B型肝炎訴訟の弁護士費用はいくらかかる?注意点も解説

B型肝炎訴訟とは

B型肝炎訴訟とは、過去に国の施策として行われた集団予防接種等(予防接種やツベルクリン反応検査)をきっかけとしてB型肝炎ウイルスに持続感染した方が、B型肝炎給付金を受け取るために提起する訴訟のことです。

B型肝炎給付金を受け取るためには、訴訟の中でB型肝炎給付金の対象者にあたることを証明し、国との間で和解を成立させることが必要です。

和解が成立した場合に受け取ることができる給付金の額は、病状に応じて50万円から3600万円です。

この B型肝炎訴訟を弁護士に依頼する場合の費用はいくらかかるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

そこで、以下ではB型肝炎訴訟を弁護士に依頼する場合の費用について解説していきます。

 

 

B型肝炎訴訟の弁護士費用の種類

後で説明するように、弁護士は、自由に案件の報酬を決めることができ、報酬の決め方については、「成功報酬型」や「タイムチャージ型」など、いくつかのパターンがあります。

B型肝炎訴訟では、「成功報酬型」を採用する弁護士が多数派のため、「成功報酬型」の報酬制度に関する説明をしていきます。

「成功報酬」型の場合にかかる費用は、主に、相談料、着手金、報酬金、実費の4種類です。

なお、「タイムチャージ型」の報酬制度(案件の処理にかかった時間に、弁護士の1時間あたりの単価をかけた報酬を支払う方式)を採用する弁護士の場合、弁護士費用の種類は、相談料、タイムチャージ、実費の3種類です。

 

相談料(法律相談料)

相談料(法律相談料)とは、弁護士に法律相談をする際にかかる費用のことです。

一般的には、相談料として1時間あたり5,000円〜1万円を請求する弁護士がほとんどです。

ただし、B型肝炎訴訟については、法律相談料を無料とする弁護士が多数派です。

B型肝炎訴訟を弁護士に依頼するかを検討する際には、そもそもご自身がB型肝炎の給付金対象となるのか、給付金をもらえる見込みはどの程度あるのかなどについて、まずは法律相談を利用して確認するのがおすすめです。

 

着手金

着手金とは、弁護士に訴訟などを依頼する段階で前払いする弁護士報酬のことで、B型肝炎給付金がもらえたかどうかの結果に関係なく返還されないものです。

B型肝炎訴訟については、着手金を無料とする弁護士が多数派のようです。

 

報酬金(成功報酬)

報酬金(成功報酬)とは、訴訟で無事に和解が成立し、給付金が得られた場合に後払いする弁護士報酬のことです。

B型肝炎訴訟の場合、いったん弁護士が本人に代わって国から給付金を受け取り、その中から報酬金や実費を差し引いた上で、残額を本人に支払う流れが一般的です。

報酬金(成功報酬)は、多くの場合、「得られた給付金の◯%」といった計算式によって算定されます。

B型肝炎訴訟の場合の報酬金については、16.5%(税込)前後で設定する弁護士が多いようです。

弁護士によって、得られる給付金の額によってパーセンテージを変動させる場合や、最低報酬金額を定める場合(「最低報酬額◯万円」などの表記)、「得られた給付金の◯%」に加えて固定額を請求する場合などがあります。

依頼する前に、報酬体系をよく確認することが大切です。

成功報酬制のメリット

成功報酬制のメリットは、大きく3つあります。

1つめのメリットは、給付金が得られなかった場合には報酬金(成功報酬)を支払う必要がないことです。

特に、成功報酬型で着手金を無料とする弁護士の場合(完全成功報酬型)、給付金が得られなかったときの費用倒れを防ぐことができます。

2つめのメリットとしては、事前にしっかりと訴訟の見通しを立ててもらえる可能性が高いことがあげられます。

訴訟に時間と労力をかけても給付金を得られなければ、弁護士も無報酬となってしまうため、見通しをしっかりと検討してもらえる可能性が高いといえます。

3つめのメリットは、最終的に支払うこととなる弁護士報酬をあらかじめ予測しやすく、想定外の費用を請求される可能性が少ないことです。

例えば、タイムチャージ制(時間報酬型)の場合には、あらかじめどの程度の時間がかかるか予測できないため、予想以上に時間がかかり、弁護士費用が膨れ上がってしまうという事態がありえます。

これに対し、成功報酬制の場合には、あらかじめ弁護士報酬について一定の金額や計算式が決められており、それ以上の金額を請求されることはありません(ただし、実費を除きます)。

成功報酬制のデメリット

他方、成功報酬制のデメリットは、得られる給付金の金額が高い場合、タイムチャージ等に比べて報酬金が高額となる可能性があることです。

上で説明したように、成功報酬については、もらえた給付金の金額にかかわらず、一律「得られた給付金の◯%」とする弁護士が大半であり、受け取る給付金の額が高いほど、弁護士に支払う報酬金も多くなります。

もっとも、事案の複雑さによっては多くの弁護士の稼働を必要とするケースもあることから、一概に「高い」、「安い」といった判断をすることは難しい側面があります。

 

実費・日当

実費とは、裁判所に納める訴訟費用(印紙代)や通信費(切手代)、血液検査にかかる費用、戸籍謄本・住民票の取り寄せにかかる費用のほか、カルテ等の開示請求などにかかる費用など、B型肝炎訴訟のために実際に出費される必要経費のことです。

日当とは、弁護士の出張が必要となる場合にかかる交通費や宿泊費、日当(出張手当)のことです。

実費・日当はいずれも、弁護士報酬とは別に支払う必要があります。

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国からの訴訟手当金について

訴訟手当金」とは、国との間で和解が成立し、無事に給付金を受け取ることができた場合に、国から支給される助成金のことです。

具体的には、以下の費用が支給されます。

  • B型肝炎訴訟を弁護士に依頼した場合の弁護士費用の助成:受け取った給付金の4%に相当する金額
    弁護士報酬については、例えば、着手金無料、報酬金(成功報酬)が得られた給付金の16%の場合、実質的な自己負担額は、給付金の12%となります。
  • 検査費用の助成:本人、父母、年長きょうだいがB型肝炎に持続感染していることを確認するための検査費用(血液検査等にかかる費用)
    B型肝炎訴訟において検査を受ける必要がある場合、一部の検査について、以下のような手当金を受け取ることができます。
検査の種類 手当金の額
HBVジェノタイプ検査 保険適用 2300円
保険適用外 8500円
HBVサブジェノタイプ検査 15000円
HBV分子系統解析検査 父と本人(1組あたり) 6万5000円
母と本人(1組あたり) 6万3000円

※すべての人についてこれらの検査が必要となるわけではありません。

 

 

B型肝炎訴訟における弁護士費用の注意点

B型肝炎訴訟における弁護士費用に関する注意点は、次の3点です。

B型肝炎訴訟における弁護士費用の注意点

① 弁護士費用に関する規定はない

かつては、日本弁護士連合会が弁護士費用(報酬)に関する基準(規定)を定めており、すべての弁護士について、弁護士費用は一律に決められていました。

しかし、平成16年4月1日以降、弁護士報酬は自由化され、それぞれの弁護士が独自に定めることができるようになりました。

そのため、B型肝炎訴訟にかかる弁護士費用も、どの弁護士に依頼するかによって異なります。

それぞれの弁護士がどのような報酬体系を定めているのかを、事前にしっかりと確認することが必要です。

 

② 成功報酬の表示方法に注意

弁護士費用を確認する際に注意したいのが、成功報酬の表示方法です。

成功報酬については「給付金の◯%」といった計算式で算定する弁護士が多いのですが、金額表示については、上で説明した訴訟手当金(給付金の4%)を差し引いた後の金額を「実質給付金の◯%」等として表示する場合と、訴訟手当金を差し引く前の総額を「給付金の◯%」と表示する場合があります。

たとえば、成功報酬について「実質給付金の12.5%」と表示している場合(給付金訴訟手当金を差し引いた金額を表示)と、単に「給付金の15.4%」と表示している場合とでは、前者の方が安く感じられるかもしれません。

しかし、「実質給付金の12.5%」と表示されている場合、給付金の4%を加えた金額である「給付金の16.5%」が報酬の総額となるため、前者の方が高額です。

また、「税込」または「税抜」のいずれであるかもチェックしましょう。

弁護士報酬を比較するときには、「実質」と「総額」、「税抜」と「税込」など、同一条件のもとで比較することが大切です。

 

③ 弁護士費用とは別に実費がかかる

上で説明したように、弁護士費用とは別に実費がかかります。

実費は大きく、

  • 裁判所に提出する資料の収集にかかる費用
  • 訴訟費用(収入印紙代)

の2つにわかれます。

弁護士によっては、これらのほかに日当が必要となる場合があります。

裁判所に提出する資料の収集にかかる費用
  • 戸籍謄本:450円(1通あたり)
  • 除籍謄本:750円(1通あたり)
  • 戸籍の附票 300円(1通あたり)
  • 住民票 300円(1通あたり)
  • 医療記録(カルテ等)の開示手数料:3,000円~5,000円
  • 診断書:3,000円~5,000円
  • 医師の意見書:3,000円~5,000円
  • 各種検査費用:3,000円〜60,000円(検査の種類により異なる)

※上記すべての費用が必要となるものではなく、どのような請求をするかによってかかる費用は異なります。

和解成立後、一部の検査にかかった費用については国から手当金を受け取ることができますが、戸籍謄本やカルテ、診断書等についての助成はありません。

訴訟費用(収入印紙代)

裁判所に訴訟を提起するには、請求する金額に応じて費用がかかります(訴訟費用)。

訴訟費用は、収入印紙で納める必要があります。

B型肝炎訴訟の場合、訴訟費用の額は、6000円(50万円を請求する場合)から13万4000円(3600万円を請求する場合)です。

参考:手数料額早見表|裁判所

 

 

B型肝炎訴訟の弁護士費用の相場

ここまで説明してきたことをまとめると、B型肝炎訴訟にかかる弁護士費用の相場は、下表のようになります。

病態等 給付金 弁護士費用(※1) 実費 合計(概算)
着手金 弁護士報酬(給付金額の8.8%〜18.7%(税込)) 訴訟費用
(印紙代)
その他
(※3)
死亡/肝がん/肝硬変(重度) 発症/死亡から20年未満 3600万円 0円 316万8000円

673万2000円
13万4000円 2万円

15万円
335万円

700万円
発症/死亡から20年以上 900万円 79万2000円

168万3000円
4万8000円 90万円

190万円
肝硬変(軽度) 発症から20年未満 2500万円 0円 220万円

467万5000円
9万8000円 2万円

15万円
235万円

490万円
発症から20年以上・治療中 600万円 52万8000円

112万2000円
3万6000円 60万円

130万円
発症から20年未満・上記以外 300万円 26万4000円

56万1000円
2万1000円 30万円

75万円
慢性B型肝炎 発症から20年未満 1250万円 0円 110万円

233万7500円
5万9000円 2万円

15万円
180万円

255万円
発症から20年以上・治療中 300万円 26万4000円

56万1000円
2万1000円 30万円

75万円
発症から20年未満・上記以外 150万円 13万2000円

28万500円
1万3000円 20万円

45万円
無症候性キャリア 感染から20年未満 600万円 0円 52万8000円

112万2000円
3万6000円 2万円

15万円
60万円

130万円
感染から20年以上(※2) 50万円 11万円

27万5000円
6000円 15万円

45万円



※1 :弁護士費用は、訴訟手当金を含めない総額表示・税込み表示で記載しています。

※2:50万円の給付金を請求する場合、最低報酬額(固定報酬額)が定められている場合がほとんどです。

※3:訴訟費用(印紙代)以外にかかる費用の目安です。
検査費用については、国から2300円〜8万8500円の給付を受けられる可能性があります。

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B型肝炎訴訟は弁護士をつけるべき?

B型肝炎訴訟は、弁護士をつけずにご自身で行うこともできます。

上で説明してきたように、弁護士に依頼する場合には一定の費用がかかることから、B型肝炎訴訟に弁護士をつけるべきかどうか、悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、B型肝炎訴訟に必要な資料の収集には膨大な時間がかかることや、訴状などの書面の作成には法律的な知識のほか、B型肝炎に関する医学的な知識も必要となることなどから、独力で行うのはなかなか大変です。

和解が成立した場合に訴訟手当金による助成を受けられることをふまえると、B型肝炎訴訟は経験豊富な弁護士に任せるのがおすすめです。

 

 

まとめ

  • 弁護士報酬は一律に決まっているものではなく、それぞれの弁護士が自由に金額を決めることができます。
  • B型肝炎訴訟にかかる弁護士費用は、主に、相談料、着手金、報酬金、実費の4種類です(成功報酬型の報酬制度の場合)。
  • B型肝炎訴訟の場合、相談料(法律相談料)や着手金を無料とする弁護士が多数派です。
  • 報酬金(成功報酬)の額は、もらえた給付金の8.8%〜18.7%(税込)など、弁護士によってさまざまですが、16.5%(税込)前後で設定する弁護士が多いようです。
  • 上にあげた弁護士に支払う費用のほか、B型肝炎訴訟のために実際に出費される必要経費(実費)が必要となります。
  • B型肝炎訴訟で国との間に和解が成立し、無事に給付金をもらえる場合、さらに国から「訴訟手当金」の支給を受けることができます。
  • 訴訟手当金は、弁護士費用の一部(給付金の4%に相当する額)のほか、B型肝炎訴訟を提起するために必要な検査費用の一部について支給されます。
  • B型肝炎訴訟の手続きには膨大な時間と労力がかかるため、弁護士に依頼するのがおすすめです。

 

 

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