処分は、成人事件での刑罰とは性質が全く異なります。
これらは「保護処分」と呼ばれ、少年に罰を与えるのではなく、少年が更生して二度と非行に走らないよう導くことを目的としています。
保護処分の特徴
保護処分には以下のような特徴があります。
①教育的・福祉的性格
保護処分は、少年に適切な教育や支援を提供することで、健全な成長を促すことを目的としています。
②個別処遇の原則
少年ごとにそれぞれの特性や問題に応じて、最も適した処分や処遇が選択されます。
③前科にならない
保護処分を受けても、成人事件のような「前科」は付きません。
捜査の対象になったという「前歴」や保護処分を受けた履歴は記録として残りますが、これが将来の就職等で法律上の資格制限に直結するものではありません(ただし、特定少年が刑事処分を受けた場合など、例外もあります)。
④柔軟な処遇変更
少年の状態に応じて、処分の内容を変更することが可能です。
例えば、少年院送致であっても、少年の改善状況によっては早期の仮退院が認められることがあります。
このような違いは、非行少年に罰を与えるのではなく、更生を助けることを重視する「保護主義」の考え方に基づいています。これは成人事件の「刑罰主義」と対照的です。
「保護主義」は、少年の可塑性を重視し、適切な環境と働きかけによって少年が健全に発達する可能性を信じる理念です。一方、「刑罰主義」は、犯した罪に応じた罰を与えることで、社会正義を実現し、一般予防効果を期待する考え方です。
少年法は、少年の特性を考慮し、罰よりも教育や福祉的支援によって更生を図ることが、長期的には少年本人のためにも社会全体のためにもなるという考えに基づいています。
要保護性
少年審判では、少年がどのような非行を行ったかだけでなく、「要保護性」という観点からも処分が決まります。要保護性とは、以下の3つの要素を指します。
①非行を繰り返す危険性
少年が再び非行に走る可能性がどの程度あるかを評価します。過去の非行歴、非行の態様、非行に対する認識、反省の程度などが考慮されます。
②家庭裁判所が保護処分を選択する相当性
少年の問題に対して、保護処分という司法的介入が適切かどうかを判断します。
例えば、家庭や学校での指導だけで十分改善が見込まれる場合は、保護処分を選択しない判断もあり得ます。
③矯正可能性
少年が保護処分によってどの程度改善する見込みがあるかを評価します。少年の性格、知能、環境適応能力、家庭環境などが考慮されます。
要保護性の評価には、少年の非行歴、家庭環境、学校や職場での状況、交友関係、生活態度、非行に対する認識、反省の程度、更生に向けた意欲など、様々な要素が考慮されます。
要保護性の程度と処分の関係
要保護性が高ければ、少年院送致などの厳しい処分になりやすく、低ければ、保護観察や不処分などの軽い処分になる傾向があります。
例えば要保護性が高い場合少年の問題が深刻で、通常の社会生活の中では改善が難しいと判断されれば、少年院送致などの施設収容処分が選択されます。
要保護性が中程度の場合一定の問題はあるが、社会内での指導によって改善が見込めると判断されれば、保護観察が選択されることが多いです。
要保護性が低い場合非行は認められるものの、すでに反省しており、今後の更生に特別な指導を要しないと判断されれば、審判不開始や不処分となる可能性が高いです。
少年事件の究極の目的は、少年が二度と非行に走ることなく、保護処分を選択しなくても自分の力や周囲の環境の助けを借りながら更生していくことです。
少年事件では、周囲の大人たちが協力して少年の要保護性を解消していくことが重要なのです。
少年事件における弁護士の役割
少年事件で弁護士をつけるメリット
少年審判で少年の援助をする人は「弁護人」ではなく「付添人」と呼ばれます。弁護士が付添人になる場合、主に以下の2つの役割を果たします。
①非行事実に関する少年の言い分を伝える
少年審判では、裁判官が一人で非行事実の存否を判断します。
少年が自分の言い分を適切に主張するのは難しいため、法的知識のある弁護士が付添人として少年の言い分を伝えることが重要です。
例えば、少年が完全に無実である場合や、一部事実と異なる嫌疑をかけられている場合、自分だけでその主張を的確に行うことは難しいでしょう。
弁護士は証拠を検討し、法的な観点から少年の主張を整理して伝えることができます。
また、仮に非行事実があったとしても、その経緯や背景事情、少年の反省の程度など、処分を決める上で考慮すべき事情を適切に主張することができます。
②要保護性の解消を手助けする
弁護士は少年の話をよく聞き、なぜ非行に走ったのかを一緒に考え、少年が自分の問題点を認識し改善策を見つけられるよう支援します。
また、被害者への謝罪や、少年が社会復帰した後の環境調整なども行います。
具体的には、以下のような活動を行います。
- 少年との面談を通じて信頼関係を構築し、非行の背景や原因を探る
- 少年の強みや可能性を見出し、更生に向けた具体的な計画を一緒に考える
- 少年の家族と連携し、家庭環境の改善に向けたアドバイスを行う
- 必要に応じて学校や職場との調整を行い、少年の居場所を確保する
- 被害者への謝罪や被害弁償の手助けをする
- 家庭裁判所の調査官や少年鑑別所の職員との連携を図る
付添人は少年の取り組みを見守りながら、少年と一緒に悩み、考え、少年に寄り添います。
こうした活動は片手間でできるものではなく、少年の心に寄り添い続けるためには、少年事件に注力する弁護士を付添人に選任することが重要です。
弁護士が少年事件の付添人として活動する際の具体的な流れ
①初回面談
少年と面会し、事件の内容や背景、少年の思いなどを丁寧に聞き取ります。
この際、少年を責めるのではなく、少年の話に真摯に耳を傾け、信頼関係の構築に努めます。
②証拠の検討
事件に関する証拠を検討し、非行事実や情状に関する法的評価を行います。
必要に応じて、独自に証拠を収集することもあります。
③家族との面談
少年の家族と面談し、家庭環境や少年の成育歴、家族の受け止め方などを把握します。
また、家族に対して少年審判の流れや家族の役割についても説明します。
④被害者への対応
被害者がいる場合、適切なタイミングで謝罪や被害弁償の申し入れを行います。
この際、形式的な謝罪ではなく、少年の真摯な反省が伝わるよう配慮します。
⑤更生計画の策定
少年と一緒に、今後の更生に向けた具体的な計画を作成します。
学業の継続や就労、生活環境の改善、趣味や特技の発展など、少年の特性に応じた前向きな目標を設定します。
⑥調査官との連携
家庭裁判所の調査官と連携し、少年の状況や更生計画について情報共有を行います。
調査官の見立てや助言を参考にしながら、少年の支援方針を調整することもあります。
⑦審判への準備
少年審判に向けて、意見書の作成や少年の心構えの指導など、必要な準備を行います。
意見書では、少年の反省や更生に向けた取り組み、環境調整の状況などを具体的に記載します。
⑧審判への立会い
少年審判に付添人として出席し、少年の言い分を補足したり、更生計画について説明したりします。
裁判官の質問に対しても、少年をサポートしながら適切な対応を促します。
⑨審判後のフォロー
審判の結果に関わらず、少年の更生を継続的にサポートします。
保護観察となった場合は保護観察所との連携、少年院送致となった場合は少年院との連絡や仮退院に向けた準備などを行います。
少年事件の弁護士費用
少年事件で弁護士に依頼する場合の費用は、一般的に着手金と成功報酬から成ります。
事案の内容や弁護士事務所によって費用体系は異なりますが、着手金として22〜44万円程度、成功報酬として22〜55万円程度が必要になることが多いようです。
弁護士費用の内訳は、以下のような要素で構成されることが一般的です。
着手金
事件の受任時に支払う費用です。
事件の複雑さや重大性によって金額が変わります。
成功報酬
審判結果に応じて支払う費用です。
例えば、不処分や保護観察という軽い処分になった場合に発生します。
実費
交通費、コピー代、郵便代など、事件処理に必要な実費です。
弁護士によって費用体系は異なりますので、依頼前に複数の弁護士に相談し、費用面も含めて比較検討することが望ましいでしょう。
少年事件のポイント
少年事件への熱意がある弁護士に依頼する
少年事件は通常の刑事事件と同様か、場合によってはそれ以上に労力のかかる事件です。
少年の更生を助けるためには、何度も面会を重ね、なぜ事件を起こしたのか、今後同じことを繰り返さないためにはどうすべきか、今後の人生をどう生きていくかを一緒に考える必要があります。
少年との信頼関係構築の重要性
子どもたちは初対面の人に心を開くことが難しく、大人と比べて考える力や経験が不十分なため、弁護士が何度も面会を重ねて信頼関係を築き、寄り添うことが必要不可欠です。
少年は、形式的あるいは威圧的な大人の態度にすぐに気づき、心を閉ざしてしまいます。
真摯に少年と向き合い、その特性や背景を理解しようとする姿勢が、信頼関係構築の鍵となります。
弁護士によっては少年事件に特に力を入れている方もいますので、少年事件の経験が豊富で、少年の心理や発達に関する知識を持ち、何より少年の更生に熱意を持って取り組む弁護士を選ぶことが大切です。
家庭裁判所との連携
さらに、少年事件では裁判所と協力して少年の更生に向けた最善の方法を考えることが目的であり、審判前に裁判官や調査官と面談する機会があります。
この面談で子どもの取り組みや成果を報告し、今後の方向性について議論することで、更生の可能性を高めることができます。
家庭裁判所の調査官は、少年の調査・診断・処遇選択に大きな影響力を持っています。
弁護士は調査官と適切にコミュニケーションを取り、少年の状況や改善点、家族の協力体制などを伝えていくことが重要です。
また、裁判官との面談も重要な機会です。
裁判官に対して、少年の真摯な反省や具体的な更生計画を伝えることで、適切な処分につながる可能性が高まります。
そのため、面談の手間を惜しまず、裁判官や調査官と連携を取り、子どものために心を砕く弁護士に依頼することが重要です。
刑事事件の経験が豊富な弁護士に相談する
少年事件を扱う上では、刑事事件についての豊富な知識と経験を持つ弁護士に相談することも重要です。
基本的な刑事手続きや証拠の見方、取調べへの対応など、刑事事件の知識がベースになって少年事件への適切な対応が可能になります。
刑事事件の知識が必要な理由
少年が逮捕・勾留された場合、捜査段階では基本的に成人と同じ刑事手続きが適用されます。
この段階での適切な対応(取調べへのアドバイス、勾留に対する準抗告など)には、刑事弁護の知識が不可欠です。
非行事実の有無や程度を判断するためには、証拠を適切に評価する能力が必要です。
供述調書の信用性、物証の評価、目撃証言の信頼性など、刑事事件と同様の証拠評価のスキルが求められます。
少年が無実である場合や、嫌疑の一部に争いがある場合には、的確な法的主張を組み立てる必要があります。これには刑法や刑事訴訟法の知識が必要です。
重大事件では、家庭裁判所から検察官へ逆送される可能性があります。
逆送を回避するための主張や、逆送後の刑事裁判への対応には、刑事弁護の経験が重要です。
少年事件は、刑事事件の知識をベースにしながらも、少年の特性や更生に焦点を当てた特別な対応が求められる分野です。
そのため、刑事事件の経験が豊富でありつつ、少年の心理や発達に関する理解も深い弁護士が理想的と言えるでしょう。
少年事件の処分内容
少年審判では、非行事実が認められた場合、少年の要保護性に応じて様々な処分が決定されます。
主な処分には以下のようなものがあります。
審判不開始
家庭裁判所における調査の結果、審判に付することができない場合、もしくは審判に付するのが相当ではない場合に、審判自体を開始しない旨の決定です(少年法第19条第1項)。
審判に付することができない場合とは、非行事実の存在の蓋然性がない場合や少年の所在が不明である場合などが該当します。
審判に付するのが相当でない場合とは、事案が軽微であったり、家庭裁判所に送致された段階で少年が十分に反省しており要保護性がなくなったりしている場合が該当します。
この決定がなされると、事件はその時点で終了し、家庭裁判所における審判が開かれることはありません。
不処分
家庭裁判所における調査及び審判の結果、保護処分に付することができない場合、もしくは保護処分に付するまでの必要がない場合に、保護処分に付さない旨の決定です(少年法第23条第2項)。
不処分決定の場合は審判不開始決定と異なり審判自体は開かれますが、保護観察や少年院送致などの保護処分は言い渡されません。
そのため、不処分となった場合、少年は何の制約もなく通常の生活に戻ることができます。
不処分になるケースとしては、以下のようなものが考えられます。
- 初めての軽微な非行で、すでに十分な反省が見られる場合
- 家庭や学校での適切な指導体制が整っている場合
- 被害者への謝罪や被害弁償が適切に行われている場合
- 調査や審判の過程で少年に好ましい変化が見られた場合
なお、不処分は「無罪」とは異なります。
非行事実は認められるものの、処分を科す必要がないと判断されたものです。
不処分になったとしても、その経験を教訓として今後の生活を送ることが重要です。
保護観察
少年を施設に収容せず、社会の中で更生させる処分です。
保護観察官や保護司による指導・監督を受けながら、通常の生活を送ります。
定期的に保護観察所に出頭し、生活状況を報告する必要があります。
保護観察の期間は、17歳以下の少年の場合、原則として少年が20歳に達するまでですが、保護観察に付された時点から20歳に達するまでの期間が2年に満たない場合は2年となります(更生保護法第66条)。
特定少年(18歳・19歳)の場合は、6か月または2年の保護観察(少年法第64条第1項)となります。
実際には、経過が良好で保護観察を継続する必要がなくなったと認められれば、保護観察所長によって解除されることがあります(更生保護法第69条)。
保護観察中は、以下のような遵守事項が課されます。
一般遵守事項 | 健全な生活態度を保つ、保護観察官や保護司の指導に従うなど |
特別遵守事項 | 少年の特性や非行内容に応じて個別に定められる事項 (特定の場所への出入り禁止、アルコールや薬物の禁止など) |
保護観察は、少年に社会での生活を継続させながら、規則正しい生活や適切な社会関係を築く力を養うことを目的としています。
学校や職場に通いながら更生を図れるため、少年の社会復帰に有効な処分といえます。
保護観察中に遵守事項に違反したり、新たな非行を行ったりした場合は、保護観察が取り消され、少年院送致などのより厳しい処分に変更されることもあります。
児童自立支援施設・児童養護施設送致
比較的軽い非行を行った少年で、家庭環境に問題がある場合などに選択される処分です。
福祉的な観点から、少年を施設に入所させて自立を支援します。
かつては「教護院」と呼ばれていた施設で、問題行動のある児童に対して、生活指導や学習指導、職業指導などを行います。
少年院よりも開放的な環境で、一般の学校に通学する場合もあります。
施設内には小・中学校に相当する分校が設置されているところも多く、学業の遅れを取り戻す支援も行われます。
保護者がいないか、保護者に養育されることが適当でない児童を養育する施設です。
非行少年の処分としては、特に家庭環境に恵まれない少年に対して選択されることがあります。
これらの施設は児童福祉法に基づく児童福祉施設であり、少年の健全育成と自立支援に重点を置いています。
入所期間は個々の状況により異なりますが、原則として18歳までです(特に必要な場合は20歳まで延長することも可能です)。
要保護性が高いと判断された場合、少年院に送致される処分が決定されます。
少年院は少年の年齢や問題性に応じて複数の種類があり、それぞれ特色のある矯正教育が行われます。
少年院の種類
少年院にはいくつかの種類があり、以下のように分類されます。
種類 | 収容の対象となる少年 |
---|---|
第1種少年院 | 保護処分の執行を受ける者(第5種の者を除く)であって、 おおむね12歳以上23歳未満であり、心身に著しい障害がないもの(第2種の者を除く) |
第2種少年院 | 保護処分の執行を受ける者であって、 おおむね16歳以上23歳未満であり、犯罪的傾向が進んでいて、心身に著しい障害がないもの |
第3種少年院 | 保護処分の執行を受ける者であって、 おおむね12歳以上26歳未満であり、心身に著しい障害があるもの |
第4種少年院 | 少年院において刑の執行を受ける者 |
第5種少年院 | 2年の保護観察に付されている特定少年であって、 保護観察中に遵守すべき事項を遵守しなかったと認められる事由があり、 その程度が重く、少年院において処遇を行わなければ本人の改善及び更生を図ることができないと認められ、 少年院に収容する旨の決定を受けた者 |
少年院での収容期間は、個々の事案や少年の年齢(特に特定少年かどうか)によって異なります。
例えば、特定少年の場合は、家庭裁判所が3年以下の範囲で収容期間を定めます。
17歳以下の少年についても、処遇勧告などに基づき、おおよその期間の目安が示されるのが一般的です。
実際の収容期間は、短期処遇(約6か月)、中期処遇(約8〜10か月)、長期処遇(約1年以上)に分かれており、少年の改善状況によっては仮退院が認められることもあります。
少年院では、生活指導、職業指導、教科教育、体育指導、特別活動指導などの矯正教育が行われます。
少年一人ひとりの問題性や特性に応じた個別的処遇計画が立てられ、段階的に処遇が進められていきます。
少年院送致は最も厳しい保護処分ですが、その目的は罰を与えることではなく、集中的な矯正教育によって少年の健全な育成を図ることにあります。
少年事件における家族の役割
少年事件では、少年本人だけでなく家族の協力も非常に重要です。
少年の家族には、以下のような役割を果たすことが期待されます。
少年の心理的サポート
事件を起こした少年は大きな精神的負担を抱えており、家族からの理解と支えが必要です。
しかし、過度に庇ったり、厳しく責めたりするのではなく、少年が自分の行為を反省し、前向きに更生していけるよう、バランスの取れたサポートが求められます。
具体的には、以下のような対応が大切です。
- 少年の話を否定せずに聞く姿勢を持つ
- 非行については反省を促しつつも、少年自身の人格などを否定しない
- 少年が自分の感情や考えを表現できる環境を作る
- 少年の良い面や努力を認め、励ます
- 少年と共に今後のことを考え、具体的な目標を設定する
少年は家族の反応に敏感です。
家族が少年を見捨てず、共に問題に向き合う姿勢を示すことで、少年は自己肯定感を保ちながら更生に向かうことができます。
家庭環境の改善
少年の非行には家庭環境が影響していることも少なくありません。
親子関係の改善や生活習慣の見直しなど、家庭環境を整えることも重要です。
必要に応じて、家族カウンセリングなどの支援を受けることも検討すべきでしょう。
改善が必要な家庭環境としては、以下のようなものが考えられます。
- 親子のコミュニケーション不足
- 過度に厳しいしつけや、逆に放任主義的な養育態度
- 家族間の葛藤や対立
- 不規則な生活習慣
- 親の問題(アルコール依存、DV、過労など)
これらの問題に気づき、改善していくことは容易ではありません。
ですが、家庭裁判所の調査官や少年の付添人、児童相談所などの専門機関のサポートを受けながら、少しずつ変えていくことが大切です。
付添人との協力
弁護士が付添人になった場合、家族は付添人と協力して少年の更生を支援することが大切です。
付添人との面談に積極的に参加し、家庭での様子を伝えるとともに、付添人からのアドバイスを真摯に受け止め、実践することが求められます。
付添人との協力の具体例としては、以下のものが考えられます。
- 定期的な面談や電話連絡で少年の状況を共有する
- 付添人のアドバイスに基づいて家庭での対応を調整する
- 少年と付添人の面談の機会を確保する
- 家庭裁判所への提出資料の準備に協力する
- 被害者への謝罪や被害弁償について相談する
付添人は法律の専門家であるとともに、少年事件の経験が豊富な場合が多く、少年の更生に向けた適切なアドバイスを提供してくれます。
家族がこうしたアドバイスを受け入れ、実践することで、少年の更生がより確かなものになるでしょう。
少年事件と被害者への対応
少年事件においても、被害者への誠実な対応は極めて重要です。
以下のような点に注意が必要です。
謝罪と被害弁償
被害者への誠実な謝罪と適切な被害弁償は、少年の反省を示す重要な行動であり、少年審判の結果にも影響することがあります。
弁護士(付添人)のサポートを受けながら、どのように謝罪や被害弁償を行うべきか検討することが大切です。
謝罪の方法
謝罪の方法としては、以下のようなものがあります。
- 被害者の了解が得られれば、少年本人や保護者が直接被害者を訪問して謝罪する
- 直接の面会が難しい場合は、心のこもった謝罪の手紙を送る
- 被害者が直接の接触を望まない場合は、第三者を通じて謝罪の意向を伝える
どの方法を選ぶにせよ、形式的な謝罪ではなく、少年が自分の行為の重大さを理解し、心から反省していることが伝わるような誠実な謝罪が重要です。
被害弁償
物的・経済的被害がある場合は、適切な被害弁償を行うことも重要です。
被害弁償の金額や方法については、被害の程度や家庭の経済状況などを考慮しながら、付添人のアドバイスを受けて決めることが望ましいでしょう。
少年自身が小遣いや、アルバイト代から被害弁償金の一部を工面することで、より深い反省と責任感を育むこともできます。
被害者との和解
可能であれば被害者との和解を目指すことも重要です。
被害者が納得できる形での和解は、少年の更生にとっても大きな意義があります。
ただし、和解の強要や形だけの謝罪は逆効果となる可能性もあるため、慎重な対応が求められます。
被害者との和解に至るためには、以下のような点に注意が必要です。
- 被害者の心情や要望を尊重する
- 謝罪や被害弁償のタイミングを適切に判断する
- 被害者の質問や意見に誠実に向き合う
- 形式的な謝罪ではなく、真摯な反省の態度を示す
- 再発防止に向けた具体的な取り組みを伝える
被害者との和解は、必ずしも成立するとは限りません。
被害の重大さや被害者の心情によっては、和解が難しい場合もあります。
そのような場合でも、少年と家族は誠実な謝罪と被害弁償の姿勢を持ち続けることが大切です。
被害者の視点を理解する
少年や家族は、被害者がどのような思いでいるかを理解することも大切です。
被害を受けた側の痛みや苦しみを想像し、真摯に向き合う姿勢が、真の反省と更生につながります。
被害者の視点を理解するために役立つアプローチとしては、以下のものが考えられます。
- 被害者の立場に立って考えてみる
- 被害者が受けた具体的な被害(物的被害だけでなく精神的被害も含む)について理解する
- 「もし自分が被害者だったら」という視点で考える
- 被害者の権利や尊厳を尊重する
被害者の視点を理解することは、少年が自分の行為の重大さを認識し、真の意味で反省するために不可欠なプロセスです。
このような理解に基づいた謝罪や被害弁償は、より誠実さが伝わり、被害者の心情の回復にもつながる可能性があります。
少年事件の長期的影響と更生支援
少年事件は、適切に対処すれば少年の将来に大きな障害とならないよう配慮されていますが、少年自身の内面や社会適応には長期的な支援が必要な場合もあります。
教育・就労支援
少年審判後、学校に復学したり就職したりする際には、周囲の理解と支援が必要です。
場合によっては、教育委員会や学校、ハローワークなどの公的機関と連携し、適切な支援を受けることが大切です。
学校への復学支援
学校に復学する場合は、以下のような支援が考えられます。
- 担任や生徒指導担当の教員との事前面談
- 学習の遅れを取り戻すための補習や個別指導
- スクールカウンセラーによる心理的サポート
- いじめや偏見防止のための配慮
- 部活動など居場所作りの支援
学校によっては、少年事件を起こした生徒の受け入れに消極的な場合もありますが、教育を受ける権利は保障されるべきものです。
必要に応じて、付添人や調査官などが学校との調整を行うこともあります。
就労支援
就職を目指す場合は、以下のような支援が考えられます。
- ハローワークの若者支援窓口の利用
- 地域若者サポートステーションの活用
- 職業訓練校や専門学校への進学
- 協力雇用主(保護観察処分を受けた人などの雇用に協力する企業)の活用
- 就労体験プログラムへの参加
就職活動においては、少年事件の経歴が不利に働く場合もありますが、保護処分は前科とは異なるため、必ずしも就職の妨げにはなりません。
誠実に更生に取り組む姿勢をアピールすることで、活路を見出すことができます。
心理的サポート
非行を行った少年の中には、心理的な問題を抱えている場合もあります。
必要に応じて、カウンセリングや心理療法などの専門的な支援を受けることも検討すべきです。
少年の心理的サポートとして考えられる手段は以下のとおりです。
- 臨床心理士やカウンセラーによる個別カウンセリング
- 家族療法や親子カウンセリング
- グループセラピー(同様の経験を持つ少年同士の支援グループなど)
- 認知行動療法(問題行動のきっかけとなる思考パターンを変える療法)
- アートセラピーやスポーツセラピーなど、言語以外の表現方法を活用した療法
これらの心理的サポートは、少年が自分の感情をコントロールする方法を学び、ストレスや衝動に適切に対処する能力を身につけるのに役立ちます。
また、自己肯定感を高め、将来に対する前向きな展望を持つことにもつながります。
社会資源の活用
少年の更生には、地域の様々な社会資源を活用することも有効です。
青少年支援センター、子ども若者支援地域協議会、NPO団体など、様々な支援機関があります。
少年審判後も、必要に応じてこうした機関の支援を受けることで、より確実な更生を目指すことができます。
活用できる主な社会資源としては、以下のものが考えられます。
- 青少年センター:悩みの相談、学習支援、居場所提供など
- 子ども若者支援地域協議会:複合的な問題を抱える若者への総合的支援
- 更生保護施設:住居や食事の提供、生活指導など
- NPO団体:学習支援、就労支援、居場所づくりなど
- 地域のボランティア団体:スポーツ活動、文化活動など
- 保護司:保護観察中の少年に対する指導や支援
- 自助グループ:同様の経験を持つ人々による相互支援
これらの社会資源をうまく活用することで、少年は多面的なサポートを受けながら、社会の中で健全に成長していく基盤を築くことができます。
地域によって利用できる資源は異なりますので、地域の青少年センターや福祉事務所などに相談し、適切な支援先を探すことが大切です。
少年事件についてのQ&A
少年事件の判決はいつ出ますか?

通常の刑事裁判とは異なり、複数回の審理を重ねることは少なく、審判当日に処分が言い渡されることが一般的です。
ただし、非行事実に争いがある場合や、調査が不十分と判断された場合には、審判が続行されることもあります。
また、試験観察(少年を一定期間家庭や施設で生活させながら更生可能性を判断する制度)が行われる場合は、その期間(通常1〜3か月程度)の後に処分が決定されます。
審判でも少年の姿勢や態度は重要であり、最後まで真剣に対応することが大切です。
審判での少年の態度や発言が、裁判官の判断に影響を与えることも少なくありません。
弁護士に依頼するタイミングは早い方がいいですか?

①少年との信頼関係構築に時間をかけられる
少年が自分の行いに向き合い反省を深めるためには、周囲の大人のサポートが必要です。
弁護士が早くから関わることで、信頼関係を構築し、少年の反省を促すことができます。
特に、少年は初対面の大人に対して警戒心を抱きやすいため、時間をかけて関係を築くことが重要です。
②環境調整のサポートを早期に開始できる
非行の背景には様々な要因があり、友人関係や生活環境の調整が必要な場合もあります。
例えば、不良交友関係の解消、家庭内の問題解決、学校や職場との関係調整などです。
こうした環境調整は時間がかかるものですので、早期に着手することで、審判までに一定の成果を示すことができます。
③少年やご家族の不安を早期に軽減できる
事件発生後、少年やご家族は大きな不安を抱えています。
「このまま逮捕されるのか」「少年院に送られるのか」といった不安は、精神的負担となり、冷静な対応を難しくします。
弁護士が早期に関わり、今後の流れや見通しを説明することで、少年が落ち着いて反省に向き合える環境を作ることができます。
④証拠の収集や法的対応を適切に行える
事件の初期段階では、証拠の収集や法的対応が重要になることもあります。
例えば、少年が無実であるケースや、事実関係に争いがあるケースでは、早期に証拠を収集・保全することが必要です。
また、取調べに対するアドバイスや、勾留に対する準抗告なども、タイミングを逃すと対応できなくなります。
以上のように、少年事件では弁護士に早期に依頼することで、様々なメリットがあります。
特に、少年の更生という観点からは、早めに専門家のサポートを受けることが望ましいと言えるでしょう。
少年事件で保釈はできますか?

観護措置決定が下された場合、保釈金を納めることで釈放されるということはありません。
ただし、観護措置決定に対して異議申立てや取消しの申立てなどを行うことは可能です。
観護措置は、少年の身柄を拘束するという点では勾留と類似していますが、その法的性質や目的は異なります。
勾留が主に被疑者・被告人の逃亡や証拠隠滅を防ぐことを目的とするのに対し、観護措置は少年の要保護性を調査・診断することを主な目的としています。
観護措置が不適切と考えられる場合には、以下のような対応が可能です。
- 観護措置決定に対する異議申立て
- 観護措置決定の取消しの申立て
- 観護措置の期間更新に対する意見提出
これらの申立てや意見提出を行う際には、「少年を家庭に戻しても更生に問題がないこと」「家庭環境が安定していること」「保護者の監督が十分であること」などを具体的に示す必要があります。
弁護士(付添人)のサポートを受けながら、適切に対応することが大切です。
少年事件で弁護士をつけないデメリットは?

捜査段階(家庭裁判所送致前)のデメリット
①勾留されないよう適切に対応できない
少年が逮捕された場合、勾留されないよう努めることが重要ですが、専門的な法的知識がなければ適切な対応が難しいです。
弁護士がいれば、勾留の必要性を争ったり、身柄の早期解放を求めたりすることができます。
②取調べへの対応について適切なアドバイスが受けられない
少年は取調べにどう対応すべきか分からず、不利な供述をしてしまう可能性があります。
弁護士がいれば、黙秘権の行使や供述内容についてのアドバイスを受けられます。
特に少年は大人と比べて心理的に弱い立場にあり、取調官の誘導に影響されやすいため、弁護士のサポートは重要です。
③被害者との早期示談交渉ができない
被害者に対する謝罪や被害弁償は、少年審判の結果に大きく影響します。
弁護士がいれば、適切なタイミングと方法で被害者との交渉を行うことができます。
特に被害者が法人の場合や複数いる場合、専門家の介入がないと円滑な交渉が難しいことがあります。
少年審判段階(家庭裁判所送致後)のデメリット
①観護措置期間中に更生のためのサポートを十分に受けられない
付添人がいない場合、少年は孤立感を深め、前向きな気持ちを維持するのが難しくなることがあります。
また、少年鑑別所での生活を有意義に過ごすためのアドバイスも受けられません。
②客観的な立場からの改善策の提案が困難になる
家族だけでは、客観的な視点から少年の問題を分析し、適切な改善策を提案することが難しい場合があります。
弁護士は第三者の立場から、少年の問題点を指摘し、具体的な更生計画を立てる手助けができます。
例えば、学業の継続や就労支援、生活環境の改善など、少年の更生に必要な要素を総合的に検討することができます。
③裁判官や調査官との面談や意見書などを通じた適切な説得が難しくなる
少年審判では、裁判官や家庭裁判所調査官との面談が重要です。
弁護士がいれば、これらの面談で少年や家族の思いを適切に伝え、少年の更生可能性をアピールすることができます。
また、審判に向けて意見書を作成し、少年の反省や更生計画を具体的に示すこともできます。
弁護士の法的知識や経験に基づいた主張は、裁判官の判断に大きな影響を与えることがあります。
④法的権利の保障が十分でない可能性
少年審判においても、適正手続の保障は重要です。
弁護士がいなければ、少年の手続上の権利が十分に守られない可能性があります。
例えば、証拠の内容を精査したり、不利益な処分に対して異議を申し立てたりするなど、法的な対応が必要な場面は多々存在しますが、弁護士を選任していなければ、こうした場面で適切な支援を受けることができません。
⑤複雑な事件への対応が困難
複数の少年が関与する共犯事件や、法的争点が複雑な事件では、専門的な法律知識がなければ適切に対応することが極めて困難です。
弁護士がいれば、証拠の評価や法的主張の構成など、専門的な観点からサポートを受けることができます。
まとめ
少年事件におけるポイント
以上、少年事件において気をつけるべきポイントについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
少年事件においては、少年に関わる全ての人々が、少年の健全育成という共通の目標に向かって協力し合うことが、少年の更生と社会の安全を実現する上で極めて重要です。
少年事件に直面した場合は、焦らず、冷静に、そして早期に専門家の支援を求めることが大切です。
少年は未来の可能性を秘めた存在です。
適切な支援と導きがあれば、非行から立ち直り、社会の一員として健全に成長していくことができます。
「少年事件に巻き込まれてしまったから、その先の人生は終わった」などと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、それは誤りです。
適切に対応すれば、少年事件は新たな出発点ともなり得るのです。
お子様が少年事件の当事者になってしまった場合など、どのように対応すべきかお悩みの方は、ぜひデイライト法律事務所にご相談ください。
お子様の未来を少しでも良い方向に変えていけるよう、全力を尽くすことをお約束します。
少年事件のよくある相談Q&A
なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか