書類送検とは?前科の有無や逮捕との違いを解説

警察から「書類送検する」と言われ、「前科がついて人生終わりではないか」「会社にバレてクビになるのでは」と強い不安や絶望を感じていませんか?
結論からお伝えすると、書類送検されただけで直ちに前科がついたり、人生が終わったりすることは決してありません。
書類送検は「逮捕」とは異なり、身柄を拘束されずに日常生活を送りながら捜査が進むため、適切な対応をすれば「不起訴(前科なし)」を勝ち取れる可能性があります。
統計上、書類送検から起訴される確率は約3分の1ですが、弁護士を通じた示談などによって3分の2は不起訴となり、これまで通りの生活を守ることは十分に可能です。
この記事では、書類送検の意味や流れ、会社バレのリスク、そして大切な人生を守るために今すぐすべきことを、刑事事件に精通した弁護士がわかりやすく解説します 。
書類送検とは?意味と「逮捕」との違い
書類送検とは、警察から検察に対して、捜査した事件の証拠や記録を引き渡すことを指します。
法律用語ではなく、主に報道機関が使用する用語として定着しています。
この意味のとおり、書類送検は、単に事件の記録等が警察から検察に移るだけであり、それ以上の意味は何もありません。
よくある誤解として、「書類送検されたということは被疑者が犯罪を行ったことが証明された」「書類送検をされたから刑事罰を受けるのだろう」といったものがあります。
これらはいずれも間違いです。
書類送検された後、検察官が事件の記録を検討し、起訴するだけの証拠がないと判断した場合には不起訴(嫌疑不十分)処分が下されます。
また、犯行が間違いない事案でも、示談の成立等の事情を踏まえて、書類送検後に不起訴になる例も珍しくありません。
「逮捕」と「書類送検」の決定的な違い
同じような報道のされ方をするものとして、逮捕が挙げられます。
こちらは法律用語であり、被疑者が逃亡したり証拠を隠滅したりすることを防ぐために、一時的に身柄を拘束する手続きを指します。
逮捕をされたということは、当該事件の犯人ではないかと疑われていることになりますが、「逮捕=犯罪者」と決まるわけではありません。
あくまでも容疑がかかっているだけで、その後の捜査で起訴されずに釈放されている事件も山ほどあります。
逮捕されたことで犯罪者であることが間違いないかのような報道がされることがよく見受けられますが、この点は明確に誤導ですので、注意してください。
| 書類送検 | 逮捕 | |
|---|---|---|
| 意味 | 警察から検察へ、事件の証拠や記録が引き渡されること | 被疑者が逃亡・証拠隠滅を行わないように一時的に身体拘束をすること |
| 法律用語 | ✕ | ◯ |
| 有罪・処罰を受けることが決まっているか | ✕ | ✕ |
なぜ「逮捕」ではなく「書類送検」になるのか?
逮捕は人の行動の自由を奪うものですので、逮捕する場合には法律上厳しい要件があります。
すなわち、人を逮捕するには、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と「逮捕の必要性」がなければなりません(刑訴法199条2項)。
具体的には、以下のようなケースでは通常、書類送検(在宅捜査)となります。
- 証拠がすでに揃っている
- 定まった住所や仕事がある
- 捜査に協力的
逆に言えば、これらの条件を満たさない場合は、警察は書類送検ではなく「逮捕」を選択します。
「書類送検だから安心(意味ない)」は大誤解!後から逮捕されるケース
「書類送検だからもう安心」と考えるのは危険です。
手続きの途中で以下のような不誠実な対応をすると、後から身柄を拘束(逮捕)されるリスクがあります。
- 警察や検察からの呼び出しを無視し続ける
- 被害者や目撃者に接触して、口裏合わせを疑われる行動をとる
- 無理に証拠を隠そうとする
「書類送検=軽い罪」と思われがちですが、実は書類送検か逮捕かは、刑罰の重さとは直接関係ありません。
重大な事件であっても、証拠が揃っており逃亡の恐れがなければ書類送検になります。
逆に、軽い罪でも身元が不明なら逮捕されます。楽観視せず、早期に適切な法的対応をとることが重要です。
書類送検で前科は付く?
書類送検された「だけ」で前科がつくことはない
書類送検された場合、前科が付くのでしょうか。
結論をいいますと、書類送検されたことそれ自体で前科が付くということはありません。
そもそも前科とは、犯罪を犯し、それが起訴されて有罪判決を受けたということを意味します。
一方、書類送検とは、事件記録が検察庁に送られたことを意味するにすぎず、手続の流れ上は、起訴・不起訴以前の段階ということができます。
ですので、書類送検それ自体が前科となることはなく、送致を受けた検察官がこれを起訴し、有罪の判決が確定して初めて前科が付くことになります。
「前科」と似て非なる「前歴」とは?
前歴とは上記のとおりあくまでも捜査の対象になったことがあるという事実上の履歴に過ぎませんので、前歴が付くことによって法的になんらかの不利益を受ける、ということはありません。
書類送検された場合、前科はつきませんが「前歴(ぜんれき)」は残ります。
- 前科: 刑事裁判で有罪判決を受けた経歴
- 前歴: 容疑者として警察や検察の捜査対象になったという履歴
たとえ冤罪(事実無根)であったとしても、捜査対象になった事実自体は動かせないため前歴が残ることは避けられません。
しかし、前歴とは上記のとおりあくまでも捜査の対象になったことがあるという事実上の履歴に過ぎませんので、前歴が付くことによって法的になんらかの不利益を受ける、ということはありません。
書類送検されるとどうなる?流れと期間

①呼び出し・取り調べ(書類送検から1か月〜3か月後程度)
書類送検後は、検察官から呼び出されて検察庁での取り調べを受けることになります。
呼び出しの方法は電話か手紙のどちらかです。
手紙の場合は取り調べを行う日時が指定されていますが、都合がつかなければすぐに連絡を入れて日程の再調整をお願いしましょう。
検察官の取り調べは、一般的に警察での取り調べよりも簡易的になることが多いです。
既に警察が一通りの供述調書を作成しており、証拠も集め終わっているため、その確認が主になるからです。
ただ、否認している事件であれば、起訴不起訴の判断を慎重に行うため、または自白を獲得するために警察と同様長時間の取り調べを行うこともあります。
取り調べの回数は事件によって異なりますが、罪を認めている事件は概ね1回で済みます。
他方、否認している事件や事案が複雑な事件では複数回の取り調べが行われることもあります。
検察官の取り調べを受ける場合の注意点は、以下のページを参考にしてください。
②検察による起訴・不起訴の判断
検察官が必要と判断した事項に関する取り調べが全て終わると、検察官はその事件について起訴するか不起訴にするかを判断します。
犯罪の証拠が揃っているか、揃っている場合でも起訴することが妥当といえる事情があるのかということを総合的に考慮して判断が下されます。
担当検察官は1人で処分を決定するのではなく、必ず処分を下す前に上席の決裁を取る必要があります。
そのため、複数の検察官が妥当だと判断した処分が下されることになります。
起訴された場合については次の項目で説明するように、裁判を受け、判決を言い渡されます。
不起訴となった場合は、当然裁判は開かれませんので、刑罰を受けることなく、事件は終了となります。
前科もつきません。
なお、不起訴には様々な理由がありますが、主なものとしては以下の4つです。
| 処分 | 主な理由 |
|---|---|
| 起訴猶予 | 犯罪の証拠は揃っているが、検察官の裁量で起訴する必要はないと判断された場合 |
| 嫌疑不十分 | 犯罪の証拠が十分に揃わず、起訴をしても有罪を取れない可能性が相当程度あると判断された場合 |
| 嫌疑なし | 人違いであったり、犯罪の証拠がないことが明らかと判断された場合 |
| 罪とならず | 問題とされていた事実が犯罪を構成しない、もしくは犯罪の成立を阻却する事由(正当防衛など)があることが明らかと判断された場合 |
③刑事裁判での判決
刑事裁判を受ける場合、2つのパターンがあります。
1つは公判請求(正式起訴)をされた場合です。
この場合は公開の法廷で裁判が開かれ、被疑者自身も出廷した上で、裁判官から判決が言い渡されることになります。
もう1つは略式手続による起訴をされた場合です。
略式手続とは、一定の条件を満たした事件について、書類上の審査のみで罰金刑を言い渡すことができる制度です。
この場合、公開の法廷で裁判は開かれませんので、家で裁判所からの判決書が届くのを待って罰金を納付すれば全ての手続きは終了します。
略式手続は被疑者が犯罪を認め、手続の利用に同意している場合にのみ利用されますから、100%有罪判決が出ます。
書類送検された人の起訴・不起訴率は?
日本の刑事事件では「起訴されると99%以上の確率で有罪になる」と言われますが、そもそも送検された事件が起訴される確率(起訴率)はどの程度なのでしょうか。
法務省の令和6年度の『犯罪白書』の統計によると、認知された刑事事件全体の割合は以下のようになっています 。
このように、送検された事件のうち実際に起訴されるのは全体の4割にも満たない程度であり、残りの約6割弱は不起訴(前科がつかない形)で終了しています。
参考:令和6年版犯罪白書
在宅事件はさらに起訴率が低い傾向にある?
在宅事件のみの起訴率は公表されていませんので、正確な数字は定かではありません。
しかし、一般的に在宅事件として扱われるのは、比較的軽微な事件が多いです。
したがって、身体拘束を受けずに書類送検されている場合の起訴率は、上記の統計よりも更に低いと考えるのが自然でしょう。
ただし、「在宅事件のまま書類送検されたから起訴されない」などと楽観視するのは誤りです。
起訴されるか否かは、以下の要素等から総合的に判断されます。
- 事件の性質や悪質性
- 本人の反省の態度や前科・前歴の有無
- 被害者との示談の有無
特に被害者がいる事件では、いかに示談を成立させられるかが起訴・不起訴の分かれ目となることが多いです。
ご自身の状況で「起訴されるリスクがどれくらいあるか」「不起訴を狙えるか」の的確な見通しを立てるためにも、なるべく早い段階で刑事事件の経験が豊富な弁護士へ相談することをお勧めします。
書類送検されたことが会社にバレる?
会社などにお勤めの方が書類送検された場合、勤務先にその事実が知られてしまうのか、不安なことと思います。
書類送検されたという事実が会社に知られる可能性は低いと考えます。
しかし、可能性はゼロではありません。
会社に知られてしまう事例としては、次の場合が考えられます。

事件が実名報道されてしまった場合
まず、事件が実名報道されてしまった場合では、会社に知られてしまうのもやむを得ません。
もっとも、世間では日々多くの刑事事件が発生しており、報道されるのはそのうちのほんの一部です。
実名報道されるかどうかについては、何か明確な基準があるわけではなく、最終的には各報道機関の判断しだいということになります。
書類送検になる、すなわち容疑者(被疑者)の身柄を取らないような事件は、数ある事件の中でも相対的に軽微な事案であることが多いでしょうから、社会の抱く関心の観点から、報道されないか、されるとしても実名は伏せられる、ということも十分考えられます。
会社に通報された場合
事件の被害者や目撃者があなたやその勤務先を知っている場合、会社に通報される可能性があります。
警察が会社に連絡した場合
警察が職場に接触するケースとしては、以下のような場合が考えられます。
- 捜査の過程で同僚や上司などの周囲の人物から事情を聴取する必要が生じた場合
- 職場のデスク周りに証拠品が存在する可能性がある場合
- 事情を知る関係者からの密告や投書があった場合
- その他容疑者の会社での状況を捜査する必要がある場合など
身柄事件の場合、身体拘束が続く間は会社に出勤できませんので、どこまで詳細を話すかはともかくとしても、何らかの理由を説明する必要があります。
しかし、在宅事件であれば、取調べの日程は相談すればある程度調整もしてもらえます。
したがって、その日だけ有給休暇を取得するなどして上手く工夫すれば、会社に知られることなく捜査に対応していくことも可能でしょう。
書類送検後に不起訴を獲得するためのポイント

「書類送検後の流れ」の項目でもご説明したとおり、書類送検された後は、まず検察が起訴・不起訴を判断し、起訴されれば刑事裁判に移行する、という流れとなります。
書類送検された場合、どのように対応するのが最善なのか、ポイントをご紹介します。
検察からの呼び出しには誠実に応じる
検察からの呼び出しがあれば、誠実に応じるようにしましょう。
呼び出しを無視したりすると印象が悪くなるだけでなく、状況によっては逮捕される可能性もあります。
仕事などで忙しい、などのご事情もあるかと思いますが、可能な限り調整するなどして応じる姿勢を見せることが大切です。
不起訴獲得のため示談交渉する
被害者がいる犯罪では、示談交渉を成功させることが不起訴を獲得するために重要となります。
すなわち、検察は起訴するか否かの判断において、被害者の処罰感情を重要視します。
示談が成立して、被害者の処罰意思が無くなると、重大事件を除き、起訴の必要性が乏しいと判断してくれる可能性が出てきます。
そのため、示談交渉を早期に進めていくことがポイントとなります。
起訴の場合には裁判に備える
不起訴となった場合、事件はそこで終了です。
一方、起訴された場合、刑事裁判を見据えた準備が必要となります。
略式起訴になり罰金刑で済む場合でも、どの程度の金額となりそうかある程度予測を立てて用意しておく必要があります。
また、正式な刑事裁判となった場合、少しでも寛大な処分となるように、弁護活動のための下準備(こちらに有利となる証人や証拠の収集など)を進めておきたいところです。
いずれの場合であっても、刑事事件の処理経験を豊富にもつ弁護士にあらかじめ依頼し入念な打ち合わせをしておくことで、事件を最善の形で終わらせることができるでしょう。
事件の見通しを刑事事件に強い弁護士に相談する
起訴されるか否かによってその後の流れが大きく変わってきますので、まずは起訴の見込みについて、弁護士に相談されることをお勧めします。
被害者がいる事件の場合は、示談を成立させることができれば不起訴となる確率が高まることが期待できます。
また、そうでない事件でも、起訴される見込みがどの程度あるか、仮に起訴された場合はどう対応するか、といった点について、専門家から助言を受けておくことは有用であるはずです。
【解決事例】書類送検・前科を回避できたケース
弊所で実際に処理した事件のうち、書類送検や前科を回避できたケースとして、以下のようなケースがあります。
- 罪名:都道府県の迷惑行為防止条例違反
- 結果:示談成立、書類送検前に終了
Aさんは、街中で綺麗だと思った人の全身を撮影し、後から見返すということをしていました。
ある日、商業施設内で同じように女性の後ろ姿を無断で撮影したところ、女性の家族がその場を目撃しており、盗撮をしたと疑われてしまいました。
Aさんから聞き取った内容を前提にすると、撮影している時間や態様などから、撮影罪や都道府県の迷惑行為防止条例違反にあたらない(無罪である)可能性も十分にある事案でしたが、万全を期すために女性との示談交渉も行うこととしました。
弁護人が女性と交渉する際には無断で撮影されて気分を害することについては十分理解できること等、最大限寄り添いました。
その上で、法的には単なる肖像権侵害に当たるかどうかであり、犯罪となる可能性は低いと考えていることを伝え、双方にとって損がない形で終わる方法として示談を提案し、了承してもらうことができました。
その結果、書類送検をそもそも行わずに事件を終了させることができました。
書類送検が行われなかったということは、捜査も終了しており、刑事処罰を受ける可能性が0になった(前科を回避した)ということになります。
書類送検に関するよくある質問
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書類送検されたら会社をクビになりますか?
しかし、書類送検は警察の捜査が終了した後、検察官の判断を仰ぐために事件の記録を移動させるだけの手続きです。
書類送検をされたこと自体に大きな意味はありません。
したがって、書類送検をされたから会社をクビになるということはあり得ないといえます。
ただし、犯罪を行った事実が間違いないのであれば、起訴される前であっても会社から懲戒処分を受ける可能性はあります。
そのような場合に、書類送検が確認できたことを一区切りと捉えて懲戒解雇を宣告されることはありえるかもしれません。
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書類送検されたら人生終わりですか?
書類送検をされたとしても、有罪が確定するわけでも、前科がつくわけでもありません。
したがって、書類送検をされたから人生が終わったなどと考える必要はありません。
重要なのは書類送検された後、起訴されるのかどうかという点になります。
書類送検後でも前科がつかないように手を尽くすことはできますから、諦めずに弁護士に相談をしてみてください。
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書類送検は無罪ですか?
当然、無罪か有罪かも確定していない状態です。
書類送検自体は有罪宣告ではありませんが、この後起訴されて有罪となることは考えられますから、無罪と言い切ることはできません。
書類送検後に起訴されて有罪になる可能性がどれほどあるのかは、個別の事案によりますから、弁護士に相談することをお勧めします。
まとめ
書類送検の意味や、書類送検された場合の適切な対応について説明しました。
最後にこれまでの要点をまとめると、以下のとおりです。
- 書類送検とは、警察が事件の記録(書類)を検察庁に送る(送検する)ことをいう。
- 身柄が送検されていないため、逮捕を伴わないことが通常である。ただし、在宅事件と身柄事件のいずれとなるかは、捜査の状況に応じて流動的であり得る。
- 書類送検されたことのみをもって前科が付くことはないが、捜査対象となった履歴という意味での前歴は残る。
- 書類送検されると、記録の送致を受けた検察官が起訴・不起訴の判断をし、起訴には正式起訴と略式起訴とがある。
- 捜査機関が特段の理由もなく勤務先に連絡を入れることは基本的にないが、事情聴取や捜索などの必要が生じた場合に勤務先に接触することはあり得る。また、実名報道や事件関係者からの通報などによって会社に知られてしまうこともある。
- 書類送検された場合、その後の流れについて的確な見通しを立てるとともに、有利な処分を得るための準備を進める意味でも、刑事事件の処理経験を豊富にもつ弁護士に相談することがきわめて重要である。
お悩み別解決方法
なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか






















