弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

労災が起きた後、労災申請をすることによって労災保険から補償金を受領します。
逆に言うと、労災申請をしなければ基本的に補償金は受領できません。
労災の被害者の方は、労災申請の流れや必要書類などをある程度理解しておかなければいけません。
本記事では、労災の被害者の方向けに、労災申請に関わる知識について詳しく解説しております。
「労災申請がわからない」、「労災申請が不安」という方は、ぜひ本記事をご覧になっていただければと思います。
労災申請とは?

労災申請とは、労災保険から補償金を受領するために労働基準監督署に対して必要な手続きを行うことをいいます。
労災の補償金は、労災事故が起きれば自動的にもらえるというものではなく、一定の手続きを踏まなければなりません。
労災申請の主な内容は、必要書類を労働基準監督署に提出することです。
労災保険給付の種類
労災保険給付には以下の給付があります。
| 給付の種類 | 給付の内容 |
|---|---|
| 療養(補償)給付 | 労災病院や指定医療機関で、無料で治療や薬剤の給付を受けられる補償 |
| 休業(補償)給付 | 療養のために仕事を休み給料が出ない際、休業4日目から支給される補償 |
| 障害(補償)給付 | 後遺障害に認定された場合に給付される補償 |
| 遺族(補償)給付 | 従業員が死亡した場合に遺族へ支給される補償 |
| 葬祭給付 | 業務や通勤で亡くなった労働者の葬儀を行った者へ給付される補償 |
| 傷病年金(傷病年金補償) | 療養開始から1年6ヶ月経過後も治らず重度障害がある場合の補償 |
| 介護(補償)給付 | 障害や傷病年金の対象者で、常時または随時介護を受ける際の補償 |
| 複数事業労働者休業給付 | 副業や兼業をしている労働者が、複数社の負担で休業する際の補償 |
それぞれの給付の詳細については、下記ページをご覧ください。
労災申請は誰がする?
パート・アルバイトでも手続きできる?
パート・アルバイトの方であっても、仕事中や通勤途中に怪我をした場合は問題なく労災保険の手続きができます。
雇用形態による制限はなく、日雇いや勤務期間が短い場合でも給付の対象となります。
手続きを行う際は、勤め先を通じて必要な申請書類を労働基準監督署へ提出します。
勤務先が手続きに非協力的な場合でも、労働者本人が直接労働基準監督署に相談して申請を進めることが可能です。
ひび・捻挫・軽い怪我でも労災申請は使える?
骨のひびや捻挫、軽い打撲といった怪我であっても、仕事中や通勤途中の事故であれば問題なく労災保険を申請できます。
怪我の程度に制限はなく、通院治療が必要であれば医療給付を受けられますし、休業が必要になれば休業給付の対象となります。
労災申請の手続の流れ
労災申請の手続きの流れは、以下のとおりです。

①労働災害が発生したことを会社に報告する
労災が発生した場合には、速やかに会社に報告することが大切です。
時間が経過してから報告した場合には、本当に業務が原因で負傷したのかはっきりしなくなる可能性があるからです。
労災で怪我をした場合には、その経緯や状況について具体的に会社に報告するようにしましょう。
②医療機関を受診し、窓口で「労災です」と伝える
医療機関を受診する場合には、受付窓口で労災(業務中や通勤途中の怪我)での治療であることを明確に伝える必要があります。
曖昧なまま誤って健康保険を使用してしまった場合には、後から切り替えの手続きを行わなければならず、手続きが非常に複雑になってしまいます。
本来、労災事故で健康保険を使用することはできないため、一度精算をやり直すなどの余計な手間が発生してしまうのです。
窓口負担が0円になる「労災指定病院」と「それ以外の病院」の違い
労災事故(業務中や通勤途中の怪我)で病院を受診する場合、「労災指定病院」か「それ以外の病院」かによって窓口での支払いが大きく異なります。
指定病院を受診した場合は、窓口での負担金は「0円」です。
労災病院または労災指定医療機関で治療を受けると、費用は労災保険から直接病院へ支払われるため、患者本人が現金を支払う必要はありません。
一方、指定外の医療機関を受診した場合は、一度全額(10割)を窓口で自己負担する必要があります。
後から労働基準監督署へ請求手続きを行うことで費用は全額戻ってきますが、一時的にまとまったお金を用意しなければなりません。
③労災申請の必要書類の作成
労災保険は、保険給付ごとに必要書類が定められています。
まずはその必要書類に記入し、提出できる状態にします。
必要書類の他に、添付資料(例:診断書)なども提出しなければいけない場合もあり、その場合はその添付資料も収集(または取得)する必要があります。
なお、必要書類については、下記の「労災申請の必要書類」という箇所で詳しく解説しております。
④労災申請の必要書類を労働基準監督署に提出
完成した必要書類を労働基準監督署に提出します。
提出方法については、直接所轄の労働基準監督署に持参するか、郵送する方法で提出します。
⑤労働基準監督署で審査・決定
労働基準監督署で必要書類が受理されたら、その申請内容の審査がなされ、補償される要件を満たしているかなどがチェックされます。
審査された結果は、申請人の方等へ文書で通知されます(労働者災害補償保険法施行規則第19条第1項)。
⑥被害者や遺族に補償金が振り込まれる
支給の決定がなされた場合は、被害者や遺族が指定した口座に補償金が振り込まれることになります。
労災申請書の提出から給付までの日数
給付ごとの目安日数は、以下のとおりです。
| 災害の内容 | 申請から振込までの目安日数 |
|---|---|
| 療養補償給付 | 1ヶ月程度 |
| 休業補償給付 | 1ヶ月程度 |
| 障害補償給付 | 3ヶ月程度 |
| 遺族補償給付 | 4ヶ月程度 |
上記はあくまで「目安」なので、申請に不備があった場合は更に日数がかかる可能性があります。
労災申請書「様式第5号(5号用紙)」とは?
労災申請書「様式第5号」とは、業務中の事故や仕事が原因の怪我で「労災指定病院」を受診した際に、治療費の支給を申請するための書類です。
この書類を病院の窓口へ提出することで、被害者は窓口で治療費を支払う必要がなくなり、無料で治療を受けることができます。
様式第5号は「仕事中の怪我」で「労災指定病院」に行くときの書類
様式第5号(療養の給付請求書)は、仕事中に怪我をして労災指定病院を受診する際に使用します。
病院の窓口に提出すると、治療費が労働基準監督署から直接病院へ支払われる仕組みです。
そのため、窓口での支払いが0円となり、患者自身の金銭的負担が発生しません。
通勤中の怪我なら「様式第16号の3」
仕事中ではなく通勤途中の事故や怪我の場合は、様式第5号ではなく「様式第16号の3(療養給付請求書)」を使用します。
業務上のトラブルか通勤途中の事故かによって申請書の書式が異なりますので、作成の際は注意が必要です。
労災指定病院以外の病院で治療を受けた場合は「様式第7号」を使用
労災指定病院以外の医療機関で受診した場合は、「様式第7号(療養の費用請求書)」を使用します。
指定外の病院では一時的に費用を全額(10割)自己負担し、後から様式第7号を提出して立て替えた治療費の返還を受ける流れとなります。
労災申請に必要な書類と提出先
労災申請は、所定の請求書を労働基準監督署に提出する必要があります。
所定の申請書は、災害の内容(業務災害や通勤災害)や給付の内容ごとによって様式が異なります。
申請書については、以下の厚生労働省のホームページからもダウンロードできます。
参考:主要様式ダウンロードコーナー (労災保険給付関係主要様式)|厚生労働省
災害の内容や給付の内容ごとに異なる労災申請書
受ける給付の種類によって申請書の様式や提出先が異なります。
代表的な3つの給付手続きについて解説します。
①病院での治療費に関する書類(療養補償等給付:様式第5号・第7号など)
ケガや病気の治療を受ける際に提出する書類です。
指定医療機関で治療を受ける場合は、「様式第5号(業務災害)」または「様式第16号の3(通勤災害)」を記入し、受診する「医療機関(病院やクリニック)」の窓口へ提出します。
窓口に提出することで、窓口での治療費負担が全額無料(自己負担なし)となります。
一方、指定外の病院で治療を受け、一旦自分で費用を支払った場合は、「様式第7号(業務災害)」または「様式第16号の5(通勤災害)」に領収書などを添えて、「所轄の労働基準監督署」へ直接提出します。
②会社を休んだときの生活費に関する書類(休業補償等給付:様式第8号など)
労災によるケガや病気で仕事に行けず、給与が出ない期間の生活費補償を求める手続きです。
業務災害の場合は「様式第8号」、通勤災害の場合は「様式第16号の6」を使用し、「所轄の労働基準監督署」へ提出します。
請求書には、休業した期間や直近の給与額などを正確に記載し、会社(事業主)からの証明と医師からの証明をもらう必要があります。
③後遺症が残ってしまったときの書類(障害補償等給付:様式第10号)
治療を継続してもこれ以上の改善が見込めず、体に障害(後遺症)が残ってしまった場合に申請する書類です。
業務災害では「様式第10号」、通勤災害では「様式第16号の7」を使用し、「所轄の労働基準監督署」へ提出します。
症状が固定した段階で、主治医に障害の程度に関する診断書を作成してもらい、申請手続きを行います。
労災申請書と一緒に提出すべき添付資料
労災申請を行う際、給付内容によっては申請書(請求書)単体では手続きが進みません。
請求内容を証明する「添付資料」を併せて「所轄の労働基準監督署」へ提出する必要があります。
給付の種類によって必要な資料が異なりますので、事前にしっかり確認しておきましょう。
療養補償給付に必要な添付資料
ケガや病気の治療費を補償する手続きです。
指定病院を受診する場合は添付資料は不要です。
指定外の病院で治療費を一時立て替えた場合は、以下の資料を申請書に添えて提出します。
【主な添付資料】
- 医療費の領収書(原本)
- 処方箋の控えや調剤明細書
休業補償給付に必要な添付資料
仕事に就けず給料が出ない期間の生活費を補償する手続きです。
【主な添付資料】
- 出勤簿やタイムカードのコピー(休業事実の証明)
- 賃金台帳のコピー(直近3ヶ月の給与実績の証明)
障害補償給付に必要な添付資料
治療後も後遺症(障害)が残ってしまった場合の手続きです。
【主な添付資料】
- 障害補償用の診断書(後遺障害診断書)
- レントゲンやMRIなどの画像データ
労災申請書の書き方と記入例
様式第5号、様式第16号の3
様式第5号、様式第16号の3は、労災指定病院に通院した場合の治療に関する給付を請求する際の様式です。
様式第5号の書き方
様式5号の作成方法については、こちらをご覧下さい。
様式第16号の3
様式第16号の3の作成方法についてはこちらをご覧下さい。
様式第7号、様式第16号の5
様式第7号、様式第16号の5は、労災指定病院以外の病院に通院した場合の治療に関する給付を請求する際の様式です。
様式第7号の書き方
様式7号の作成方法については、こちらをご覧下さい。
様式第16号の5の書き方
様式16号の5の作成方法について、表面は7号と同じです。
裏面の書き方は、以下をご参照下さい。
▼クリックで拡大できます
様式第8号、様式第16号の6
様式第8号、様式第16号の6は、会社を休んだ際の休業補償に関する様式です。
8号の書き方
様式8号の書き方はこちらをご覧下さい。
様式第16号の6の書き方
様式第16号の6の書き方は下記ページをご覧下さい。
様式第10号、様式第16号の7
様式第10号、様式第16号の7は、後遺症が残ってしまった場合に使用する様式です。
様式10号の書き方
労災申請書の書き方について、本記事では障害補償等給付関係の申請書(様式第10号)の記入例をご紹介いたします。
▼クリックで拡大できます
▼クリックで拡大できます
以下は、重要なポイントのみを解説いたします。
主治医が、これ以上良くも悪くもならない状態(これを「症状固定」といいます)に至ったと判断した日付を記入します。

既に提出している場合を除き、様式第8号別紙1も合わせて提出します。

様式第8号の別紙1については、こちらからダウンロードできます。
この欄については、会社に記載してもらう箇所になります。

ケガをした従業員の方の傷病に関連する資料を提出する場合に、その提出資料を記載します。
骨折などの場合は、立証資料としてレントゲン写真などを添付することが多いと思います。

様式第16号の7の書き方
様式第16号の7の書き方は、様式10号とほぼ同じです。
違うのは、「⑥災害の原因及び発生状況」を別紙に記載しなければならないことです。
別紙については、以下をご参照下さい。
▼クリックで拡大できます
労災申請のための費用
実費の費用
労災保険で賄われない実費があり、その場合は自己負担となってしまいます。
自己負担になる実費については、以下のようなものが挙げられます。
- 必要性が認められない入院個室代や差額ベッド代
- 申請書を労働基準監督署に提出する際の郵送費や交通費
労災の診断書代
労災で提出すべき診断書代は、基本的に労災保険が負担してくれます。
労災保険が負担してくれる診断書代の例としては、以下のような給付請求時が挙げられます。
| 給付の内容 | 診断書代を請求する場合の労基署への提出書類 | 診断書代の負担額の上限 |
|---|---|---|
| 障害補償等給付関係 | 【業務災害】 療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書(様式第7号)【通勤災害】 療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5) |
4000円 |
| 傷病補償等年金関係 | 【業務災害】 療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書(様式第7号)【通勤災害】 療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5) |
4000円 |
| 休業補償等給付関係における診療担当者の休業に関する証明 | 【業務災害】 療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書(様式第7号)【通勤災害】 療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5) |
2000円 |
※この他にも、請求する診断書の内容によっては労災保険で負担してもらえる場合があります。
詳しくは、弁護士などの専門家や労基署にご確認ください。
なお、会社に診断書の提出を求められている場合の診断書代や、個人で加入している保険(例:生命保険)に提出する診断書代は、労災保険では負担してくれませんので注意してください。
専門家に依頼する場合の費用
どの内容まで(労災の申請をするだけなのか、会社との交渉や裁判まで依頼するか)依頼するかによって弁護士費用の相場が異なりますが、概ね以下のとおりかと思います。
着手金:0円〜33万円
報酬金:獲得金額の11%〜22%(着手金がない場合は、これに加えて〇〇万円という固定報酬を設定している場合もあります。)その他に、交通費や郵送代などの実費がかかります。
なお、弊所に労災案件を依頼される場合の弁護士費用は以下をご覧ください。
労災申請の期限(時効)とは?
労災の申請には期限(時効)があり、この期限を過ぎてしまうと請求ができなくなってしまいます。
申請期限は、申請する給付内容によって、起算点と期限(時効)が異なっています。
申請期限については、労働者災害補償保険法第42条1項から、以下の表の通りとなります。
| 給付の種類 | 起算点 | 期限(時効) |
|---|---|---|
| 療養補償等給付関係 | 療養の費用の支出が確定したときの翌日から | 2年 ※療養の給付は、時効なし |
| 休業補償等給付関係 | 賃金を受けない日ごとにその翌日から | 2年 |
| 障害補償等給付関係 | 傷病が治ゆ(症状固定)した日の翌日から | 5年 |
| 葬祭料 | 従業員が亡くなった日の翌日から | 2年 |
| 遺族補償等給付関係 | 従業員が亡くなった日の翌日から | 5年 |
| 介護補償等給付関係 | 介護を受けた月の翌月1日から | 2年 |
| 傷病補償等年金関係 | 労働基準監督署長の職権で支給が決定されるため、時効はなし | |
労災申請の注意点

労災申請では慰謝料はもらえない
労災申請をしても、精神的苦痛に対する賠償金である慰謝料は労災保険から受領することはできません。
慰謝料をもらうためには、会社や怪我をさせた第三者に対して請求していくしかありません。
会社に対して請求する場合は、安全配慮義務違反を根拠として慰謝料を請求することが考えられます。
怪我をさせた第三者に対しては、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)によって慰謝料を請求することになります。
参考:民法|e−Gov法令検索
労災申請をすれば全ての損害を回復できるわけではないので、この点注意してください。
証拠収集を怠らないこと
労災申請の添付証拠や、その後に会社に対して安全配慮義務違反で損害賠償請求する際など、証拠が大事になる場面があります。
そのため、初動段階から証拠収集を怠らないようにしてください。
なお、証拠の種類は以下のとおりです。
証拠の種類一覧
- ① 契約内容に関する証拠
例:労働条件通知書、雇用契約書、就業規則 など - ② 事故状況に関する証拠
例:事故発生状況報告書、事故現場写真、労働者死傷病報告書 など - ③ 給与関係に関する証拠
例:賃金台帳、給与明細 など - ④ 労働時間関係に関する証拠
例:タイムカード、パソコンのログ、業務日報、メールやチャット等の履歴 など
証拠の種類は、あくまで一例ですので、事案によって異なってきます。
労災にくわしい弁護士に相談する
労災の申請について疑問を持たれた方は、労災にくわしい弁護士に相談するのが効率的です。
労災は意外と複雑な制度でわかりにくいです。
正確に申請しなければ、被害者の方が損をしてしまうかもしれません。
損をしないためには、専門家の力を借りるのが手っ取り早いです。
なお、弁護士にも得意・不得意分野があります。
そのため、労災に精通している弁護士に相談するようにしてください。
その弁護士が労災にくわしいかどうかは、ウェブサイトの執筆状況やその事務所の解決事例などを参考にしてみるのが良いでしょう。
労災申請のよくあるQ&A

労災を本人が申請しない場合はどうなる?
労災を本人が申請しない場合、基本的には給付は受け取れません。
そのため、治療費等が自己負担になる可能性があります。
もっとも、上記でも解説したとおり、会社が代行で申請することもあり、その場合は本人が申請しなくても手続きは進んでいきます。

会社が労災申請を拒否した場合も労災申請できる?
会社が労災であると認めていない場合も、被害者の方等は自ら労災申請を行うことができます。
労災申請の要件として、申請に対する会社の同意などは不要です。
なお、労災の申請書類の中に、事業主の証明欄があり、会社がその欄の記入を拒否することがあります。
このような場合には、申請人が労働基準監督署に、会社が証明に協力してくれない現状を説明して指示を仰いでください。
ちなみに、会社には、法令上、証明協力義務が課せられているため(労働者災害補償保険法施行規則23条2項)、理由なき証明拒否は許されません。

派遣社員の場合も労災申請はできる?
派遣社員の場合も、労災申請はできます。派遣社員の場合、申請書類の事業主の証明欄は、派遣先ではなく派遣元からもらうことになります。

取締役が職務中にケガをした場合も労災の申請をすることはできる?
取締役などの役員の方は、原則、労働者ではないので労災保険の適用はなく、労災申請をすることはできません。例外的に、その取締役が他の取締役等から指揮命令を受けて賃金の支払いを受け、実質的に労働者といえるような場合は、労災保険の適用の余地があります。
また、いわゆる一人親方などを保護する特別加入制度というものがあり、その加入者は労災保険の適用がされる場合があります。

休憩中の事故は労災申請できる?
休憩中に生じた事故は、原則、労災申請はできません。労災のうち、業務災害として労災を申請できるのは、業務遂行性と業務起因性が認められる場合に限られます。
業務遂行性とは、従業員が会社の支配下に置かれた状態のことをいいます。
業務起因性とは、業務が原因となって事故が発生したことをいいます。
休憩中に生じた事故は、基本的に業務遂行性や業務起因性が認められず、労災申請はできません。
もっとも、休憩中でも、会社の施設の不備や欠陥が原因で事故が生じた場合等は例外的に労災申請ができる可能性があります。

会社の懇親会(飲み会)で生じた事故で労災申請できる?
会社の懇親会で生じた事故で労災申請できるかどうかはケースバイケースです。労災事故にあたるかどうかの考慮要素としては、参加が強制か任意か、参加しなかった場合に給料が差し引かれるかどうか(出勤扱いになるかどうかも含む)、会社が費用負担しているかどうか等を総合的に考慮して判断されます。
例えば、強制参加の飲み会で、参加しなかった場合は欠勤扱いにされ、会社が費用を負担しているケースで起きた事故は、労災と認められる可能性は高いでしょう。

通勤中に交通事故に遭い相手方任意保険会社から補償を受けられる場合にも労災申請をすることはできる?
通勤災害の要件を満たしていれば、相手方が任意保険会社に加入していて一定の補償が見込まれる場合にも労災申請をすることが可能です。任意保険会社から補償が受けられる場合でも労災申請する被害者側のメリットは、
- ① 任意保険会社よりも労災の方が治療の打ち切りが遅いため、比較的長く治療できる
- ② プラスアルファで休業損害の特別支給金がもらえる
などが考えられます。
なお、よく会社の人から、「相手方任意保険会社から賠償をもらえるのだから、労災申請する必要がない」などと言われるケースがありますが、上記のように労災申請するメリットがあるため、できるだけ労災申請した方が望ましいです。

怪我をした本人に過失が大きいような事案でも労災申請をすることはできる?
労災の要件を満たす事案であれば、怪我をした従業員の過失の大きさに関わらず労災申請をすることができます。なお、安全配慮義務違反で会社に損害賠償請求する場合などは、請求者の過失分が差し引かれて(これを「過失相殺」といいます。)賠償金が算出されます。
まとめ
-
- 労災申請とは、労災保険から補償金を受領するために労働基準監督署に対して必要な手続きを行うことをいう。
- 労災申請は、原則、労災事故の被害者本人またはその遺族の方が行いますが、会社が代行して申請することもできる。
- 労災申請には、2年や5年の時効がある。
- 労災申請の流れは、①労災申請の必要書類の作成→②労災申請の必要書類を労働基準監督署に提出→③労働基準監督署で審査・決定→④被害者や遺族に補償金が振り込まれる、という手順である。
- 労災申請の必要書類は、災害の内容(業務災害や通勤災害)や給付の内容ごとによって様式が異なる。
- 労災では自己負担となる実費があるが、診断書代は労災から上限額まで支給される。
- 労災を弁護士に依頼する場合の費用の相場は、着手金は0円〜33万円、報酬金は獲得金額の11%〜22%である。
- 労災申請の注意点としては、労災申請では慰謝料はもらえないこと、証拠収集を怠らないこと、労災にくわしい弁護士に相談して適切なアドバイスを受けることなどである。
労災申請は、端的に言って面倒な手続きです。
しかも正確に申請しなければ、やり直しで時間がかかったり、本来もらえる補償金がもらえなかったり、従業員側に不利益が生じてしまう可能性があります。
労災申請で困った場合は、専門家である弁護士に一度ご相談していただければと思います。
当事務所では、労災分野を多く扱う人身障害部があります。
オンラインツール(LINEやZoom等)を用いて全国的にご相談を承っています。
労災分野については、ぜひ一度、当事務所までお問い合わせください。


















