労災で骨折。休業補償を受けれる期間は?弁護士が解説

労災で骨折した場合の休業補償を受けれる期間は、最長で症状固定日までです。

労災で骨折して働けない場合、労災保険から休業補償を受けることができますが、補償の期間が長くなった場合、他の給付に切り替わる場合もあるため注意が必要です。

この記事では、労災で骨折した場合の補償の内容や、補償期間などについて解説していきます。

この記事を読むことで、休業補償を受けられる期間やその他の補償について知ることができます。

労災で骨折した場合の休業補償の期間

労災で骨折したらいつから補償されるの?

労災で骨折した場合、休業補償の要件を満たせば、労災保険から休業補償を受けることができます。

休業補償の要件としては、以下のものがあります。

  1. ① 労働者が業務上の負傷又は疾病にかかったこと
  2. ② 療養のため労働することができないこと
  3. ③ 賃金を受けていないこと

ただし労災事故の3日目までは待機期間となっているため、この期間については労災保険から休業補償を受けることはできません。

したがって、休業補償の支給は労災の事故日の4日目から開始されます

また、労働基準法76条では、業務上の怪我や疾病によって労働者が仕事を休んだ場合に、会社に対して休業補償の支払いを義務付けています。

そのため、労働者は業務上の怪我や疾病について、最初の3日間についても、休業補償として平均賃金の60%を会社に請求することができます。

 

労災で骨折したらいつまで補償されるの?

労災で骨折した場合、休業補償は、以下の要件を満たさなくなった場合に補償は終了します。

    1. ① 労働者が業務上の負傷又は疾病にかかったこと
    2. ② 療養のため労働することができないこと
    3. ③ 賃金を受けていないこと

そのため、仮に症状が治癒(症状固定)していなかったとしても、就労可能と判断された場合には、②の要件を満たさないとして、補償が打ち切られます

労災の休業補償の期間について、詳しくはこちらをご覧ください。

また、業務または通勤が原因となった負傷や疾病の療養開始後1年6か月を経過し、一定の要件を満たした場合には、傷病(補償)年金が支給されます。

後述するように、傷病(補償)年金が支給された場合、休業(補償)給付は支給されなくなります

 

 

休業補償とは?

休業補償とは、労災事故によって休業した場合に、休業によって減額した給料に対する補償のことです。

労災保険では、労働者が、業務または通勤が原因となっ た負傷や疾病による療養のため労働することができず、そのために賃金を受けていないとき、その4日目から休業(補償)給付が支給されます。

休業補償について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

労災骨折でいくら支給される?

休業補償の金額

休業補償では、給付基礎日額の60%が補償されます。

給付基礎日額とは、平均賃金に相当する額をいい、平均賃金とは、原則として、労災事故が発生した日の直前3か月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った1暦日あたりの賃金額のことをいいます。

労災保険では、給付基礎日額の60%以外にも、労災保険から休業特別支給金というものが支給されます。

休業特別支給金とは、被災労働者の社会復帰を促進するための特別な支給金で、給付基礎日額の20%に相当する額が補償されます。

つまり、被災労働者は、給付基礎日額の60%に加えて、休業特別支給金として給付基礎日額の20%に相当する部分が補償されます。

また、この20%の休業特別支給金は、損益相殺(給料の補償を受けた場合に、その支給額分から賠償額を差し引くという考え方)の対象にならないため、休業補償の合計額から特別支給金は控除されません。

休業補償について、詳しくは下記のサイトを御覧ください

 

休業補償給付以外に受給できる給付

労災で骨折した場合に、休業補償以外に受給できる給付として、以下の給付があげられます。

  1. ① 療養(補償)給付
  2. ② 障害(補償)給付
  3. ③ 傷病(補償)年金
  4. ④ 介護(補償)給付

療養(補償)給付

療養(補償)給付には、「療養の給付」と「療養の費用の支給」があります。

「療養の給付」とは、労災病院や労災保険指定医療機関・薬局等(以下「指定医療機関等」といいます)で、無料で治療や薬剤の支給などを受けることができるサービスです。

「療養の費用の支給」とは、近くに指定医療機関等がないなどの理由で、指定医療機関等以外の 医療機関や薬局等で療養を受けた場合に、その療養にかかった費用に対して支給されるお金です。

障害(補償)給付

障害(補償)給付とは、業務または通勤が原因となった負傷や疾病が治ったとき、身体に一定の障害が残った場合に支給されるお金です。

障害(補償)給付(障害給付)には、障害の程度に応じた障害(補償)年金と障害(補償)一時金とがあります。

障害(補償)年金は、後遺障害等級で1級から7級までの間で認定された場合に支給されます。

一方で、障害(補償)一時金は、後遺障害等級で8級から14級までの間で認定された場合に支給されます。

障害(補償)一時金の場合、障害等級に応じて定められた日数に給付基礎日額を乗じた額が一時金として支給されます。

傷病(補償)年金

業務または通勤が原因となった負傷や疾病の療養開始後1年6か月を経過し、一定の要件を満たした場合に支給されるお金です。

傷病(補償)等年金は、業務上の事由または通勤により負傷し、または疾病にかかった労働者が、療養の開始後1年6ヶ月を経過した日またはその日以降において、次の要件に該当する場合に支給されます。

  1. ① その負傷または疾病が治っていないこと
  2. ② その負傷または疾病による障害の程度が傷病等級表の傷病等級に該当すること

傷病(補償)等年金の支給・不支給の決定は、所轄の監督署長の職権で行われるため、被災労働者が請求を行うことはありません

傷病(補償)等年金の支給がなされると、それまで休業(補償)等給付を受給していれば、以降の支給はされなくなります。

ただし、療養(補償)等給付は引き続き受給することができます。

介護(補償)給付

介護(補償)給付とは、障害補償給付や傷病補償年金を受ける権利のある従業員が、介護の必要な状態にある場合に支給されるお金です。

介護(補償)給付の支給要件としては、以下のものがあります。

  1. ① 一定の障害の状態(常時介護・随時介護)に該当すること
  2. ② 民間の有料の介護サービス、親族または友人・知人により、現に介護を受けていること
  3. ③ 病院または診療所に入院していないこと
  4. ④ 十分な介護サービスを提供されている施設(老人保健施設、障害者支援施設(生活保護を受けている)、特別養護老人ホームなど)に入所していないこと

休業補償給付以外に受給できる給付について、詳しくはこちらを御覧ください。

 

 

休業補償が打ち切りになる場合

症状が治癒した場合

休業補償は、①労働者が業務上の負傷又は疾病にかかったこと、②療養のため労働することができないこと、③賃金を受けていない場合に支給されます。

したがって、ケガや病気が治癒(これを「症状固定」といいます。)して、その結果、労働ができる状態になった場合には、②療養のために労働することができない場合の要件を満たさなくなるため、休業補償が打ち切られることになります。

傷病(補償)年金を受給する場合

上述のように、傷病補償年金は、業務上の事由または通勤により負傷し、または疾病にかかった労働者が、療養の開始後1年6ヶ月を経過した日またはその日以降において、一定の要件に該当する場合に支給されます。

傷病(補償)等年金の支給がなされると、それまで休業(補償)等給付を受給していれば、以降の支給はされなくなります

一方で、療養開始後1年6か月経過しても傷病が治癒しない場合で、かつ、傷病が障害等級第1級から第3級に該当しない場合には、休業補償が継続することになります。

被災労働者がお亡くなりになった場合

被災労働者がお亡くなりになった場合は、休業補償は打ち切りとなり、一定の要件を満たせば、遺族(補償)給付が発生します。

休業補償の期間について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

労災骨折の休業補償についてのQ&A

労災の休業補償の期間は誰が決める?

労災の休業(補償)給付の開始及び打ち切りの決定は、所轄の労働監督基準署が行います。

また、休業(補償)給付を受けるための要件である、「療養のため労働することができないこと」については、担当医師の意見が尊重されます。

したがって、適切な休業補償の期間を得るためには、担当医師や労働監督基準署に、現在の状況についてしっかりと伝えることが重要になります。

 

退職後は補償されるのか?

労災保険の休業補償は、①労働者が業務上の負傷又は疾病にかかり、②療養のため労働することができず、③賃金を受けていない場合に支給されます。

したがって、被災労働者が会社を退職した場合や会社が倒産した場合であっても、休業補償の支給は継続して受給することができます

また、労働者災害補償保険法第12条の5第1項は、労働者が退職後も休業補償を受けられることについて言及しています。

根拠条文
労働者災害補償保険法第12条の5第1項
保険給付を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない。

引用元:e-Gov法令|労働基準法

条文中の「保険給付を受ける権利」とは、休業補償や療養補償を受ける権利のことです。

会社が倒産した場合で、休業補償の支給書について「事業主の証明」を受けられない場合であっても、所轄の労働監督基準書に理由を説明し、調査に問題が無ければ休業補償が支給されます。

 

有給の日は支給されるのか?

休業補償は給料の支払いを受けることができない場合に支給されるものです。

したがって、給料が支給される有給取得日については、休業補償は支給されません

つまり、休業補償と有給休暇の取得の二重取りはできないものとなっています。

休業補償については、特別支給金を入れても給付基礎日額の80%が支給されるのに対し、有給休暇については、休暇日の100%の給料を受給できますが、有給休暇の日数を消化することになります。

有給休暇は従業員の権利であるため、休業補償と有給休暇のどちらかをとるかは、従業員の自由です。

有給の取得と休業補償について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

所定労働時間の一部を休業する場合は?

お仕事に復帰しても、通院やリハビリのため、所定の労働時間の一部を休業する場合について、休業補償を受けられる場合があります

例えば、午前中に通院して午後から出勤した場合、通院のため所定労働時間の一部について労働できない場合で、「平均賃金」と「実働に対して支払われる賃金」との差額の100分の60未満の賃金しか支払われていない場合は、「休業する日」として支給の対象になります。

一方で、100分の60を超える金額を支払われている場合は、賃金を受けていない場合の要件を満たしていない事になるので、支給の対象になりません。

参考:厚生労働省|労災保険に関するQ&A3-3

 

休業補償の期間中に解雇できるか?

結論から申し上げると、会社は被災した従業員が休業している期間と、復帰後30日間は当該従業員を解雇することはできません

根拠条文として、労働基準法19条第1項があげられます。

根拠条文
労働基準法19条第1項
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

引用元:e-Gov法令|労働基準法

ただし、使用者が、打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合は解雇することができます。

 

休業(補償)給付の時効は?

休業(補償)給付の時効については、賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年間で時効となります。

そのため、賃金を受けなかった場合から2年以上経過すると、古いものから順番に時効にかかり、請求することができなくなります。

休業(補償)給付の時効について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

まとめ

  • 休業補償とは、労災事故によって休業した場合に、休業によって減額した給料に対する補償のことである。
  • 労災保険の休業補償は、①労働者が業務上の負傷又は疾病にかかり、②療養のため労働することができず、③賃金を受けていない場合に支給される。
  • ケガや病気が治癒(これを「症状固定」といいます。)して、その結果、労働ができる状態になった場合には、療養のために労働することができない場合の要件を満たさなくなるため、休業補償が打ち切られる。
  • 被災労働者が会社を退職した場合や会社が倒産した場合であっても、休業補償の支給は継続して受給することができる。
  • 通院やリハビリのため、所定の労働時間の一部を休業する場合でも、休業補償を受けられる場合がある。

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