殺人罪の殺意はどう認定されるか?【弁護士が解説】

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

私は、殺人罪で起訴されています。

殺意はなかったと主張しているのですが、信じてもらえません。

殺意の有無は、どのような要素が考慮されて、判断されるのですか?

 

 

弁護士の回答

殺意の有無は、凶器の有無、創傷の程度、動機等様々な事情が総合的に考慮されて認定されます。

 

殺意とは?

殺意とは、人を死に至らしめる危険性の高い行為をすることの認識です。

例えば、人の心臓部をめがけてナイフを突き刺した場合、行為者は、人を死に至らしめるような危険性の高い行為を自らの意思でしているわけですから、殺意があったと判断されることが多いでしょう。

例外としては、ナイフが小型で、心臓に到達する危険が認められない場合、かなり弱い力で刺したに過ぎない場合、などが挙げられます。

殺意は、殺人罪が成立するための要件となります。

仮に、殺意が否定されると、通常は傷害致死罪に問われるのみとなるでしょう。

殺人罪と傷害致死罪の法定刑は下表のとおりであり、殺意の有無で量刑は全く異なります。

 

殺人罪
死刑又は無期懲役、若しくは5年以下の有期懲役
傷害致死罪
3年以上の有期懲役
【根拠条文】

(殺人)
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

(傷害致死)
第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。

引用元:刑法|電子政府の総合窓口

したがって、殺意の認定は、容疑者の方にとってとても重大な影響を及ぼします

 

 

 

殺意の有無について裁判所が着目する点は?

これらの事情、特に①から⑤の事情から行為態様が認定され、行為態様の客観的な危険性が判断されます。

例えば、刃体の長さ15センチのナイフで、胸の部分を3箇所突き刺し、最も深い傷が13センチの深さであったなどという証拠があると、ナイフの根元まで刺さるほどの強い力で突き刺したことが推認され、殺意有りに大きく傾くでしょう。

弁護人としては、被告人は被害者から日ごろから暴力を受けており、暴力を免れるために、脅す目的でナイフを手に取っただけであるとか、そのナイフ以外にめぼしい武器が付近に存在しなかった、胸の創傷のうち他の2つは切り傷にとどまっているなどと主張することが考えられます。

さらに弁護人としては、13センチの深さの傷がある以上、「⑤犯行時の被告人と被害者の行動」の観点も踏まえた反論を考える必要があります。

すなわち、確かに13センチの深さの傷があるが、これは被害者が被告人のナイフを奪おうと体を密着させ、被告人を押し倒したがために、被告人が持っていたナイフの上に全体重をかけて倒れこみ、深く突き刺さってしまったものである、殺意があれば他の傷も同程度に深いものとなっていたはずである、などといった主張です。

また、「⑥犯行前の被告人の言動」の観点として、被害者は被告人からの暴力を免れるためにナイフを持ち出したことは何度もあることを主張したり、「⑦犯行後の被告人の言動」の観点として、として、被告人は犯行後すぐに救急車を呼んでおり、この行為から、殺す気があったとは考えがたいことを主張したり、「⑧被告人の動機」の観点として、として、被害者は被告人の暴力を恐れてはいたがその反面経済的に依存しており、脅す動機はあっても殺害する動機までは有してはいなかったことを主張したりします。

 

 

殺意を争う場合の重要なポイント

殺意の有無を判断する上で、警察官、検察官は、被疑者(あなた)の自白を重要視します。自白を得ることで、客観的な証拠による立証の手間がなくなり、有罪の見込みが大きく高まるのです。

殺す気はありませんでしたと主張するあなたに対し、「被害者が死ぬかもしれないことは分かっていたでしょう」、「場合によっては死ぬかもしれないが、それでもかまわないと思っていたでしょう」、「ナイフが人を死に至らしめうる危険なものであることは分かっていたでしょう」、などと様々な聞き方をして自白を迫ってきます。

「死なせてしまう危険があることは分かっていました。」というような調書を作られてしまうと、それが後の裁判で不利に使われる危険があります。

すなわち、殺意は、「殺そうと思った」場合のみならず、「相手が死んでもかまわない」程度のものでも、認められてしまうことになるのです。未必の故意と呼ばれるものです。

取調べでの対応を誤ると、真実とかけ離れた認定がされ、不当な有罪判決が出されてしまうリスクが高まりますから、弁護人と綿密に打ち合わせをすることが必要です。

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