領収書の偽造は犯罪となる?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  • 領収書を改ざんしたら罪に問われますか?
  • 経費を水増しして会社に請求したら犯罪となりますか?
  • 会社に対する詐欺の場合に警察から逮捕されますか?

このような会社に対する不正行為ご相談がたくさん寄せられています。

刑事事件チームの弁護士が領収書を偽造した場合について解説いたします。

 

領収書の偽造についての質問です。

私はD株式会社に営業職として雇用されています。

得意先等の接待のために、一定額の交際費の使用を許されているのですが、2年ほど前から、交際費の水増し請求をするようになりました。

具体的には、領収書を偽造して実際にかかった経費よりも多い金額を記載し、会社に正当な交際費として申請するという方法です。

交際費は経理から私に支給されるのですが、実際に使った交際費よりも高額な金銭を取得していていました。

先日、上司から呼び出されて領収書の偽造が発覚したと伝えられました。

私は動揺して、偽造について否定したところ、上司は刑事告訴するとのことでした。

このような場合、犯罪となって警察に逮捕されるのでしょうか?

 

 

弁護士の回答

領収証の偽造は有印私文書変造罪等が成立する可能性があります。

領収書の偽造は犯罪となる?

領収証を偽造した行為については、「有印私文書変造罪」が成立すると考えられます。

私文書偽造罪は、行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造した場合に成立します(刑法159条1項)。

そして、他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した場合、有印私文書変造罪が成立します(同条2項)。

領収証は、私人(お店の店主)が発行した弁済の事実を証明する文書ですので、「事実証明に関する文書」に該当すると考えられます。

次に、ご質問の事案は、ご相談者の方が店主の印章や署名を偽造したわけではないので、1項の有印私文書偽造罪には該当しません。

しかし、店主が発行した領収書の金額欄を書き換えているので、2項の有印私文書変造罪に該当すると考えられます。

領収書偽造の罪

有印私文書変造罪の法定刑は、3月以上5年以下の懲役となっています(刑法159条2項)。

 

 

偽造した領収書を会社に提出するとどうなる?

領収書領収書を偽造すると、上述したとおり、有印私文書変造罪が成立します。

偽造した領収書を会社に提出する行為は、当該偽造文書を行使した場合に該当し、偽変造私文書行使罪が成立します(刑法161条1項)。

この場合の法定刑も3月以上5年以下の懲役です。

 

 

会社から交際費を受け取るとどうなる?

刑法上、詐欺罪が成立すると考えられます。

刑法第246条

人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

お金を隠す男性ご質問の事案では、会社の経理担当者に対して、金額を水増しした領収書を適切なものであるかのように装い、多額の交際費を申請しており、「人を欺いた」と評価できるでしょう。

また、交際費を支給した時点で、「財物を交付した」といえます。

したがって、会社に対する詐欺罪が成立すると考えられます。

詐欺罪の場合、法定刑は10年以下の懲役となります。

 

有印私文書変造罪・同行使罪との法定刑の処理

逮捕有印私文書変造罪と同行使罪の法定刑は、3月以上5年以下の懲役です。

詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です。

この場合、私文書変造罪と同行使罪、同行使罪と詐欺罪は「牽連犯(けんれんぱん)」となります。

そのため、最も重い「10年以下の懲役」として処断されることとなります(刑法54条1項後段)。

 

その他の責任

今回の事案は、D株式会社の就業規則の服務規程に違反する可能性があります。

通常、会社では就業規則を定めており、今回の事案のようなケースは、懲戒解雇事由に該当する可能性が高いと思われます。

したがって、会社を懲戒解雇される可能性があります。仮に、懲戒解雇ではなくとも、諭旨解雇や普通解雇として処分されると可能性があります。

もっとも、会社によっては自主退職を勧めてくることもあります。また、悪質性が低いような場合は雇用契約が継続されることもあり得ます。

また、会社から民事上の請求として、不法行為に基づく損害賠償請求がなされる可能性があります。

 

 

領収書の偽造で逮捕される?

記録や証拠D株式会社は、警察に対して、被害届を提出する可能性があります。

そうすると、警察は捜査を開始する可能性があります。

具体的には、容疑者を警察署に呼び出して事情聴取したり、いきな自宅に訪れることも考えられます。

逮捕されるか否かはケース・バイ・ケースですが、本事案のように、会社に対して事実を認めず、否定している場合、会社としても事実を明らかにするために、警察に相談する可能性はあるでしょう。

領収書偽造の証拠がある場合に、容疑者が容疑を否認していれば、逮捕される可能性もあると思われます。

逮捕について、具体的な要件などはこちらのページでくわしく解説しています。

 

 

まとめ

刑法と弁護士バッジ以上、領収証を偽造した場合に成立する犯罪等について、解説しましたがいかがだったでしょうか?

領収証の偽造で刑事責任を追求されたり、懲戒解雇をされると、将来に悪影響を与える可能性があるため、刑事・民事の2つの観点から、弁護活動が重要となります。

領収書の偽造では、弁護士が偽造に至る経緯や会社損害についての今後の返済プランなどを丁寧に説明すべきです。

誠意を見せ、会社に刑事告訴をしないようにお願いし、円満な形での示談を目指すことが重要です。

また、民事の観点からは、離職の内容について懲戒解雇ではなく、合意退職など、再就職しやすい形での示談を目指すことが重要となります。

これらの示談交渉は、刑事事件に精通した弁護士に任せることで成功の可能性が高くなると考えられます。

デイライト法律事務所の刑事事件チームは、刑事事件に注力する弁護士で構成された専門チームです。

領収書の偽造をしてしまった方、まずは、刑事事件に注力する弁護士が在籍している当事務所へ、お気軽にご相談ください。

ご相談についてはこちらをご覧ください。

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