痴漢で後日逮捕される?【逮捕されないケースや対処法を弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士

痴漢とは

痴漢とは

「痴漢」という言葉は昔から広く浸透していますが、ひとえに痴漢といってもどのような犯罪に該当するかは様々です。

まず、各都道府県の迷惑行為防止条例において「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為〜衣服その他の身に付ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」が禁止されていることがあります。

痴漢の多くは、このような迷惑行為防止条例違反の罪に該当する行為になるでしょう。

ただし、胸や陰部を触るような痴漢の中でも悪質なものは、迷惑行為防止条例違反ではなく、より法定刑の重い不同意わいせつ罪に該当する可能性があります

迷惑行為防止条例とは

迷惑行為防止条例とは、居住者及び滞在者に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、その平穏な生活を保持することを目的として、各都道府県において定められている条例のことをいいます。

この条例では、様々な迷惑行為を取り締まることとされており、嫌がらせ行為や路上での客引きだけでなく痴漢や盗撮もこの条例において定められています。


 

 

痴漢で後日逮捕される場合

半年後・1年後に後日逮捕となる可能性

痴漢が発覚した場合、その場で被害者や周囲の人に取り押さえられ、現行犯逮捕となる場合が圧倒的に多いですが、仮にその場から逃げることができたとしても安心は出来ません。

街中には至る所に防犯カメラが点在しており、逃走している容疑者が写っている防犯カメラをいくつも調べ上げ、容疑者を特定することがあり得るからです。

このとき、在宅捜査としてくれる場合もありますが、事情によっては逮捕される可能性も否定は出来ません。

当然防犯カメラ等から容疑者を特定する作業には時間がかかりますから、痴漢をした本人が忘れた頃、半年や1年が経過した後に警察から連絡が来ることも十分に考えられます。

 

 

痴漢で後日逮捕されたときの流れ

任意同行後の後日逮捕

痴漢の容疑者として特定された場合、警察が突然自宅にやってくるか、電話で呼び出しを受け、任意同行を求められることが多いです。

この任意同行を拒絶したり、任意同行には応じたものの容疑を否認したりという対応を取った場合には、その間に逮捕状を取得して逮捕されるということになるでしょう。

なお、はじめから逮捕するつもりである場合は、警察が自宅に来る段階で逮捕状を取得しています。

そのような場合は任意同行を求められることもなく、自宅で逮捕され、そのまま家宅捜索まで行われると考えておいた方がよいでしょう。

逮捕されるのかどうかは、警察の出方だけでなく、自分の対応にも左右されるということです。

逮捕後の流れ

逮捕されてしまった後は、48時間以内に検察官に身柄が引き渡され、そこから24時間後までの間に勾留されるかどうかが決まります。

勾留された場合、更に10日間(延長込みで最大20日間)の身体拘束を受けて、刑事処分の決定を待つことになります。

この間、外部への連絡は出来ない状態となりますから、職場や学校は無断で休むことになってしまいます。

逮捕されたからといって前科がつくと決まるわけではありませんが、生活への影響を鑑みても、やはり逮捕は避けるべきでしょう。

 

 

痴漢で逮捕されない場合とは

痴漢の逮捕は現行犯以外難しい?

痴漢で逮捕される場合の大半は、現行犯逮捕です。

これは、現場で被害者や目撃者に犯行を現認され、警官に引き渡されるまでの一連の流れにおいて、既に私人による現行犯逮捕が行われており、逮捕の手続きに乗ってしまっているからではないかと思われます。

そうすると、痴漢で後日逮捕される可能性はどの程度あるのか、現行犯以外での逮捕は難しいといわれるが本当か、という疑問も出てくると思います。

たしかに痴漢の事件において、現行犯以外で逮捕される場合とそうでない場合の区別は難しいところですが、大まかな目安としてはやはり痴漢がどのような行為態様で行われたかという点や、取り調べに協力するか否かという点が重要であるように思えます。

痴漢の行為態様が不同意わいせつに及ぶようなものである場合は、その犯罪の重大性から逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれが認められるとして、後日逮捕される可能性が十分に考えられます。

他方、行為態様が迷惑行為防止条例違反にとどまるような場合であれば、後日逮捕となる場合はあまり多くありません。

容疑者として特定された場合、まずは警察から任意で事情聴取を行いたいとの連絡がくることが多く、素直に事情聴取に応じていれば、逮捕を免れることができる可能性が高くなります。

事情聴取を拒否してしまうと、防犯カメラによる特定等により、それなりの証拠が捜査機関の手元にある状況ですので、逮捕の必要性があると判断されてしまう可能性は高くなってしまうでしょう。

後日逮捕を避けるためには、基本的に捜査機関の事情聴取には応じた方が良いということになるでしょう。

 

 

痴漢で後日逮捕されないための対処法

示談のメリット

刑事処分が軽くなる可能性がある

被害者が存在する犯罪は、刑事処分の決定において、被害者の処罰意思が考慮されることが多々あります。

痴漢の場合も、迷惑行為防止条例違反の罪であれ、不同意わいせつ罪であれ、同様に被害者が加害者を許しているかどうかという点は処分に大きく影響します。

すなわち、示談をして被害者に許してもらえたならば、不起訴となる可能性や、少しでも軽い刑事処分としてもらえる可能性が出てくるということです。

前科がつくかどうか、罰金刑なのか懲役刑なのか、執行猶予がつくのかということは加害者にとって最大の関心事でしょうから、この点は加害者側にとって示談をすることのメリットといえるでしょう。

 

身体拘束から解放される可能性がある

迷惑行為防止条例違反の事件で長期間身体拘束をされる例はさほど多くはありませんが、身体拘束を受けている理由の一つとして、被害者と接触して証拠隠滅を図るおそれがあるということが挙げられがちです。

被害者と示談をした場合、加害者にとって有利な証拠が既に収集できており、それ以上被害者に働きかける必要性が全くなくなりますから、身体拘束の理由をなくすことが出来ます。

そのため、もしも身体拘束を受け続けている場合は、示談を行うことで日常生活に戻れる可能性があるということになりますから、この点も加害者側にとって示談をすることのメリットとなります。

 

民事上の問題を残さずに解決できる

痴漢を行ってしまった場合、刑事責任を負うことは当然です。

そして、民事上も痴漢は不法行為と評価できますから、慰謝料を中心とする損害賠償を行う責任が生じることになります。

示談をせずに刑事事件を終えてしまう場合、民事上の責任は残ったままですから、刑事罰を受けた後に被害者から損害賠償請求をされる可能性が残ってしまいます。

そのため、刑事事件の中で示談を済ませておくことで、紛争を一体的に解決することができ、再起に向けて集中することができるという点も加害者側が示談を行うメリットとして挙げられます。

示談金を釣り上げられた場合の対処法

痴漢をしてしまった以上、被害者に対して慰謝料を支払う義務があることは間違いありませんが、時には適正額とあまりにもかけ離れた示談金を求められることもありえます。

そのような場合はどのように対処するべきなのでしょうか。

被害者の要求がどの程度適正額から離れているのか、前科がつくことによるリスクを受け入れるか否かにもよりますが、示談金を釣り上げられた場合は、示談が成立しなくても刑事処分の決定のために有利な証拠を作ることは可能です。

示談経過の報告書を作成し、適正額であれば支払う意思があることを示すことで、加害者側で出来る限りの誠意は尽くしていることを検察官に分かってもらうことが出来ます。

被害者との間で示談が成立していない以上、誠意を尽くしたとしても罰金刑を科されることもあり得ますが、弁護士としては適正額から離れた示談に応じることは、あまりお勧めできません。

適正額で納得してもらえるよう、交渉において最善を尽くし、釣り上げの意思が変わらない場合には上記のような対応をすべきでしょう。

示談金の受け渡し方法

示談金の受け渡しは、手渡し若しくは銀行口座への送金のどちらかで行います。

どちらの方法であっても、きちんと示談金を受け渡したことが証明できれば示談の効力に影響を与えることはありませんので、被害者の意向やその時々の事情によって方法を選択することになります。

手渡しの場合には、示談金を受け渡したことを捜査機関に証明するため、被害者の方に領収証を書いてもらう必要がありますが、合意書の締結と同時に示談金を渡すのであれば、合意書の条項を調整することで同様の役割を果たすこともできます。

銀行口座への送金の場合は、送金時の振込証明を捜査機関に提出することになります。

示談書を匿名で作成できる?

被害者に自分の氏名を知られたくないということで、示談書を匿名で作成したいと考える方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん被害者がそれでもいいということであれば、匿名で作成すること自体は可能ですが、加害者が匿名で示談書を交わすことに意味はありません。

何故ならば、匿名で示談書を交わす場合、捜査機関に証拠として示談書を提出しても、誰が当事者か分からない以上、刑事処分を決めるにあたって考慮してもらうことが出来ない可能性が高いからです。

また、被害者は事件の処分がどうなったか等の情報について、問い合わせをすることが出来ます。

そのため、加害者の氏名は処分結果の問い合わせにおいて明らかとなる可能性があり、匿名で示談書を交わすことのメリットは無いといってもよいでしょう。

なお、当事務所は示談書の書き方・サンプルをホームページ上に公開しており、無料で閲覧・ダウンロードが可能です。

ぜひご活用ください。

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痴漢の示談書

 

 

まとめ

ここまで解説したとおり、一括りに痴漢といってもどのような行為をしてしまったのか、自分がどのような対応を取るのかによって、結論が大きく変わります。

痴漢の現場から逃げ出したとしても早期に弁護士に相談し、対応を考えるべきです。

痴漢の事件でお悩みの方は、刑事事件に注力している弁護士に相談することをお勧めします。

 


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