強姦について
強姦とは何か
強姦(現在の正式名称は「強制性交等罪」、以下同じ。)とは、①反抗を著しく困難にするような暴行または脅迫を用いて、無理やり13歳以上の者と性交等をすること、及び②13歳未満の者と性交等をすることをいいます。
性交等とは、性交、肛門性交または口腔性交を指します。性別を問わず、全ての方が加害者となりえますし、被害者ともなりえます。
刑法第177条には「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下『性交等』という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。」とあります。
1件強姦をすると、5年以上20年以下の懲役になるということです。2件以上強姦すれば、最長で30年の懲役になる可能性まで出てきます。
また、刑法178条2項には準強姦罪の規定があり、「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心身を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。」とされています。
すなわち、暴行や脅迫を用いなくても、気を失っている者と同意なく性交等をしたり、泥酔して思い通りに身体が動かない状態の者と同意なく性交等をしたり、それらの状態を作り出して同意なく性交等をすれば、強姦罪に準じて、5年以上20年以下の懲役になるということです。
強姦から強制性交等へ
1907年に刑法が完成して以来、これまで性犯罪について大きな改正なく運用されてきました。
しかしながら、強姦罪が「加害者=男性、被害者=女性」としていた点、性交以外の類似の性犯罪に強姦罪が適用できずに不当な法定刑格差を生じさせてしまっていた点、強盗罪より強姦罪の法定刑(下限)が軽くなっていた点等への批判が高まったことから、2017年6月16日、国会で改正がなされました。
既に施行が始まっています(2017年7月13日施行)。
なお、強姦罪は「3年以上の有期懲役」とされていましたが、意思に反して性交等を強要されるという被害の重大性に鑑み、「5年以上の有期懲役」に厳罰化されています。
親告罪から非親告罪へ
また、強姦罪から強制性交等罪へ名称・内容が変更になったことと同程度に重要であるのが、強制性交等罪(旧強姦罪)の非親告罪化です。
これまでは、被害者のプライバシーに配慮し、被害者の告訴なしでは処罰されないという制度(親告罪)が採用されてきましたが、告訴するのかしないのかの判断を被害者に迫ることが被害者の重荷(二次被害)になってきたのではないかという問題意識から、非親告罪に変更されました。
今後、法律上は、被害者の告訴なくとも処罰されうることになります。
弁護活動の内容
強制性交等罪を認める場合
強制性交等罪は、人の尊厳を無視した重い犯罪であるため、処罰の必要性が大きいとされています。
しかしその反面、被害者のプライバシーの問題等もあるため、検察官が被害者の意向を全く無視して起訴をするということは、今後も考えがたいものといえます。
すなわち、親告罪から非親告罪に変わったとはいっても、被害者が検察官または警察官に対して「告訴」をしなければ、検察官は起訴しづらいものですし、被害届が取り下げられれば、尚更です。
そこで、強制性交等罪を認める場合に重要になってくるのが、被害者の心情に最大限配慮しつつ、示談交渉を重ね、示談を成立させることです。
そして示談成立と併せて、被害届の取下げ及び告訴の取消しをしてもらうことです。
強制性交等罪を犯した被疑者は、身体を捜査機関に拘束されていることがほとんどですし、仮に身体拘束を受けていなくても、被害者は被疑者に強い敵対意識を持っており直接顔を合わせたくないはずですから、示談交渉は基本的に、被疑者が選任した弁護士が行うことになります。
弁護士といえども、当然に被害者の連絡先を手に入れることができるわけではありません。
検察官に申し入れ、検察官を介して被害者とやり取りを交わし、この弁護士だったら会ってもいいかもしれないと思ってもらう必要があります。
そのように思ってもらうためには、被害者の心情への最大限の配慮と、最大限の誠意を持った対応が必要となります。
示談を成立させるためには、①示談交渉の席につける状態を作り出すこと②示談交渉において被害者の気持ちを受け止め、粘り強く交渉し許しを得ることが必要です。
この2つは、弁護士の技量と熱意によって大きく影響を受けますから、刑事事件に特化した弁護士を選任することが重要となります。
性犯罪は再犯率が非常に高い類型の犯罪です。
強制性交等罪を犯してしまった人の中には、性的衝動を抑えることが困難な人がいます。
そのようなケースではカウンセリング等により性障害治療を行なっていくことも必要であり、再犯防止の観点からも非常に重要な活動となります。
また、本人だけでなく、その家族にも再犯防止に協力してもらう必要があります。
具体的には裁判後の監督を誓約してもらったり、専門機関の家族支援セミナーを受講してもらったりということが考えられます。
強制性交等罪を争う場合
強制性交等罪を争う場合、逮捕、勾留されるケースがさらに多くなります。
長期の身体拘束となると、私生活への影響が出てしまいますから、可能な限り早く釈放されるために、弁護士が迅速に弁護活動を開始する必要があります。
可能な限りの早期釈放を現実のものとするために重要なのは、被疑者が強制性交等罪をしていないことを示す証拠を、検察官や裁判所に多く提出することです。
友人・親族への聞き込み等を行い、被害者が当時は同意をしていたことを示したり、性交時の状況を明確にして、被疑者が「同意の上での性交」と考えたことがやむを得なかったことを示したりすることが一例として考えられます。
また、場合によっては、故意を否認しつつも示談交渉を行い、示談を成立させ、被害届の取り下げ及び告訴の取消しを目指すことも考えられます。
そして、証拠を探し出し、検察官や裁判官に提出するためにも、示談を成立させるためにも、被疑者は身体を捜査機関に拘束されているわけですから、弁護士が迅速に弁護活動に臨む必要があります。
弁護士の技量と熱意によって、証拠の収集も示談交渉も大きく影響を受けますから、刑事事件に特化した弁護士を選任することが重要となります。
強制性交等罪を犯してしまった方、強制性交等罪を疑われている方、家族が強制性交等罪で逮捕されてしまった方、まずは刑事事件に注力する弁護士が在籍している当事務所に、お気軽にご相談ください。
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