公務執行妨害で逮捕されたらどうしたらいい?【刑事弁護士が解説】

公務執行妨害とは何か

公務執行妨害とは、職務を行っている公務員に対して、暴行や脅迫を加えることをいいます。

暴行は、公務員に直接向けられたものである必要はないとされています。

公務執行妨害の具体例としては、職務質問中の警察官に殴りかかる行為、捜索中の警察官が拾おうとした証拠物を踏み潰す行為等が挙げられます。

 

 

公務執行妨害の判例

判例

【事案の概要】
被告人M、被告人Kは、兵庫県の職員Nから、新運用方式に基づく融資手続などの説明を受けているうち、やがてその説明に対する不満をあらわにして、同人に対し、こもごも「ぼけ」「どあほ」などと罵声を浴びせながら一方的に抗議し、同日午後二時ないし三時ころ、被告人Mは、激高した態度で所携のパンフレットを丸めてNの座っていたいすのメモ台部分を数回たたいた上、丸めた右パンフレットを同人の顔面付近に二、三回突きつけ、少なくとも一回その先端をあごに触れさせ、更に、約二回にわたり、同人が座っていたいすのメモ台部分を両手で持って右いすの前脚を床から持ち上げては落とすことによりその身体を揺さぶり、また、被告人Kは、Nがいすのメモ台部分に両手をついて立ち上がりかけたところ、これを阻止するため、その右手首を握った。

【裁判所の判断】
「被告人両名の右各行為は、被告人らが罵声を浴びせながら一方的に抗議する過程でなされたものであることをも考慮すれば、いずれも公務執行妨害罪にいう暴行に当たるものというべきである」
引用元:平成元年3月9日|最高裁判所


【解説】
この判例では、公務執行妨害罪の「暴行」について、丸めたパンフレットで公民の座っていた椅子の一部を叩く行為、椅子を持ち上げて落とすことにより身体を揺さぶる行為も「暴行」あたると判断されています。

 

 

刑罰

3年以下の懲役若しくは禁錮

又は

50万円以下の罰金

※懲役と禁錮とは労務作業の有無が異なります。懲役の場合は労務作業があり、禁錮の場合はありません。したがって、一般的に懲役は禁錮よりも重い刑罰とされています。

根拠条文

(公務執行妨害及び職務強要)
第九十五条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。

引用元:刑法|電子政府の総合窓口

 

 

公務執行妨害の弁護活動

公務執行妨害を認める場合

公務執行妨害と警察に判断された場合、基本的に現行犯逮捕されることになります(場合によっては通常逮捕)。

逮捕は最大3日間続き、その後、勾留するかどうかがさらに警察官や検察官の間で判断されることになります。

公務執行妨害を認める場合、逮捕後、早期に釈放してもらうこと、勾留されないこと、不起訴処分を得ることが目標となります。

公務執行妨害罪は、公務に対する犯罪であり、公務員個人に対する犯罪ではないため、公務員個人と示談することはできません。

公務員に怪我を負わせた場合、その怪我を負わせたこと(傷害罪)については、公務員個人と示談することができますが、公務執行妨害罪とは直接関係しません。

捜査機関は、公務執行妨害で、実際にどの程度公務に支障が生じたか、公務員が怪我を負ったか、妨害の目的は何か、前科はあるか、反省はあるか等を考慮して、勾留するか否か、起訴するか否かを決しています。

被疑者としては、早期に自らが犯した罪について反省し、更生の意欲を示すことが必要になります。

弁護士としては、被疑者に反省を促し、反省文を書かせ、他の有利な証拠等も収集し、検察官に釈放、不起訴を働きかけることになります。

 

公務執行妨害を認めない場合

職務質問中の警察官にカッとなって暴行を加えてしまったとしても、警察官の職務質問が違法なものである場合には、公務執行妨害罪は成立しません。

公務執行妨害罪で保護しようとする公務は、適法性を有する公務に限定されているのです。

したがって、この場合、警察官の職務質問が違法であったことを、弁護人として論じていくことになります。

公務の違法性の立証のためには、違法性を基礎付ける証拠を豊富に収集する必要があります。

 

 

 

まとめ

以上、公務執行妨害罪の内容、判例、刑罰と今後の対応について解説しましたがいかがだったでしょうか。

公務執行妨害の場合、違反の事実を認める場合と認めない場合とで、弁護活動が異なります。

認める場合は早期の釈放や情状弁護がメインとなり、認めない場合は無罪の獲得が重要となります。

いずれにせよ、これらの活動は、弁護士の技量と熱意が必要不可欠ですので、刑事事件に特化した弁護士を選任することが重要となります。

 

 



なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか

続きを読む