コンビニワープとは?罰則やリスクを解説
コンビニワープとは、渋滞や信号待ちを回避するために、コンビニエンスストアの敷地を通り抜ける行為を指します。
コンビニワープは、一見便利なショートカットのように思えますが、法的リスクや事故の危険性を伴うものです。
コンビニワープは、交通ルール上の問題だけでなく、私有地の無断使用という側面もあり、やり方によっては法令に抵触する可能性もあります。
また、通行中の歩行者との接触事故などの危険性も高く、ドライバーにとっても大きなリスクとなります。
この記事では、コンビニワープについて、その意味や具体例、法的問題点、事故時の責任、トラブル時の対処法などを、弁護士が解説します。
目次
コンビニワープとは?
コンビニワープとは、渋滞や信号待ちを回避するために、コンビニエンスストアの敷地を通り抜ける行為を指します。
この言葉は、コンビニの敷地を通り抜けることで、あたかも「ワープ」したかのように時間短縮できることから使われる俗称です。
敷地がショートカットに適していればよいため、コンビニのほか、スーパーマーケットやドラッグストア、ファミリーレストランなどで行われることもあります。
コンビニワープは、単なる近道として捉えられがちですが、実際には私有地の無断使用という問題を含んでいます。
コンビニの駐車場は、あくまでも店舗の利用客のための施設であり、通り抜けのための公道ではありません。
このような行為は、コンビニ側にとっては迷惑行為となるだけでなく、駐車場内を移動する車や歩行者との事故リスクを高める危険な行動でもあります。
また、一時停止などの交通ルール違反になり得るため、交通法規の観点からも問題のある行為です。
近年では、コンビニの駐車場出入口に「通り抜け禁止」の看板が設置されるケースも増えており、こうした問題に対する店舗側の対応も強化されつつあります。
コンビニワープは、時間短縮のための便利な手段に見えるかもしれませんが、法的リスクや安全面での問題を考えると、不適切な行為です。
コンビニワープがどのような行為で、どのような問題があるのか、具体的に見ていきましょう。
コンビニワープの具体例
コンビニワープは、ショートカットを目的に、さまざまな状況で行われています。
ここでは、典型的な事例をいくつか紹介します。
左折待ちを避けるパターン
コンビニワープの一般的なケースのひとつが、交差点での左折待ちを避けるパターンです。
左折車線が混雑している場合や、左折信号が長い交差点で、コンビニの駐車場を通り抜けて左折先の道路に出るという行為が、典型例です。
右折待ちを避けるパターン
左折だけでなく、右折待ちを避けるためのコンビニワープも存在します。
たとえば、混雑した交差点で右折しようとした際、対向車線の車が途切れず右折待ちが長引く状況があります。
このとき、交差点手前のコンビニに一旦入り、駐車場を通り抜けて右折先の道路に出るという方法が、コンビニワープとして行われます。
ただし、右折の場合は対向車線を横断する必要があるため、左折に比べてさらに危険性が高く、事故リスクも大きくなります。
渋滞回避のパターン
渋滞を回避するために、コンビニワープをする例もあります。
渋滞している道路の途中にあるコンビニを利用して渋滞区間を迂回し、同じ路線に再度合流するやり方です。
右左折のパターンとは異なり、この場合は元の道路に戻ってくるため、同じ路線での合流が必要になります。
このような行為は、渋滞を解消するどころか、コンビニ駐車場での新たな混雑や事故リスクを生み出すことになります。
コンビニワープは法令違反となる?
コンビニワープそのものを直接取り締まる法律は、存在しません。
コンビニワープは、単にコンビニの駐車場を通り抜けているだけだからです。
ただし、コンビニワープのやり方によっては、道路交通法をはじめとする法令に抵触する場合があります。
コンビニの敷地は、私有地ではあります。
他方で、コンビニの駐車場は、個別の許可を得ることなく自由に通行できる場所です。
そこで、「一般交通の用に供するその他の場所」として、道路交通法上の「道路」に該当することがあります(道路交通法2条1項1号)。
この場合、駐車場内での交通には道路交通法が適用されることになります。
つまり、コンビニの駐車場が「一般交通の用に供する場所」とみなされる限り、私有地であっても、道路交通法の規制対象となるのです。
また、仮にコンビニの敷地自体が「道路」に当たらないとしても、公道との出入りの際には、道路交通法が適用されます。
コンビニワープそのものが違法でないとしても、その態様によって法令違反となるケースがあります。
以下、コンビニワープに関連して問題となりうる主な法令違反を見ていきましょう。
一時停止違反
コンビニワープで歩道を横切る場合は、一時停止し、歩行者の通行を妨げないようにしなければなりません(道路交通法17条2項)。
コンビニワープの際に一時停止することなく歩道を横切ると、一時停止違反となります。
コンビニワープの目的は時間短縮であるため、このような一時停止を怠りがちですが、それは法令違反となります。
また、一時不停止は、事故のリスクを大幅に高める点で、危険な行為であることも認識すべきです。
安全運転義務違反
コンビニワープを行う際、特に急いでいる場合には、安全確認が不十分になりがちです。
道路交通法では、ハンドルやブレーキなどを確実に操作し、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならないと規定されています(道路交通法70条)。
コンビニワープは、ショートカット目的であるため、慎重に周囲の安全を確認するということを怠りがちです。
また、コンビニの駐車場内では、歩行者や他の車両が予期せぬ動きをすることが多く、通り抜け目的の車両に対する警戒もしていません。
このような状況で、十分な安全確認をせずに走行することは、安全運転義務違反となる可能性があります。
特に、事故が発生した場合には、この義務違反が厳しく問われ、責任も重くなることになるでしょう。
建造物侵入罪
コンビニワープは、コンビニを利用する以外の目的で敷地に侵入する行為であり、建造物侵入罪にあたるのではないかとの指摘があります。
建造物侵入罪は、正当な理由がないのに、人の看守する建造物等に侵入する行為を処罰する規定です。
建造物侵入罪では、建物そのものだけでなく、塀で囲われた敷地、すなわち「囲繞地(いにょうち)」への立ち入りについても対象となります。
しかし、コンビニの敷地、特にコンビニワープに利用されるような駐車場などは、塀などのない開放的な構造のことが多いです。
このため、コンビニワープによって建造物侵入罪の対象になるケースは、珍しいと思われます。
とはいえ、コンビニの駐車場は、あくまでコンビニ利用者の利便のために開放されているものであり、通り抜け目的に提供されているものではありません。
その意味では、他人の敷地に、許可されていない形で立ち入っていることは否定できません。
たとえ建造物侵入罪となることがないとしても、不適切であることに変わりはないでしょう。
人身事故を起こせば過失運転致死傷罪
コンビニワープ中に人身事故を起こした場合、過失運転致死傷罪に問われる可能性があります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)。
参考:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律|電子政府の総合窓口
この罪は、過失運転により人を死傷させる場合に適用される罪で、「7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」という罰則が科せられます。
コンビニワープは、ショートカットを目的としており、できるだけ早くすり抜けてしまおうとスピードが出がちです。
その上、コンビニの利用者は、通常、駐車場を通り抜ける目的の車両を想定していません。
そのような利用客にとって、コンビニワープの車両は、想定外の動きをする危険な車両です。
ショートカットの目的でコンビニワープをすることは、敷地内で人身事故を起こす可能性の高い行為です。
コンビニワープは、一時的な時間短縮と引き換えに、このような重大な法的リスクを負う行為であり、決して賢明な選択とはいえません。
コンビニワープで交通事故を起こしたらどうなる?
コンビニワープ中に交通事故を起こした場合、通常の交通事故よりも深刻な法的責任が生じる可能性があります。
上記のとおり、コンビニワープは、直接的には法令で取り締まられている行為ではありません。
しかし、コンビニワープは、コンビニの敷地を本来想定されていない目的で通行する行為であり、危険が伴います。
このため、コンビニワープで交通事故を起こした場合、過失割合が高く認定される可能性があります。
また、コンビニの設備を破損した場合、コンビニに対して物損を賠償する義務が生じます。
さらに、コンビニワープで交通事故を起こした場合、無防備な歩行者を巻き込む危険性もあります。
死傷者が出た場合であれば、上記の過失運転致死傷罪に問われる可能性があります。
このように、コンビニワープという危険性の高い行為によって交通事故を起こした場合、非常に重い責任が発生することになります。
コンビニワープでトラブルになったときの対処法
コンビニワープは、以上のように、法的リスクが高い行為です。
コンビニワープを行ってトラブルになった場合、適切に対応する必要があります。
以下、コンビニワープでトラブルになった場合の対処法を解説します。
警察への通報や救護活動
まず、事故が発生した場合は、直ちに警察に通報し、負傷者がいれば救護措置を取ることが最優先です。
道路交通法では、交通事故発生時の措置として、負傷者の救護と警察への通報が義務付けられています(道路交通法72条1項)。
これは、コンビニの駐車場内であっても同様です。
このような義務を怠った場合、状況によっては、轢き逃げや当て逃げといった重大な違法行為となることがあります。
コンビニワープでの事故の影響を最小限に抑えるためにも、上記のような措置は必ず怠らないようにしましょう。
専門の弁護士に相談する
コンビニワープによるトラブルは、交通事故と刑事事件の両方の要素を含む可能性があります。
また、事故の状況によっては、複雑な法的責任が生じることもあります。
コンビニワープでトラブルが発生した場合、専門の弁護士に相談することが重要です。
弁護士は、法的知識と経験に基づいて、依頼者の状況に最適なアドバイスを提供してくれます。
弁護士に相談することで、自分の法的立場を正しく理解し、適切な対応策を見つけることができます。
交通事故に強い弁護士に相談するケース
コンビニワープ中に交通事故を起こし、自分もケガをしている場合は、交通事故に強い弁護士に相談することをお勧めします。
コンビニワープは、たしかに不適切な行為ではありますが、交通事故の事案では、相手方にも何らかの過失が認められるケースが多いと考えられます。
そのような場合、双方の過失の割合に応じて、適切な額の損害賠償を請求する権利があります。
交通事故で適切な額の賠償を得るには、交通事故に強い弁護士に相談することが重要です。
特に、コンビニワープのようにこちらの落ち度が大きい事故では、通常の交通事故と比べて、過失割合が不利に認定されやすい傾向があります。
そのような事案で十分な賠償を得るためには、専門知識を持つ弁護士のサポートが必要となります。
ただし、自損事故の場合や、過失割合が10対0で自分が悪い場合を除きます。
このような完全に自己責任の事故の場合、相手方に請求できる損害賠償はありません。
もっとも、被害者やコンビニ側からの損害賠償請求への対応など、弁護士のサポートが必要なケースはあります。
交通事故に強い弁護士は、過失割合の認定や損害賠償額の算定など、交通事故特有の法的問題に精通しており、最適なアドバイスを提供してくれるでしょう。
刑事事件に強い弁護士に相談するケース
コンビニワープが原因で罪に問われそうな場合、刑事事件に強い弁護士に相談することが重要です。
たとえば、逮捕された場合、身体拘束による不利益を最小限に抑えるためにも、早期に弁護士に相談する必要があります。
また、逮捕されていないとしても、死傷者が出ている場合などは、過失運転致死傷罪に問われる可能性があります。
このような場合も、後の取り調べなどの事件捜査に適切に対応するために、弁護士に相談しておくことが望ましいです。
刑事事件に強い弁護士は、依頼者の権利を守るために、最適な弁護戦略を立ててくれるでしょう。
また、不起訴処分を目指した検察との交渉や、起訴された場合の裁判対応なども、弁護士のサポートが不可欠です。
刑事事件においては、初動対応が非常に重要です。
捜査の初期段階で適切な対応ができるかどうかが、その後の展開を大きく左右することがあります。
刑事事件における弁護士選びの重要性については、以下のページをご覧ください。
コンビニワープのよくあるQ&A
コンビニワープは警察の取り締まりの対象ですか?

コンビニワープは、それ自体は違法性のない行為ですが、これに付随して、一時不停止などの違法行為が発生する可能性があります。
特に、危険な行為、あるいは迷惑行為として、コンビニから苦情が出ているような場合などには、警察が取り締まりを強化していることもあり得ます。
このような形で取り締まられる可能性がある以上、コンビニワープ自体に違法性がないとしても、実質的には取り締まられているといえるのではないでしょうか。
コンビニワープは建造物侵入罪になりますか?

通り抜けに利用できるような敷地が、建造物侵入罪の対象である「囲繞地」に該当することはないと考えられるためです。
ただし、建造物侵入罪にならないとしても、所有者の意思に沿わない形で他人の敷地に侵入していることは事実です。
不適切な侵入行為として、自重すべき行為といえるでしょう。
コンビニワープは信号無視で罰せられますか?

コンビニワープで信号待ちを回避する場合は、通常は停止線にさしかかる前にコンビニの敷地へ進入すると考えられるためです。
ただし、停止線を越えてから強引に進路を転換してコンビニの敷地に入ったような場合は、信号無視となります。
まとめ
この記事では、コンビニワープについて、その意味や具体例、法的問題点、事故時の責任、トラブル時の対処法などを解説しました。
記事の要点は、次のとおりです。
- コンビニワープとは、渋滞や信号待ちを回避するために、コンビニエンスストアの敷地を無断で通り抜ける行為である。
- コンビニワープ自体を取り締まる法律はないが、これに付随して、一時不停止や安全運転義務違反などに問われる可能性がある。
- コンビニワープ中に事故を起こした場合、高い過失割合が認定され、民事・刑事の両面で重い責任を負う可能性がある。
- コンビニワープは、一時的な時間短縮のメリットよりも、法的リスクや事故の危険性というデメリットの方がはるかに大きい。
その他のよくある相談Q&A
なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか