拘留とは?勾留との違い、拘留されるケースやポイントを解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  

拘留とは、刑法に定められた刑罰の一種であり、1日以上30日未満の期間にわたり、犯人を刑事施設に収容する刑罰をいいます。

拘留も懲役や罰金などと同様、犯罪に対する刑罰なのですが、これらに比べてなじみが薄いかもしれません。

また、同じく刑事手続きで登場する「勾留」と何が違うのか、疑問に思われている方もいらっしゃることと思います。

そこでこの記事では、拘留について、法的な意議、「勾留」との違い、拘留を科されるケースやこれを回避するためのポイントなどについて、弁護士が解説します。

拘留についてお調べの方は、ぜひ最後までお読みください。

拘留とは?

拘留とは、刑法に定められた刑罰の一種で、1日以上30日未満という比較的短い期間、犯人を刑事施設に収容する罰をいいます。

拘留の読み方

拘留は、「こうりゅう」と読みます。

 

拘留の期間

拘留の期間は、1日以上30日未満の期間、刑事施設に収容するというものです。

根拠条文
(拘留)
第十六条 拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。

引用元:刑法|電子政府の総合窓口

「刑事施設に拘置(こうち)する」とは、法務省が管轄する刑務所や拘置所(こうちしょ)といった施設に身柄を収容することをいいます。

懲役や禁錮の場合は刑務所に入ることが通常ですが、拘留については日数も短いため、刑務所に移動することなく拘置所のままで拘留刑を終えることも多いです。

拘留のポイントは、収容期間が1日以上30日未満と比較的短期間であることと、刑務作業が科せられない点です。

期間について、懲役や禁錮はいずれも「1月以上」とされているのに対し、拘留は最も重くとも1か月には及びませんので、これらの刑罰より軽いものといえます(刑法12条1項、13条1項)。

また、懲役では「刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる」と規定されているのに対し、禁錮では単に「刑事施設に拘置する」とされているのみであり、両者は刑務作業の有無の点で異なっています(刑法12条2項、13条2項)。

拘留はというと、上記のとおり「刑事施設に拘置する」とだけ規定されていることから、禁錮と同じく刑務作業は科されません。

拘留は収容期間が短いことから、「懲役の短いもの」と説明されることもありますが、刑務作業の有無まで考慮すると、「禁錮の短いもの」といった方がより正確といえるでしょう。

 期間 刑務作業
懲役 1月以上20年以下
(又は無期)
あり
禁錮 なし(希望すれば可)
拘留 1日以上30日未満

 

拘留と勾留との違い

ここまで、刑罰としての「拘留」についてご説明してきました。

一方、これと似て非なるものとして、「勾留(こうりゅう)」があります。

「拘留」と「勾留」は、いずれも刑事事件に関して身体を拘束する処分ないし手続きであり、しかも読み方が共通して「こうりゅう」であることから、非常に混同されやすくなっています。

しかし以下にご説明するとおり、両者の内容や性質はまったく異なるものです。

「拘留」とは刑罰の一種であり、有罪判決を受けることで科される罰則のことでした。

対して「勾留」とは、犯罪の容疑がかかっている容疑者を逮捕した後、これに引き続いて行う身体拘束のことをいいます。

逮捕という手続きによって容疑者の身柄を拘束できるのは72時間が上限とされており、これを超えてさらに容疑者の身体拘束を続ける場合は、容疑者を「勾留」しなければならないのです。

「拘留」が有罪判決の際に言い渡される刑罰の一種であるのに対し、「勾留」は、まだ容疑者として犯罪の嫌疑がかけられているにすぎない捜査段階での身柄拘束を意味します。

つまり勾留の場合は、犯罪行為へのペナルティとしてではなく、捜査上の必要から身柄を拘束されているに過ぎないということです。

なお、勾留の期間は当初10日間ですが、10日を上限に延長できるとされていますので、最大で20日間に及ぶ可能性があります。

位置づけ 期間
拘留 有罪判決によって科される刑罰 1日以上30日未満
勾留 捜査段階での身体拘束 最長20日間

「勾留」についてのさらに詳しい解説は、こちらをご覧ください。

 

 

拘留されるケースとは?

ここからは、実際にどのようなケースで拘留を科されることになるのかをご説明します。

拘留は刑罰の一種ですから、拘留を科されるのは、刑事裁判で有罪判決を言い渡された場合ということになります。

また、犯罪にはそれぞれ法定刑が定められていますが、その多くは懲役や禁錮、罰金などであり、拘留が定められている犯罪は多くありません。

拘留は期間が短く罰則としては非常に軽い部類に入りますので、一部の軽微な犯罪に限って規定されているのです。

具体的には、拘留を科される可能性のある刑法上の罪は、公然わいせつ罪(174条)、暴行罪(208条)及び侮辱罪(231条)などです。

また、刑法以外の法律で取り締まられている犯罪としては、軽犯罪法違反や酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律違反などの場合に、拘留の罰が科されることがあります。

 

 

拘留を回避するポイント

拘留は刑罰の一種ですので、拘留を回避するには、有罪判決を受けないようにすることが重要になります。

もっとも、日本の刑事裁判実務では、検察官に起訴された場合、統計的には99.9パーセント以上の確率で有罪となっています。

そこで、拘留の回避を目指す場合、起訴されてから無罪判決を取るのは現実的ではなく、不起訴処分を得ることが重要となってきます。

特に、一般的な刑事事件であれば、有罪判決が見込まれる場合であっても、有利な事情を立証することで判決を少しでも軽くするという方向の弁護が可能ですが、拘留の場合そもそもの罰則が軽いため、これをさらに軽くするという弁護方針は成り立ちにくくなります。

その意味でも、拘留を阻止するためには、起訴を回避するための捜査段階での弁護活動が重要な意味を持つといえるのです。

以下では拘留を回避するためのポイントをご紹介していますが、これはすなわち起訴を回避するためのポイントということもできるのです。

不起訴とは

不起訴とは、犯罪に対する検察官の処分のひとつであり、容疑者を起訴しないという判断をいいます。

証拠不十分のように、疑いはあるが裁判で有罪を立証できるほどではないとして不起訴となる場合もありますが、起訴猶予といって、起訴しようと思えば起訴できるけど、諸般の事情を総合的に考慮し、あえて不起訴とするという場合もあります。

起訴とは、「有罪判決を出して刑罰を科してくれ」という検察官の意思表示ですから、刑罰を与えることまではしなくても社会内で更生を図ることが可能だろうと判断された場合には、起訴猶予とされる可能性があるのです。

具体的には、容疑者の反省や被害弁償の状況、犯罪の軽微性などを考慮し、あえて起訴して刑罰を科すまでもないと判断された場合などが、起訴猶予として不起訴になる例です。

以下は不起訴となるためのポイントを整理したものであり、これらに共通するキーワードは「反省」です。

これらのポイントは、すべて容疑者の反省の態度の表れと見ることができるため、検察官が処分を決定するにあたって、有利な事情として考慮されるといえるのです。

不起訴処分についてさらに詳しくお知りになりたいときは、次の記事を合わせてご参照ください。

 

自首をする

不起訴処分を得るために重要なポイントのひとつは、自首をすることです。

自首とは、警察等の捜査機関に対し、自ら出頭して犯罪事実を申告することをいいます。

あえて自ら犯罪の事実を申し出て捜査に協力することから、一般に、自首は容疑者側にとって有利な事情と考えられています。

もちろん、自首をすればそれだけで全ての事件が不起訴となるわけではありませんが、拘留が科せられるかという程度の罪であれば、犯罪の中ではかなり軽微な部類に属しますので、自首によって不起訴となる確率は高まると想定されます。

刑事事件に注力するを取り扱う弁護士の中には、自首に同行するというサポートを提供している依頼を受けている弁護士もいます。

ひとりで自首をすることに不安がある場合は、このようなサポートを利用されると弁護士に自首へ同行するよう依頼してもよいでしょう。

自首は、ただでさえ不安がつきまとうものです。

弁護士に同行を依頼して自首することで、取り調べへの対応やその後の事件の流れなど、捜査への疑問を解消した状態で臨むことができるため、大きな安心材料になるといえます。

自首する際に弁護士に依頼するメリットについて、さらに詳しくはこちらをご覧ください。

 

示談交渉をする

次に被害者がいる場合は、被害者と示談交渉をすることも重要です。

「示談」とは、当事者同士の話し合いによって問題を解決することをいい、示談成立に向けて相手方と交渉することを示談交渉といいます。

通常、示談の際にはいくらかの示談金を支払います。

示談金は損害賠償の意味も含めた「解決金」のようなものですので、示談が成立すれば、少なくとも民事事件としては事件は解決しているということができます。

自首と同じく、被害者と示談が成立していれば常に不起訴となるというものではありませんが、やはり拘留という軽微な罰則の犯罪においては、示談の成立は非常に大きな意味を持ちます。

示談の成立によって被害が償われ、被害者も許すと言っているわけですので、検察官としても、あえて刑罰を科すには及ばないと判断しやすくなるのです。

もっとも、犯罪被害者の加害者に対する処罰感情は強いのが通常であり、刑事事件の示談を成立させることは容易ではありません。

ましてや、加害者自身で交渉するとなると、かえって相手方の感情を害してしまったり、そもそも連絡先さえ分からなかったりといったことが想定され、現実には相当困難であると言わざるを得ません。

被害者との示談についても、交渉のプロである弁護士の力を借りるのが最適といえるでしょう。

示談交渉における弁護士選びの重要性については、こちらをご覧ください。

 

取り調べに誠実に応じる

犯罪の容疑がかけられている場合、逮捕されていればもちろんのこと、逮捕されていなくても「在宅捜査」という形で、警察署に呼び出されて取り調べを受けることがあります。

取り調べに対する態度も、起訴・不起訴を決めるにあたっての考慮要素のひとつです。

自首と同じく、犯罪事実を正直に話し捜査に協力的な姿勢を見せることは、反省の態度の表れとして捉えられるのが通常です。

ただし、警察の取り調べを受けることはなかなかあることではありませんので、取り調べに対して本当にすべて話してしまってよいのか、不利になることはないかといった不安を抱くのは当然です。

そのような場合は、弁護士と綿密に打ち合わせを行った上で取り調べに臨むことをおすすめします。

刑事事件の経験が豊富な弁護士であれば、どのようなことを聞かれるかの見通しをある程度立てることができますので、事前に詳細なアドバイスをすることができます。

また、仮に想定外のことを聞かれた場合は、「弁護士と相談してからお答えします」といって、一度話を切り上げても良いでしょう。

いずれにしても、取り調べに臨むに当たって適宜弁護士から助言を受けることは、きわめて有効といえます。

取り調べの流れや注意すべきポイントについて、詳しい解説はこちらでご確認ください。

 

刑事事件に強い弁護士に相談する

以上のように、拘留ないし起訴を回避するために検討すべきことは色々ありますが、いずれにしても、刑事事件に強い弁護士に相談しておくことが有効です。

示談交渉のような法的処理を自身で適切に完結するのは現実問題として困難でしょうし、自首主や取り調べへの対応についても、弁護士の助言があるとないとでは安心感が大きく異なってきます。

特に、刑として拘留が視野に入ってくるような罪は一般的には軽微な犯罪といえますので、刑事事件を得意とする弁護士に依頼して上記の自首主や示談などを適切に進めていけば、不起訴処分を勝ち取ることも十分期待できます。

刑事事件における弁護士選びの重要性について、詳しい解説はこちらをご覧ください。

 

 

拘留についてのQ&A

拘留でも前科はつきますか?

拘留も有罪判決によって科される刑罰の一種ですので、前科となります

拘留は最長でも1か月に満たないものですが、期間が短いからといって、「すぐに出てこられる」と安易に考えてはいけません。

たとえ罰則が軽微でも前科は前科ですので、就職で不利になるなど社会生活を送る上での不利益が生じる可能性があります。

このように後々まで影響が尾を引く可能性を考えると、実際の収容期間が短期だからといって楽観することは禁物です。

そもそも犯罪を起こさないことが第一ですが、万が一拘留を科され得る罪を犯してしまった場合は、前記の拘留を回避するためのポイントに気をつけるとともに、刑事事件に強い弁護士に相談するなどの対応を取ることが望ましいでしょう。

 

拘留中は何をするの?

拘留は懲役よりも禁錮に近く、強制的な刑務作業を科されることはありませんが、自ら願い出て刑務作業に従事することはできます(これを「請願作業」といいます)。

刑罰の重さとしては、刑務作業が強制される懲役の方がより重いものと位置づけられてはいますが、「何もせずにただじっと房の中にいる」というのもそれはそれで辛いようで、実際は気を紛らわせるために請願作業を希望される方が多いようです。

 

拘留と留置との違いは?

「留置」とは、容疑者等の身柄を拘束すること一般を指す、やや定義のあいまいな言葉です。

通常は、逮捕後に継続する身体拘束の状態を指して「留置」といいますが、勾留による身体拘束についても「留置されている」という言い方をする場合もあります。

このほか、精神鑑定などの必要のために身柄を拘束する「鑑定留置」や、罰金を支払えない場合に科される「労役場留置」などの場面でも、「留置」という表現が用いられています。

 

まとめ

この記事では、拘留について、その意味や「勾留」との違い、拘留を回避するためのポイントなどについて解説しました。

記事の要点は、次のとおりです。

  • 拘留とは、刑法に定められた刑罰の一種であり、1日以上30日未満の期間、犯人を刑事施設に収容する刑罰をいう。
  • 拘留では刑務作業が科されないため、拘留は「禁錮の短いもの」と考えることができる。ただし、自ら希望して刑務作業に従事することは可能である(請願作業)。
  • 拘留は刑罰として軽いことから、公然わいせつ罪や暴行罪、侮辱罪など、これが科され得る罪も比較的軽微なものに限られている。
  • 起訴された場合の有罪率は99.9パーセント以上であるため、拘留を回避するためには、実質的には不起訴処分を得ることが必要となる。そのためには、自首をする、被害者と示談する、取り調べに誠実に応じるといったように、反省を態度で示すことが重要である。
  • 自首、示談交渉、取り調べへの対応のいずれの場面においても、刑事事件に強い弁護士に依頼してその助言の下で対応にあたるのが有効といえる。

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