緊急避難とは?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

弁護士の回答

緊急避難とは、自分や他人の権利や利益に対する危険を避けるために行われた行為のことをいいます。

緊急避難が認められると、罰せられません。


緊急避難とは何ですか?

緊急避難が成立する要件とは?

緊急避難の立証のポイントを教えて下さい。

当事務所の刑事事件部には、このようなご相談が多く寄せられています。

緊急避難が認められると、処罰されることがないため、その成否はとても重要な意味を持ちます。

ここでは、緊急避難のポイントについて解説いたしますので、参考にされてください。

緊急避難とは?

緊急避難とは、「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為」であって、「これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」をいいます。

この緊急避難が成立すると、処罰されることがなくなります。

また、「生じた害」が「避けようとした害」の程度を超えた場合は、過剰避難と言って、処罰が完全になくなるわけではありませんが、刑の減免の可能性があります。

【 根拠条文:刑法 】
緊急避難
第三十七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

参考:刑法|電子政府の総合窓口

具体例

例えば、歩行中に、信号無視した大型トラックが自らの方向に向かってきている場面で、衝突を回避するために、前方を歩いている者を押し倒してしまったようなケースです。

前方の歩行者が、擦り傷を負ったとしても、自らの死亡事故を回避するためにやむを得なかったのであれば、処罰は回避されます。

 

 

緊急避難の成立要件

緊急避難が成立する要件は、上記の刑法第37条1項の規定から、①現在の危難があること、②避難の意思があること、③補充性の要件(やむを得ずにした行為であること)、④法益権衡(生じた害が避けようとした害の程度を超えないこと)となります。

わかりにくいため、噛み砕いて説明します。

①現在の危難がある まさに今、迫っている危険であることが必要
将来発生するかもしれない危険や既に過ぎ去った過去の危険では認められない
②避難の意思がある ①の危険を避ける目的が必要
上記の具体例では、大型トラックが自らの方向に向かってきていることを認識しておらず、偶然、衝突を回避したような場合は認められない
③補充性の要件 危険を回避するための必要最小限の行為であることが必要
上記の具体例では、衝突を回避するために、前方を歩いている者を殊更強く殴りつけたような場合は認められない
④法益の権衡 生じた害が避けようとした害の程度を超えないことが必要
例えば、災害から自分の財産を守るために、他人の生命を侵害する場合は認められない

 

 

過剰避難とは

六法全書過剰避難とは、避難行為がその程度を超えた場合をいいます。

すなわち、上記の④法益の権衡の要件を満たさない場合に問題となります。

過剰避難が成立すれば、情状により、その刑を減軽し、または免除することができるとされます。

 

 

緊急避難が認められた参考判例

判例 平成24年12月18日東京高裁 平24(う)1750号

【事案の概要】

被告人が、けん銃をこめかみに突き付けられ、目の前にある覚せい剤を注射するよう迫られたため、覚せい剤を自己の身体に摂取し、もって覚せい剤を使用したとして公訴提起された事案

【裁判所の判断】

「被告人の生命及び身体に対する危険の切迫度は大きく、深夜、相手の所属する暴力団事務所の室内に二人しかいないという状況にあったことも考慮すると、被告人が生命や身体に危害を加えられることなくその場を離れるためには、覚せい剤を使用する以外に他に取り得る現実的な方法はなかったと考えざるを得ない。また、本件において危難にさらされていた法益の重大性、危難の切迫度の大きさ、避難行為は覚せい剤を自己の身体に注射するというものであることのほか、本件において被告人が捜査対象者に接触した経緯、動機、捜査対象者による本件強要行為が被告人に予測可能であったとはいえないこと等に照らすと、本件において被告人が覚せい剤を使用した行為が、条理上肯定できないものとはいえない。そして、本件において、被告人の覚せい剤使用行為により生じた害が、避けようとした被告人の生命及び身体に対する害の程度を超えないことも明らかである」として、緊急避難の成立を認めた。

 

 

正当防衛との違い

緊急避難と似た制度として、正当防衛があります。

正当防衛は、違法な攻撃をしてきた相手に対する反撃です。

一方で、緊急避難は、違法でない相手に対する攻撃です。

正当防衛が、不正vs正であるのに対し、緊急避難は、正vs正といわれています。

【根拠条文:刑法】

(正当防衛)
第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

参考:刑法|電子政府の総合窓口

例えば、他人が正当な理由がないのに、暴力を加えてきたときに、相手を制圧するような場合は正当防衛の成否が問題となります。

正当防衛の場合は、緊急避難と異なり、不正な行為が対象となっているため、正当化の要件が緊急避難よりも緩やかとなっています。

すなわち、緊急避難で必要とされる、③補充性の要件や④法益の権衡は不要とされています。

 

緊急避難の立証のポイント

緊急避難に当たる事由が存在しないことを証明する責任があるのは、学説上、本来は検察官と考えられています。

しかし、刑事裁判の実際では、検察官側が犯罪事実の立証を行うと、緊急避難を主張する犯人側(被告側)に立証を求められます。

そこで、緊急避難を主張する場合は、その立証がポイントとなります。

立証の場面で重要なのは、客観証拠を確保するということです。

客観証拠とは、証言などの主観証拠と異なり、記憶違いや嘘などが入り込まない証拠のことであり、上記の例ではドライブレコーダーなどが考えられます。

ドライブレコーダーに、「信号無視した大型トラックが自分の方向に向かってきている場面」が保存されていれば、その映像は有力な証拠となります。

したがって、緊急避難を主張する事件では、できるだけ早い段階から、この客観証拠を収集することが重要となります。

 

 

立証が難しい場合の弁護活動

緊急避難の主張は、容易に認められるものではありません。

様々な証拠を収集し、裁判官を説得する必要があります。

緊急避難を大々的に主張し無罪を目指すのであれば、刑事事件に専門特化する弁護士を選任する必要があるでしょう。

また、事案によって検討すべきですが、緊急避難を主張すると同時に、被害者には謝罪(示談交渉)をすることも考えてみてください。

違法ではない者を攻撃してしまったのですから、謝罪をすること自体は間違ったことではありません。

示談ができれば、緊急避難成立の有無にかかわらず、不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。

そして、仮に緊急避難の主張が認められなかったとしても、示談をしていることが有利に作用し、執行猶予を獲得できる可能性も高まります。

 

まとめ

弁護士以上、緊急避難の意味や成立要件について、詳しく解説しましたが、いかがだったでしょうか。

緊急避難は、その成立が認められる犯罪が成立しないことから処罰される心配がありません。

しかし、その主張が認められるのは、4つの要件を満たすことが必要であり、これは決して容易ではありません。

そのため、まずは刑事事件専門の弁護士に相談されることを強くお勧めいたします。

当事務所には、刑事事件に注力する弁護士が在籍しており、刑事弁護を強力にサポートしています。

緊急避難等の無罪を主張したい方、ご家族が逮捕されお困りの方は、まずはお気軽に、当事務所にご連絡ください。

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