一部執行猶予とは?弁護士に聞きたい刑事事件

  
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士

 

一部執行猶予とは?

一部執行猶予とは、課せられた懲役刑の大半は刑務所で過ごさせるものの、残りの一部期間の刑の執行は猶予される制度です。

たとえば、「被告人を懲役1年6月に処する。その刑の一部である懲役3月の執行を猶予する。」というような判決の主文が言い渡されることになります。

このような判決が言い渡されると、先に実刑とされた期間の服役を終え、その後に一部猶予を受けた部分に対する執行猶予期間を過ごし、執行猶予期間が満了すれば、一部猶予を受けた部分の懲役に服する必要がなくなります。

一部執行猶予は、施設内処遇と社会内処遇の連携を図り、再犯防止・更生に繋がることを期待して出来た制度です。

一部執行猶予制度の懸念点としては、服役期間と一部期間に対する執行猶予期間の合計期間、監視を受けるようなものであるため、全部実刑よりも被告人の負担が重くなる可能性がある点や、逆に実刑部分が極端に短くなると不当に刑が軽くなる可能性があることという点があります。

しかし、一部執行猶予の猶予期間は、法律上の規定が1年以上5年以下とされているものの、実務上、概ね1年から3年程度で収まっています。

また、猶予を受ける一部期間についても、実務上、全体の3割にも満たない期間とされていることが多いようですので、このような運用がされているうちは、上記の懸念点は杞憂となりそうです。

また、一部執行猶予の制度は、裁判官が全部執行猶予にするか、実刑かを迷った場合に選択することを想定された制度ではありません。

従来どおり、全部執行猶予ではなく、実刑とするべきと判断された後に、全部実刑とするか、一部執行猶予とするかの選択が行われます。

 

 

一部執行猶予の基準

前科等の影響

刑事訴訟法 第27条の2第1項

「次に掲げる者が3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯罪の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、1年以上5年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。
1 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
3 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことのない者」

2号に該当する者(執行猶予中の再犯者)は、全部執行猶予の可能性がありませんから、一部執行猶予の獲得が第1の目標となります。

また、全部執行猶予の可能性が残されている被告人の場合には、全部執行猶予を求めつつ、予備的に一部執行猶予を求めることが考えられます。

上記条文に基づいて考えると、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあって、実際に刑務所に入って懲役・禁錮刑を終えた者が、5年たたないうちに再度懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合、1号にも2号にも3号にも該当しないため、一部執行猶予を受ける可能性がないことになります(全部執行猶予の可能性もありません)。

 

薬物事犯の例外

ですが例外があります。

薬物使用等の罪の場合です。

「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」という法律があります。

薬物使用等の罪を犯した者につきましては、上記1号・2号・3号のいずれかに該当するという要件がなくなりますから、刑務所から出た直後に再度逮捕・起訴され有罪判決を受けた場合にも、一部執行猶予を受ける可能性があります。

しかし、その猶予期間は、保護観察に付されることになります。

なぜ薬物使用等の罪について、一部執行猶予の適用範囲が広げられているのか、同法第1条がその趣旨をまとめています。

「この法律は、薬物使用等の罪を犯した者が再び犯罪をすることを防ぐため、刑事施設における処遇に引き続き社会内においてその特性に応じた処遇を実施することにより規制薬物等に対する依存を改善することが有用であることに鑑み、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関し、その言渡しをすることができる者の範囲及び猶予の期間中の保護観察その他の事項について、刑法の特則を定めるものとする。」

 

必要性・相当性

一部執行猶予を付してもらうためには、一部執行猶予とする必要性と相当性も必要と考えられています。

具体的には、①再犯の恐れがあること、②1年以上の社会内処遇期間を確保して行う有用な処遇方法が想定できること、③その処遇を実効的に実施できることの3つの要素を満たす必要があります。

おそらくこれらの要素の中では、②を満たすことが最も難しいでしょう。

薬物事犯の他、性犯罪や暴力事犯、アルコール依存が原因となった犯罪のように保護観察所において専門的処遇プログラムがある場合、窃盗事犯においてクレプトマニア(窃盗症)の治療を要する場合などが②を満たす事例になりうるでしょう。

このように、どのような事件でも一部執行猶予考えられるわけではありませんが、当事務所では、一部執行猶予が被告人の更生に資するものと考え、一部執行猶予の獲得にも力を入れています。

起訴され、執行猶予がつくかどうかお悩みの方は、刑事事件に注力する弁護士が在籍する当事務所に、まずはお気軽にご相談ください。

 

 


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