会社の上司を情状証人にできる?メリットや注意点を解説

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

会社の上司を情状証人にできる?

会社の上司が証人となることを引き受けてくれた場合は、情状証人とすることができます。

情状証人とは、刑事裁判において、容疑者(被告人)の方の情状面を証言する人物のことを言います。

上司に情状証人として、証言してもらうことで、裁判官へ容疑者の良い面を印象づけるなどのメリットがあります。

この記事では、上司が情状証人となる場合の役割や減刑への効果、上司がそのまま使える証言の例文、検察官からの反対尋問への対策まで、弁護士が分かりやすく解説します。

情状証人とは?

情状証人とは?

情状証人とは、刑事事件の裁判において、被告人に有利な証言をするために用意される証人のことです。

情状証人は、「じょうじょうしょうにん」と読みます。

主に裁判後に被告人を監督する立場の方が情状証人となることが多いです。

裁判に出廷し、弁護側からの質問だけでなく、検察官や裁判官からの質問にも答えてもらいますから、被告人の量刑を決める上で重要な役割を果たします。

この記事では情状証人としてどのような準備をするべきか、裁判当日にどう振る舞えばいいのかなどについて解説を行います。

 

情状証人はどのようにして決まる?

情状証人は、被告人に有利な事情を話してもらうために呼ぶものです。

そのため、被告人にある程度近しい人物にお願いをして、証人になってもらうことになります。

ほとんどのケースで、情状証人は裁判後の被告人の社会生活を支える旨を証言することになります。

したがって、被告人と同居している親族や、勤務先の上司等にお願いするケースが一般的になるでしょう。

 

法廷ではどんなことをすべき?

法廷では弁護人の質問に答えた後、検察官や裁判官からの質問にも必要に応じて答えることになります。

弁護人からの質問は事前に打ち合わせを行えますので、打ち合わせどおりに話ができるよう、しっかりと準備をしましょう。

検察官からの質問は、厳しいものになることもよくあります。

事前には、質問を予想して備えることしかできず、その場で答えを考えて話さなければならないことも起こりえます。

このとき注意すべきこととしては、ムキになって検察官に反発しようとし過ぎないことです。

冷静さを欠いて話してしまうと、結果として回答の内容に違和感が生まれたり、監督者としての適格性に疑いを持たれたりしてしまうおそれがあります。

冷静に質問に答えた上で、何か問題がありそうであれば、弁護人が追加でフォローのための質問を入れてくれます。

 

状況証拠との違いは?

情状証人と似たような語感の言葉として、状況証拠という言葉があります。

状況証拠とは、犯罪の事実を直接示すのではなく、別の事実から間接的に推認させる証拠のことです。

たとえば、犯行現場近くに被告人にそっくりな人物が写っている防犯カメラ映像であったり、犯行現場から検出された被告人の指紋などです。

状況証拠は犯罪事実の有無に関する証拠であり、刑の重さを決めるための証拠になる情状証人とは全く意味合いが異なります。

 

 

勤務先の上司の方を情状証人とするメリット

人生において、「働く時間」は大部分を占めます。

そのため、普段の被告人をよく知る人物としては、家族の他に、勤務先の方々が考えられます。

被告人をよく知る人物が普段の被告人の様子について証言し、被告人にも良い側面があることを立証できれば、有利な情状として考慮されるでしょう。

したがって、被告人をよく知る会社の方々が情状証人になってくれることは意味があります。

また、情状証人としては、監督指導する能力がある方が望ましいです。

なぜならば、監督指導できる立場の方が、「被告人が社会復帰したら、自分が責任を持って監督し、二度と犯罪などしないしようにする」などと誓約してくれれば、裁判官に対し、再犯の可能性も低いという印象をあたえることができるからです。

そこで、勤務先の方の中でも、上司の方は情状証人として最適と考えられます。

上司の方に情状証人になってもらうときは、何を聞くか(尋問の中身)が大切です。

尋問の中身としては、被告人との関係(上司の方の役職等)、被告人の仕事ぶり(表彰等あればその実績)、人柄、部下の信望等を具体的に話してもらうと良いでしょう。

表彰実績などがあれば、その資料(表彰状など)を証拠として提出するなど検討しても良いでしょう。

 

 

証人として法廷に立つことを断られた場合

上司の方の中には、情状証人として証言したい気持ちはあるが、法廷には立てないという方もいます。

このような場合は、刑事弁護士が上申書を裁判所に提出するという方法があります。

上申書の内容としては、前記の被告人の仕事ぶり(表彰等あればその実績)、人柄、部下の信望等の他、出廷できない理由を具体的に記載します。

刑事弁護に注力する弁護士にご依頼をいただければ、弁護士が上司の方や同僚の方と面談し、上記事項について、専門的な観点から詳細かつ的確なヒアリングを行い、ポイントを押さえた上申書を作成します。

その後、記載内容に誤りがないとご確認をいただいた上で、上司及び同僚の方から署名・押印を頂き、捜査機関に提出するのです。

日頃の勤務態度や、今後の監督に関する上司や同僚からの証言は、被告人の量刑に関する判断を行う上で、極めて重要な意味を持ちます。

上司や同僚からの手厚い監督を受け、真面目に職務に取り組むことができそうだという印象を裁判官に与えることで、実刑判決ではなく執行猶予付判決を勝ち取る可能性を高めることができるのです。

このような上申書は、出廷できない上司の方の他、同僚社員からも提出してもらうこともあります。

裁判の時間は限られているため、何人も情状証人を呼ぶことはできません。

そのため、代表の方にのみ証言してもらい、他の方からは上申書を提出することがあります。

 

 

上司は情状証人として、どんなことを証言すべき?

上司は情状証人として、どんなことを証言すべき?

弁護側(被告人側)として証言すべきこと

上司が情状証人として呼ばれる場合、証言してほしいこととしては、日頃の被告人の勤務態度や、仮に被告人が実刑になった場合に会社に与える影響などでしょう。

被告人に有利になるよう、これまでの勤務で被告人が頑張っていたことや、 いかに会社にとって必要な人材であるかをしっかりと証言しましょう。

また、被告人に同居親族がいない場合には、今後の監督についても証言する可能性があります。

プライベートまで全て監督することは難しいかもしれませんが、上司として可能な範囲で被告人を監督する方法を具体的に考えてもらえると、弁護人としては非常に助かります。

 

検察側からの尋問はある?

情状証人として証言する以上、検察官から反対尋問が行われることがほとんどです。

尋問の内容は、弁護人から行われた尋問(主尋問)に関連するものになりますので、主尋問の練習がしっかりとできていれば、そこまで困ることはありません。

既に述べたとおり、あまり反発しようとし過ぎずに、冷静に証言を行えば大抵の場合は問題なく終えられます。

 

ワンポイント:裁判官は証言の「ここ」を見ている

証人の証言は、裁判官の目の前の証言台で行われます。

そのため、裁判官は、証人が尋問に答えている内容だけでなく、どのような態度で答えているかなども全て見ることができます。

事前に尋問の回答を丸暗記してきただけというような答え方をしていると、「この証言は本当のことを言っているのだろうか。弁護士から言わされているだけなのではないか。」といった疑念を持たれかねません。

とはいえ、印象だけで判断をする訳ではありませんから、基本的には証言に矛盾がないか、他の証拠との整合性が取れているかなどを注意して聞いていると思われます。

仮に裁判官が疑問を持った点があれば、裁判官自身からも尋問を行うことがありますので、そのときに自分の言葉で事実を正直に証言しましょう。

 

 

情状証人の効果・メリット|刑を軽くするための重要な役割

なぜ情状証人がいると刑が軽くなる可能性があるのか

裁判官が量刑(刑罰の重さ)を考える際には、犯罪の重さだけでなく、被告人を取り巻く色々な環境も考慮して刑罰を決定します。

反省している、監督者がいる、再発防止に努められる環境が整っている、社会内での被告人の役割が大きいなどの事情が情状と呼ばれる事情です。

情状証人は、これらの情状に関する事情のうち、被告人に有利に働く内容を証言します。

したがって、裁判官が量刑を検討するにあたって、被告人に有利な事情を多く考慮してもらえる可能性が上がることになります。

そのため、情状証人がいると被告人の刑が軽くなる可能性が上がるということになります。

情状証人がいればどんな事件でも執行猶予が確実につくといった劇的な効果がある訳ではありませんが、刑を軽くするためにはとても重要な役割といえます。

 

 

【会社の上司】そのまま使える情状証人の証言例文(テンプレート)

私は〇〇さんの勤務先の上司です。

〇〇さんは日頃、営業を主にやっており、取引先からの評価も高く、我が社に欠かせない人材であると感じております。

具体的には〜といったこと(被告人が勤勉である、会社に利益をもたらしているエピソード)もありました。

今回の事件のことは〇〇さんから報告を受けており、社内でも懲戒処分について協議されているところです。

〇〇さんが犯した罪は軽くないものと受け止めておりますが、これまでの勤務態度、報告時の〇〇さんの反省している様子なども考慮し、懲戒解雇にはせず、今後も弊社で働いてもらおうという話になっております。

今回の事件を踏まえ、社内でも〇〇さんの監督体制を作れればと考えております。

具体的には〜(実現可能な社内での施策)ができるのではないかと思っております。

仮に〇〇さんが刑務所に行くということになれば、弊社としても大きな打撃を受けることになります。

何卒寛大な処分をお願いしたいと考えております。

 

 

当日の準備|情状証人の服装・持ち物・法廷での振る舞い

女性・男性別の好ましい服装

情状証人の服装に明確な決まりはありません。

ただ、あまりにも奇抜な格好やだらしない格好で臨むと、裁判官が「本当にこの人は大丈夫なのか」と余計なことを考えて証言を聞く可能性があります。

以下のようなある程度誠実に見える服装を心がけると良いかもしれません。

 

男性の望ましい服装

男性は、誠実さと真面目さを最もアピールしやすいスーツスタイルが最も無難といえるでしょう。

紺、黒、ダークグレーなどの落ち着いた色味のビジネススーツに白地や薄いブルーの襟付きワイシャツなどを着用しましょう。

ネクタイも派手な柄や原色は避け、落ち着いた色の方が望ましいです。

作業着を着ての現場仕事などが大半で、フォーマルなスーツを持っていないような場合は、襟付きのシャツに、チノパンなどの長ズボンでも問題はありません。

 

女性の望ましい服装

女性も基本は落ち着いた色合いのオフィスカジュアルが望ましいです。

ただ、情状証人として出廷される女性は現役世代の妻などに限らず、高齢の母親も多くおられます。

そのような場合、無理にオフィスカジュアルの服を用意する必要はなく、冠婚葬祭に着ていくような服装であればまず問題はありません。

普段着の中から比較的落ち着いた色味のものを選んでも特に差し支えはないです。

また、靴はヒールが低めのものを、アクセサリーは原則として外すか、目立たない最小限のものに留めておくと過度に華美な印象は持たれないでしょう。

 

当日必要な持ち物

情状証人が当日持ってこなければならないものは特にありませんが、裁判所によっては、裁判当日に印鑑が必要となる可能性があります。

情状証人は、証人カード(証人の特定のために必要な情報等を書く紙)や宣誓書に署名押印をする必要があります。

大抵の場合、弁護人のところにこれらの書類が事前に送付されてきますので、尋問練習のときなどに署名押印を済ませられます。

ただ、これらの書類を当日交付する裁判所もありますので、詳しくは弁護人に確認をするとよいでしょう。

 

証言台に立つ際の振る舞い

証言台に立った後は、真正面の裁判官の方を向いて背筋を正しておいてください。

証言を行う場合も、質問は弁護人や検察官から行われますが、回答は真正面を向いて裁判官に向けて行います。

また、法廷は意外と声が通りません。

証言をする際にはいつもより大きめの声で話すように心がけるようにしてください。

 

 

検察官からの反対尋問にどう答えるべきか

反対尋問でやってはいけない受け答え

検察官が情状証人の反対尋問で意地悪な質問をすることはそう多くはありません。

悪いことをした張本人ではありませんから、あくまで主尋問の内容の確認や、その深堀り程度の質問となることが大半です。

しかし、事案によっては意地悪な質問や情状証人自身を問い詰めるような質問が行われる可能性もあります。

そのような場合、絶対にやってはいけない受け答えは、「感情的になって何にでも反論すること」です。

検察官が指摘してくる内容は、第三者(裁判官)の目線からするともっともな疑問であることが多いです。

そのような場合に感情的になってしまうと、裁判官が判断の基礎にしたいと考える事情がうまく伝わらないばかりか、「この人に監督を任せて大丈夫なのか?」と思われてしまう可能性すらあります。

冷静に証言することに努めてもらえれば、何か問題がある場合には弁護人が再主尋問でカバーしてくれます。

 

緊張して頭が真っ白になった時の対処法

裁判所で証言をすることなど、人生で一度あるかないかという程度でしょう。

特に検察官からの反対質問は、入念な打ち合わせができませんから、緊張してしまい、頭が真っ白になるということも十分起こり得ます。

そのような場合には、「すみません。もう一度よろしいでしょうか。」などと言って、一度質問を聞き返してみてください。

もう一度質問を聞いているうちに落ち着く可能性がありますし、聞き返すことに何の問題もありません。

それでも答えることが難しい状態であれば、正直に「緊張してどう答えたらいいか分からないので、少し待ってもらえますか。」など間をおくようお願いしてもいいかもしれません。

答えが不十分であれば、再主尋問で弁護人がフォローを入れます。

 

 

情状証人がいない場合はどうすればいい?

情状証人になってくれる人が見つからない場合には、それ以外の方法で有利な情状となる事実を証明できないか、探る必要があります。

例えば更生できる環境が整備されていることを示すのであれば、就業先が確保できていることを示す内定通知書や依存症等で通院している場合の領収証などでしょうか。

また、監督してもいいが証言は難しいといった方がいる場合には、監督誓約書などの書面を証拠として提出することもあり得ます。

そもそも情状証人が必須ではない事件もありますから、それぞれの事件で適切な方法を探るためにも、お悩みの方は一度弁護士に相談してみてください。

 

 

情状証人として証言する際に注意すべきこと

情状証人として証言する際に注意すべきこと

嘘の証言はしない

情状証人は被告人を助けたいと思っていることでしょうが、嘘の証言はしてはいけません。

証人は、証言を行う前に、嘘の証言をしないよう宣誓することになっています。

宣誓したにもかかわらず嘘の証言をしてしまうと、情状証人自身が偽証罪(刑法169条)に問われる可能性がありますので、絶対に嘘の証言はやめましょう。

 

尋問の練習を行う

事前に、弁護人との間で必ず尋問の練習を行っておきましょう。

仕事や家事などで忙しいとは思いますが、弁護人との尋問練習をやっていない場合、ぶっつけ本番で臨むとほぼ確実に緊張でまともな回答ができません。

聞かれている内容に関係ないことまで話して要領を得ない証言になってしまうと、わざわざ証言した甲斐がなくなってしまいます。

自分が落ち着いて裁判の日を迎えるためにも、被告人のためにも、スケジュールの調整をして必ず尋問練習を行うようにしてください。

 

 

まとめ

この記事では情状証人がどのような役割を果たすのか、事前に準備するべきこと、当日注意することなどについて解説を行いました。

記事の要点は以下のとおりです。

  • 情状証人は被告人の刑を決める上で重要な役割を果たす。
  • 被告人の家族や上司といった関係性の人物が選ばれることが多い。
  • 事前準備として、弁護人との尋問練習は必ず行っておくこと。
  • 当日の服装はなるべくフォーマルなもので、裁判官に悪印象を持たれる可能性を少しでも下げておくこと。
  • 検察官の反対尋問に感情的に反論することがないよう、冷静に大きい声で証言すること。
  • 頭が真っ白になったら質問を繰り返してもらったり、間を取ってもらったりして落ち着いてから証言すること。

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