置き引きで捕まるケースとは?逮捕されたらどうなる?

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  


昨今では外出の際にバッグなど何かしらの荷物を持ち歩いている方がほとんどでしょう。

そして、これまでに利用したお店や洗面所などに荷物を置き忘れてしまったという経験をしたことがあるという方も少なくないと思います。

ですが、あなたが置き忘れられた荷物と遭遇し、その荷物を自分で使用するために持ち去ってしまった場合、窃盗などの犯罪をしたとして逮捕される可能性があります。

誰でも手に取れる状態の荷物を見ると、ほんの出来心で自分のものにしてしまおうという気持ちに駆られる可能性がありますが、それでも立派な犯罪行為をしたことに変わりはありません。

本記事では、まず、どのような行為が置き引きにあたるのか、また、逮捕された場合、釈放される可能性はあるのか、そのために何をすべきなのかなどについて、わかりやすく解説します。

 

置き引きとは

置き引き行為とは、持ち主が置いていった荷物を持ち主の目を盗んでこっそり持ち去る行為を指します。

典型的な例としては、持ち主が荷物を置いたままその場を離れた後に荷物を持ち去ってしまう行為です。

置き引きは、飲食店や公園、電車の中やトイレの中など、不特定多数の人々が行き交う場所で発生する傾向です。

その他にも、用事が早く終わることを想定し、あえて自転車のかごの中に荷物を置いたままにしていたところ、用事が終わるまでの間でその荷物を持ち去られていたというケースなども挙げられます。

また、置き引き行為の対象となる物の典型例としては、他人のバッグや時計、財布などが挙げられますが、それ以外にも、駐輪中の自転車や傘を持ち去ってしまうことで置き引き行為として処罰の対象となります。

 

置き引きは窃盗罪か占有離脱物横領罪が成立する

置き引きを犯してしまった場合、状況に応じて、「窃盗罪」もしくは「占有離脱物横領罪」が成立します。

まず、窃盗罪は、「他人の財物を窃取した」場合に成立し、10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑が科されると定められています(刑法235条)。

根拠:刑法|e−GOV法令検索

置き引きの場合、他人の財物を無断で持ち去る行為であるため、「他人の財物」を「窃取」(所有者や占有者の意思を無視して、財物に対する占有を強制的に自分に移すことを言います。)する行為に該当することは明らかです。

なお、置き忘れた荷物などをその場から持ち去った理由が、店員や交番に届けるためであれば、窃盗罪は成立しませんので安心してください。

次に、占有離脱物横領罪は、「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した」場合に成立する犯罪で、1年以下の懲役刑または10万円以下の罰金刑が科されると定められています(刑法254条)。

根拠:刑法|e−GOV法令検索

ここで、窃盗罪が成立せず、より罪の軽い占有離脱物横領罪が成立する場合とは、どのような場合でしょうか。

端的に言うと、置き引き行為をした時点で、持ち去ろうとした財物に対する持ち主の占有が残っていれば窃盗罪が成立し、逆に既に占有が残存していなかったと評価されれば占有離脱物横領罪が成立することになります。

ここで、どのような場合に占有が未だ残っていると判断されるかというと、一概な基準はなく、財物のあった場所(多数の人が行き交う場所であるか等)や財物自体の特性(高価な物か、忘れやすい物か等)、財物と持ち主の時間的場所的近接性など、色々な事情を考慮して占有が認められるかが判断されることになります。

なお、旅館・ホテル内での客の忘れ物のように、本来の持ち主の占有が失われていた場合でも、その場所の管理者に占有が認められる場合もあり、その場合にも窃盗罪が成立すると言われています。

他方、諸々の事情から既に占有が認められないと判断された場合でも、占有離脱物横領罪という犯罪が成立することになります。

具体的には、持ち去った財物が、持ち主の下を離れ長い間放置されていたと評価できるような場合、若しくは、持ち去った財物が既に盗まれていたものであった場合には、窃盗罪よりも罪の軽い占有離脱物横領罪という犯罪が成立することになります。

なお、窃盗罪について、くわしくは下記の記事で解説していますので、ご参照ください。

あわせて読みたい
窃盗について

 

 

置き引きで捕まる可能性

上記のとおり、置き引き行為は立派な犯罪行為を構成するものですので、あなたが置き引き行為の犯人である可能性が相当程度認められ、かつ、逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあると判断された場合、警察は逮捕状の発付を受けた上で逮捕手続に着手します。

そのほか、警察が置き引き行為を現認していた場合や、置き引き行為に及んだ直後に職務質問を受けて置き引きが発覚するような場合には、現行犯逮捕に踏み切る可能性もあります。

いずれにしても、逮捕されてしまえば、その後、勾留という長期間の身柄拘束を経た上、刑事処分にかけられる可能性も出てまいります。

置き引きは逮捕されないケースも

もっとも、置き引きの場合、初犯であり、きちんと反省している態度を示すことができれば、逮捕手続に着手することなく、取調べを受けた後、その日中に身柄解放される可能性は相当程度認められるでしょう。

特に占有離脱物横領罪は比較的軽微な犯罪と位置付けられており、ほとんどの場合、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断され、実際にも9割以上は身柄拘束をせずに在宅事件として処理する扱いとなっているようです。

ですが、逮捕に至らなかったからといって、それで事件としては終わりという訳ではありません。

警察は在宅事件として引き続き捜査を続けることになりますので、最終的に刑事処分が下る可能性が完全に払しょくされるものではありません。

 

 

置き引きはどうやって発覚する?

警察は置き引きの犯人をどのように特定していくのでしょうか。

まず、置き引きをたまたま持ち主が気付いたというケースが挙げられるでしょう。

ただ、置き引きは持ち主の目を盗んで行われる犯罪であるため、持ち主が犯行を現認できることはかなり稀なケースと言わざるを得ないでしょう。

そのため、置き引きのような事件の場合、基本的には、被害者である持ち主が警察に被害届を提出することによって、警察の捜査が開始されます。

その後、警察は、店舗内や犯行現場付近に設置された防犯カメラの映像や第三者の証言から犯人を割り出していきます。

昨今では、街頭や公共機関に多数の防犯カメラが設置されており、警察はありとあらゆる防犯カメラを確認することで、犯人の割り出しのみではなく、犯人の帰宅ルートまで特定することが可能ともいわれています。

したがって、置き引き行為をした当日に、警察からの接触がなかったとしても、後日、警察に突然自宅を訪問されてそのまま逮捕されてしまったり、少なくとも警察署への呼び出しの連絡が入る可能性もあります。

 

 

置き引きで逮捕された場合の流れは?

置き引き行為の容疑で逮捕されてしまった場合における逮捕後の流れを図解すると、以下のようになっています。

置き引きで逮捕された場合の流れ

まず、置き引きの容疑で逮捕されてから48時間以内に検察庁に事件が送致されることになり、検察庁は、警察からの送致を受けてから24時間以内に勾留請求をするかどうかを決めます。

そして、検察官が勾留請求した場合、裁判官がその請求を許可するかどうかを判断します。

この点、検察官は、事件の軽重を踏まえた上で、少しでも逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断した場合、勾留請求に踏み切る傾向にあり、裁判官も検察官の請求をそのまま認めてしまうことがほとんどです。

そして、勾留決定がされた場合、まずは10日間の身柄拘束が続くこととなりますが、最大10日の勾留延長が認められていますので、逮捕期間も含め、最大23日間の身柄拘束がされるおそれがあります。

加えて、所定の勾留期間が経過したとしても、検察官が起訴(公判請求)した場合、刑事裁判が開始されることになり、少なくとも刑事裁判が終わるまでは身柄拘束が継続することとなります。

なお、刑事裁判は、どんなに早くても起訴されてから終了するまで2か月程度を要するため、保釈等によって身柄が解放されない限り、同程度の期間を留置場などで過ごすことを余儀なくされることとなります。

このように、逮捕されてしまった場合には、長期間身柄拘束を受けるおそれがあり、その間、家族や勤務先への連絡等も制限され、ご自身の社会生活に著しい不利益が生じる可能性があります。

 

 

置き引きで前科をつけないためのポイント!

置き引きで逮捕されてしまった、若しくは在宅事件として立件されてしまい、このままでは刑事処分が下されてしまうと不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

もっとも、刑事事件として立件されたからといっても、必ず刑事処分が下る訳ではありません。

この点、どのような刑事処分を下すか決定する最終的な決定権は事件担当の検察官が有しているところ、問題となった犯罪の重さや情状面における事情を様々考慮した上で、そもそも刑事処分を下すべきかについても慎重に判断しています。

逆に言えば、仮に置き引きで立件されてしまったとしても、諸般の事情に鑑みて起訴すべきではない(不起訴処分)と判断する可能性もあり、当然、不起訴処分となれば前科が付くことも回避できることになります。

そして、より確実に不起訴処分を獲得するための最も有効な手段としては、被害者と示談を成立させることです。

被害者である持ち主と示談をして被害届を取下げてもらうことができれば、被害者自身が、刑事処分が下ることを望まないことになるため、検察官も不起訴処分という結論を下しやすくなるからです。

なお、示談について、くわしくは次の記事をご参照ください。

 

まとめ

繰り返しとなりますが、置き引き行為も立派な犯罪行為であり、場合によっては長期間の身柄拘束を余儀なくされ、ご自身の社会生活が一変してしまう程の甚大な不利益が生じてしまう可能性があります。

そのため、既に置き引きの罪で立件されてしまった場合はもちろんのこと、置き引きをしてしまい不安になっている方は、できる限り早い段階で弁護士に相談をさせることをおすすめします。

その場合、刑事弁護に強いデイライト法律事務所までお気軽にご相談ください。

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