密漁とは?該当するケースや罰則をわかりやすく解説

密漁とは、法律や規則に違反して水産動植物を採捕する(つかまえる)行為を指します。
日本の法律では、海の資源を守るために厳格なルールが定められており、これに違反すると「密漁」として刑事罰の対象となります。
「知らなかった」「少しだけなら」という言い訳は通用せず、実際に逮捕されたり罰金を科されたりする事例が後を絶ちません。
海でのレジャーを楽しむ際には、どこで何を捕ってよいのか、事前に正確な知識を持っておくことが不可欠です。
この記事では、密漁について、その定義や対象となる水産物、禁止されている場所、罰則の内容、逮捕のリスク、そして万が一捜査の対象となった場合の対処法などを、弁護士が解説します。
目次
密漁とは?

密漁とは、法律や規則に違反して水産動植物を採捕する(つかまえる)行為を指します。
日本の海や川には、水産資源を保護し、持続的な漁業を営むためのさまざまなルールが設けられています。
これらに違反する採捕行為が密漁として処罰の対象となります。
密漁に関する主な法律としては、漁業法と各都道府県が定める漁業調整規則があります。
漁業法は国が定める法律であり、特に重要な水産資源や漁業権に関する基本的なルールを規定しています。
一方、漁業調整規則は、各都道府県が地域の実情に応じて定める規則です。
規則では、採捕してよい魚種や時期、方法などを細かく規制しています。
水産資源は有限であり、無秩序な採捕が続けば、資源が枯渇します。
すると、漁業を営む人々の生活が脅かされるだけでなく、海の生態系全体にも悪影響が及びます。
また、漁業権を持つ漁業者は、資源管理のために稚魚の放流や漁場の清掃などの活動を行っています。
密漁は、こうした努力を無にする行為でもあるといえます。
密漁の意味
密漁という言葉は、一般的には「ひそかに魚介類などを捕ること」という意味で使われます。
法律上の密漁とは、正当な権利や許可を持たずに、または法律や規則で禁止されている方法で、水産動植物を採捕する行為を指します。
具体的には、次のような行為が、密漁として処罰対象とされています。
- 漁業権が設定されている水域で無許可で漁業を行うこと
- 特定の水産物を無許可で採捕すること
- 禁止されている漁具や方法を使用すること
- 禁漁期間中に採捕すること
密漁は、採捕する人の立場や目的にかかわらず成立します。
つまり、商売として大量に採捕する場合だけでなく、個人が趣味やレジャーとして少量を採捕する場合でも、法律や規則に違反していれば密漁となります。
「自分で食べるだけだから」「ほんの少しだから」という理由は、法律上は何ら言い訳になりません。
どこからが密漁なの?
密漁かどうかの線引きは、採捕する場所、対象となる水産物、採捕の方法、時期などによって決まります。
まず、採捕する場所については、漁業権が設定されているかどうかが重要な判断基準となります。
日本の沿岸部の多くには、漁業権が設定されています。
こうした水域では、漁業権を持つ漁業協同組合の組合員などでなければ、原則として漁業を行うことができません。
対象となる水産物については、特定水産動植物に指定されているもの(アワビ、ナマコ、シラスウナギ)は、全国どこで捕っても密漁となります。
また、サザエやウニなどの定着性の水産物は、漁業権が設定されている場所で捕れば密漁となります。
一方、量については、特に線引きはありません。
法律的には、1匹だけの採捕であっても、密漁として成立します。
そのほか、採捕の方法や時期についても、都道府県の漁業調整規則で細かく規制されています。
磯遊びは密漁にならない?
家族連れで磯に行き、岩場についている小さな貝やカニなどを捕まえて観察する「磯遊び」は、一般的なレジャーです。
こうした磯遊びが密漁に当たるかどうかは、何を捕るか、どれだけ捕るか、そしてどのように捕るかによって判断されます。
一般的に、観察や学習を目的として、ごく少量の小さな生き物を素手で捕まえる程度の行為は許容されると考えられています。
漁業法や漁業調整規則も、こうした範囲の行為までを規制する趣旨ではありません。
しかし、磯遊びであっても、サザエやウニ、アワビなどの商品価値の高い水産物を捕ることは、たとえ少量でも密漁に該当する可能性が高くなってきます。
これらの水産物が生息している場所には、ほぼ確実に漁業権が設定されているからです。
また、捕った生き物を持ち帰るかどうかも重要な要素です。
観察後にその場で放すのであれば問題ないことが多いですが、持ち帰って食べるつもりで捕る行為は、量にかかわらず密漁と判断される可能性があります。
さらに、素手ではなく道具を使う場合、たとえば網で大量に捕獲したりする行為は、明らかに「漁業」の実態に近づくため、密漁と認定されやすくなります。
安全策としては、商品価値のある水産物には手を出さない、捕った生き物は観察後に必ず放す、大量に捕らない、という点を守ることが大切です。
密漁と釣りとの違いは?
釣りは日本で広く行われているレジャーですが、釣りと密漁との境界線はどこにあるのでしょうか。
「魚釣り」と「密漁」の境界線は、「ルールを守っているかどうか」の一点に尽きます。
基本的に、竿と糸と針を使った一般的な釣りは、「遊漁(ゆうぎょ)」として認められており、密漁には当たりません。
遊漁とは、レクリエーションとしての釣りを指し、漁業権の対象となる漁業とは区別されています。
ただし、遊漁であっても、一定のルールを守る必要があります。
まず、漁業権が設定されている水域でも、竿釣りは原則として認められています。
ただし、網やもり、潜水器具などを使う採捕方法は、禁止されていることが多くあります。
また、釣った魚を販売する目的で大量に捕獲する行為は、遊漁の範囲を超えているとみなされ、無許可漁業となる可能性があります。
さらに、都道府県の漁業調整規則によって、特定の魚種について、釣りも含めた採捕が全面的に禁止されている場合があります。
たとえば、産卵期の保護のために特定の時期に特定の魚種を釣ることが禁じられていたり、体長制限が設けられていたりします。
釣った魚が規定の大きさに満たない場合は、速やかにリリースしなければなりません。
また、一部の地域では、特定の魚種について遊漁券の購入が必要な場合もあります。
特に内水面(川や湖)では、アユやマス、ワカサギなどを釣る際に、遊漁券が必要なことが多いです。
このように、一般的な竿釣りは遊漁として認められているものの、場所や対象魚種、時期、方法などによっては規制がかかります。
釣りをする際にも、ルールを守ることが重要です。
何を捕ったら密漁?
密漁に該当するかどうかは、どの水産物を採捕したかによって大きく異なります。
規制の対象は、大きく3つに分けて考えることができます。
第1は、特定水産動植物と呼ばれる、特に厳しく規制されているものです。
第2は、漁業権の対象となっている定着性の水産物で、これらは漁業権が設定されている場所での採捕が禁止されています。
第3は、都道府県の漁業調整規則で個別に規制されているその他の魚類などです。
これらのカテゴリーによって、適用される法律や罰則の重さが異なります。

特定水産動植物(アワビ、ナマコ、シラスウナギ)
特定水産動植物とは、経済的価値が高く、乱獲のおそれが特に高いことから、漁業法によって厳重な管理が必要とされている水産物です(漁業法132条1項)。
現在は、アワビ、ナマコ、ウナギの稚魚(シラスウナギ)の3種類が指定されています(漁業法施行規則41条)。
これらの水産物は、国際的に高値で取引されることから密漁の対象となりやすく、また資源の減少が深刻な問題となっています。
そこで、令和2年の漁業法改正により、特別な規制対象とされました。
特定水産動植物の最大の特徴は、漁業権設定の有無に関わらず、全国どこで採捕しても違法となる点です。
つまり、場所や方法、時期などを問わず、漁業権等の許可なしに取ること自体が違法ということです。
特定水産動植物を適法に採捕できるのは、特別な許可を受けた漁師など、ごく一部の限られた人だけです。
漁業権侵害となるもの(サザエ、ウニ、ハマグリ、伊勢海老など)
採捕することで漁業権侵害となる水産物とは、「藻類、貝類または農林水産大臣の指定する定着性の水産動物」を指します。
これらの水産物は、第一種共同漁業権の対象とされています(漁業法60条5項1号)。
具体的には、次のようなものが該当します。
- 藻類:ワカメ、コンブ
- 貝類:サザエ、ハマグリ、アサリ、ホタテ、カキ
- 定着性の水産動物:ウニ、タコ、伊勢海老
これらの水産物の特徴は、海底や岩に定着して生活しているか、あるいは移動範囲が限られている点です。
こうした水産物については、沿岸の特定の水域に漁業権が設定されており、漁業権を持つ者だけが採捕できることになっています。
漁業権が設定されている場所でこれらの水産物を無断で採捕すると、漁業権の侵害となり、漁業法違反として処罰されます。
理屈の上では、漁業権が設定されていない場所であれば、これらの水産物を採捕しても漁業権侵害には当たりません。
しかし実際には、サザエやウニが生息しているような磯場や岩場には、ほぼ間違いなく漁業権が設定されています。
海には陸地のような明確な境界線がないため、一般の人が「ここは漁業権の範囲外だ」と判断することは困難です。
実際には「これらの水産物がいる場所 = 採捕禁止場所」と考えておくのが無難です。
サザエやウニを見つけても、手を出さないことが安全策といえます。
都道府県の漁業調整規則違反となるもの(マグロなどその他の魚類)
特定水産動植物でもなく、第一種共同漁業権の対象でもない水産物についても、都道府県の漁業調整規則によって採捕が規制されている場合があります。
漁業調整規則は、各都道府県が「資源保護」や「漁業秩序の維持」のために定める規則で、対象となる魚種や禁止期間、禁止方法などを細かく定めています。
たとえば、「体長30センチメートル以下のマダイは採捕禁止」「3月から5月までヒラメの採捕禁止」「発射装置付きのもり(水中銃)の使用禁止」といった形です。
これらの規制は、資源を保護し、持続可能な漁業を実現するために設けられています。
産卵期の魚を保護したり、まだ小さい魚を保護して成長させたりすることで、資源の枯渇を防ぐのが目的です。
また、特定の漁法を禁止することで、資源への過度な負荷を防いだり、漁業者間の公平性を保ったりする効果もあります。
漁業調整規則は都道府県ごとに異なるため、ある県では認められている採捕方法が、別の県では禁止されているということもあります。
また、同じ魚種でも、体長制限や禁漁期間が都道府県によって異なることがあります。
したがって、釣りやレジャーで水産物を採捕する際には、その場所を管轄する都道府県の漁業調整規則を事前に確認することが重要です。
多くの都道府県は、ホームページで漁業調整規則を公開しており、遊漁者向けのパンフレットを作成している場合もあります。
ワンポイント:潮干狩りで密漁になる?
レジャーシーズンになると、家族連れが潮干狩りを楽しむ姿が報道されます。
海水浴客でにぎわっているスポットは、ほぼ「漁協が管理・運営している潮干狩り場(有料)」か「自治体等がルールを決めて一般開放しているエリア」です。
どちらも「許可された場所」だからOKなのであって、それ以外の場所で勝手に掘ると密漁になり得ます。
潮干狩りを楽しむ場合は、必ず漁協が管理する有料の潮干狩り場を利用するか、自治体が許可している場所で行うようにしましょう。
また、許可された場所であっても、採捕できる量や大きさに制限があることもあるため、ルールをよく確認して守ることが大切です。
どこで捕ったら密漁?密漁にならない場所は?
密漁が成立するかどうかは、何を捕ったかだけでなく、どこで捕ったかも重要な要素です。
日本の沿岸部のほとんどには漁業権が設定されており、また都道府県の規則によって採捕が制限されている水域も広く存在します。
一方で、適法に水産物を採捕できる場所も存在します。
ここでは、密漁が成立する場所と、適法に採捕できる場所について解説します。
漁業権が設定されている場所(沿岸のほぼ全域)
漁業権とは、特定の水域において特定の漁業を営む権利で、都道府県知事の免許によって設定されます。
日本の沿岸部の大部分には、第一種共同漁業権が設定されています。
第一種共同漁業権は、地元の漁業協同組合に免許されるのが通常で、その組合員が当該水域で漁業を営む権利を持ちます。
この漁業権が設定されている水域で、権利を持たない者が漁業権の対象となる水産物を採捕すると、漁業権の侵害として密漁になります。
漁業権が設定されている範囲は、都道府県の公報等で公示されています。
しかし、一般の人が現場でその範囲を正確に把握することは困難です。
規制対象となる水産物が取れる場所には、ほぼ確実に漁業権が設定されていると考えておくのが安全でしょう。
特に、岩場や磯、藻場など、貝類や海藻が豊富な場所には、第一種共同漁業権が設定されている可能性が極めて高いといえます。
都道府県規則で採捕禁止の場所(保護水面・河口など)
漁業権の設定とは別に、都道府県の漁業調整規則によって、特定の水域での採捕が全面的に禁止されている場合があります。
その代表例が「保護水面」です。
保護水面とは、水産資源の保護培養のために、特に重要な水域として指定された場所です。
この水域では、一切の採捕活動が禁止されます。
保護水面は、稚魚の生育場所や産卵場所となっている水域に設定されることが多く、河口付近や内湾、藻場などが指定されています。
保護水面では、たとえ遊漁であっても、釣りを含むすべての採捕行為が禁止されるため、注意が必要です。
また、河口付近は、サケやアユなどの回遊魚が遡上する重要な場所であり、多くの都道府県で採捕が禁止されています。
さらに、港湾区域や航路、養殖場の周辺なども、安全上または漁業秩序の維持のために採捕が禁止されていることがあります。
これらの禁止区域は、都道府県のホームページや漁協の案内、現地の看板などで確認できます。
知らなかったとしても違反すれば処罰の対象となるため、採捕を行う前に必ず確認することが重要です。
密漁にならない「許可された場所」(管理潮干狩り場・海釣り公園など)
一方で、一般の人が適法に水産物を採捕できる場所も存在します。
その代表例が、漁業協同組合が管理・運営している有料の潮干狩り場です。
これらの潮干狩り場では、漁協が漁業権を持つ水域の一部を、一般の人に開放しています。
入場料を支払うことで、指定された範囲内で、指定された貝類を、一定の量まで採捕することができます。
管理潮干狩り場では、漁協が稚貝を放流するなどして資源管理を行っており、持続可能な形で一般の人も楽しめるようにしています。
採捕できる貝の種類や量、使用できる道具などにはルールがあり、これを守る限り密漁にはなりません。
また、一部の自治体や漁協が運営する海釣り公園や釣り桟橋も、適法に釣りを楽しめる場所です。
これらの施設では、一定の料金を支払うことで、安全に釣りを楽しむことができます。
さらに、内水面(川や湖)では、遊漁券を購入することで、指定された魚種を釣ることが認められている場合があります。
遊漁券は、漁業協同組合や釣具店などで購入できます。
これらの「許可された場所」以外で水産物を採捕する場合は、漁業権の侵害や都道府県規則違反となる可能性が高いため、十分な注意が必要です。
迷ったときは、地元の漁業協同組合や都道府県の水産担当部署に問い合わせることをお勧めします。
密漁の罰則
密漁に対しては、違反の内容に応じて厳しい罰則が定められています。
罰則の重さは、何を採捕したか、すなわち特定水産動植物か、漁業権侵害か、都道府県規則違反かによって大きく異なります。
ここでは、それぞれのケースにおける罰則を具体的に見ていきます。
| 禁止されている行為 | 法定刑 | |
|---|---|---|
| 特定水産動植物の密漁 | アワビ、ナマコ、シラスウナギなどの密漁 | 3年以下の拘禁刑または3000万円以下の罰金 |
| 漁業権侵害行為の密漁 | サザエ、ウニ、伊勢海老などの密漁 | 100万円以下の罰金 |
| どの密漁 | ||
|---|---|---|
| 各都道府県漁業調整規則に違反する行為 |
|
6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金 |
特定水産動植物(アワビなど)の罰則
特定水産動植物(アワビ、ナマコ、シラスウナギ)を無許可で採捕した場合、最も重い罰則が科されます。
具体的には、3年以下の拘禁刑または3000万円以下の罰金が科される可能性があります(漁業法189条)。
罰金の上限が、3000万円と極めて高額な点がポイントです。
これは、特定水産動植物の密漁が組織的に行われ、大きな利益を得ているケースが多いことを踏まえたものです。
高額の罰金を科すことで、不当な利益を剥奪し、密漁を割に合わないものにする狙いがあります。
また、特定水産動植物については、採捕だけでなく、所持、運搬、保管、譲渡なども処罰の対象となります。
密漁されたものと知りながら譲り受けた者や、密漁品を流通させた者も、同じ刑罰が科される可能性があります。
特定水産動植物に関する規制は極めて厳格であり、違反した場合の代償は大きいといえます。
漁業権侵害(サザエ・ウニなど)の罰則
漁業権が設定されている水域で、権利を持たずにサザエやウニなどの漁業権の対象となる水産物を採捕した場合、漁業権の侵害として処罰されます。
漁業権侵害の罰則は、100万円以下の罰金とされています(漁業法195条)。
特定水産動植物と比べると罰則は軽いものの、100万円という金額は決して小さくありません。
個人がレジャーのつもりで少量を採捕した場合でも、この罰則が適用される可能性があります。
漁業権侵害は、漁業権を持つ漁業協同組合などの財産権を侵害する行為であり、民事上の損害賠償責任も発生し得ます。
つまり、刑事罰とは別に、漁協から損害賠償を請求される可能性もあるということです。
実際の損害額の算定は難しい面もありますが、採捕した水産物の時価相当額や、漁協が資源管理のために投じた費用などが考慮される可能性があります。
都道府県漁業調整規則違反の罰則
都道府県の漁業調整規則に違反した場合の罰則は、各都道府県の規則によって定められています。
都道府県規則で定められる罰則の上限は、6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です(水産資源保護法4条3項)。
都道府県の漁業調整規則違反は、特定水産動植物や漁業権侵害と比べると罰則は軽めですが、それでも刑事罰であることに変わりはありません。
罰金刑であっても前科がつくため、その後の人生に影響を及ぼす可能性があります。
都道府県の漁業調整規則違反であっても、決して軽く見てはいけません。
「このくらいならバレないだろう」「ばれても注意されるだけだろう」という軽い気持ちが、取り返しのつかない事態を招くことがあります。
密漁の取り締まりの状況
水産庁の資料によると、令和5年の密漁の検挙件数(海面)は、1,653件です。
参考:密漁の現状について 違反者区分別の検挙件数の推移(海面)|水産庁
違反者の内訳を見ると、漁業者によるものは125件にとどまる一方、漁業者以外によるものが1,491件と大半を占めています。
漁業者による検挙は減少傾向にあるのに対し、漁業者以外による検挙が増加傾向にあり、近年の密漁は非漁業者の比重が高まっていることが分かります。
対象別(海面)では、貝類が963件で突出して多く、次いでその他水産動物205件、甲殻類164件、海藻142件、魚類91件などとなっています。
個別の対象としても、サザエ373件、アワビ162件、ハマグリ類161件、イセエビ類143件などが多く、商品価値の高い貝類や甲殻類が目立ちます。

以上のとおり、近年の密漁は「漁業者による違反」よりも「漁業者以外による採捕」が中心となっています。
レジャーのつもりでも違反に該当し得る点に注意が必要です。
また、検挙の対象は貝類が多く、サザエやアワビなど身近な磯の生き物が含まれます。
海や川で採捕を行う前に、その場所のルールや対象種の規制を確認しておくことが、トラブルを避ける最も確実な方法です。
密漁で逮捕されることがある?
密漁は刑事犯罪であるため、悪質な場合や証拠隠滅のおそれがある場合などには、逮捕される可能性があります。
密漁による逮捕は、現行犯逮捕と通常逮捕の両方があり得ます。
現行犯逮捕は、密漁の現場を漁業者や海上保安官、警察官などに発見され、その場で逮捕されるケースです。
密漁の現場は海上や海岸であることが多く、漁業者が早朝や夜間に巡回していることもあるため、現行犯で発見される可能性は決して低くありません。
通常逮捕は、密漁の事実が後日発覚し、警察が捜査を進めた結果、逮捕状が発付されて逮捕されるケースです。
たとえば、密漁された水産物の流通ルートから犯人が特定されたり、目撃情報や防犯カメラの映像から犯人が割り出されたりすることがあります。
特に、特定水産動植物の密漁は、組織的・常習的に行われるケースが多く、警察や海上保安庁が内偵捜査を行い、証拠を固めた上で一斉に検挙することもあります。
逮捕された場合、警察署の留置場に身柄を拘束され、取り調べを受けることになります。
逮捕につづいて勾留が認められると、さらに10日間、延長されればさらに10日間、最大20日間にわたって身柄拘束が続く可能性があります。
この間、仕事に行くことはできず、家族とも面会が制限されるため、社会生活に大きな影響が出ます。
また、逮捕の事実が報道されれば、社会的な信用を失い、その後の人生に大きな影響を及ぼします。
特に、特定水産動植物の密漁については、組織犯罪として扱われることもあり、報道される可能性が高いといえます。
密漁は決して軽い犯罪ではなく、逮捕されて長期間拘束される可能性があることを認識しておく必要があります。
密漁による処罰の流れ
密漁が発覚した場合、どのような流れで処罰に至るのかを理解しておくことは重要です。
密漁事件の典型的な流れは、次のようになります。

-
① 捜査・犯人の特定
密漁事件が発覚すると、警察が捜査を開始します。
容疑者が特定されると、任意での事情聴取を求めたり、逮捕状を請求したりします。
②逮捕
捜査によって容疑者が特定されると、警察は必要に応じて容疑者を逮捕します。
逮捕の必要性がないなど、逮捕の要件を満たさない場合には容疑者を逮捕することはできません。
そのような場合は、取り調べのたびに容疑者を呼び出す「在宅捜査」という形を取ります。
③送検
警察は、逮捕から48時間以内に、容疑者を検察官に送致します。
④勾留
検察官は、送検された容疑者について、勾留の必要性を判断します。
勾留が必要と判断した場合、検察官は裁判官に勾留請求を行います。
裁判官が勾留を認めると、容疑者は最長10日間勾留されることになります。
勾留期間中、検察官は容疑者を取り調べ、起訴するかどうかを検討します。
特に必要がある場合には、勾留期間を10日間を限度に延長することができます。
つまり、勾留期間は最長で20日間となります。
⑤起訴・不起訴の決定
勾留期間中、検察官は容疑者を取り調べ、起訴するかどうかを決定します。
検察官が起訴を決定した場合は、刑事裁判の手続きに移行します。
一方、不起訴処分となった場合は、そこで刑事手続きは終了となります。
罰金刑を選択された場合は、略式起訴という簡易的な手続きで罰金額が決定されることもあります。
密漁で初犯の場合、事案にもよりますが、略式起訴で事件が終了することもあり得るでしょう。
⑥裁判
検察官が容疑者を起訴した場合、刑事裁判が行われます。
裁判では、被告人の容疑について審理を行い、最終的に裁判所が判決を下します。
⑦刑の執行
有罪判決が確定すると、言い渡された刑が執行されます。
実刑判決の場合は、刑務所に入所します。
執行猶予付き判決の場合は、猶予期間中に再び犯罪を犯さなければ、刑の執行は免除されます。
密漁で捜査の対象となってしまったら?
万が一、密漁の疑いで捜査対象となってしまった場合、どのように対応すべきかを知っておくことは重要です。
適切な対応をすることで、事態を悪化させずに済む可能性があります。
ここでは、密漁で捜査の対象となった場合の対処法について解説します。
「知らなかった」場合はどうなる?
密漁で検挙された人の多くが、「漁業権が設定されているとは知らなかった」「この場所で捕ってはいけないとは知らなかった」と主張します。
しかし法律的には、たとえ法律の存在を知らなかったとしても、罪を犯す意思がなかったということにはなりません。
「漁業権が設定されているとは知らなかった」「特定水産動植物だとは知らなかった」という弁解は、基本的には通用しません。
知らないうちに対象の水産物を採捕することのないよう、マリンレジャーの際には、事前にルールを確認することが重要です。
ワンポイント:間違って捕ってしまったら?
規制自体は認識していたものの、誤って規制対象の水産物が偶然捕獲されてしまったというケースも考えられます。
このような場合、規制対象の水産物を採捕する意思(故意)がなかったと認められれば、犯罪は成立しません。
誤って採捕してしまったことに気づいた場合は、速やかにその場で逃がすことが重要です。
そのまま持ち帰ってしまうと、後から「誤って採った」と主張しても、故意があったと判断される可能性が高くなります。
誤解を招かないためにも、規制対象の水産物だと気づいた時点で、直ちに海に戻すなどの適切な対応を取るべきです。
示談はできる?漁協への被害弁償
密漁は刑事事件ですが、同時に漁業権者や資源管理者である漁業協同組合に対する損害を発生させる行為でもあります。
したがって、漁協と示談をすることは、刑事処分を軽くする上で有効な手段となり得ます。
示談とは、被害者と加害者が話し合い、損害の賠償や謝罪などの条件について合意し、事件を解決することです。
密漁の場合、示談の相手方は通常、漁業権を持つ漁業協同組合となります。
示談が成立すれば、検察官が起訴するかどうかを判断する際に有利な事情として考慮されます。
特に、漁業権侵害は、処罰に被害者の告訴が必要な親告罪であり、告訴されなければ検察官は起訴することができません(漁業法195条2項)。
示談交渉は、個人で行うこともできますが、弁護士に依頼することをお勧めします。
弁護士が代理人として交渉することで、冷静かつ適切な条件での示談成立が期待できます。
また、漁協側も、加害者本人との直接交渉を避けたいと考えることが多く、弁護士を通じた交渉の方がスムーズに進むことが多いです。
示談は量刑を軽くする重要な事情として考慮されるため、可能な限り早期に示談を成立させることが重要です。
捜査には誠実に対応する
密漁の疑いで警察や海上保安庁から呼び出しを受けた場合、または取り調べを受けることになった場合、どのように対応すべきでしょうか。
まず重要なのは、呼び出しを無視しないことです。
任意の呼び出しであっても、これを無視すると、「証拠隠滅のおそれ」や「逃亡のおそれ」があると判断され、逮捕される可能性が高まります。
したがって、呼び出しを受けた場合は、指定された日時に出頭するか、やむを得ない事情がある場合は事前に連絡して日程を調整してもらうべきです。
取り調べでは、疑われている密漁のことについて質問されます。
この際、嘘をついたり、事実と異なることを述べたりすることは避けるべきです。
虚偽の供述をすると、かえって事態を悪化させることになります。
ただし、不利益な供述を強要されない権利(黙秘権)が保障されているため、不利なことについては無理に答える必要はありません。
どこまで話すべきか、どのように答えるべきかは、弁護士に相談しながら慎重に判断することが重要です。
刑事事件に強い弁護士に相談する
密漁の疑いで捜査の対象となった場合、できるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に依頼することで、さまざまなメリットがあります。
まず、弁護士は取り調べにどのように対応すべきか、具体的なアドバイスをしてくれます。
どこまで話すべきか、どのように答えるべきか、供述調書の内容をどう確認すべきかなど、専門的な知識に基づいた助言を受けることができます。
また、弁護士は被害者との示談交渉を代理してくれます。
前述のとおり、示談の成立は刑事処分を軽くする上で重要な要素です。
弁護士が交渉することで、適切な条件での示談成立が期待できます。
さらに、起訴された場合でも、弁護士は裁判で弁護活動を行い、執行猶予や罰金刑など、できるだけ軽い処分となるよう努めます。
密漁事件は、漁業法や漁業調整規則などの専門的な法律知識が必要となるため、刑事事件に強い弁護士に依頼することが重要です。
早期に弁護士に相談することで、逮捕を回避できたり、起訴猶予となったりする可能性が高まります。
密漁の疑いがかかった時点で、すぐに弁護士に相談することを強くお勧めします。
密漁についてのQ&A
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タコは密漁になりますか?
タコは、特定水産動植物には指定されていませんが、「農林水産大臣の指定する定着性の水産動物」に含まれます(令和2年農林水産省告示1276号)。
したがって、漁業権が設定されている水域でタコを採捕すれば密漁となります。
また、タコつぼやタコ釣りなど、特定の漁法が都道府県の漁業調整規則で制限されている場合もあるため、採捕には注意が必要です。
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密漁の罰金はいくらですか?
漁業権侵害(サザエ、ウニなど)の場合は、100万円以下の罰金です。
都道府県の漁業調整規則違反の場合は、罰則の上限が10万円以下の罰金です(水産資源保護法4条3項)。
実際の罰金額は、採捕量や悪質性などを考慮して裁判所が決定します。
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密漁の逮捕が現行犯以外難しい理由は?
密漁は、海上や夜間に行われることが多く、目撃者が少ないため、犯行の証拠を集めることが難しい面があります。
また、採捕した水産物は短時間で消費されたり転売されたりするため、物的証拠が残りにくいという事情もあります。
さらに、海には明確な境界線がないため、どこで採捕したのかを特定することも困難です。
しかし近年は、監視カメラの設置や、海上保安庁・警察による巡回強化、密漁情報の通報体制の整備などが進んでいます。
したがって、後日逮捕されるケースもないとはいえません。
まとめ
この記事では、密漁について、その定義や対象となる水産物、禁止されている場所、罰則の内容、逮捕のリスク、そして万が一捜査の対象となった場合の対処法などを解説しました。
記事の要点は、次のとおりです。
- 密漁とは、法律や規則に違反して水産動植物を採捕する行為であり、漁業法と都道府県の漁業調整規則によって厳しく規制されている。
- 特定水産動植物(アワビ、ナマコ、シラスウナギ)は全国どこで捕っても密漁となり、3年以下の拘禁刑または3000万円以下の罰金という最も重い罰則が科される。
- サザエやウニなどの定着性の水産物は、漁業権が設定されている場所で採捕すると密漁となり、100万円以下の罰金が科される可能性がある。
- 日本の沿岸部のほぼ全域には漁業権が設定されており、商品価値のある水産物には手を出さないことが安全策である。
- 密漁で捜査の対象となった場合は、できるだけ早く刑事事件に強い弁護士に相談することが重要である。
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なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか











