住居侵入についての相談【弁護士が解説】

大家が不法侵入、どうすればいいですか?

新築のアパートに入居しています。

数回に渡って大家に不法侵入されており、本当に気持ち悪くて夜も眠れません。

違約金+退去費+引越し費はとれますか?また相手を刑務所送りには出来ますか?

 

弁護士の回答

■住居侵入罪について

①警察に事件化してもらうこと

相談者様は、大家である相手方から不法侵入を受けているということですが、相手方の侵入行為に正当な理由(緊急時の安否確認等)がなければ、住居侵入罪が成立すると思われます。
警察に今回の件を事件化してもらう方法ですが、相手方が部屋に侵入したことを確認したのち、直ちに警察に連絡を入れて現行犯で逮捕してもらうことがもっとも確実です。
もっとも、相手方が侵入するのを部屋の外で待機しておくわけにもいかないでしょうから、現実的には被害届を提出することで警察に動いてもらうことになるでしょう。
警察に早く動いてもらいたいと考えるのであれば、不在時の部屋の中を動画撮影しておくとか、相手方が侵入をしていることを認める発言をしているところの録音を撮るとかといった証拠を確保しておくとよいかもしれません。
少しでも証拠があった方が警察も動きやすいはずです。

②住居侵入罪の刑罰について

起訴をするかどうかを決めるのは検察官ですので、検察官が起訴をするほどの事件ではないと判断してしまえば、起訴猶予処分となることもあり得ます。
相談者様は厳重な処罰を望んでおられるようですから、そのことを検察官にしっかりと理解してもらわなければなりません。そのためには、警察で事情聴取を受けるときに、自分がどのような被害にあい、どんなに不快な気持ちにさせられたかといったことを述べて、自分の処罰感情が高いことを供述調書に残してもらうことが必要です。
ただし、検察官が起訴をしたとしても、相手方が刑務所送りになるかというと、おそらくそうはならない可能性の方が高いと言わざるを得ません。
住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金となっています(刑法130条)。
裁判官は、過去の例に照らして、この法定刑の中でどのような刑とするのが妥当かを判断することになります。
侵入の目的や頻度、悪質性等にもよるので一概にはいえませんが、過去の裁判例を見ると、初犯の場合、罰金刑や懲役1年の執行猶予数年といった判決となることが多いようです。
そのため、今回の事件が起訴された場合、残念ながら担当裁判官もそのような例によった判断を行うのではないかと思われます。
もっとも、これらの判決であっても相手方には前科という形で犯歴が残ることになりますし、刑事処罰を受けたということに変わりはありません。

■転居費用等の請求について

刑事事件として捜査がされた場合、処分が決定する前であれば、相手方から示談の申し入れがあるかもしれません。

その場合には、転居費用等を含めた額の示談金を受け取ることで相談者様が望む費用の回収が可能となるでしょう。

しかし、示談が成立しているという事実は、相手方の刑事処罰について有利に考慮されることになりますので、その点は注意が必要です。

刑事事件と無関係に民事上の請求を行う場合、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)が考えられます。

大家に何度も不法侵入されるような部屋に住み続けることができないと考えることは自然と思われますから、転居費用等の請求が認められる可能性は相当程度あると思われます。

ただし、刑事事件の処罰に影響しない場合、相手方が任意に転居費用等を支払う可能性は低いでしょう。

相手方が任意に支払わない場合には裁判を行う必要がありますが、時間、労力、費用といった点で大きな負担となりますので、裁判まで行うかどうかは慎重に検討すべきでしょう。

まずは相手方に対して書面で請求を行ってみてはどうでしょうか。

 

 



なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか

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