横領で逮捕|その後の流れ・逮捕されないポイントを解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  


横領には、単純横領罪、業務上横領罪、占有離脱物横領罪の3種類があります。

例えば、経理を担当する社員が会社のお金を自分のものにしたり、修学旅行用に積み立てているお金を先生が着服して自分のものにした場合には、業務上横領罪が成立します。

業務上横領罪に当たれば、10年以下の懲役となり、罰金刑となることはないなど、重い刑罰が予定されています。

この記事では、横領とはどのような犯罪か、横領が成立するのはどのような場合か、横領で逮捕される確率、逮捕後の流れや対応方法などについて、弁護士が解説します。

この記事でわかること

  • 横領は、単純横領罪、業務上横領罪、占有離脱物横領罪の3種類
  • 横領の罰則
  • 横領で逮捕される確率
  • 横領で逮捕された後の流れ
  • 横領での逮捕を回避する方法

横領はどのような犯罪?

まず、単純横領罪、業務上横領罪、占有離脱物横領罪のそれぞれについて、刑法でどのように定められているかを確認しておきましょう。

単純横領罪 「自己の占有する他人の物を横領した者」 刑法252条1項
業務上横領罪 「業務上自己の占有する他人の物を横領した者」 刑法253条
占有離脱物横領罪 「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者」 刑法254条

引用元:刑法|e−GOV法令検索

法務省の統計によれば、令和4年の横領の認知件数・被害額は、次のとおりでした。

罪名 認知件数 被害合計額
単純横領罪・業務上横領罪 1,432件 約126億円(現金被害は約114億円)
遺失物横領罪 12,335件 約4億円(現金被害は約2億円)

引用元:令和5年版犯罪白書

横領がどのような犯罪かについては、次のページも参照してください。

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横領、背任について

 

横領が成立する場合

業務上横領罪を例にすると、犯罪が成立するのは、次の4つの要件に該当する場合です。

①業務上

社会生活上の地位に基づいて、反復・継続して行う事務を意味します。

具体的には、経理担当者という地位に基づいて、反復・継続して会社の預金を管理する事務を行う場合や、倉庫業者という地位に基づいて、反復・継続して顧客の物品を預かる事務を行う場合などが該当します。

単純横領罪の場合、この要件を満たす必要はなく、以下の②③④を満たせば犯罪が成立します。

 

②自己の占有する

物を支配・管理していることを意味します。

 

③他人の物

他人に所有権がある物を意味します。

占有離脱物横領罪の場合には、この要件が、「遺失物」(落とし物など)や「占有を離れた他人の物」(忘れ物など)となります。

 

④横領

所有者でなければ行うことのできない行為を行うことを意味します。

例えば、会社から管理を任されているお金を自分のために使ったり、預かることを任されているものを売却したりする行為が該当します。

このほかにも、判例では、壊したり隠したりする行為も横領に該当するとされています(当然のことですが、所有者であれば、自分の持ち物を壊したり捨てたりすのでは自由ですが、所有者以外の人は行ってはいけないということです)。

 

横領の刑罰

3種類の横領の罰則を整理したものが、次の表です。

単純横領罪 5年以下の懲役
業務上横領罪 10年以下の懲役
占有離脱物横領罪 1年以下の懲役
又は
10万円以下の罰金・科料

引用元:刑法|e−GOV法令検索

単純横領罪も業務上横領罪も、罰金刑がなく、執行猶予が付かなければ刑務所に入らなければならず、重い罰則が予定されているということができます。

 

 

横領で逮捕される場合とは?

逮捕される法律上の条件

単純横領罪、業務上横領罪、占有離脱物横領罪のいずれであっても、逮捕される法律上の条件は同じです。

次の2つの要件に該当する場合には、逮捕によって身柄を拘束されることになります。

 

①被疑事実について嫌疑があること(刑事訴訟法199条)

証拠によって、横領の容疑者である疑いが認められることを意味します。

横領は、経理担当者であるとか、お金や物を預かっている人による犯行ですので、被害に気付くことが出来さえすれば、容疑者が誰であるかは、比較的容易に特定しやすい傾向にあります。

 

②罪証隠滅・逃亡のおそれがあること(刑事訴訟規則143条の3)

横領に限らず、全ての犯罪に共通することですが、通常、横領は、発覚を免れたり遅れさせたりするために、巧妙な手口で行われることが多い犯罪です。

 

そのため、容疑者の目星が付いたとしても、管理していたお金を何に使ったのか、預かっていたものをどこに売却したのかなど、横領行為そのものに関する証拠を集めるのが困難であり、罪証隠滅のおそれがあるとされやすいのが特徴です。

また、業務上横領罪の場合には、被害金額が大きくなる傾向にあり、被害の弁償ができなければ、執行猶予が付かず実刑になる可能性が高くなりますので、逃亡のおそれがあると判断されやすい傾向にあるといえます。

引用元:刑事訴訟法|e−GOV法令検索

引用元:刑事訴訟規則|e−GOV法令検索

どのような場合に逮捕されるのかの詳細については、次のリンクも参照してください。

 

横領で逮捕される確率

逮捕・勾留される確率は、犯罪全体で約34%です。

横領で逮捕される確率

横領だけに限定した数値は明らかではないですが、被害金額が小さい傾向にある占有離脱物横領罪は逮捕される確率が低く、他方、被害金額が大きい傾向の業務上横領罪は逮捕される確率が高くなるといえます。

逮捕されると約93.9%の確率で勾留請求がなされてしまいますので、逮捕を回避する対応を優先することが重要です。

参考:被疑者の逮捕と勾留|令和5年版犯罪白書

 

実際に逮捕されるケースとは?

逮捕される法律上の条件や確率についてお伝えしましたが、実際に逮捕されるケースは、次のようなものであるといえるでしょう。

  • 被害金額が高額であるケース
  • 常習的・長期的な犯行であるケース
  • 横領の余罪があるケース
  • 共犯者がいるケース

 

横領の後、逮捕されるまでの期間はどれくらい?

既にお伝えしたとおり、横領には、被害者が被害に気付くまでに時間がかかることが多いという特徴があります。

そのため、横領を行ったとしても、数か月から約1年ほどの期間が空いてから通常逮捕されることも少なくありません。

その間、事件について何も捜査されないわけではなく、関係者から事情聴取をしたり、証拠を収集したり、容疑者の行動確認などが行われることとなります。

 

 

横領で逮捕された場合の手続きの流れ

横領で逮捕されると、警察の留置場に身柄を拘束され、留置場と取調室を往復する日々を送ることになります。

この章では、逮捕後の刑事手続きの流れをお伝えします。

横領で逮捕された場合の手続きの流れ

※あくまでも一般的な手続きを示したものですので、個別具体的な点は、弁護士にご相談ください。

 

立件

横領は、事後になって被害に気付くことが多いですので、刑事事件として立件されるきっかけとしては、被害申告や告訴・告発が多いと思われます。

警察が刑事事件として立件すれば、在宅事件(警察から呼び出しがあれば、自宅から取調べを受けに出頭する)、身柄事件(警察署内の留置場から取調室まで移動して取調べを受ける)のどちらかとして捜査が進められます。

どちらで捜査を受けるかによって手続きが異なりますので、ここからは区別して流れをお伝えします。

 

在宅事件の場合

在宅事件の場合、警察からの呼び出しがあれば出頭して取調べを受ける、という流れで捜査が進みます。

身柄事件と違って身柄の拘束がないですので、それまでどおりの日常生活を送ることができます。

しかし、在宅事件の場合でも、正当な理由もないのに呼び出しを拒否したり無視していれば、逃亡や罪証隠滅のおそれ(刑事訴訟規則143条の3)があると判断され、逮捕されて身柄事件に移行するリスクがあります。

引用元:刑事訴訟規則|裁判所ホームページ

また、取調べの供述で、常習性や余罪があると判断されれば、取調室の中で逮捕されるというケースも考えられます。

このように、在宅事件であっても身柄事件に移行するリスクがありますので、弁護士に相談し、取調べには慎重に対応する必要があるといえます。

弁護士に依頼すれば、弁護士が警察や検察との連絡窓口となって話を進めたり、出頭する際には同行して、どのように供述すべきか、供述調書に署名押印すべきかどうかなどのアドバイスを受けることが可能となります。

 

逮捕された場合(身柄事件)

逮捕・送検

逮捕されれば、警察署内の留置場に身柄を拘束されます。

逮捕は最大72時間で、その間、留置場の外との連絡・面会が禁止され、容疑者(被疑者)が連絡・面会できる外部の人間は、弁護士だけとなります。

逮捕から48時間以内に、事件と身柄が検察に送られ(「送検」と呼ばれます)、検察庁内の取調室で検察官から取調べを受けて、勾留するかどうかが決定されます。

勾留必要なしと判断すれば、その時点で釈放されますが、勾留請求がされない割合は約6.1%に過ぎません。

ほとんどのケースで勾留請求がなされると考えておくべきです。

参考:令和5年版犯罪白書

釈放された場合でも、刑事手続きはそれで終了ではなく、在宅事件に移行するだけですので、それ以降も取調べを受ける必要があります。

 

勾留請求

検察官が勾留の必要ありと判断すれば、裁判所に対して勾留請求を行います。

検察官は、送検を受けてから24時間以内、かつ、逮捕から72時間の間に、勾留請求するか釈放するかを決定しなければならないとされています。

勾留請求がなされれば、裁判官が勾留請求を認めるかどうかを判断するために、容疑者から弁解を聴く勾留質問という手続きが行われます。

勾留は、容疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、かつ、次の3つのいずれか1つに該当する場合に認められます(刑事訴訟法60条1項)。

  • 定まった住居を有しないとき
  • 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
  • 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき

引用元:刑事訴訟法|e−GOV法令検索

勾留請求が認められる確率は約95.8%ですので、裁判所は、検察官の勾留請求のほとんど全てを認める傾向にあります。

また、勾留されると、逮捕の最大72時間に加えて、更に最大で20日間身柄を拘束されます。

このように、勾留されれば仕事や学校などを続けることが困難にもなりますので、逮捕段階の間示談を成立させ、勾留請求されないように対応したり、裁判所に示談交渉が進んでいることを説明して、勾留請求を却下するように申し入れたりして、勾留を回避する対応が必要となります。

勾留された後でも、準抗告や勾留取消請求という手続きによって勾留を取り消すことが可能ですので、弁護士にご相談ください。

 

勾留

勾留されれば、逮捕段階と通算して最大23日間、身柄を拘束されます。

勾留後は、逮捕段階とは違って、弁護士以外の外部の人間との連絡・面会が可能になります。

ただし、共犯者がいるケースなどでは、接見等禁止という処分が付けられ、弁護士だけとしか連絡・面会できないことがあり得ます。

弁護士以外との面会には、警察官が立ち合って会話の内容を聞いたり、回数は1日1回、時間は平日の日中に1回15分であるなど、多くの制限があることに注意が必要です。

 

検察官による終局処分

在宅事件・身柄事件のどちらであっても、捜査が終了すれば、検察官が起訴・不起訴を決める終局処分が行われます。

被害金額の小さい占有離脱物横領罪のケースでは、略式起訴がなされ、書面審理だけで罰金刑となることも期待できますが、ここでは、通常起訴された場合の流れをお伝えします。

 

起訴

起訴されると、起訴状が届きます。

起訴状は、在宅事件の場合には自宅に届き、身柄事件の場合には留置場に届きます(拘置所に移されていれば拘置所に届きます)。

横領で起訴される確率は約13.5%ですので、犯罪全体で起訴される確率が約36.2%であることと比べれば、横領では起訴されるリスクが低いとも思えます。

引用元:2021年検察統計調査

引用元:令和5年版犯罪白書

しかし、横領の中でも約90%が軽い占有離脱物横領罪で、13.5%は占有離脱物横領罪を含んだ数値ですので、業務上横領罪や単純横領罪だけに限定すれば、起訴される確率はこれよりも高くなると考えられます。

起訴された後の有罪率は99.9%ですので、起訴されることは前科が付くのと同じといえます。

そのため、終局処分で不起訴処分を受けられるように、検察官の終局処分までに示談を成立させておくなどの対応を行うことが重要です。

身柄事件の場合には、起訴されれば起訴状が届きますし、不起訴となれば釈放されるので、終局処分の内容を速やかに知ることができます。

しかし、在宅事件の場合には、処理が後回しにされることが少なくなく、終局処分の内容をはっきりと知ることができないままというケースも散見されます。

このような場合には、弁護士に相談して、迅速に手続きを進めるよう検察に申入れを行ったり、不起訴処分となったことを証明する不起訴処分告知書という書面の交付を請求するといった対応が必要となります。

 

判決

起訴状には、いつどこでどのような犯罪を行ったのかを示す公訴事実が記載されていますが、公訴事実の記載内容に争いがなければ、通常、裁判での審理は1回で終了し、2回目の裁判期日で判決が言い渡されます。

横領で判決を受けた約423人のうち、約執行猶予付きの判決であったのは235人でした(割合でいえば約55.6%)。

参考:令和5年版犯罪白書

 

不起訴(起訴猶予など)

起訴猶予などで不起訴処分となれば、刑事手続きはそこで終結します。

不起訴処分と似たものとして処分保留釈放がありますが、これは、起訴・不起訴を決めることができないので、一旦は釈放して捜査を更に進め、事後に正式な処分を決定するものです。

起訴猶予と違って、刑事手続きは終結しませんので、不起訴処分とは全く異なる処分です。

逮捕された後の流れ・身柄拘束からの早期釈放については、次のリンクも参照してください。

 

 

横領で逮捕された場合のリスク

金額が大きければ報道される場合もある

被害金額が高額である、大企業の社員・銀行員・公務員など社会的影響の大きい事件である場合などには、報道される可能性が高いと考えられます。

弁護士が付いていれば、報道機関や警察に対して、公表や報道をしないよう申し入れたり、報道の内容に誤りがあれば、弁護士が記者会見を開いて事実を伝えることなども可能です。

 

職場を解雇される可能性がある

会社は、コンプライアンス遵守が求められていますし、社会的な評価を損なうことを回避しなければなりません。

そのため、社員が横領の容疑で逮捕されたことが報道されたりすれば、会社の信用を落としたなどとして、懲戒解雇・停職・減給などの懲戒処分が行われる可能性が高いといえます。

懲戒解雇されれば、退職金が不支給となるケースが多いと見受けられます。

また、離職理由に重責解雇と記載される可能性が高く、その場合、失業保険の受給において不利益が予想されます。

また、再就職にも影響することが懸念されます。

したがって、刑罰に加えて大きな社会的制裁を受けることになってしまいます。

 

家族や職場・学校などに知られてしまう

社会に広く報道されてしまった場合はもちろんのこと、逮捕・勾留されれば、最大で23日間、身柄を拘束されますので、家族、職場や学校、友人などに逮捕の事実を知られてしまう可能性があります。

そのため、早い段階で弁護士に依頼し、逃亡・罪証隠滅のおそれがなく逮捕の要件に該当しないことを主張したり、示談交渉を開始したりするなどして逮捕を回避し、日常生活に支障が生じないように対応することが効果的です。

 

 

逮捕されないための3つのポイント

横領で逮捕を回避するには、謝罪して被害金額を弁償し、被害者との示談を成立させることが効果的といえます。

逮捕を回避するためのポイントを3つお伝えします。

謝罪し、被害弁償をする

横領の被害は、金銭を支払うことで回復させることができるという点に大きな特徴があります。

そのため、真摯に謝罪をして受け入れてもらうことができれば、被害金額を弁償した後、示談書を作成する、という対応方法が一般的です。

横領の場合、被害者が考える被害金額と、容疑者側が考える被害金額とがかけ離れているケースも少なくありませんので、このような場合には、被害者と誠実に協議し、過少申告しているわけではないことを理解してもらうことが必要です。

 

示談を成立させる

示談交渉の結果、示談が成立すれば、示談書を作成しなければなりません。

示談書には、次のような内容を盛り込むことが一般的です(事案に応じて適切な内容は異なりますので、個別具体的なことは弁護士にご相談ください)。

  • 示談の対象となる横領の具体的な日時・場所・被害金額
  • 示談金の額(被害金額に加えて慰謝料額を上乗せすることもある)
  • 示談金の支払期限
  • 被害者が容疑者の刑事責任を許すという意思表示(宥恕文言)
  • 被害届・告訴を取り下げる
  • 示談書以外には債権債務関係がないこと

 

弁護士同行で自首をする

自首をすれば、起訴されて裁判を受けることになったとしても、刑が必ず減軽されるというメリットもあります(刑法42条1項)。

警察に発覚するまでに示談が成立すれば、被害届の提出や告訴がなされる可能性は低いと考えられますが、そうでないケースでは、弁護士同行で自首をするということも検討してみるべきでしょう。

引用元:刑法|e−GOV法令検索

自首については、次のリンクも参照してください。

 

まとめ

横領には、①単純横領罪、②業務上横領罪、③占有離脱物横領罪の3種類があります。

占有離脱物横領罪であれば、罰金刑で住む可能性もあり得ますが、業務上横領罪の場合には、10年以下の懲役刑で、罰金刑がありませんので、執行猶予が付かない限りは刑務所に入らなければなりません。

逮捕・勾留されれば最大で通算23日間、身柄を拘束されます。

そのため、早期に弁護士に相談し、被害を弁償して示談を成立させるなどして、逮捕そのもの回避し、そもそも身柄の拘束を受けないように対応することが効果的といえます。

そのほかには、被害者との示談交渉を進めることを警察・検察に説明し、必ず任意の出頭に応じることを伝えるなど、逮捕の必要性がないことを弁護士から主張してもらうことが考えられます。

早期に示談が成立すれば、逮捕を回避できる可能性が高まりますし、早期釈放・不起訴処分・執行猶予付きの判決についても、期待が高まります。

横領罪でお悩みの方は、なるべく速やかに弁護士にご相談ください。

刑事事件に精通した弁護士が、最大限サポートいたします。

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