寸借詐欺とは?具体例、見分け方や注意点を解説
寸借詐欺とは、少額の金銭を、返済の意思がないにもかかわらず、返す約束をして借りる行為を指します。
「すぐに返すから」という言葉を信じて、貸したお金が返ってこないという経験をしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
こうした「少額のお金を借りて返さない行為」は、単なる貸し借りのトラブルではなく、刑法上の詐欺罪に該当する可能性があります。
このような行為は「寸借詐欺」と呼ばれ、軽い気持ちで行っても逮捕・起訴され、前科がつくリスクがあります。
この記事では、寸借詐欺について、意味や具体例、刑罰、逮捕された場合の流れ、対処法などを弁護士が解説します
目次
寸借詐欺とは?
寸借詐欺とは、詐欺行為の一種であり、少額の金銭を、返済の意思がないにもかかわらず、返す約束をして借りる行為を指します。
本当は返す意思がないにもかかわらず、「すぐに返すから」などと嘘をついて少額の金銭を借りる行為が、これにあたります。
寸借詐欺の意味や読み方
寸借詐欺は、「すんしゃくさぎ」と読みます。
「寸借」とは、「少額のお金を一時的に借りること」を意味する言葉です。
「詐欺」とは、嘘をつくことで、他人から金銭などをだまし取る行為のことです。
つまり、寸借詐欺とは、「少額のお金を詐欺によってだまし取ること」を意味します。
寸借詐欺は、正式な法律用語ではないものの、詐欺の特徴的な類型のひとつとして一般的に使用されている言葉です。
寸借の「少額を借りる」という部分に明確な定義はありませんが、数百円から数千円、高くても1万円程度の被害であることが多いです。
近年流行している特殊詐欺などのように、一撃で何十万円、何百万円といった金額が得られるわけではなく、寸借詐欺は効率のいい犯罪とはいえません。
もっとも、被害が少額とはいえ、犯罪は犯罪です。
少額の万引きでも窃盗罪にあたるのと同様、寸借詐欺も詐欺であることに変わりはありません。
事案によっては、詐欺罪として逮捕・起訴されるリスクがあることに注意が必要です。
また、複数の被害者から金銭を詐取するケースもあり、そうした場合は被害総額が大きくなり、より重い処罰を受ける可能性があります。
寸借詐欺の実態
寸借詐欺は、詐欺の中では、そこまで多くを占めるものではありません。
たとえば、令和3年では、詐欺の認知件数がおよそ3万件であるのに対し、その中で「借用」を理由とする詐欺は、3.2パーセントにとどまっています。
参考:令和3年版犯罪白書 8-3-1-2図|法務省ホームページ
これは「借用」を理由とする詐欺の件数であるため、事業用資金の融資などを理由とする事案も含まれます。
つまり、寸借詐欺の発生割合は、これよりさらに低いということになります。
寸借詐欺の具体例
寸借詐欺はさまざまな形で行われますが、典型的なパターンをご紹介します。
街頭型
寸借詐欺の代表的な手口のひとつが、街頭で通行人に対して行われるものです。
たとえば、駅や路上などで、「財布を落としたので電車賃を貸してほしい」などと通行人に声を掛けて行われます。
このタイプの犯行は、被災者や観光客を装う、会社などの事務所や営業所をターゲットにするなど、さまざまなバリエーションがあります。
昨今では、すぐに不審者として通報されてしまいそうですが、昭和などの時代にはこの手の寸借詐欺が見られていたようです。
知人間
寸借詐欺は、友人や知人などの、顔見知りの間で行われることもあります。
「財布を忘れた」などさまざまな理由をつけて、数千円程度を友人などから借りるものです。
友人との間では、詐欺罪となるかが微妙なケースもあります。
友人間の金銭の貸し借り、中でも少額のものについては、相手も厳密に返済を求めていないというケースも少なくありません。
そのような場合では、返済がないまま、なんとなくうやむやになってしまうこともあり得ます。
もちろん、相手が友人であっても、法的な要件を満たせば詐欺罪が成立します。
特に、累積の金額が大きくなった場合や、関係の薄い人にまで多数の借金を申し込んでいたような場合などには、たとえ友人・知人間の借金であっても、寸借詐欺として処罰される可能性があります。
寸借詐欺で警察に逮捕される具体例
寸借詐欺は、詐欺事件としては被害が少額なことが多いです。
しかし、被害の小さい寸借詐欺であっても、事案によっては逮捕されることがあります。
寸借詐欺で逮捕される可能性が高くなるのは、常習性や計画性が疑われるケースです。
一回の犯行で得られる金額が多くない寸借詐欺では、ある程度の金額を得ようとすると、どうしても犯行を繰り返すことになります。
そのうちに被害が届け出られて、逮捕に至ることがあります。
寸借詐欺の場合、一件の被害だけですと、本当にだますつもりだったのか、詐欺であることの判断や立証が難しいこともあります。
しかし、同じような被害が多数届け出られているとなると、詐欺である疑いが一気に強まります。
たとえば、街頭で行われる寸借詐欺では、犯行場所が一定の範囲に集中しがちになることも相まって、逮捕される確率は高まります。
一定のエリアで同種の犯行を多数重ねるような例が、寸借詐欺で逮捕される代表的なケースといえます。
実際に寸借詐欺で逮捕された例としては、次のようなものがあります。
事例 「財布を落として…」善意につけ込む寸借詐欺で18歳男逮捕
「財布を落として…」善意につけ込む寸借詐欺で18歳男逮捕
仙台市泉区の路上で「財布を無くしたので金を貸してほしい」などとうそをつき金をだまし取ったとして、3日に解体工の男(18)が詐欺の疑いで逮捕されました。
男は8月から10月までの間、泉区泉中央の路上で「財布を無くしたので家まで帰れない。タクシー代を貸してほしい」などとうそをつき、高校生を含む男女5人から現金計約8万5000円をだまし取った疑いが持たれています。
男は「携帯電話を忘れた」「母親の番号を教える」などと偽名や偽の連絡先を伝え、1人当たり5000円から3万円程度をだまし取ったとみられています。
調べに対して男は「生活費が無く、だまし取った」などと容疑を認めているということです。
泉警察署管内では、11月までに同様の手口の被害が約30件確認され、警察は男が関与したとみて余罪を調べています。
(2024年12月3日 東日本放送)
引用:「財布を落として…」善意につけ込む寸借詐欺で18歳男逮捕|Khb
寸借詐欺で成立する犯罪と刑罰
寸借詐欺で成立する犯罪は、詐欺罪です(刑法246条1項)。
参考:刑法|電子政府の総合窓口
詐欺罪は、嘘によって他人を欺いて、金銭などの財産を交付させることで成立する犯罪です。
寸借詐欺の被害は、安ければ数百円程度の少額のものですが、犯罪の成否に金額の大小は関係ありません。
返済する意思がないのに借金を申し込む行為は、「返す」という嘘によって金銭を借りています。
そのため、いかに被害金額が小さいとしても、寸借詐欺は詐欺罪という犯罪になるのです。
詐欺罪が成立すると、「10年以下の拘禁刑」という刑罰が科されます。
実際の量刑は、被害額や被害者数、前科の有無、犯行態様などを考慮して決定されます。
寸借詐欺は、被害が小さいという意味では軽微な犯罪ですが、常習性がある場合、被害者が多数にのぼる場合、前科がある場合など、悪質性が高ければ実刑判決が科されることもあり得ます。
寸借詐欺のその他のリスク
寸借詐欺は犯罪であり、刑事罰を受けるリスクだけでなく、生活のさまざまな場面に深刻な影響を及ぼします。
詐欺は「人を欺く犯罪」であるため、社会的信用や人間関係、就労機会など、多方面に渡って不利益が生じることがあり得ます。
以下では、寸借詐欺を行うことで生じるさまざまなリスクについて詳しく解説します。
逮捕されるリスク
寸借詐欺を行うと、被害者からの被害届や告訴により、警察に逮捕されるリスクがあります。
逮捕されると、その後の勾留も含めて、最長で23日間にわたって身柄拘束される可能性があります。
その間は外部との連絡も制限され、仕事や学業を続けることが困難になります。
寸借詐欺は「少額だから大丈夫」と軽く考えがちかもしれませんが、詐欺罪として逮捕・起訴されるリスクは決して小さくありません。
特に、複数の被害者がいる場合や常習性が認められる場合は、逮捕される可能性が高くなります。
逮捕の流れや逮捕を防ぐ方法についての解説は、以下のページをご覧ください。
刑務所に服役するリスク
寸借詐欺で有罪判決を受けると、事案によっては実刑判決となり、刑務所に服役するリスクがあります。
詐欺罪の法定刑は10年以下の拘禁刑であり、実際の量刑は被害額や被害者数、前科の有無などによって決まります。
詐欺罪では、初犯で少額の場合は、執行猶予付きの判決となることも多いです。
他方で、常習性が認められたり、前科があったりする場合には、たとえ少額の犯行であっても、実刑判決を受ける可能性が高まります。
刑務所での服役は、自由を奪われるだけでなく、厳しい規律の下での生活を強いられ、人生に大きな空白期間を作ることになります。
寸借詐欺は金額が少ないため軽く見られがちですが、繰り返し行うことで、実刑判決につながるリスクがあることを認識しておくべきです。
執行猶予をつける方法については、以下のページをご覧ください。
会社を解雇されるリスク
寸借詐欺で逮捕・起訴されると、会社から解雇されるリスクが高まります。
詐欺罪は信用を損なう犯罪であるため、会社としてはその社員を継続して雇用することが難しくなることが考えられます。
多くの会社の就業規則には「刑事事件で起訴された場合」や「会社の信用を著しく損なう行為があった場合」などを、解雇事由として定めています。
寸借詐欺は、これに該当すると判断され、懲戒の対象となることがあり得ます。
特に、職場の同僚から金銭を詐取したケースでは、職場環境を著しく悪化させる行為として解雇される可能性がより高くなるでしょう。
また、逮捕されると身柄拘束によって出勤が難しくなるため、欠勤を理由に解雇されることもあります。
逮捕を会社に知られたくない場合の解説は、以下のページをご覧ください。
再就職への影響
寸借詐欺で前科がつくと、再就職に大きな障壁となります。
履歴書には、賞罰欄がなければ前科や逮捕歴を書く必要はないとされていますが、聞かれた場合には正直に答えるのが原則となります。
このような部分で嘘をついて採用された場合、後に経歴詐称として処分されることもあり得ます。
寸借詐欺で得られる少額の利益と比較して、あまりに大きな不利益といえるでしょう。
家族にバレて関係が悪化するリスク
寸借詐欺で逮捕されると、家族関係に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
逮捕は突然行われることが多く、家族は警察からの連絡で初めて事実を知ることになるケースも少なくありません。
このような形で犯罪行為が明らかになると、家族からの信頼を一気に失うことになります。
特に、詐欺罪は「人をだます犯罪」であるため、家族からの非難や失望は大きく、関係修復が困難になることもあります。
こうした家族関係の悪化は、後の社会復帰を困難にする要因ともなり得るリスクといえます。
犯行を家族に知られないための対応については、以下のページをご覧ください。
実名で報道されるリスク
寸借詐欺で逮捕された場合、メディアで実名報道されるリスクもあります。
詐欺事件は社会からの関心も高く、特に変わった手口や常習性がある場合は、報道される可能性も高まります。
寸借詐欺は、かつてに比べると珍しいタイプの詐欺であるため、これで逮捕されたとなると、かえって注目を集めてしまうことも考えられます。
実名報道されると、社会的信用が著しく損なわれ、就職活動や人間関係において大きな障壁となります。
寸借詐欺は少額であっても、常習性や特殊な手口があれば、メディアの注目を集める可能性があることを認識しておくべきです。
事件が報道されるかについての解説は、以下のページをご覧ください。
寸借詐欺で逮捕された後の流れ
寸借詐欺で逮捕された場合、一般的に以下のような流れで刑事手続きが進みます。
①逮捕
容疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれなどがある場合、警察はその人を逮捕します。
逮捕された場合、最長で72時間にわたって身柄が拘束される可能性があります。
②検察への送致
逮捕から48時間以内に、警察は容疑者を検察に引き渡します。
この手続きを「送検」と呼びます。
その後、検察は24時間以内に、次の対応を決めなければなりません。
③勾留
さらに詳しく調べる必要があると検察が判断した場合、裁判所の許可を得て身柄の拘束が続けられます。
これが「勾留」です。
この期間は最初に10日間で、必要に応じてさらに10日間延長されることもあります。
勾留の期間は、合計で最大20日間になる可能性があります。
④起訴か不起訴かの判断
捜査が終結すると、検察は集めた情報をもとに、容疑者を裁判にかけるかどうかを決めます。
裁判が必要だと判断されれば「起訴」となり、そうでなければ「不起訴」で手続きが終わることもあります。
⑤裁判
刑事事件として起訴されると、裁判所で事件の内容が審理されます。
裁判では、容疑が事実かどうか慎重に検討され、最終的に有罪か無罪かが決まります。
有罪の場合、具体的に科される刑罰が言い渡され、それが確定すると刑が実行されます。
ただし、条件付きで刑が保留になる「執行猶予」がつくこともあります。
寸借詐欺を犯してしまったときの対応
寸借詐欺を犯してしまった場合、状況をさらに悪化させないためにも、適切な対応が重要です。
問題から逃げずに真摯に向き合い、法的な助言を得ながら対応することが、事態の改善につながります。
弁護士同行で自首をする
寸借詐欺を犯してしまった場合、弁護士同行での自首が有効な選択肢となる場合があります。
自首とは、まだ捜査機関に発覚していない犯罪について自ら申告することをいいます。
自首は反省の証として、後の手続きで有利に働く可能性があります。
特に弁護士同行での自首には、いくつかの重要なメリットがあります。
弁護士が同行することで、取り調べでの対応や供述の仕方についてアドバイスを受けることができます。
さらに、弁護士が介入することで、不当な取り調べや長時間の拘束を防ぐ効果も期待できます。
寸借詐欺は比較的軽微な事案も多いため、弁護士同行での自首により、在宅捜査となる可能性も高まります。
自首を弁護士に依頼するメリットについて、詳しくは以下のページをご覧ください。
被害者との示談交渉を成功させる
寸借詐欺の場合、被害者との示談交渉が非常に重要です。
示談が成立すると、被害者が被害届を取り下げたり、処罰感情が和らいだりするため、不起訴や量刑軽減につながる可能性が高まります。
寸借詐欺では、弁償すべき被害額が少額なことや、被害者の処罰感情がそこまで強くないこともあり得ることから、適切な交渉によって示談の成立を目指すことが可能です。
しかし、被害者の中には感情的になっている方もいるため、直接交渉が難しいケースも少なくありません。
そのような場合、弁護士に示談交渉を依頼することが効果的です。
弁護士は法的知識を持ち、専門家の立場から冷静に交渉を進めることができるため、示談成立の可能性が高まります。
また、示談書の作成など法的な手続きも適切に行うことができ、将来的なトラブル防止にもつながります。
示談交渉は早期に行うほど効果的であり、犯行発覚後はできるだけ早く弁護士に相談することが望ましいでしょう。
示談交渉における弁護士の選び方については、以下のページをご覧ください。
刑事事件に強い弁護士に依頼する
寸借詐欺で逮捕されたり、捜査の対象となったりした場合、刑事事件に強い弁護士への相談が非常に重要です。
弁護士は法的知識と経験を活かし、最適な対応方針を立てることができます。
弁護士に依頼することで、取調べへの立会いや助言、示談交渉の代行など、さまざまな面でサポートを受けることができます。
寸借詐欺は、少額であっても詐欺罪として扱われます。
専門家である弁護士のサポートを受けることで、最悪の事態を回避し、可能な限り軽い処分を目指すことができます。
刑事事件における弁護士選びの重要性については、以下のページをご覧ください。
寸借詐欺被害の防止策
寸借詐欺の被害を防ぐためには、その手口や特徴を知り、適切な対処法を身につけることが重要です。
「お金を貸してほしい」と頼まれた際に、すべてを疑う必要はありませんが、いくつかの注意点を押さえておくことで、詐欺被害を未然に防ぐことができます。
困っている人を放っておけないという善意を悪用されないよう、自分なりの判断基準を持っておくことが大切です。
以下では、寸借詐欺の特徴や見分け方、効果的な断り方について解説します。
寸借詐欺の特徴や見分け方を知る
寸借詐欺の特徴を知っておくことで、被害に遭いそうな際に気づくことができる可能性が高まります。
寸借詐欺を見分けるポイントとして、いくつかの特徴的なパターンがあります。
まず、突然の借金の依頼、特に「急にお金が必要になった」「財布を忘れた」といった理由での依頼は要注意です。
ほかにも、借りる理由が曖昧またはたびたび変わる場合や、過去にも同様の依頼をしてきた経緯がある場合は注意が必要です。
特に、最近知り合った人や、SNSでのやり取りのみの相手など、借り手の人となりが知れない場合は要注意です。
さらに、借りる金額が徐々に大きくなる、複数回にわたって借りようとする、複数の人から借りている様子が見られるといった場合も、寸借詐欺の可能性が疑われます。
これらの特徴に当てはまる場合は、貸し出しを慎重に検討するか、断ることも一つの選択肢です。
寸借詐欺の断り方
寸借詐欺と思われる金銭の借用依頼を断る際には、相手との関係性を考慮しつつも、毅然とした態度で対応することが重要です。
まず、相手との関わりが薄い場合は、今後の関係性を気にする必要がないため、バッサリ断ってもいいかもしれません。
他方で、相手と一定の関係がある場合は、関係性を損なわないように配慮する必要があります。
詐欺ではなく、本当に困っている可能性もあるため、あまり邪険にするのも考え物でしょう。
たとえば、金銭の貸し借り以外の手段を提案してみると、単に断るだけの場合よりも角が立ちにくくなります。
他にも、金銭の貸し借りはできないことをしっかり伝えつつも、断る際の言葉遣いや態度に配慮することで、相手との関係を害さずに断ることが考えられます。
寸借詐欺の被害に遭ったときの対処法
寸借詐欺の被害に遭ってしまった場合、適切な対応をすることで被害の回復や犯人の検挙につなげることができます。
詐欺では、被害に気づいた時点で、まずは相手に連絡を取り、返済を求めることが基本です。
しかし、相手が連絡に応じない、返済の約束を守らないといった場合は、他の手段を検討する必要があります。
以下では、寸借詐欺被害に遭った場合の具体的な対処法について解説します。
警察に被害届を出す
寸借詐欺の被害に遭った場合、警察に被害届を提出することが重要な対処法の一つです。
寸借詐欺は少額のケースが多いため、被害届を出すことがためらわれるかもしれませんが、同様の被害者が他にもいる可能性を考えると、警察への相談は重要です。
被害届を出す際は、お金を貸した日時や場所、金額、相手の情報、返済の約束内容、その後のやり取りなど、できるだけ詳細な情報をあらかじめ整理しておくと良いでしょう。
また、メールやSNSでのやり取りの記録といった、証拠となるものがあれば保存しておくことも大切です。
寸借詐欺では、被害があまりに少額な場合や、詐欺の意図が微妙な場合など、必ずしも十分な捜査がなされないケースも想定はされます。
しかし、相手が常習的に同様の行為を繰り返している場合や、明らかにだます意図があった場合は、詐欺罪として捜査が進む可能性が高まります。
民事手続による債権回収
詐欺は、犯罪として刑事責任が生じるだけでなく、民事上の賠償責任も発生します。
寸借詐欺の被害に遭った場合、刑事告訴とは別に、民事手続を利用して債権回収を図ることも可能です。
寸借詐欺は被害が少額なことも多く、さすがに被害が数百円や数千円程度ですと、回収費用の方が高く付いてはしまいます。
しかし、複数にわたって何度も貸し付けを行っている場合、トータルの被害が結構な額になっていることもあり得ます。
少額の債権回収には、少額訴訟や支払督促といった手続きが利用できるため、被害の状況によっては、民事的な手段によって被害を回収することが検討されます。
加害者と示談交渉する
寸借詐欺の被害を回復するために、加害者と示談交渉することも有効です。
示談は、当事者の話し合いによって紛争を解決する手続きです。
示談も民事的な手続きではありますが、あくまで話し合いであるため、訴訟のような強制力はありません。
他方で、訴訟のような債権回収と比較すると、費用がかからないという利点もあります。
相手方に示談の意向がある場合には、被害額の返還を合意することで、詐欺被害を回復できることがあります。
寸借詐欺についてのQ&A
寸借は罪になる?

しかし、最初から返済する意思がないのに、返す意思があるように装ってお金を借りると、詐欺罪に該当します。
お金を返さないと詐欺罪になりますか?

詐欺罪が成立するには、「借りる時点で返済する意思がなかった」という要件が必要です。
借りた時は返済するつもりだったが、後に経済状況が悪化して返せなくなった場合は、民事上の債務不履行であり、刑事上の詐欺ではありません。
まとめ
この記事では、寸借詐欺について、意味や具体例、刑罰、逮捕された場合の流れ、対処法などを解説しました。
記事の要点は、次のとおりです。
- 寸借詐欺とは、返済する意思がないにもかかわらず、少額のお金を「返す」と偽って借りる行為であり、詐欺罪に該当する。
- 詐欺罪の法定刑は10年以下の拘禁刑であり、少額でも悪質な場合は逮捕・起訴される可能性がある。
- 寸借詐欺のリスクには、逮捕・服役のほか、会社からの解雇や、家族関係の悪化、実名報道など多岐にわたる。
- 寸借詐欺を行ってしまった場合は、自首や示談交渉など、さまざまな場面で、刑事事件に強い弁護士のサポートが効果的である。
当事務所は、刑事事件のご相談の予約に24時間対応しており、LINEなどのオンライン相談を活用することで、全国対応も可能となっています。
まずは、お気軽に当事務所までご相談ください。
なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか