ディープフェイクアダルト動画を作成したら罪になる?

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士・3級ファイナンシャルプランナー

ディープフェイク技術とは

人工知能(AI)の技術の進歩に伴い、「ディープフェイク」という技術が発展しているのをご存知でしょうか。

これは、AIの深層学習機能を利用して、複数の動画を掛け合わせ、被写体の顔を加工したり、別人のものにすり替えたりすることを可能にする技術です。

近時、このディープフェイクの技術を用いて、女優やアイドルの顔をアダルト動画に合成し、あたかもその女優などが出演しているかのような動画を作成する行為が問題視されています。

こうした行為については具体的にどのような罪が成立するのでしょうか。

 

 

どのような罪が成立するのか

①女優などに対する名誉毀損罪

まず、アダルト動画に顔を合成された女優などに対し、刑法上の名誉毀損罪(刑法230条)が成立する可能性があります。

女優がアダルト動画に出演したかのような印象を与える動画を公開することは、それ自体当該女優の社会的評価を低下させうる行為といえ、上記の罪が成立するのです。

名誉毀損罪については、こちらをご覧ください。

 

②アダルト動画の制作者に対する著作権侵害

また、既存のアダルト動画に別の女優などの顔を合成することは、アダルト動画制作者の著作権を侵害する行為にあたると考えられます。

この場合、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金が科される可能性があります(事案によっては、懲役刑と罰金刑の両方とも科される場合もあります)。

改正著作権法

第百十九条 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、同条第四項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第五項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第六項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

なお、 上記はディープフェイクを用いたアダルト動画を作成・公開した者について成立しうる罪ですが、こうした動画にアクセスできるURLを、自らが運営するサイト上に掲載した場合も、著作権を侵害したとみなされ、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科される可能性があります(事案によっては両方とも科される可能性もあります)。

令和2年4月より施行された改正著作権法により、自らがディープフェイクを用いたアダルト動画を作成したわけではなくとも、著作権侵害が認められるようになったのです(改正著作権法120条の2第3号)。

第120条2

次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3 営利を目的として、第百十三条第四項の規定により著作者人格権、著作権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者

また、こうしたアダルト動画にアクセスしやすくするためのまとめサイトを運営していたことが発覚した場合も、著作権侵害があったとみなされ、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が科される可能性があります(改正著作権法119条2項4号。こちらについても、事案によっては両方とも科される可能性があります)。

改正著作権法119条

2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
四 第百十三条第二項の規定により著作権を侵害する行為とみなされる行為を行った者

著作権法の罰則については、こちらからどうぞ。

 

 

実際に逮捕されるのか?

近時、こうした行為を行った者が、実際に逮捕される事案も発生しています。

心当たりがある場合は、捜査機関への発覚よりも前に自首を行うことで、身体拘束を回避できる可能性があります。

また、前科を回避したいと考えるのであれば、被害者との関係で示談交渉を行うことが考えられます。

名誉毀損罪、著作権侵害のいずれも、親告罪とされており、告訴がなければ公訴提起ができませんので、示談を成立させて告訴を取り下げてもらうことができれば、前科がつくことを回避できるのです(刑法232条1項、改正著作権法123条1項)。

第百二十三条 第百十九条、第百二十条の二第三号及び第四号、第百二十一条の二並びに前条第一項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

なお、名誉毀損の被害者は女優などの著名人であり、示談交渉を行うとすれば、被害者が所属する芸能プロダクションを介して行うことになると考えられます。

ですが、女優やアイドルなどといった職業は、イメージの低下が日々の業務に致命的な影響を与えかねません。

そのような特殊な業界に身を置く中で、上記のような被害に遭った本人の被害感情は、極めて強くなると考えられます。

ですので、そもそも被害者本人が、示談には応じないという意向を示す可能性は高いといわざるを得ません。

また、所属する女優などの社会的評価を低下させたことに対する損害も大きく、そもそも被害者本人の意向にかかわらず、芸能プロダクションが示談交渉のテーブルに着くかどうかすらも不透明といえます。

また、アダルト動画の制作者との関係でも、示談交渉を行う余地はあるかもしれません。

しかしながら、こうした著作権侵害に関し、企業としては断固とした態度で臨まれることも十分に想定されます。

そのため、この場合も、そもそも示談交渉のテーブルに着くことすら拒否される可能性は決して低くないといえるでしょう。

 

 

 

まとめ

弁護士以上のとおり、ディープフェイクを用いたアダルト動画に関わる罪を犯してしまった場合、全ての被害者との示談交渉を成立させ、不起訴処分を得られるかどうかについては、かなり厳しい見通しになるといわざるを得ません。

そのため、たとえ軽い気持ちであっても、こうした行為に関わらないよう、お気を付けいただく必要があります。

仮に、上記のような行為を行ってしまったというような場合、刑事事件に注力する弁護士に依頼することで、被害者の心情に配慮しつつ、示談交渉に応じてもらえるよう、最大限の誠意をもって交渉に当たります。

場合によっては、被害者から許しを得ることまではできずとも、せめて被害弁償だけでも受け取ってもらえるよう、できる限りの交渉を行い、深く反省していることを少しでも理解していただけるよう努めます。

こうした慰謝のための活動を手厚く行うことで、前科が付くことは避けられなくとも、最終的な量刑を少しでも軽減させられる余地はあります。

具体的には、懲役刑を回避して罰金刑に留めたり、それが難しくとも実刑判決ではなく執行猶予付判決を勝ち取ったりできる可能性があるのです。

心当たりのある方は、少しでも早めに、刑事事件に注力する弁護士へご相談ください。

 

 

 

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