刑事事件の示談|相場・流れ・メリットを徹底解説【示談書付き】

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

示談とは

刑事事件の多くは、加害者と被害者がいます。

例えば、盗撮、痴漢、強姦等の性犯罪や、暴行、傷害などの粗暴犯、窃盗、横領、詐欺、強盗などの財産犯などです。

示談とは、これらの被害者の方が被った心の傷や財産上の損害に対して、金銭を支払うことで解決しようとすることをいいます。

 

 

刑事事件の示談に相場はある?

上記のとおり、刑事事件の示談とは、犯罪被害者の方が被った「心の傷」や「財産上の損害」に対して、解決金として金銭を支払うことです。

 

心の傷(慰謝料)について

心の傷(精神的な傷)に対する賠償金のことを、慰謝料といいます。

では、慰謝料に相場はあるのでしょうか。

犯罪被害者の「精神的な傷つき具合」は、目に見えないため、それを量的に図ることは困難といえます。

また、刑事事件の場合、犯罪の種類が多種多様です。

例えば、強姦罪などの重大なものから、痴漢、強制わいせつ、暴行罪、盗撮、器物損壊、傷害罪などの犯罪があります。同じ罪名でも、被害の程度はまったく異なります。

例えば、傷害罪と一口いっても、寝たきりになるような重症案件から全治1週間程度の軽い怪我では精神的苦痛は異なるといえます。

さらに、刑事事件では、犯罪被害者の被害感情も、慰謝料の示談交渉の額に大きく影響します。

なぜならば、刑事事件において、示談交渉のパワーバランスは圧倒的に犯罪被害者が強いからです。

すなわち、犯罪者としては、示談の成否が今後の量刑に大きく影響する可能性があるため、少々高額でも何とか示談を成立させたいと考えます。

ところが、犯罪被害者は、そもそも示談するかしないかは自由です。

犯罪者を憎む気持ちが強い場合、いくら高額な慰謝料を提示されても受け入れてくれない可能性もあります。

このような刑事事件の性質からすると、示談成立のための慰謝料は「正解がない」といえます。

もっとも、示談金としてある程度の傾向はあります。

そのため、刑事事件専門の弁護士であれば、具体的な状況をもとに、示談金の予想額の見通しを立てることが可能でしょう。

そのため、慰謝料については、刑事事件に精通した弁護士へのご相談をお勧め致します。

 

財産上の損害について

財産上の損害については、財産上の価値が被害額となるため、基本的には慰謝料よりも算定がしやすいです。

例えば、1万円の商品を盗んで、その商品が使い物にならなくなった場合、損害額は1万円となります。

また、会社において、1千万円を横領した場合、損害額は1千万円となります。

しかし、事案によっては財産上の損害を算定しにくいものがあります。

以下、2つのパターンをご紹介します。

 

価値を算定しにくいケース

例えば、盗んだものが中古車だったとします。

この場合の財産上の価値は、新車価格ではなく、その自動車の時価となります。

しかし、時価がいくらかで争いとなることがあります。

自動車の場合は、ディーラーや中古車販売店から見積もりをもらうなどで、ある程度の時価を算定できますが、それが希少品や思い入れの品などの場合、示談交渉が難航する可能性があります。

例えば、売却しても二束三文にしかならないものでも、被害者にとっては貴重である場合、示談金は時価を大幅に上回る金額になるでしょう。

 

様々な損害を主張される場合

事案によっては被害者から財産上の様々な損害を主張されることがあり、この場合、どの範囲まで賠償義務があるのかが問題となります。

例えば、横領の事案で、被害者である会社から、調査費用(交通費などの実費)、調査のために費やした従業員らの時間(人件費相当額の損害)、会社の信用が失墜したことによる企業損害などを主張されるケースもあります。

 

 

刑事事件の示談の流れ

刑事事件の示談は、弁護士に依頼してから通常以下のような流れをたどります。

示談をスタートするためには、まず、被害者の連絡先情報(氏名や電話番号など)がわからなければなりません。

加害者本人が連絡先情報の開示を求めても、捜査機関はまず回答しません。

そのため、弁護士が代理人となって、被害者と連絡を取ることが一般的です。

まず、弁護士が検察官・警察官に示談の意向を伝えると、検察官などは被害者に示談の意思確認をしてくれます。

そして、示談に応じるか否かは未定でも、多くの場合連絡先情報を弁護士には開示してくれます。

このようにして、示談交渉を開始していきます。

 

 

刑事事件で示談しない場合の3つのデメリット

加害者の方の中には、金銭的な余裕がないため、あえて「示談をしない」という選択肢もあるでしょう。

しかし、このような選択は、次のデメリットがあるためお勧めできません。

 

更生することができない

犯罪被害者の方と、示談をするということは、加害者の方の更生につながります。

被害者は、加害者に対して、憎悪や恐怖の感情を抱いていることが多いです。

そのため、加害者としては、示談などせずに、刑罰を受けるという形で罪さえ償えば、「楽」に感じるかもしれません。

しかし、被害者の方と真摯に向き合わなければ、「被害の実態」を知ることはできません。

被害の実態を知ることができなければ、「真に反省すること」はできないのではないかと思われます。

反省なしに、更生はあり得ません。

また、被害者を無視して刑罰を受けると、将来、後悔するかもしれません。

数年後、数十年後、「あのとき自分は被害者を無視してしまった」という後悔は、とてもつらくのしかかると思います。

示談をしても、被害者の方の心の傷は癒えないかもしれません。

しかし、示談をするということは、少なくとも、被害者の方は、その時点で、法的な意味では加害者を許し、前に進もうとされていると考えられます。

したがって、示談をすることは、加害者の方の再犯を防止しするとともに、新たな人生を踏み出すために必要だと思います。

 

不起訴・刑の減軽の可能性が低くなる

示談をすることで、不起訴(刑事裁判がない状態)になったり、起訴されても刑を減刑してもらえる可能性がでてきます。

起訴したり、求刑を求めるのは検察官の仕事です。

検察官は、起訴や求刑の判断において、被害者の処罰感情を重視する傾向にあります。

また、示談をしているということは、加害者の方が「反省していること」の現れといえます。

したがって、示談すると情状がよくなり、刑が軽くなる可能性があります。

 

民事で損害賠償請求される可能性

民事裁判は刑事裁判とは別物です。

したがって、刑罰を受けてもそれで終わりではなく、後日、民事裁判で損害賠償請求をされる可能性があります。

通常、示談は、紛争の蒸し返しを防止するために、民事の賠償問題を含めてすべて解決します。

したがって、法的に適切な示談をすることで、後日の民事の損害賠償請求を回避できます。

 

 

示談成立後の裁判はどうなる?

示談の成立は、上記のとおり、刑事、民事ともに裁判に大きな影響を及ぼします。

刑事裁判

刑事については、そもそも、検察官が不起訴にしてくれる可能性が出てきます

特に、軽微な犯罪の場合は不起訴の可能性が高いと思われます。

また、重大な事件については、示談後も起訴される可能性があります。

しかし、その場合でも、情状がよくなるので刑が軽くなる可能性があります

民事裁判

示談をする際、通常、弁護士は清算条項という文言を入れて示談書を作成します。

この条項は、示談後に当該事件について、「追加の請求はできなくなる」という性質のものです。

したがって、民事裁判を起こされる可能性は極めて低いといえます。

また、仮に民事裁判を起こされても、基本的には被害者の請求は認められません。

 

 

刑事事件の示談のタイミング

示談は早い段階がベスト

刑事事件の示談開始は、早ければ早いほどいい良いと言えます。

なぜならば、刑事裁判では起訴されると99.9%が有罪となるからです。

したがって、不起訴を目指すのであれば、捜査段階において示談すべきです。

また、示談交渉はある程度時間を要します。

そのため、少しでも早いタイミングがベストです。

 

起訴後の示談交渉はやった方がいい?

では、起訴された後は、示談交渉をやる意味はないのでしょうか?

起訴されると、その刑事裁判を取り消すことはできません。

しかし、示談は、被告人にとって有利な情状の一つとなります。

例えば、示談をすることで、本来は懲役刑なのが、執行猶予になり、服役しなくてよくなるかもしれません。

したがって、起訴後であっても、示談のチャンスがあれば示談をすべきと考えます。

 

 

刑事事件の示談書

示談書を締結するメリット

示談が成立すると、弁護士は示談書を証拠として捜査機関や裁判所に提出します。

そして、捜査段階であれば不起訴が相当であること、裁判段階であれば執行猶予が相当であることを主張します。

このように、証拠として提出するため示談書は必ず作成すべきです。

また、上記のとおり、精算条項という文言を入れることで、民事裁判を予防できる効果もあります。

そのため、示談に際しては、専門家に相談し、できれば示談書を作成してもらったほうがよいでしょう。

 

示談書のサンプル・書式

当事務所では、示談書などの書式をホームページで公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能となっています。

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刑事事件の書式集

ただし、参考程度にとどめ、専門家に相談されることをおすすめします。

 

 

示談に関するよくある質問

示談したのに起訴されることがありますか?

示談は、被害者の方がその時点では加害者を許すことを前提で行います。

したがって、被害者の処罰感情が無くなったと考えられるので、告訴の可能性は低いといえます。

しかし、示談成立後、その時点で被害者が想定していなかった事実が出てくることがあります。

例えば、被害額が当初想定していた以上に大きくなった、などが典型です。

このような場合、示談後であっても、告訴をされる可能性があります。

もっとも、示談を成立させていることは、重要ですので、このような場合、不起訴を求める弁護活動を行っていくことを検討すべきでしょう。

 

示談金をつり上げられることがありますか?

多くの被害者の方は、感情的になるあまり、自分が受けた損害を現実よりも過大に評価する傾向にあると思います。

これは、被害者の方のお立場上、やむを得ないといえます。

しかし、被害を訴える方の中には、実際の被害はほぼ無いに等しいのに、法外な示談金を請求してくるケースもあります。

例えば、児童買春における美人局のケースです。

この場合、被害者本人ではなく、第三者(友人などと名乗りますが、反社会的勢力の場合があります。)が示談金の増額を要求してくることが見受けられます。

このようなケースでは、加害者側であっても、毅然とした態度を交渉に望み、相手から法外な請求をされている場合、反対に恐喝罪での刑事告訴を辞さないなどの姿勢を見せることもあります。

 

 

まとめ

以上、刑事事件の示談について、相場や流れ、メリットなどを解説しましたがいかがだったでしょうか?

示談は、加害者の方の更生のため、刑罰の回避・減刑、損害賠償請求の回避のためにとても重要です。

しかし、適切な内容での示談をしないと、後々トラブルになりかねません。

また、被害者の方は、加害者に対する恐怖心を抱いている場合が多く、このような場合、そもそも交渉の申し入れすら受け入れてもらうことができない場合があります。

このようなケースでは、弁護士を間に挟むことで、示談交渉が可能となることがあります。

さらに、示談交渉を成功させるためには、刑事弁護に精通した弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。

この記事が刑事事件でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

 
 


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