嘆願書の書き方とは?例文・テンプレートと効果を解説

嘆願書(たんがんしょ)とは、相手に対してこちらの事情や要望する事項を伝えて、それに沿った対応を求めるための書面です。
嘆願書は、日常的に使用することはあまりなく、一般の方にはなじみがないものかもしれません。
しかし、意図せず何らかのトラブルに巻き込まれた際など、嘆願書を作成する必要に迫られる場面もあります。
そのような場合に、嘆願書の正しい書き方を知っておくことで、より効果的な対応が可能となります。
この記事では、嘆願書について、その意味や用途、効果や書き方の例などを、弁護士が解説します。
嘆願書とは?

嘆願書(たんがんしょ)の意味と読み方
嘆願書は、「たんがんしょ」と読みます。
嘆願とは、事情を説明して何かを願い出ることを意味します。
嘆願書は、その嘆願を書面の形に整理したものです。
これは、特定の相手方に対して、こちらの要望する事項を伝えて、それに沿った対応を求めるための書面です。
たとえば、刑事事件で、友人や親族などに容疑がかかった場合に、減刑や寛大な処分を求めて嘆願書を提出することがあります。
嘆願書は、特に法律上の定義があるわけではなく、決まった書き方があるわけでもありません。
そのため、その内容や書き方は、事件の内容や個別の事情によってさまざまに異なります。
もっとも、嘆願書の上記のような意味からすると、「このような事情があるため、このような対応を求めます」という流れになることが一般的です。
嘆願書の効力
嘆願書には、通常、法的効力がありません。
あくまで、こちらの事情を相手に説明し、対応を求めるためのものです。
その要望に対して、相手が納得して対応してくれるとは限りません。
強制力があるわけではないので、嘆願書の要望に応じるか応じないかは、相手方の判断となります。
そのため、嘆願書を提出しても、希望どおりの結果が得られるとは限りません。
嘆願書を提出する際は、強制力のない「お願い」にすぎないことを理解しておく必要があります。
ただし、強制力がないからといって、嘆願書を提出することがまったく無意味というわけでもありません。
例えば、刑事事件では嘆願書があることで不起訴や執行猶予に影響を及ぼすことがあります。
どのような事情があり、どのような対応を求めるのか、説得力のある嘆願書を作成することで、相手に納得してもらえる可能性が高まります。
嘆願書を作成する際は、目的や限界を意識した上で、事情に合わせたものを作成することが重要です。
強制力がないとはいえ、丁寧な嘆願書を作成することで、先方の意思決定に影響を与えられることがあります。
嘆願書と「請願書」「陳情書」の違い
嘆願書に似たものに、「請願書」や「陳情書」があります。
これらにはそれぞれ独自の意味合いがあり、嘆願書とは異なります。
請願書
請願書は、国会や地方自治体などの議会に対して、請願を行うための書面です。
「請願」とは、国会や地方議会に対して、法令の制定などの一定の措置を取るように要望することをいいます。
これは、単なる申し入れとは異なり、憲法において権利として認められているものです。
日本国憲法16条では、「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利」を有するとされています。
この請願権の行使として提出するのが、請願書です。
請願は、提出にあたっては議員の紹介を必要とし、簡単に提出できるものではありません。
その代わり、受理されると必ず議会の委員会で審査され、採択・不採択の結論が出されます。
陳情書
陳情も、請願同様に、国や地方の議会に対して法令の制定等、何かの対応を求めるものです。
ただし、請願の権利が憲法上保障されているのに対して、陳情は、そのような権利が法的に保障されているわけではありません。
請願は必ず受理されて委員会での審査や本会議での採決が行われますが、陳情の場合は、議会に審査する義務はありません。
議員にその内容が配布されて、参考資料にとどまる扱いとなることもよくあります。
| 提出先 | 用途 | 位置づけ | |
|---|---|---|---|
| 嘆願書 | 限定なし | こちらの事情を相手に説明し、対応を求めるためのもの | 法的権利ではない |
| 請願書 | 国会や地方議会 | 法令の制定などの一定の措置を取るように要望すること | 憲法上の権利 |
| 陳情書 | 国会や地方議会 | 法令の制定などの一定の措置を取るように要望すること | 法的権利ではない |
英語で「嘆願書」は何と言う?
嘆願書は、英語で「petition」と言います。
文脈によっては、「plea」「appeal」といった表現が使われることもありますが、「petition」が最も一般的な単語です。
たとえば、外資系企業などで、会社に対してハラスメント対応や勤務条件の改善などを求める場合に、「petition」という形で提出されることがあります。
また、社内での処分に対して取り消しを求めるなど異議を申し立てる場合には、「appeal」と呼ばれます。
嘆願書が持つ効果とよく使われる2つのケース
嘆願書は、あくまでこちらの意向を伝えるものであり、法的に強制力や拘束力があるわけではありません。
ただし、強制ではないにせよ、相手の対応に影響力を持つこともあるため、効果的な場面を意識することが重要です。
嘆願書は、一般的な文書であり、法的に場面が限られるわけではありません。
ただし、実務的には、特に次のような場面で、嘆願書が提出されることがよくあります。
【刑事事件】寛大な処分(減刑や不起訴処分など)を求める
刑事事件では、容疑者に対する寛大な処分を求める際に、嘆願書を提出することがあります。
これは、自身の刑を軽くするよう嘆願するということではありません。
身内や友人など、特定の誰かの刑を軽くしてほしいときに、検察庁や裁判所に対して提出するのです。
たとえば、事件の背景にこういう事情があり、今後このような事件が発生しないよう監督もするため、寛大な処分を求めます、といったものです。
また、赤の他人の事件であっても嘆願書を提出することは可能です。
社会的に注目を集めた事件で、容疑者に同情すべき事情がある場合などに、一般の方が署名を集めるなどして嘆願書を提出することがあります。
効果
刑事事件における嘆願書は、裁判所や検察庁に対して、減刑や不起訴処分などの寛大な処分を求めて提出されます。
刑事事件において処分を決定することは、検察官や裁判官の権限であり、裁量があります。
そのため、嘆願書を提出したからといって、そのとおりの処分が必ず行われるわけではありません。
裁判官や検察官は、事件に関するさまざまな事情を総合的に考慮した上で、職責に従って判断を下します。
「嘆願書があるから、寛大な処分に留めておこう」といった単純な話にはなりません。
ただし、嘆願書が出ていれば、それもさまざまな事情の一つとして考慮されることがあります。
特に、嘆願書によってある事実が浮き彫りになることで、その点が判断に適切に反映されることが期待できます。
「法的効力がないから無意味」と決めつけるのではなく、少しでも望んだ結果につながるように行動することが重要です。
【職場トラブル】パワハラ対応など職場環境の改善を求める
嘆願書が利用されるもう一つの場面が、職場環境の改善を求める場合です。
たとえば、パワハラ行為などを止めさせたい場合に、その上司や人事部などに対して、嘆願書を提出することがあります。
この場合は、単に感情的に被害を訴えるというよりは、現在の状況を説明し、対応を求めるものとなります。
効果
嘆願書には、法的効力がありません。
嘆願書の用いられる場面に制限はありませんが、どのような用途であっても、嘆願の内容を強制することはできません。
この点は、職場トラブルで用いる場合にも同様です。
嘆願書を提出したからといって、必ずしもそれに沿った対応が行われるわけではありません。
ただし、仮にパワハラのような事態が生じている場合、嘆願書が出ようと出まいと、会社は適切に対応する責任を負います。
そのような責任を果たすよう申し入れることは、口頭でも可能です。
しかし、嘆願書という目に見える形で提出することで、より明確に意思を表示することができます。
嘆願書を提出する際には、署名活動を行って、集めた署名を添付することがあります。
嘆願書は、法的な効果のない一般的な書面です。
決まった書式があるわけではなく、署名の添付が義務づけられているということもありません。
しかし、署名が添付されていることにより、「嘆願書の内容に賛同している人がこれだけいる」ということを示すことができます。
嘆願書には強制力がないからこそ、署名を集めて少しでも補強しておくことが重要だという見方もできるでしょう。
嘆願書の書き方とテンプレート・例文
嘆願書を実際に作成するとなると、どのような構成で、どのような内容を記載すればよいのか、悩むこともあります。
嘆願書には、厳格な形式があるわけではないため、テンプレートなどを活用して作成することも可能です。
嘆願書の基本フォーマット・テンプレート
嘆願書のフォーマットは、複雑なものではありません。
本文を除いた部分としては、次のようなところを押さえておきましょう。
- 嘆願書であることがわかるよう、標題は「嘆願書」とする。
- 作成年月日、作成者、提出先を明記する。
嘆願書のフォーマット・テンプレート

嘆願書の雛形のダウンロードはこちら
嘆願書の例文
嘆願書で中心となるのは、嘆願の内容を明らかにする本文の部分です。
ここは、個別の事案によって内容が異なるため、例文を使い回すことはできません。
ただし、どのような事案であっても、嘆願書の基本的な構成は、「このような事情のため、このような取り扱いを求めます」というものです。
「事情の説明」と「求める内容」の2点を意識して、具体的に記載するようにしましょう。
【例文】刑事事件の減刑を求める嘆願書の書き方
私は、被告人〇〇の(続柄)です。
被告人は、これまで真面目に社会生活を送ってきた人物であり、今回の事件に関して、本人は強く後悔し、反省の弁を述べています。
事件後、被告人は被害者に対して誠心誠意謝罪し、示談も成立しております。
また、被告人には扶養すべき家族がおり、長期の服役となれば、家族の生活にも大きな影響が生じます。
被告人は今回の件を深く反省しており、二度とこのような過ちを犯さないことを固く誓っております。
今後は、私が〇〇として、被告人の後押しを行い、健全な社会生活を送るよう監督して参ります。
つきましては、被告人に対する寛大なご処分を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
【例文】上司の交代を求める嘆願書の書き方
私たちは、〇〇部に所属する従業員一同です。
このたび、〇〇部長〇〇氏のハラスメントを直ちに中止させるとともに、〇〇部長の任を解くことを求め、嘆願書を提出します。
〇〇氏は、日常的に部下に対して大声で叱責を行い、人格を否定するような発言を繰り返しております。
「お前は使えない」「辞めてしまえ」といった暴言が頻繁にあり、複数の従業員が精神的な苦痛を受けております。
このような状況が続いた結果、部署内では体調を崩す者や退職を検討する者も出ており、業務にも支障が生じております。
私たちは、健全な職場環境のもとで業務に専念したいと考えております。
つきましては、〇〇氏のハラスメント行為を即刻中止させるとともに、配置転換させるなど、適切なご対応をご検討いただきますよう、お願い申し上げます。
嘆願書に署名する際のリスクと集め方の注意点
嘆願書に署名を求められた場合、または署名を集める立場になった場合、いくつか注意すべき点があります。
署名をすることは、単に名前を書くだけではなく、その内容に賛同する意思表示となります。
ここでは、署名する際のリスクや、署名を集める際の法的注意点について解説します。
安易な署名のリスクとトラブル
嘆願書は、ある事情を説明し、対応を求めるための一般的な文書です。
法的な効力はないため、嘆願書の署名に協力したとしても、そのことで法的な義務や責任が生じることはありません。
ただし、よく考えずに安易に署名してしまうことには、リスクもあります。
意図しない活動に加担するリスク
嘆願書の内容をよく確認せずに署名すると、自身の意図しない活動に加担してしまうリスクがあります。
嘆願書に署名するということは、その内容に賛同するということを意味します。
賛同したとしても、そのことだけで法的な責任を負うものではありません。
しかし、少なくとも、その活動を支持する立場を表明することにはなります。
考えようによっては、「道義的責任が生じる」ということはできるでしょう。
もし、活動の内容が自身の信条に沿わないものであった場合、そこに名を連ねてしまうと、不本意な結果になってしまいます。
嘆願書に署名する際は、「名前を書くだけだから」と軽く考えずに、本当に賛同してよいのか、しっかり中身を確認するようにしましょう。
個人情報やプライバシーのリスク
嘆願書への署名は、賛同しているのがどこの誰であるかを明らかにするために、住所及び氏名を記入するのが一般的です。
嘆願書に署名することは、このような個人情報を提供することになるため、情報漏えいのリスクがあります。
相手が十分に素性の知れている人でない場合、その情報をどう利用されるかわかりません。
相手に悪意がある場合、詐欺的な業者に横流しされるといったことも、ないとは言えません。
また、そのような悪意がなくとも、不適切な管理により流出してしまうといった可能性も考えられます。
嘆願書に署名する際は、内容に賛同できるかだけでなく、自らの情報がどのように管理されるかについても注意を払うようにしましょう。
書き方や署名の集め方における法的注意点
嘆願書は、要望を届けるための文書であり、法的な効力を持つものではありません。
そのため、書き方を間違ったために無効になる、といった心配はありません。
しかし、法的な効力をもたないものであるからこそ、少しでもその内容が相手方に理解されるように、注意して作成すべきともいえます。
署名の書き方
嘆願書に署名する際は、通常、住所及び氏名を記入するのが一般的です。
押印までは必要ありませんが、基本的には、署名者の自署によって記入します。
決まったルールがあるわけではないため、氏名のみで集めることもあります。
住所があった方が、署名したのが「どこの誰か」が明らかになるため、より信頼性が高まるとはいえます。
一方、「住所まで書くのは抵抗がある」という人を取りこぼさないために、人数を重視する場合には、氏名のみで集めるやり方もあり得るでしょう。
署名の集め方
署名を集める場合、大きく分けると、顔見知りの範囲で集める方法と、不特定多数に呼びかける方法があります。
顔見知りに依頼する場合、署名を集めたいばかりに無理強いのような形になってしまうと、その後の人間関係に影響が出ることがあります。
あくまで賛同してくれる人のみに、任意での協力をお願いするようにしましょう。
不特定多数に呼びかける場合には、街頭での活動やインターネット上の署名サイトの活用といった方法が一般的です。
これらの方法では、見ず知らずの人から個人情報を預かることになるため、用紙の管理や個人情報の取扱いには十分な配慮が必要です。
また、オンラインの署名サイトを利用する場合は、そのサイトが信頼できる運営元か、情報がどのように利用されるのかなど、利用規約やプライバシーポリシーをよく確認しましょう。
なお、署名の数を集めたいあまりに、署名をでっちあげるような行為は御法度です。
ケースによっては、文書偽造などの罪に問われることもあり得るため、気を付けましょう。
嘆願書についての相談窓口
嘆願書を、効果的かつ、トラブルなく作成したい場合は、場面に応じた専門家へ相談することが重要です。
刑事事件については刑事専門の弁護士
減刑など、刑事事件での嘆願書を作成したい場合は、刑事専門の弁護士に相談することが効果的です。
刑事事件で寛大な処分を求める場合、単に「罪を軽くしてください」というだけでは通用しません。
どのような事情がある場合に判決が軽くなるのか、刑事事件の実務を考慮した書面を作成することが不可欠です。
刑事専門の弁護士であれば、検察官や裁判官といった法律の専門家から納得を得られるような、説得力のある嘆願書を作成することができます。
また、刑事事件での嘆願書を作成する場合、弁護士に相談することで、嘆願書の作成だけでなく、刑事事件の対応全体をサポートしてくれることもあります。
嘆願書だけであれば、自力で作成することもできますが、より効果的な結果を得るためには、弁護士に相談することをお勧めします。
刑事事件における弁護士選びの重要性については、以下のページをご覧ください。
労働問題については労働者側の弁護士
パワハラ対応など、労働問題での嘆願書を作成したい場合は、労働者側の弁護士に相談することが効果的です。
労働問題における嘆願書は、労働者の立場から職場環境の改善を求めるものです。
この場合、引き続きその職場で働きつづけることが前提となるため、その後の関係にも配慮する必要があります。
労働者側の弁護士であれば、会社との関係に気を配りながら、労働者としての権利を守るための嘆願書を作成することができます。
職場環境の改善を図るためには、嘆願書を出すだけでなく、会社との交渉が必要となることもあります。
弁護士に依頼することで、嘆願書の作成にとどまらない全般的なサポートを受けることができます。
労働問題における弁護士選びについては、以下のページをご覧ください。
嘆願書についてのQ&A
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嘆願書は手書きとパソコン(PC作成)どちらが良いですか?
説明すべき事情や要望事項が多い場合には、読み手と書き手の双方にとって、パソコンで作成したものの方が楽とは言えるでしょう。
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嘆願書の署名・捺印には実印が必要ですか?
三文判の利用や、印鑑なしの自署であっても、嘆願書としては成立します。
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嘆願書はどこに出せばいいですか?
刑事事件であれば、裁判所や検察庁の一般的な窓口に提出するのではなく、弁護士に一任しましょう。
嘆願書を弁護士に渡しておけば、あとは刑事手続きにおける適切なタイミングで提出してくれます。
労働問題であれば、人事部や上司などに提出することが考えられます。
こちらについても、提出して終わりではなく、その後の対応をきっちり求めるためにも、弁護士に相談することをお勧めします。
まとめ
この記事では、嘆願書について、その意味や用途、効果や書き方の例などを解説しました。
記事の要点は、次のとおりです。
- 嘆願書とは、相手方に対して特定の事項について配慮や対応を求める文書であり、刑事事件や労働問題などさまざまな場面で利用される。
- 嘆願書に強制力はないものの、丁寧に事情を説明することで、相手方の理解を深めることができる。
- 嘆願書の書き方としては、宛先・日付・提出者氏名等を明記した上、具体的な事情や要望を簡潔かつ丁寧に記載する。
- 嘆願書の作成や提出にあたっては、状況に応じた適切な対応が求められるため、必要に応じて弁護士に相談することが有効である。
当事務所は、刑事事件のご相談の予約に24時間対応しており、LINEなどのオンライン相談を活用することで、全国対応も可能となっています。
まずは、お気軽に当事務所までご相談ください。
ご相談の流れは下記のページをご覧ください。
その他のよくある相談Q&A
なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか










