結論から言うと、損害賠償金を支払ってもらえない場合でも、泣き寝入りする必要はまったくありません。
加害者が任意に賠償金を支払わない場合でも、法的な手続きを通じて支払いを求めたり、強制的に回収したりすることが可能です。
ただし、「加害者と連絡が取れない」「支払いを拒まれている」「お金がない」など、状況によって取るべき対応は異なります。
適切な対応を取らずに放置してしまうと、時効が進行して請求できなくなるおそれもあるため注意が必要です。
この記事では、損害賠償金を支払ってもらえない場合の原因や対処法、泣き寝入りを防ぐために知っておきたいポイントについて、分かりやすく解説します。
「本当に回収できるのか」と不安に感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
損害賠償金を支払ってもらえないからといって、泣き寝入りする必要はまったくありません。
加害者が損害賠償金を支払わない場合でも、法的手続きを通じて賠償金を回収できる可能性は十分にあります。
たとえば、民事調停や民事訴訟を経て「債務名義」を取得すれば、加害者の預金や給与などを差し押さえる「強制執行」という手続きをとることができます。
ただし、加害者に資産や収入がない場合には、現実的に回収が難しいこともあります。
そのため、まずは「なぜ支払われないのか」という原因を正確に把握し、それに応じた対応を取ることが大切です。
泣き寝入りを避けるための第一歩は、加害者が支払いに応じない理由を正確に把握することです。
相手が支払いを拒む理由は、必ずしも単なる「意地悪」や「踏み倒し」だけとは限りません。
ここでは、代表的な4つのパターンについて解説します。

損害賠償請求をしようとした際、加害者と連絡が取れないというケースは少なくありません。
事故や事件の直後は連絡が取れていたものの、時間の経過とともに電話に出なくなったり、引っ越して行方が分からなくなったりすることもあります。
特に、トラブルから時間が経過して交渉期間が長引くほど、このようなケースは増える傾向にあります。
このような状況が生じる理由としては、大きく2つのパターンが考えられます。
このように、所在がわからない場合でも損害賠償請求の時効は進行してしまうため、放置せずに早めの対応を取ることが重要です。
加害者が「自分には賠償責任がない」と主張して支払い義務そのものを否定するケースです。
たとえば「事故を起こしていない」「被害者側の過失が大きい」などと事実関係を争うことがあります。
また、法的責任がないと考えていることもあります。
たとえば、未成年者の親が「子どもがやったことだから自分には責任がない」と主張したり、会社が「従業員の個人的な行為だから会社に責任はない」と主張したりするケースが典型です。
損害賠償の支払い義務自体は認めているものの、賠償額について争うケースもあります。
これは、「支払う意思はあるが、提示された金額には納得できない」という状況です。
原因としては、被害の程度や過失割合に対する認識の違いなどが考えられます。
加害者が損害賠償の支払い義務を認めており、賠償額にも争いがないにもかかわらず、実際に支払う経済的な能力がないケースもあります。
加害者自身も支払いたいと思っていても、現実的に支払う資力がないという状況です。
ただし、実際には収入や預金があるにもかかわらず、「お金がない」と噓をつき、財産を隠匿(いんとく)しようとする悪質なケースもあります。
そのため、表面的な言い分を鵜呑みにせず、慎重に見極めることが大切です。
加害者が損害賠償金を支払わない理由はさまざまですが、どのような理由であっても、泣き寝入りする必要はありません。
ただし、「連絡が取れない」「責任を否定している」「お金がない」など、支払われない理由によって取るべき対応は異なります。
ここでは、それぞれの状況に応じた対処法をわかりやすく解説します。
加害者と連絡が取れなくなった場合、まずは所在や連絡先を特定することを最優先しましょう。
加害者の住所が分からなければ、請求書を送付したり、訴訟を提起したりすることもできません。
所在を調べる方法としては、弁護士を通じて住民票や戸籍の附票などの情報を確認するのが一般的かつ確実な方法です。
加害者が「自分には責任がない」あるいは「金額が高すぎる」と主張している場合、当事者同士での話し合いだけでは解決が難しいことが多いです。
このような場合には、第三者を交えた手続きや裁判所での解決を検討する必要があります。
具体的には、次のような手段が考えられます。
| 手続名 | 内容 |
|---|---|
| ADR (裁判外紛争解決手続) |
裁判所を利用せず、中立的な専門家の仲介により、話し合いで解決を目指す手続きです |
| 民事調停 | 裁判所で調停委員の仲介によって、話し合いで合意による解決を目指す手続きです |
| 民事訴訟 | 裁判所に訴えを提起し、裁判官が双方の主張と証拠を審理して法的判断を下す手続きです |

債務名義(さいむめいぎ)とは、強制執行を行うために必要となる公的な文書のことです。
簡単に言えば、「相手がこれだけの金額を支払う義務がある」ということを公的に証明する文書です。
債務名義がなければ、たとえ相手に賠償金の支払い義務があったとしても、強制的に財産を差し押さえることはできません。
一方で、債務名義を取得できれば、相手が任意に支払わない場合でも、裁判所を通じて強制執行の手続きを進めることが可能となります。
主な債務名義の種類は、以下のとおりです。
任意の支払いが期待できない場合には、まずこの債務名義を取得することが重要です。
判決や和解が成立しても、加害者が任意に支払わないケースは少なくありません。
損害賠償の責任や金額がすでに確定しているにもかかわらず支払われない場合、その理由は大きく 「お金がなくて支払えない場合」 と 「お金はあるのに支払わない場合」 の2つに分けられます。
それぞれで取るべき対処法が異なるため、相手の経済状況や支払い意思を正確に見極めることが重要です。
加害者が「本当に財産がない」「無職で収入がない」などと主張し、損害賠償金の支払いを拒むケースがあります。
このような場合、実際には財産を隠している可能性もあるため、相手の財産状況を確認・調査することが重要です。
財産を調べる方法はいくつかありますが、特に有効なのが裁判所を通じて行う「財産開示手続」です。
これは、加害者が裁判所が指定する期日に出頭し、自らの財産について陳述・報告するよう命じる手続です。
なお、加害者が正当な理由なく出頭しなかったり、虚偽の陳述をしたりした場合には、6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金という刑事罰が科されます(民事執行法213条)。
調査の結果、加害者に本当に財産や収入がないと分かった場合は、全額一括での支払いにこだわらず、「月々2万円ずつ」など現実的な分割払いでの和解を検討することも選択肢の一つです。
分割払いの合意をする際には、口約束ではなく、必ず書面で取り交わすようにしましょう。
一方で、加害者に明らかに資産や収入があるにもかかわらず、支払いを故意に拒んでいるケースもあります。
このような場合は、強制執行の手続きを進めることが最も効果的です。
先述した「債務名義」を取得していれば、裁判所を通じて相手の財産を強制的に差し押さえることができます。
強制執行には、不動産執行・動産執行・債権執行(預金や給与の差押えなど)といった方法があります。
相手が任意に支払わない場合でも、これらの手続きを活用することで、賠償金を回収できる可能性が高まります。
損害賠償金の回収を確実にするためには、事故や事件が発生した直後から適切な対応を取ることが重要です。
ここでは、泣き寝入りを防ぐために押さえておくべきポイントについて解説します。

損害賠償請求のすべての土台となるのが、「証拠」です。
証拠がなければ、自分の権利を法的に裏付けることはできません。
加害者が責任自体を否定したり、賠償額を争ったりした場合、自らの主張が正しいことを客観的に示せるのは証拠だけです。
事案ごとに必要な証拠は異なりますが、以下の資料は一般的に重要といえます。
これらの証拠は、時間の経過とともに失われてしまうおそれがあります。
そのため、被害発生直後から意識的に記録を残し、データや書面を保管しておくことが大切です。
損害賠償請求権には「時効」というタイムリミットが存在します。
この期間を過ぎてしまうと、たとえ正当な請求であっても、法的に支払いを求めることができなくなってしまいます。
つまり、請求権そのものが消滅してしまうのです。
時効の期間は、請求の根拠となる内容によって異なります。
詳しくは、以下の表をご覧ください。
| 起算点 | 時効 | 時効 (生命・身体の侵害) |
|
|---|---|---|---|
| 不法行為 | 損害および加害者を知った時 | 3年 | 5年 |
| 不法行為 | 不法行為の時 | 20年 | 20年 |
| 債務不履行 | 権利を行使できることを知った時 | 5年 | 5年 |
| 債務不履行 | 権利を行使できる時 | 10年 | 20年 |
上記の時効期間は改正民法(2020年4月1日施行)に基づきます。
不法行為とは、「他人のわざと、または不注意(過失)によって損害を受けた」場合を指します。
たとえば、交通事故や暴行、名誉毀損などがこれにあたります。
一方、債務不履行とは、「契約関係にある相手が約束どおりの義務を果たさなかったことで損害が生じた」場合を指します。
たとえば、商品を納品しない、修理契約を履行しないなどのケースです。
不法行為と債務不履行の時効については、以下の記事でさらに詳しく解説していますので、ぜひ下記ページもあわせてご覧ください。
時効の管理や証拠の集め方、訴訟の進め方、さらに強制執行や財産の調査など、損害賠償に関する手続きは思っている以上に複雑です。
法律の知識がないまま自分で対応しようとすると、時間も手間もかかってしまいます。
また、加害者と直接やり取りを続けることは、被害者の方にとって大きな精神的負担になります。
「もう関わりたくないのに、連絡を取らないといけない」という状況は、それだけでもつらいものです。
自分でなんとか解決しようと頑張っているうちに、時効が過ぎてしまったり、相手が財産を隠してしまったりすれば、せっかくの権利を失ってしまうおそれもあります。
泣き寝入りを防ぐためにも、早い段階で損害賠償問題に強い弁護士に相談することが大切です。
損害賠償を支払わないケースについて、よくあるご質問にお答えします。

加害者に支払い能力がなく、損害賠償金を払えない場合でも、賠償義務そのものがなくなるわけではありません。判決などで支払いが確定した以上、その債務は法律上存在することとなります。
たとえば今すぐは支払えなくても、後に収入が増えたり財産ができた場合には、強制執行(差押え)を受ける可能性があります。

損害賠償金を支払えないという理由だけで刑務所に行くことはありません。損害賠償の支払いは民事上の問題であり、刑罰が科されるのは「犯罪行為」に対してです。
したがって、「お金がなくて払えない」という理由で逮捕・収監されることはありません。
「相手が払ってくれない」と感じたとき、多くの方が「もうどうにもならないのでは」と不安になります。
しかし、これまでご説明してきたとおり、加害者が任意に損害賠償金を支払わないからといって、泣き寝入りする必要はありません。
法的な手続きを正しく踏めば、加害者の財産を差し押さえるなどの方法で、賠償金を回収できる可能性があります。
泣き寝入りを避けるためにも、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、最適な対応をとることをおすすめします。
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