刑事事件の流れ|弁護士がわかりやすく図解

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

刑事事件は、捜査→逮捕→勾留→起訴→公判→判決という流れで進んでいきます。

逮捕や勾留はされずに、在宅のまま捜査が進められ、起訴されるというケースもあります。

刑事事件に関わることになった場合、

「このあとどんな手続きが待っているのか」
「どの段階で弁護士に相談すべきか」

といった不安を感じる方も多いでしょう。

このページでは、刑事事件の基本的な流れを図解つきでわかりやすく解説します。

さらに、各段階での注意点や期間の目安、示談のタイミング、弁護士ができるサポート内容についても詳しく紹介します。

刑事事件の流れを全体で理解しよう【図解つき】

刑事事件の全体の流れ図

刑事事件は、捜査→逮捕→勾留→起訴→公判→判決と進んでいきます。

逮捕や勾留はされずに、在宅のまま捜査が進められ、起訴されるという場合もあります。

 

 

刑事事件の各段階の流れとポイント

ここでは、刑事事件の段階毎に、ポイントを解説します。

 

① 犯罪の発生

何らかの犯罪が発生することで、警察等の捜査機関が犯罪捜査を行うこととなります。

 

② 捜査段階

犯罪捜査の特徴

犯罪捜査は、被害届、告訴、通報等がきっかけとなってスタートします。

例えば、被害者が交番に駆け込み、何者かにかばんを盗まれたことを告げたら、それがきっかけとなって捜査が開始されます。

具体的には、警察官は被害者から情報を聴き取り、犯行現場付近の防犯カメラを調べるなどの捜査を開始するのです。

 

任意同行・事情聴取で注意すべき点

捜査段階では、警察から任意同行や事情聴取を求められることが多くあります。

任意同行等を理由もなく拒否すると、警察から逮捕されたり、疑いを持たれる可能性が高まります。

そのため、警察から任意同行等を求められたら、誠実に対応するようにしましょう。

また、事情聴取の結果、作成される供述調書には、事実とは異なる内容が記載されていることがあります。

事実と異なる場合はサインせず、必ず訂正を申し立ててください。

 

この段階で弁護士に相談すべき理由

警察等の事情聴取で話した内容や供述調書は、あなたにとって、不利な証拠となることがあります。

そのため、警察から呼び出しがあった場合、できるだけ警察署に行く前に、弁護士に相談しましょう。

刑事事件に強い弁護士であれば、捜査機関への適切な対応方法等について助言をしてくれるはずです。

 

犯行が発覚する前の場合

捜査機関に犯行が発覚していない段階で自首をすれば、刑が減軽されることがあります。

また、自首をすることで、逮捕されない可能性や不起訴とされる可能性が高まります。

私選で弁護士を選任し、自首に同行を求めることをお勧めしています。

 

③ 逮捕段階

逮捕段階の特徴

警察の捜査が始まり、警察は犯人・犯罪の特定をした後、逮捕に踏み切ります。

逮捕された場合、留置所等で、警察に48時間身体拘束され、警察から検察官に送致され、さらに24時間身体拘束を受けます。

すなわち、最大で72時間の身体拘束を受けることになります。

 

逮捕の要件とは?

通常逮捕の要件は、以下の2つです。

  • 容疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
  • 逮捕の必要性があること

逮捕の必要性というのは、逃亡のおそれがある場合や、罪証隠滅(証拠の破壊)のおそれがある場合に認められます。

 

逮捕段階の注意点

逮捕され、留置所に入っている間、捜査機関は、容疑者を起訴するための証拠の収集活動を行います。

容疑者は、長時間の取調べを受けたり、犯行現場に連れていかれて犯行状況を再現させられたりします。

この間、容疑者と面会しサポートをできるのは、容疑者やその家族に選任された弁護士だけです。

不当な捜査に対抗するためにも、後述の勾留という長期間の身体拘束を免れるためにも、前科をつけないためにも、逮捕前の段階もしくは逮捕段階で刑事事件に注力する弁護士を選任することが重要となります。

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④ 勾留段階

逮捕〜勾留〜起訴までの流れの解説

勾留の特徴

逮捕の72時間の間に、検察官は、容疑者をさらに身体拘束し続ける必要があるかを判断します。

犯罪の嫌疑が晴れた場合、犯罪の嫌疑はあるが逃亡・罪証隠滅のおそれがないと判断した場合には、勾留されることなく、釈放されます。

身体拘束し続ける必要があると判断された場合、検察官が裁判官に対して、勾留請求を行います。

勾留は10日間とされていますが、勾留延長という手続があり、勾留延長されると、最大20日間の身体拘束を受け続けます。

逮捕の72時間の身体拘束に加えて、10日ないし20日の身体拘束となると、会社に犯罪の事実が知れ渡ったり、会社を解雇されたりするリスクが大幅に増加してしまいます。

 

勾留段階の注意点

早期釈放を望む場合には、検察官もしくは裁判官に、犯罪の嫌疑が晴れた、犯罪の嫌疑はあるが逃亡・罪証隠滅のおそれがないとの心証を抱かせなければなりません。

したがって、刑事事件に注力する弁護士を選任することが重要となります。

勾留された場合、逮捕に引き続き留置所で身体拘束を受けながら、取調べ等の捜査を受け続けます。

警察官・検察官は、起訴に向けて、取調べに力を注ぎます。

容疑者は、社会から隔離されます。

しかも、密室で長時間の取調べを受け、精神的に苦しい時間が続くことがあります。

「やっていないことをやった」と言ってしまったり、自分の本心と異なる内容が調書に書かれてしまったりすると、後の裁判で不利な状況に追い込まれます。

弁護士と緻密に連絡を取り合い、的確なアドバイスを受け、場合によっては弁護士から検事に抗議を入れることが求められます。

 

⑤起訴・不起訴の判断

勾留期間終了までの間に、検察官は容疑者を起訴するか不起訴とするかを判断することになります。

 

起訴の種類

起訴には、①公判請求、②略式手続、③即決裁判手続の3種類があります。

 

①公判請求

最も一般的なものであり、公開の法廷で、裁判官・検察官・弁護人・容疑者が一堂に会し、検察官が立証しようとする公訴事実(犯罪の内容)が証拠によって証明できるかどうかを審議するものです。

 

②略式手続

検察官の請求により、簡易裁判所が、公判手続を経ることなく、容疑者に対して罰金または科料を科す手続です。

略式手続は、非公開で行われます。

略式手続は、比較的軽微な事案であり、かつ容疑者の自白がある場合に限られます。

 

③即決裁判手続

即決裁判手続は、事案明白・軽微犯罪であり、容疑者の自白があり、証拠調べが速やかに終わると見込まれるといった場合が対象となります。

この手続がとられる場合、拘禁刑の判決には必ず執行猶予がつきます。

すなわち、判決直後に刑務所に入る必要はありません。

 

⑥ 裁判段階(公判手続)

刑事裁判の多くは、犯罪事実自体に争いがない自白事件です。

自白事件の場合、第1回目の裁判(公判)期日で結審し、次回期日で判決が言い渡されることが多いです。

ここでは、第1回公判の流れをわかりやすく図示すると次のとおりとなります。

 

刑事裁判(第1回公判)の流れ

刑事裁判(第1回公判)の流れ図

各手続きの詳細な解説については、次のページをご覧ください。

 

⑦上訴(控訴や上告)

第1審の判決に不服がある場合、控訴を検討します。

控訴とは、地方裁判所又は簡易裁判所がした第一審の判決に対して行われる上訴のことをいいます(刑事訴訟法第372条)。

控訴の結果に対しても、納得がいかない場合、上告の可能性もあります。

上告とは、高等裁判所がした控訴審判決に対する上訴のことをいいます。
(ただし、例外的に、高等裁判所がした第1審判決に対するものもあります。)

控訴や上告には、期間制限(判決の日から14日以内)があるので注意しましょう。

 

 

刑事事件の示談の流れや与える影響・タイミング

被害者がいる事件では、捜査段階で示談が成立すれば、不起訴となる可能性があります。

また、起訴された後でも、示談をすることで情状が良くなるため執行猶予が付く可能性もあります。

一般的な示談の流れをわかりやすく図示すると次のとおりとなります。

刑事事件の示談の流れ図

 

 

不当な逮捕や裁判を回避するためには

現行犯などの場合を除き、通常、警察はいきなり逮捕することはなく、まずは捜査を先行させる傾向です。

これは、上記のとおり、逮捕や勾留には時間的な制限があるからです。

検察官は、逮捕してから23日以内に起訴するか否かを決定しなければなりません。

また、起訴して刑事裁判に移行すると、容疑者は容疑者から容疑者という立場になり、法的には検察側と対等な立場におかれます。

そのため、起訴後、捜査機関は原則として、過酷な捜査ができなくなります。

このような制度のため、警察等の捜査機関は、逮捕前に十分な捜査を行い、刑事裁判で有罪に持っていくための証拠を集めようとするのです。

法律に基づく適正な捜査がなされれば問題はありませんが、しばしば違法・不当な捜査が行われます。

例えば、容疑者の権利を無視した過酷な取り調べが典型です。

違法な捜査では、事実と異なる、不利な供述調書が作られてしまうおそれがあります。

そして、一度、不利な供述を行うと、それを基に逮捕される可能性があります。

また、事実と異なる供述調書は裁判では不利な証拠となり、無罪を争うことが難しくなります。

このような状況のため、刑事事件の最大のポイントは、早期の弁護活動となります。

逮捕される前の捜査の初期段階において、適切な弁護活動を受けることで、過酷な取り調べを回避したり、事実と異なる不利な証拠の作成を防止できる可能性があります。

そのため、刑事事件では、早く段階での弁護士へのご相談をおすすめいたします。

 

 

刑事事件の流れについてのQ&A

ここでは、刑事事件の流れについてのよくある質問をご紹介します。

 

刑事事件の期間はどのくらい?

刑事事件の期間は、ケースによって異なります。

筆者の経験上、ご依頼を受けてから、示談が成立するまでの期間としては、1〜6カ月程度が多いです。

示談が成立すると、不起訴となるケースが多いのですが、重い犯罪の場合、起訴されることがあります。

刑事裁判で、事実関係に争いがない場合、半年程度で判決となることが多い印象です。

否認事件の場合は長期化することが多いです。

 

刑事事件と民事事件の違いとは?

刑事事件は、犯罪についての手続です。

刑法や刑事訴訟法が問題となります。

処罰するのは国家ですので、依頼者(容疑者)と国(捜査機関)が当事者となります。

これに対し、民事事件は、犯罪ではなく、民法等の適用が問題となります。

当事者は私人間であり、国ではありません。

なお、刑事事件の被害者を相手に示談交渉を行う場合、民事の問題となりますが、その成否は刑事事件に大きな影響を与えます。

 

 

まとめ

以上、刑事事件の流れについて、捜査段階、起訴後、示談に分けて、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

刑事裁判は、起訴されると、99パーセント以上の確率で有罪となります。

そのため、起訴される前、すなわち、捜査段階からの弁護活動がポイントとなります。

この記事が刑事事件でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 

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