事情聴取で気をつけることは?時間や拒否できるかを弁護士が解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

事情聴取で気をつけることは?時間や拒否できるかを弁護士が解説

突然、警察から「話を聞きたい」と呼び出しを受けると、「このまま逮捕されるのではないか」と強い不安を感じるものです。

事情聴取は原則として「任意」であり、拒否すること自体は可能です。

しかし、正当な理由なく拒否し続けると「逃亡の恐れがある」とみなされ、逮捕状を請求されるリスクがあります。

所要時間は30分程度で終わる場合もありますが、事件の内容によっては半日以上かかることも珍しくありません。

この記事では、事情聴取で気をつけることや当日の流れ・時間、不利にならないための回答のコツを、刑事事件に強い弁護士が分かりやすく解説します。

事情聴取とは?

事情聴取の目的と基本的な意味

事情聴取とは、警察官や検察官が、事件の捜査のために、事件に関する情報を知っている可能性がある人から話を聞くことをいいます。

事情聴取は、捜査機関が必要な情報を集め、事件の証拠を探すために行われるものです。

話を聞かせてほしいという連絡が警察などからあれば、それは事情聴取をしたいという意味だと捉えてよいでしょう。

 

事情聴取と取り調べの違い

よくある疑問として、事情聴取と取り調べは一緒なのか、といったものがあります。

事情聴取と取り調べは、ほとんど同じですが、対象となる人物の立場が違います。

事情聴取は、事件に関する情報を知っている可能性がある人(いわゆる参考人)に対して行われるものです。

これに対し、被疑者(事件の犯人ではないかと疑われている人)が受ける事情聴取が「取り調べ」と呼ばれています。

どちらも任意での手続きですから、拒否することは可能です。

ただし、被疑者が取り調べを受けることを拒否していると、実務上逮捕されるリスクが上がることがあります。

 

【比較表】被疑者(疑われている人)と参考人の違い

事情聴取を受ける参考人と被疑者との違いは以下のとおりです。

参考人は被疑者ではない以上、事情聴取を拒否したとしても特に不利益は生じません。

被疑者には黙秘権がありますが、取り調べを拒否したとしても捜査機関は簡単には諦めません。

この場合は、弁護士と一緒に対応方針をしっかりと決めておくべきでしょう。

項目 参考人(目撃者・被害者など) 被疑者(容疑者)
立場 事件を目撃・体験した人 犯人と疑われている人
呼び方 事情聴取 取り調べ
強制力 任意 任意(※逮捕後は取調室まで強制的に連れて行かれる可能性あり)
逮捕のリスク 極めて低い 事案によって可能性あり

 

突然家に警察が来るケースや電話で呼び出される理由

突然家に警察が来る場合、そのほとんどは被疑者として事情を聞きたいと考えてられているケースや、家宅捜索及び逮捕が行われるケースです。

いずれにしても、何かしらの犯罪を行ったと疑われている状況といえます。

電話で呼び出しが来る場合、その理由はいくつか考えられます。

被疑者として取調べをするための呼び出しだけでなく、事件に必要な情報を持っている参考人として捉えられている場合もあります。

他方、全く事件性のない落とし物の電話や間違い電話といった可能性もあります。

また、最近では警察を名乗る詐欺電話がかかってくることも少なくありません。

なお、被疑者の呼び出しが電話で行われる場合、警察はその時点では被疑者を逮捕する必要性があるとは考えていないことが多いです。

電話の折り返しをしなかったり、取り調べを拒否していたりすると、警察の考えが変わる可能性がありますので、よく考えて対応をしましょう。

 

 

警察の事情聴取の流れと聞かれること

事情聴取は任意?拒否することはできる?

事情聴取は、あくまでも任意です。

したがって、原則としては拒否することが可能です。

このことは、刑事訴訟法でも明確に定められています(刑事訴訟法198条1項ただし書、同法223条2項)。

また、呼び出しに応じて出頭した場合でも、黙秘権・供述拒否権があります。

そのため、答えたくない質問に答える義務はありませんし、供述調書に署名押印(指印)する義務もありません(刑事訴訟法198条2〜5項、同法223条2項。黙秘権・供述拒否権については、憲法38条1項)。

引用:刑事訴訟法|e−GOV法令検索

引用:憲法|e−GOV法令検索

例外は、逮捕・勾留されている容疑者の場合です。

取り調べが任意である根拠として先ほど紹介した刑事訴訟法198条1項ただし書きには、「逮捕又は勾留されている場合を除いては」という文言があります。

この文言の反対解釈として、逮捕・勾留されている容疑者には事情聴取に応じる義務があるという考え方があります。

そして、このように判断したと考えられている最高裁判例も存在します(最高裁平成11年3月24日判決)。

最高判例:最判平成11年3月24日|最高裁ホームページ

ただし、この場合でも、黙秘権・供述拒否権は認められていますし、供述調書に署名押印する義務もないことには変わりありません。

ワンポイント:取り調べを拒否するかどうか

最近では、取り調べにおいて捜査機関の都合のいい供述調書を作成させないよう、原則として取り調べを拒否するという弁護方針も一般的になりつつあります。

犯行を認めている事件でもこのような方針で不起訴となるケースも珍しくはありません。

したがって、取り調べを拒否することが必ずしも刑事処分に悪影響となるわけではありません。

しかし、任意での取り調べを拒否していると、捜査機関は逮捕を行うために、裁判所に逮捕令状を請求する可能性があります。

取り調べが任意といっても、このような実務上のリスクを踏まえて対応方法を考える必要があります。

逮捕されることを最優先で避けたいと考えるのなら、事情聴取に応じるという選択も十分考えられます。

日程調整などはある程度柔軟に対応してもらえることが多いですから、警察の指定する日時が難しければ、代替案を提案してみてください。

事情聴取には応じるけれども、署名押印はせずに供述調書を作成しないという対応を取ることも可能ですから、個別の事案に応じて弁護士と相談して対応方法を決めましょう。

事情聴取の注意点については、下記ページにも詳しく解説しておりますのでご覧ください。

 

事情聴取の一般的な流れ(受付から帰宅まで)

事情聴取の一般的な流れ(参考人の場合)

 

参考人の場合

①受付

警察署や検察庁の受付で、自分の名前や誰から呼び出しを受けたかを伝えましょう。

待合スペース等で少し待った後、警察官や検察事務官などが迎えに来て取調室に向かうことになります。

 

②事情聴取

身分証などで呼び出した人に間違いがないかを確認された後、事情聴取が始まります。

聞かれたことに対して、知っていることをそのまま答えれば十分です。

何か見ないと答えられないような質問があれば、その旨を伝えて話をするとスムーズかもしれません。

 

③休憩

何も言わなくとも1〜2時間に1回は休憩が設けられると思います。

ただ、急にお手洗いに行きたくなる場合などもあるでしょう。

そのような場合は遠慮なくその旨を伝えて、一旦休憩をもらうことができます。

 

④帰宅

供述調書の確認を行い、内容に問題がなければ署名等を行います。

その後、また受付まで案内され、帰宅となります。

なお、検察庁での事情聴取の場合は入館証も返却することになるはずですから、受付で返却するまで肌身離さず持っておくようにしましょう。

 

被疑者の場合

被疑者としての事情聴取の流れは、次のとおりです。

事情聴取の流れ図

ワンポイント:供述調書にサインするときは要注意!

署名押印前には必ず内容の確認があります。

自分が話した内容と供述調書の記載が異なっていれば、そこで絶対に訂正を申し入れなければなりません。

起訴されれば、供述調書は証拠として提出されることになりますが、一度署名押印した供述調書の内容を後から覆すことは極めて困難だからです。

もしも、捜査機関が供述調書の訂正に応じてくれない場合には、絶対にその供述調書に署名押印をしてはいけません。

 

事情聴取で必ず聞かれること

主に被疑者として呼ばれた事情聴取で必ず聞かれることになると思われる質問は以下の表のようなものです。

 

事件に関する質問

  • 犯行時やその前後の行動(アリバイの有無)について
  • 犯行に至る経緯
  • 事件当時の状況について
  • 犯行の動機
  • 余罪があるかどうか

 

事件以外に関する質問

  • 生い立ちや学歴、職歴
  • 家族関係
  • 被害者との関係性など
  • 病気の有無
  • 趣味や嗜好(性犯罪などでは特に)
  • 暴力団との関係性の有無(薬物事犯では特に)

実際にはもっと1つ1つの質問を細かく聞き取られることになります。

これらの質問以外でも、捜査機関が必要と考えた事項に関する質問を幅広く受けることになります。

特に事件の内容に争いがある場合、何の事前準備もなく事情聴取を受けることは極めて危険です。

しっかりと弁護士と打ち合わせをしてから臨むことをお勧めします。

 

 

事情聴取の平均時間はどれくらい?

警察から呼び出された際、最も気になるのが「いつ帰れるのか」という点でしょう。

ここでは、事情聴取にかかる時間の目安と、長引いた際の法的なルールを解説します。

 

事情聴取の平均は2〜3時間

事情聴取の平均的な所要時間は2〜3時間程度です。

ただし、事件の内容やあなたの立場によって以下のように大きく前後します。

  • 30分〜1時間程度

目撃した事実の確認や、簡単な書類作成のみで済む場合。

  • 半日以上(5〜8時間)

複雑な事件や、容疑者(被疑者)として本格的な追及を受ける場合。

特に、容疑者として呼ばれており、容疑を否認している場合には、1回の時間が長くなったり、呼び出し回数が多くなったりする傾向があります。

 

事情聴取の「時間制限」と「休憩」のルール

「事情聴取に一度入ったら何十時間も出られないのでは?」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、実際にはそんなことはあり得ません。

現在の実務では事情聴取が違法とならないよう、一定の制限が設けられています。

  • 1日の上限は8時間まで

原則として、1日の聴取時間は8時間を超えないよう制限されています。

  • 1〜2時間に1回の休憩

集中力の欠如による虚偽の自白を防ぐため、こまめな休憩が義務付けられています。

 

深夜の事情聴取や休憩がない場合の対処法

事情聴取はあくまで「任意」です。

深夜に及ぶ無理な引き止めや、休憩も与えないような強引な進め方は許されません。

そのような事情聴取で得た供述は、違法な捜査によって得た証拠として裁判などで使えない可能性があります。

もし「身体がつらい」「明日の仕事に支障が出る」と感じたら、遠慮なく取調官に中断を申し出てください。

もし応じてくれない場合は、弁護士を通じて警察に正式な苦情を申し立てることで、不当な拘束を防ぐことができます。

 

 

事情聴取で絶対に知っておくべき「気をつけること」

事情聴取を拒否し続けないようにする

参考人としての呼び出しであればともかく、被疑者として呼び出しを受けている場合、事情聴取を拒否し続けることにはリスクがあります。

裁判所の運用として、事情聴取を拒否している場合には逮捕状が簡単に出ることが多いです。

逮捕をどうしても避けたいという場合には事情聴取を拒否し続けないようにしましょう。

 

答えたくない場合には黙秘

事情聴取を受ける場合でも、何でも絶対に答えないといけないというわけではありません。

被疑者には、喋りたくないことは喋らなくていいという黙秘権が保障されています。

答えたくない質問をされた場合、適当に話したり嘘をついたりするのではなく、黙秘をするようにしましょう。

 

記憶が曖昧な場合や覚えていない場合の対処法

記憶が曖昧な場合や覚えていない場合に、適当なことを勘で答えるのは絶対にやめましょう。

このような場合は、証拠を見るなどしてしっかりと思い出してから話すか、黙秘するかを選ぶようにしてください。

後から供述と矛盾する証拠があることが発覚した場合には、供述の信用性が大きく下がり、他の供述も含めて信用してもらえなくなる可能性があります。

また、適当に答えたことがそのまま供述調書に残り、実際に起きたこと以上に悪い事実関係で処分が決められるといったことにもなりかねません。

 

供述調書の署名・指印には細心の注意を行う

供述調書に署名や指印をした場合、その供述調書の内容は二度と訂正できないと思ってください。

署名や指印は、中身を全て確認して間違いないと判断した証拠として扱われます。

供述調書の内容を裁判などで争ったとしても、その主張が認められる可能性は極めて低いと考えなければなりません。

くれぐれも供述調書に署名・指印をする際は細心の注意を払うようにしてください。

 

違法な取り調べには毅然と対応する

捜査機関の中には、自白を取るためであれば違法スレスレのことも平気でやる者もいます。

自白した方が有利になるといったことを匂わせたり、脅迫まがいの取り調べを行ったりされた場合でも、決して捜査機関に合わせた供述はしないでください。

違法な取調べに対しては、弁護人を通じて警察署宛に抗議文を送るなどの対応を取ることができます。

組織ぐるみで違法な取調べに手を染めているような場合はほぼありません。

毅然とした対応を徹底することで違法な取り調べは止めることができますから、少しでもおかしいと感じた場合は弁護士にきちんと相談をしましょう。

 

内容に不信感がある場合はサインせず弁護士へ相談する

供述調書や取り調べの内容に少しでもおかしいと感じた場合には、絶対に署名等をしないでください。

そして、おかしいと感じた内容について弁護士に相談して、今後の対応方法を一緒に考えてもらうようにしましょう。

 

 

事情聴取についてのQ&A

事情聴取を英語で言うと何ですか?

事情聴取は、英語では「inquiry」、「police interview」、「Police Questioning」などと訳されます。

 

任意での事情聴取という意味合いでは、「Police Questioning」がよく使われているようです。

とある警察署が発行している被害者の手引きには、被害者が受けることを想定した事情聴取の訳語として「Police Questioning」が使われています。

参考:被害者の手引き(5P) |三重県警察 

 

事情聴取に弁護士は同席(立ち会い)できますか?

刑事訴訟法などの法律や関連する規則には、弁護人が事情聴取に立ち会えるかどうかを定めた条文が存在しません。

また、裁判例においても弁護人の取り調べ同席を権利として認めたものは存在していません。

実務では、警察や検察官が同席を拒否することが圧倒的に多い状況が続いていますので、実際に弁護士に取り調べに立ち会ってもらうのは困難です。

 

ワンポイント:取り調べへの同席は認められるべき

上で解説したとおり、警察や検察官は弁護士の取り調べ同席を認めようとしません。

しかし、弁護士の立場からは、違法・不当な取り調べを防止して冤罪を防ぐため立会いが認められるべきとの考えが一般的です。

実際に、EUの一部の国や韓国などでは弁護人立会権が認められています。

憲法の各種規定を根拠とすることも考えられるところです。

弁護士を取り調べに立ち会わせない現在の運用は、冤罪の可能性を高めるものと言わざるを得ません。

 

事情聴取で録音するのは違法ですか?

事情聴取の録音を禁じる法律は存在しません。

したがって、録音をしていたとしても、違法になることはないといえます。

しかし、実際には警察にバレることなく事情聴取の録音をすることはほぼ不可能です。

取調室に入る前にある程度は持ち物の確認をされますし、施設管理権を根拠に取調室への録音機器の持ち込みを拒否されることが一般的だからです。

もしも取調室の中に録音機器を持ち込めたとしても、延々と録音を中止するよう命令されるだけです。

録音をどうしてもやめないという場合には、取り調べが中止され、被疑者が取り調べを拒否した場合に準じて、逮捕状を請求するという方針が取られる可能性もあります。

事情聴取の録音をしようと考える場合には、このようなリスクも踏まえて、慎重に判断することをお勧めします。

 

 

まとめ

事情聴取に呼び出された場合、自分はどのような立場で呼ばれているのか、何の用件で呼ばれているのかなどについて、事前にできる限り確認してから臨むことが重要です。

事情聴取は任意である以上、断ることができるのが原則ではありますが、理由もなく拒み続けていると逮捕のリスクがありますので、応じるつもりがあるという意思を伝えたうえで、日時・場所の調整に応じてもらわなければなりません。

長時間にわたるような違法な事情聴取は行われていないか、強引に不都合な話をさせようとしていないか、話した内容どおりの供述調書が作成されているかなど、事情聴取では注意すべき点が多数存在します。

呼び出しがあった時点で弁護士に相談いただければ、弁護士から警察に呼び出しの理由を確認したり、違法な事情聴取に対して毅然と抗議するなど、大きなサポートとなります。

事情聴取に立ち会ってタイムリーにアドバイスをしたり、事情聴取の行われている部屋の前で待機していつでもフォローできるようにしておくということができるケースもあります。

事情聴取にご不安がおありの方は、ぜひ、弁護士に相談・依頼なさることをお勧めします。

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