性的暴行とは?意味・範囲を具体例でわかりやすく解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  

性的暴行とは性的暴行とは、相手の同意を得ずに行われる性的な暴力行為を広く指す言葉です。

近年、性犯罪に関する法改正が進み、性加害を容認しない社会的な風潮が高まっています。

報道などでも、「性的暴行」という言葉が広く使われるようになりましたが、具体的にどのような行為を指すのか、よくわからないという方もいらっしゃるかもしれません。

性的暴行は、単なる法律上の問題ではなく、被害者の心身に長期的な影響を与え、社会全体にも大きな影響を及ぼします。

性的暴行について正しく理解することは、予防や適切な対応のために不可欠です。

この記事では、性的暴行について、その意味や範囲、不同意性交等罪や不同意わいせつとの違い、被害者への影響、加害者の末路などを弁護士が解説します。

性的暴行とは?

性的暴行とは性的暴行とは、相手の同意を得ずに行われる性的な暴力行為を広く指す言葉です。

日本の法律には、「性的暴行」という法律用語は存在しません。

刑法には「不同意性交等罪」や「不同意わいせつ罪」といった犯罪が規定されていますが、それらは法的な概念であり、日常的に使われる「性的暴行」とは異なります。

性的暴行は、身体的な暴力を伴う場合もあれば、脅迫や威圧、相手が抵抗できない状況を利用するなど、さまざまな形態で発生します。

性的暴行は、被害者の性的自己決定権を侵害する行為であり、被害者の心身に深刻な傷を残します。

具体的にどのような行為が性的暴行に該当するか、以下で詳しく解説します。

 

性的暴行の意味

性的暴行は、相手の同意を得ずに行われる性的な暴力行為です。

性的暴行という言葉は、法律用語ではなく、上記のような行為を指す一般的な表現です。

このような表現は、柔軟に使える反面、どこまでの範囲を指すかが不明瞭になりがちです。

性的暴行という言葉に厳密な定義はなく、具体的にどのような行為を指すかは、文脈や人によって、解釈の幅があります。

性的暴行は、多くの場合、不同意性交罪や不同意わいせつ罪に当たると考えられますが、必ずしもイコールではありません。

また、「暴行」というと、殴る・蹴るといった暴力を思い浮かべがちですが、性的暴行における「暴行」は、そのような暴力行為に限定されません。

同意なく相手に触れるという行為は、それ自体に暴力としての性質があるため、必ずしも殴る・蹴るといった暴力的行為に限定されないのです。

性的な行為自体が相手の意に反しているのであれば、暴力的な強制によらずとも、性的暴行に当たることがあります。

たとえば、威圧や、地位・立場の利用、相手が抵抗できない状況の悪用など、さまざまな態様が考えられます。

性的暴行を考える上で特に重要なのは、「同意」の有無です。

同意とは、単に拒否されなかったことではなく、自由な意思に基づいて積極的に承諾していることを意味します。

強制や威圧、詐欺などによって得られた「同意」は、真の同意とはみなされません。

このような広い視点から性的暴行を理解することが、被害の予防と適切な対応につながります。

 

 

性的暴行の範囲はどこまでをいう?

性的暴行は、法的な概念ではなく、一般的な表現です。

どこまでの範囲を性的暴行というかについて、厳密な定義があるわけではありません。

性的暴行の指し示す範囲を考えるにあたっては、どのようなニュアンスで用いられることが一般的かを考えることが有効です。

性的暴行というときは、相手の同意を得ずに行われる性的行為全般を指すことが多いです。

性的暴行に当たるかを決める核心は、相手の「同意の有無」です。

相手の明確な同意なく行われる性的な行為は、その態様や程度にかかわらず、性的暴行となる可能性があります。

また、一旦同意していても、途中で同意を撤回した場合に行為を継続することも、その時点から性的暴行となります。

 

性的暴行となり得る具体例

性的暴行となり得る行為は多岐にわたります。

性的暴行は、相手の同意を得ずに行われる性的行為です。

その範囲を考えるにあたっては、どのような場合に同意がないと言えるのかを考えることが大切です。

性的な行為は、両者の同意の下で行われるのであれば、何ら問題のない行為です。

他方で、一口に同意と言っても、完全な同意から「あまり気は進まないが仕方ない」といった微妙な同意まで、幅があります。

性的暴行と、刑法上の不同意わいせつ・不同意性交等は、必ずしもイコールではありません。

しかし、性的暴行の多くのケースで、これらの犯罪が成立するのもまた事実です。

そこで、性的暴行の範囲を考える場合、これらの犯罪の成立要件が参考になります。

刑法上の不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立する、つまり同意がないとされるケースを具体例でご紹介します。

例

 

暴行・脅迫

性的暴行の典型例のひとつが、性的な行為を強制する手段として暴行・脅迫を用いる場合です。

暴行や脅迫という手段によって相手の意思を制圧し、同意のない状況で性的行為を強いる場合が、典型的なケースです。

 

不同意を表明できない状態にある

相手が眠っていたり、アルコールや薬物の影響下にあったりすることによって、不同意の意思を表明できない場合があります。

このような相手に対する性的な行為も、性的暴行になります。

 

不同意を表明できない背景がある

経済的な地位や社会的な上下関係によって、同意しないと不利益を受けるのではないかと心配する心理を利用するケースも、性的暴行となります。

たとえば、上司と部下、教師と生徒といった社会的な影響を与え得る上下関係が存在する場合です。

性的暴行は、不同意わいせつよりも広い概念ですので、法的には不同意わいせつとまではいえない事案であっても、性的暴行に当たることがあります。

 

同意に意味がない

形式上同意をしていても、その同意に意味がないというケースもあります。

たとえば、性的行為の相手が16歳未満の場合、たとえその相手が同意していても、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立します。

これは、そのような低年齢の者には、性的な行為の意味を理解して同意する能力が備わっていないとされるためです。

 

性的暴行とはなりにくい具体例

両者の合意に基づく性的行為は、基本的に性的暴行には該当しません。

また、合意のない性的な行為であっても、「暴行」とまでは評価できない場合もあると考えられます。

 

痴漢の場合

わいせつ行為の中でも、痴漢のように軽く触れるにとどまる場合は、性的暴行とは言わない可能性があります。

もちろん、そのような軽度の接触行為を含めて、性的暴行であると考える人もいるでしょう。

しかし、「暴行」という言葉の持つやや強めのニュアンスからすると、軽く触れる程度の痴漢は、性的暴行にはあたらないという考え方もあり得そうです。

 

言葉による場合

卑わいな声掛けなどの言葉による場合は、性的暴行とは言い難いのが基本です。

言葉による場合でも、内容や程度によっては、「言葉による暴力」といえるケースも、まったくないとはいえないかもしれません。

しかし、一般的には、性的な働きかけが純粋に言葉によってのみなされる場合には、「暴行」とはいえないことが多いでしょう。

 

性的なものを見せるにとどまる場合

陰部露出などのように、性的なものを見せるにとどまる場合も、性的暴行とはいえないことが多いでしょう。

このような場合も、「暴行」といえるような物理的な働きかけが伴わないためです。

 

一応の同意がある場合

性的暴行とは、相手の同意なく行われる性的な行為です。

このため、たとえ一応ではあっても、性的行為に同意しているのであれば、性的暴行には当たりません。

たとえば、純粋な愛情ではなく、なんらかの打算に基づいて同意したような場合です。

そのような場合でも、動機はどうあれ、行為の性的な意味を理解し、納得の上で受け入れているのであれば、同意としては有効といえます。

したがって、このようなケースも、性的暴行にならない例となります。

なお、痴漢の場合や言葉による場合など、性的暴行とはいえないとしても、「性加害」といった表現であれば、該当してもおかしくありません。

最終的には、「暴行」という言葉のニュアンスから、どの程度の行為までを読み取るかという問題といえます。

 

 

性的暴行と強姦(不同意性交等罪)の違い

性的暴行と強姦(不同意性交等罪)は、意味的に近い言葉ではありますが、両者はイコールではありません。

不同意性交等罪は、性的暴行とは異なり刑法に規定された法的な概念であるため、厳密な定義を持ちます。

不同意性交等罪は、人の同意を得ないで性交等をした者を処罰するものです(刑法177条1項)。

上でもご紹介しましたが、次の条件の下で不同意性交等罪は成立します。

 

次の事由またはこれに類する事由があること
  1. ① 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
  2. ② 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
  3. ③ アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
  4. ④ 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
  5. ⑤ 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
  6. ⑥ 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若くは驚愕していること。
  7. ⑦ 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
  8. ⑧ 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

 

これにより、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせまたはその状態にあることに乗じること

 

次の行為を行うこと
性交、肛門性交又は口腔性交、膣もしくは肛門に身体の一部(陰茎を除く)もしくは物を挿入する行為であってわいせつなもの

参考:刑法|e-Gov法令検索

このような不同意性交等罪にあたる行為は、当然ながら「性的暴行」といえます。

つまり、不同意性交等罪は、性的暴行の一形態と言えます。

不同意性交等罪の特徴は、性交、肛門性交、口腔性交および異物挿入という行為類型に限定されている点です。

これに対して、性的暴行という概念はより広範で、性器の接触や挿入を伴わない性的行為も含みます。

不同意性交罪と不同意わいせつ罪の違いについては、以下のページをご覧ください。

 

 

性的暴行と強制わいせつ(不同意わいせつ)の違い

性的暴行と強制わいせつ(不同意わいせつ罪)の関係も、不同意性交等罪と同様に理解できます。

つまり、不同意わいせつについても、不同意性交等と同じく、刑法に定められた法的概念であるということです。

不同意わいせつも、性的暴行の一形態です。

不同意性交罪との違いは、不同意わいせつでは、性交等に限らず広くわいせつな行為全般が対象となる点です。

不同意わいせつ罪の「わいせつな行為」とは、性欲を刺激・興奮・満足させる行為であって、健全な性的羞恥心を侵害する行為を指します。

具体的には、キスや胸・臀部への接触など、性交等には至らない性的行為などが該当します。

不同意わいせつと不同意性交をあわせた場合、性的暴行の範囲とかなり重複してくると思われます。

ただし、両者は、法的概念なのか日常用語なのかというそもそもの位置づけが異なっています。

実質的な範囲が重複しているからといって、単純にイコールとはいえない点に注意が必要です。

性的暴行という概念は、これらの刑法上の犯罪類型を包含する広い概念です。

刑法上の犯罪に該当しないような軽微な性的嫌がらせなども、広義では性的暴行に含まれることがあります。

不同意性交罪と不同意わいせつ罪の違いについては、以下のページをご覧ください。

 

 

性的暴行のニュース

性的暴行という言葉には、厳密な法律上の定義がなく、幅広い意味で使われています。

実際にどのような事件が「性的暴行」として報道・認識されているのか、具体的なニュース事例を通じて見てみましょう。

暴行による性的行為の強要のほか、社会的な地位や上下関係を背景としていることが注目されます。

 

事例1:旧ジャニーズの性加害問題

ジャニーズ事務所 性加害を認め謝罪

ジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏による性被害の訴えが相次いでいる問題をめぐり、事務所は2023年9月7日記者会見を開いた。

この中で性加害について認めて謝罪し、藤島ジュリー氏の社長辞任と、後任に所属タレントの東山紀之氏が就任したことを発表した。

3月にイギリスの公共放送BBCが被害を訴える証言を発信したことをきっかけに元所属タレントが実名で次々に声を上げ「当事者の会」を設立。

事務所は「SMILE-UP」に名称変更し、11月から補償金に合意した人たちへの補償を開始した。

引用:ジャニーズ事務所 性加害を認め謝罪|NHKアーカイブス

 

事例2:映画監督による性的暴行事件

俳優の女性2人に性的暴行の罪 映画監督「立場利用していない」

映画監督のA被告が、俳優の女性2人に対して性的暴行をした罪に問われている事件の裁判で被告人質問が行われ、被告は同意があったとした上で「監督の立場を利用してはいない」などと主張しました。

映画監督のA被告(55)は、2015年に自身が監督を務める映画に出演が内定していた20代の俳優の女性に対して性的暴行をした罪と、その翌年、別の20代の俳優の女性に要求に応じなければ活動に支障をきたすと不安を抱かせ、性的暴行をした罪に問われていて、いずれの事件についても無罪を主張しています。

3日、東京地方裁判所で開かれた裁判で被告人質問が行われ、被告は「同意はあった。無理やりとか強制的ではない」と主張しました。

検察から「チャンスをつかみたいという女性の気持ちを利用したのではないか」などと問われると、被告は「監督の立場を利用してはいない」と述べました。

また、検察が2015年の事件について、演技指導を装い、カメラで撮影しながら性的暴行を行ったと主張していることに対しては、「カメラを回す前には男女の関係になっていた」などと反論しました。

引用:俳優の女性2人に性的暴行の罪 映画監督“立場利用していない”|NHKニュース

 

事例3:飲食店での性的暴行事件

【独自】大阪府内の飲食店で女性従業員に性的暴行か 取引先の40代男を逮捕・送検

大阪府内の飲食店で女性従業員に性的暴行を加えたとして、取引先の男が逮捕されていたことが、捜査関係者などへの取材で分かりました。

不同意性交などの疑いで逮捕・送検されたのは、大阪府藤井寺市のA容疑者(48)です。

6月6日の深夜、府内の飲食店で閉店作業を行っていた40代の女性従業員に、性的暴行を加えた疑いが持たれています。

被害を訴える女性によりますと、A容疑者は飲食店の取引業者で、商品を配送に来た際に犯行に及び、「殺すこともできるで。犯罪歴もある」などと脅してきたといいます。

被害を訴える女性
「力が強かったので、抵抗できる状態ではなくて。まだ毎日怖いです」
「ずっと刑務所に入っていてほしいぐらい。一生償ってほしいと思います」

警察は当時の状況について詳しく調べています。

引用:【独自】大阪府内の飲食店で女性従業員に性的暴行か 取引先の40代男を逮捕・送検|MBCニュース

 

 

性的暴行の統計データ

性的暴行は、刑法上の犯罪に限定されない幅広い概念です。

ただし、性的暴行のうち少なくない事例が、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に該当します。

そこで、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に該当する性的暴行の、発生状況を紹介します。

令和5年では、不同意性交等罪で1,875件、不同意わいせつ罪で3,804件が検挙されています。

参考:令和6年版犯罪白書 1-1-1-6表|法務省ホームページ

刑法犯全体からすると数パーセント程度の割合ですが、それでも年間で5,000件以上の被害が発生していることになります。

以上のように、性的暴行により、多くの人が傷ついているという現状があります。

被害の実態や背景を知ることで、私たち一人ひとりが、加害や被害を生まない社会づくりに向けて行動することが求められています。

 

 

性的暴行の影響

性的暴行は、被害者個人への影響だけでなく、家族や友人、そして社会全体にまで広がる深刻な影響を及ぼします。

被害者にとっては、身体的な傷だけでなく、長期にわたる心理的・情緒的な影響が生じることもあり、回復には専門的な支援が必要となることがしばしばです。

また、性的暴行は、個人の問題にとどまらない社会問題であるという認識が広がりつつあり、社会全体での取り組みが求められています。

性的暴行の影響は一過性のものではなく、場合によっては、被害者の一生に渡って続く可能性があります。

また、被害の程度や被害者の個人差により、影響の現れ方や回復の過程は大きく異なります。

このため、被害者一人ひとりの状況に応じた適切な支援が重要となります。

 

被害者の心身への影響

性的暴行は、被害者の心身に多様な影響を及ぼします。

 

身体への影響

性的暴行による被害者への影響として、まず身体的な影響が挙げられます。

たとえば、暴力的な態様で行われた場合、打撲や骨折などの外傷、性器等の損傷といった怪我を負うことがあります。

そのほかにも、感染症の罹患や、望まない妊娠などが挙げられます。

これらの身体的な問題は、適切な治療によって回復が期待できる場合もありますが、程度によっては、後遺症が残ることもあります。

 

精神への影響

身体への影響とならんで重要なのが、精神への影響です。

性的暴行は、被害者に強い精神的苦痛を与えるものです。

被害者への心理的な影響は、時に複雑で長期的なものとなります。

まず、ほとんどの場合、性的暴行により被害者は強い不快感や嫌悪感を感じることになります。

さらに、それらの一時的な感情にとどまらず、精神的な疾患へと発展することもあります。

性的暴行では、たとえば次のような症状が出ることが考えられます。

  • 不眠
  • 社会不安
  • 対人恐怖
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  • フラッシュバック
  • うつ病

以上のように、性的暴行は被害者の心身や生活に深刻な影響を及ぼし、その影響は長期にわたることが懸念されます。

 

生活への影響

以上のような影響が生じる結果、性的暴行によって被害者の日常生活に大きな影響が出ることもあります。

たとえば、性的暴行をきっかに心に深い傷を負い、学校や会社に行けなくなってしまうことがあります。

そのような状態が長引けば、退学によって最終学歴が変わったり、無職になって収入が途絶えたりといったこともあり得ます。

そうなると、まさに被害者の一生が台無しになるような、きわめて重大な影響と言わざるを得ません。

このように、性的暴行は、加害者にとっては一瞬の出来事であっても、被害者にとってはそうではないのです。

性的暴行が被害者に及ぼす影響は、非常に深刻なものといえるでしょう。

 

社会全体への影響

性的暴行は被害者個人だけでなく、社会全体にも広範な影響を及ぼします。

まず、性的暴行が頻発する社会では、人々、特に女性や子どもの安全や自由が大きく損なわれます。

常に性被害の危険を警戒して生活しなければならないとなると、心理的負担が生じることになります。

また、性的暴行が犯罪として報じられると、地域社会の不安も高まります。

パトロールの強化や、防犯カメラの設置、厳罰化のための法令整備など、さまざまな面でコストが生じます。

これらのコストは、社会全体で負担しなければなりません。

このように、性的暴行による影響は、被害者個人にとどまらず、広く社会全体へ影響を与えることになるのです。

 

 

性的暴行の加害者の末路

性的暴行の加害者の末路

性的暴行は被害者に深刻な影響を与えるだけでなく、加害者自身にも、法的・社会的に大きな不利益を与えます。

性的暴行の加害者は、法的制裁、社会的制裁、心理的影響など、多様な問題に直面することになります。

特に、法的な制裁は厳しく、刑事罰だけでなく民事上の賠償責任も問われる可能性があります。

さらに、社会的な地位や評判の失墜、人間関係の破綻など、加害者の人生全体に深刻な影響を及ぼすことも少なくありません。

 

刑事的責任

性的暴行の加害者は、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪などで処罰される可能性があります。

性的暴行は、不同意わいせつや不同意性交と完全にイコールではないとはいえ、多くのケースがこれらの罪にあたると考えられます。

不同意わいせつであれば6月以上10年以下、不同意性交等罪では5年以上の拘禁刑が法定刑となります。

実刑判決となれば、実際に刑務所に服役することになります。

また、執行猶予付きの判決でも、有罪である以上前科がつくことになり、将来の就職や社会生活に大きな支障をきたします。

 

民事的責任

性的暴行では、刑事責任だけでなく、民事上の法的責任も発生します。

具体的には、被害者に対して、慰謝料などの損害賠償責任を負うことになります。

実際の賠償額は、加害の態様や被害者への影響など事案によって異なりますが、数百万円やそれを超えるような額となることもあります。

賠償金の支払いは、加害者の経済状況に重大な影響を与えることがあります。

刑事事件における慰謝料についての解説は、こちらをご覧ください。

 

社会的責任

性的暴行では、以上のような法的責任だけでなく、社会的責任も生じます。

社会的責任とは、法的に科せられるペナルティではなく、性的暴行の加害者であるということから生じるさまざまな不利益のことです。

たとえば、社会的地位のある人の性的暴行が明るみになった場合、それをきっかけに失脚することがあります。

また、一般のサラリーマンなどであっても、会社から解雇されたり、家族や友人といった人間関係に亀裂が入ったりすることもあります。

性的暴行は、被害者の人権を軽視した卑劣な行為であるため、社会から厳しい目を向けられてしまうのです。

特に、事件が報道された場合、その影響は長期的なものとなり得ます。

インターネット上に名前や事件の内容が残り続けることで、いわゆる「デジタルタトゥー」として、一生ついて回る可能性があります。

自分でやったこととはいえ、性的暴行は、加害者の人生をも一変させる可能性があるといえるでしょう。

性的暴行の加害者となることで失うものは非常に大きく、その影響は一生に渡る可能性があります。

そのような影響を少しでも抑えるためには、刑事事件に強い弁護士に相談することが重要です。

刑事事件における弁護士選びの重要性については、以下のページをご覧ください。

 

 

性的暴行を予防するために

性的暴行の予防は、個人的な対策から社会的な取り組みまで、多彩なアプローチが必要です。

 

社会での取り組み

性的暴行を防ぐためには、社会全体での取り組みが必要です。

その取り組みのひとつとして、人権教育が重要です。

同意のない性的行為が性的暴行に当たるというと、一見当たり前のように思えるかもしれません。

しかし、そのような意識が十分浸透していないからこそ、性的暴行が後を絶たないとも言えます。

相手の意思に反する性的行為は、その人の尊厳を傷つける人権上の問題であるとの認識を、社会で広く共有する必要があります。

性的暴行の予防は、特定の集団だけの問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題です。

性的暴行は許されない行為であるということを、さまざま主体が積極的に発信していくことが重要です。

一人ひとりが性的同意の重要性を理解し、互いの尊厳を尊重する社会を作ることが、最も根本的な予防策となるでしょう。

 

個人でできる対策

性的暴行の被害を受けないために、個人でできることもあります。

個人レベルでの防犯対策も、性的暴行のリスクを低減する上で役立ちます。

たとえば、夜間の一人歩きを避ける、知らない人からの飲み物を受け取らない、信頼できる友人と行動するなどの、基本的な安全策が挙げられます。

また、スマートフォンの防犯アプリを活用したり、防犯ブザーを携帯したりすることも有効です。

万が一危険を感じた場合には、すぐに周囲に助けを求める勇気を持つことも大切です。

オートロック付きの住宅を選ぶなどの対策も、性的暴行だけでなく、さまざまな犯罪に対する防犯効果があるため推奨されます。

さらに、SNSやインターネット上での個人情報の取り扱いにも注意が必要です。

自宅の場所や行動パターンが特定されないよう、投稿内容や公開範囲を見直すことも防犯につながります。

これらの対策を日常的に意識することで、被害のリスクを下げることができます。

万が一被害に遭ってしまった場合は、速やかに警察や信頼できる人に相談し、適切なサポートを受けることが重要です。

 

 

性的暴行についてのQ&A

性行為を同意なしでしたらどうなる?

同意なしの性行為は、不同意性交等罪(刑法177条)に該当し、5年以上の拘禁刑が科される可能性があります。

不同意性交等罪が成立するのは、暴行・脅迫による場合や、アルコールなどの影響を利用した場合など、一定の事由がある場合に限られます。

ただし、同意していない相手に性交等をするにあたり、それらの事由がまったく存在しないケースはそう多くないと思われます。

したがって、同意なしでの性行為は、少なくないケースで不同意性交等罪になると考えられます。

また、刑事責任が生じない場合でも、民事責任として、被害者に対して慰謝料等の損害を賠償する責任が発生することがあります。

 

性的暴行はどのくらいの刑罰ですか?

性的暴行は、不同意性交等罪では5年以上、不同意わいせつ罪では6月以上10年以下の拘禁刑が法定刑です。

実際に科される刑は、事案の性質を総合的に判断して決められます。

また、性的暴行であっても、犯罪としては成立していないというケースもないわけではありません。

そのような場合は、民事上の損害賠償責任が生じるにとどまります。

 

 

まとめ

この記事では、性的暴行について、その意味や範囲、不同意性交罪や不同意わいせつとの違い、被害者への影響、加害者の末路などを解説しました。

記事の要点は、次のとおりです。

  • 性的暴行とは、相手の同意なく行われる性的な行為全般を指す。
  • 性的暴行は法的概念ではない日常用語であり、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪より広い概念である。
  • 性的暴行は、被害者に身体的・心理的・社会的な深刻な影響を与え、PTSDやうつ病などの精神疾患のリスクを高める。
  • 性的暴行の加害者は、刑事罰や高額な民事賠償、社会的地位や信頼の喪失など、重大な結果に直面することがある。

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