B型肝炎給付金請求は自分でできる?|メリット・デメリットを解説

B型肝炎の給付金請求は、弁護士に依頼せずに自分で行うことができます。

自分で行う場合、弁護士費用がかからないため、費用を抑えることができます。

しかし、必要資料の準備、裁判書類を自分で作成、裁判所への出廷など膨大な時間と労力がかかるため注意が必要です。

B型肝炎訴訟を弁護士に依頼せずに自分で行う場合でも、まずは無料法律相談で弁護士にアドバイスを求めることをおすすめします

このページでは、B型肝炎の給付金請求を自分で行う場合の流れや、自分で行う場合のポイントについて弁護士が解説いたします。

B型肝炎の給付金請求(B型肝炎訴訟)は自分でできる?

B型肝炎の給付金請求(B型肝炎訴訟)とは、B型肝炎給付金の支給を受けるために、国を相手に国家賠償請求訴訟を提起することをいいます。

B型肝炎の給付請求(B型肝炎訴訟)は、弁護士に依頼せずに自分で行うことができます。

 

 

B型肝炎の給付金請求の流れ

B型肝炎の給付金請求は、以下の流れで進めていきます。

B型給付金請求の流れ 訴訟の提起からB型肝炎給付金までには、手続きがスムーズに進んだ場合で1年6ヶ月程度かかると言われています。

以下では、それぞれの手続きについて解説していきます。

①必要資料の準備

まずは、和解の要件をみたすことを証明するための資料(証拠)の準備から始めます。

B型肝炎給付金の支給を受けるためには、訴訟の和解協議の中で、国の施策として行われた集団予防接種等が原因でB型肝炎に感染したことについての確認を受ける必要があります。

この確認は、国と集団訴訟原告団との間で締結された「基本合意書」に定めた和解の要件をみたすかどうかという観点から、証拠によって判断されます。

具体的には、次のような資料を収集する必要があります。

  • 医療機関に依頼するもの
    診断書、各種血液検査結果、カルテ等の医療記録、接種痕意見書など
  • 市区町村に依頼するもの
    住民票、戸籍謄本または除籍謄本、戸籍の附票、予防接種台帳、証明書など
  • ご自身で用意するもの
    母子健康手帳(コピー)、陳述書、幼稚園・小学校の卒園・卒業証明書など

特に、医療機関に依頼する必要のあるカルテ等は、和解の要件を確認するうえで重要な資料となりますので、医療機関に対して適切な依頼(開示請求)を行い、資料の開示を受けることが重要です。

B型肝炎給付金の対象者は、大きく

  • (ア)一次感染者(ご自身が集団予防接種により感染した方)
  • (イ)二次感染者(一次感染者から母子感染等により感染した方)
  • (ウ)これらの方の相続人

に分かれており、ご自身がいずれに該当するかによって収集すべき資料が異なります。

この判断を間違えると、訴訟を提起した後で資料が不足していたことが判明し、資料収集のやり直しが発生してしまいます。

給付金請求をスムーズに行うためには、ご自身がいずれの対象者に該当するのかをしっかりと確認したうえで、資料の収集を始めることが大切です。

 

②訴状等の書類作成

必要資料がそろったら、裁判所に提出するための訴状や証拠の一覧を作成します。

訴状には、どのような請求を行うのかや、その請求が認められるために必要な法的な根拠、それを支える具体的な事実等の主張を記載する必要があります。

これに加えて、①で収集した必要資料(証拠資料)がこれらの主張のどの部分にに対応するのかを示した一覧(証拠の一覧)を作成します。

証拠資料には、「甲1」、「甲2」などの証拠番号を記載するとともに、ページ番号を忘れずに記載することが求められます。

厚生労働省が公表している以下のような資料があり、その中には訴状や証拠の一覧の記載例なども記載されていますので、自分で作成する場合にはこれらを参照しながら作成するのがよいでしょう。

引用元
B型肝炎訴訟の手引き (全体版)
B型肝炎訴訟の手引き ご自身での提訴を考えている方へ(説明編)
B型肝炎訴訟の手引き ご自身での提訴を考えている方へ(提出編)

訴状については原本(正本)1通とそのコピー(副本)1通を、証拠についてはコピー2通を用意します。

証拠の原本は裁判期日で確認するため、当日に持参します。

もっとも、裁判手続の進行方法によっては、裁判期日以外の日に法務局で原本確認する場合もあります。

また、裁判手続の利用には費用がかかり、収入印紙を訴状に貼付して納める必要があります。

費用の額は請求する額によって異なり、例えば請求額が2,500万円の場合には9万5,000円です。

参考:手数料額早見表

 

③訴訟提起

B型肝炎訴訟は、次のいずれかの裁判所に提起することができます。

  • 現在お住まいの地域の裁判所
  • 被告(国)の所在地の裁判所(東京地方裁判所)
  • 集団予防接種を受けた地域の裁判所

基本的には各都道府県の「地方裁判所」に訴訟を提起することとなりますが、請求金額が140万円を超えない場合には「簡易裁判所」に提起することができます。

なお、全国B型肝炎訴訟弁護団と国との合意によって、札幌、東京、新潟、静岡、金沢、大阪、広島、鳥取、松江、福岡の各地方裁判所については、現在お住まいの地域にかかわらず、訴訟を提起することができる場合があります。

訴訟を提起する裁判所を決定したら、訴状、証拠の一覧(別表)、証拠などの必要書類を裁判所に郵送または持参して提出し、国を被告とする国家賠償請求訴訟を提起します。

 

④裁判所へ出廷

訴訟の提起後、裁判所から裁判の日時が指定されますので、その日時に裁判所へ出廷します。

すべての主張や立証は、基本的に原告・被告の両当事者が出席している裁判所の法廷で行われます。

被告の国は、裁判所を通じて提出を受けた訴状や証拠等の資料をもとに、和解の要件をみたすかどうかを確認します。

資料に不足がある場合には、追加で資料の提出を求められる場合があります。

 

⑤国との和解成立

提出した証拠資料によって、和解の要件を満たしていることを証明することができた場合には、国との間で和解が成立します。

裁判所は、和解の内容を記載した「和解調書」を作成します。

 

⑥社会保険診療報酬支払基金への支払請求

社会保険診療報酬支払基金に対し、B型肝炎給付金の支払いを請求します。

支払請求は、所定の様式の請求書(支払請求書)とともに、住民票、和解調書などの必要書類を提出して行います。

手続きの詳細については、支払基金の相談窓口やホームページでご確認ください。

引用元:社会保険診療報酬支払基金ホームページ

 

 

B型肝炎の給付金請求を自分でする場合のメリット

費用が抑えられる

B型肝炎の給付金請求を自分で行う場合、弁護士費用がかからないため、費用を抑えることができます。

弁護士費用の設定は各弁護士事務所によって異なりますが、国から支給された給付金の15%前後を弁護士費用(成功報酬)とすることが多いようです。

たとえば、弁護士費用を給付金の15%(成功報酬)とする弁護士事務所に依頼した場合、重度の肝硬変について和解の要件が認められ3,600万円の給付金を受け取ったときは、その15%に相当する540万円が弁護士費用となります。

なお、和解が成立して給付金の支給を受けることができたときは、国から受け取った給付金の4%に相当する額が「訴訟手当金」として支給されますので、上の事例では、弁護士費用の実質的な自己負担額は給付金の11%に相当する396万円、最終的に手元に残る金額は3,204万円となります。

 

 

B型肝炎の給付金請求を自分でする場合のデメリット

必要資料の準備に時間と労力がかかる

B型肝炎の給付金請求にあたっては、和解要件をみたすことを証明するための様々な資料を準備する必要があり、資料の準備には膨大な時間と労力がかかります。

上で説明したように、ご自身が一次感染者、二次感染者またはこれらの方の相続人のいずれにあたるのかによって収集する資料が変わってくるのですが、そもそもご自身がこれらの対象者に該当するのかどうか、どの類型に該当するのか、といった判断に迷うことも少なくありません。

また、和解の要件の確認にとって重要な役割を果たすカルテ等の医療記録については、法律上の保存期間(完結の日から5年間)が定められており、この保存期間を経過していると、スムーズに開示されない場合や廃棄されてしまっている場合があります。

そのような場合には、カルテ等に代わる資料を収集して提出することができないかを検討することなりますが、B型肝炎訴訟に関する法律・医学両面に関する一定の知識がなければ、なかなか厳しい面があります。

 

訴状などの裁判書類を自分で作成しなければいけない

B型肝炎の給付金請求を自分で行う場合、訴状や証拠の一覧などの書類を自分で作成しなければなりません。

2回目以降の裁判では、訴状よりもより詳細な事実関係を記載した「準備書面」という書面の作成を求められることがありますが、これも自分で作成しなければなりません。

訴状や準備書面には、和解の要件をみたすことを法律的に組み立てて記載する必要があるため、一定の法律知識が必要となります。

訴状の記載等に不備があった場合、裁判所から記載の修正や追加の記載を求められますので、これに対応する必要があります。

 

裁判所に出廷しなければならない

B型肝炎の給付金請求を自分で行う場合、上で説明したように、裁判所から指定される期日に合わせて、自分自身で裁判所に出廷する必要があります。

裁判は平日の日中(午前10時頃から正午頃まで、午後1時頃から午後5時頃まで)に行われるため、平日の日中に働いている場合には、日程調整に苦労する可能性があります。

 

証拠資料に不足があった場合の対応が大変

訴訟の中で、和解の要件をみたすことを証明するための証拠資料に不足があることが判明した場合には、追加で資料提出をすることが求められます。

状況によっては、主張の追加や事実関係の補足説明などを求められることもあります。

この場合には、追加で提出を求められた資料の収集や主張の追加等を行う必要があり、さらに時間をかけて資料の収集や書面の作成を行う必要があります。

また、追加資料を提出した後には、裁判所や被告(国)側で資料等を精査し、追加によって和解の要件がみたされたかどうかの検討を行うこととなります。

この精査・検討には半年から1年程度かかるといわれており、その分、B型肝炎給付金を受け取るまでにかかる時間も長くなってしまいます。

 

 

B型肝炎の給付金請求を自分でする場合のポイント

B型給付金請求を自分でする場合のポイント

B型肝炎訴訟提起には期限がある

B型肝炎の給付金請求(B型肝炎訴訟)には、「B型肝炎給付金感染社給付金等の支給に関する特別措置法」によって定められた期限があり、2027年(令和9年)3月31日までに訴訟を提起する必要があります。

また、B型肝炎給付金には病状に応じて「除斥期間(じょせききかん)」という一定の期間が定められており、この除斥期間を過ぎた後は、支給される給付金の額が大幅に減ってしまいます。

そのため、できるだけ早く準備をととのえて、すみやかにB型肝炎訴訟を提起することが大切です。

 

無料法律相談で弁護士に相談する

B型肝炎訴訟を弁護士に依頼せずに自分で行う場合でも、無料法律相談で弁護士にアドバイスを求めることをおすすめします。

特に、B型肝炎訴訟の経験が豊富な弁護士事務所に相談するのがおすすめです。

無料法律相談では、ご自身がB型肝炎給付金の受給対象者にあたるかどうかや、どの類型の対象者にあたるのか、どのような資料を収集する必要があるのか、和解が成立する見込みはどの程度か、などについて、的確なアドバイスを受けることを期待できます。

もしかすると、「無料の相談では大したアドバイスを受けられないのでは」、「相談したら依頼しなければならなくなるのではないか」といった心配をされる方がいらっしゃるかもしれません。

多くの弁護士事務所では、B型肝炎訴訟の弁護士費用については、着手金を受け取らない「成功報酬型」を採用しているため、訴訟を提起しても、和解が成立し給付金を受給できる見込みがなければ、受任するメリットはほとんどありません。

そのため、無料の法律相談の段階で、相談者の方が和解要件をみたす見込み等についての十分な検討を行うことは、相談者のみならず弁護士事務所にとってもメリットがあることなのです。

また、無料の法律相談をした後に弁護士に依頼するかどうかは相談者の方が自由に決めることができ、弁護士事務所から相談者の方に依頼を強要することはありません。
特に、請求の期限や除斥期間の期限が迫っているという場合には、すみやかに証拠を収集し、できるだけ早く訴訟を提起する必要があることから、積極的に無料の法律相談を活用するのがおすすめです。

 

厚生労働省の相談窓口を利用する

弁護士に相談するのは敷居が高いと感じる場合には、厚生労働省の電話相談窓口を利用するのも一案です。

厚生労働省の電話相談窓口では、B型肝炎訴訟の手続きや、訴訟の提起に必要な資料等について一定のアドバイスを受けることができます。

受付時間は年末年始を除く平日9時〜17時で、連絡先は厚生労働省のホームページの下方に記載されています。

引用元:B型肝炎訴訟について

 

 

まとめ

  • B型肝炎の給付金請求(B型肝炎訴訟)は、弁護士に依頼せずに自分で行うことができます。
  • B型肝炎の給付金を受給するためには、国を相手とする国家賠償請求訴訟を提起し、その中で「基本合意書」に定める和解の要件をみたすことを証明する必要があります。
  • B型肝炎の給付金請求は、①必要資料の準備→②訴状等の書類作成→③訴訟提起→④裁判所へ出廷→⑤国との和解成立→⑥社会保険診療報酬支払基金への支払い請求といった流れで行います。
  • B型肝炎の給付金請求については、厚生労働省がホームページ上で公表している「B 型肝炎訴訟の手引き」等にまとめられていますので、これを参照して行うのがよいでしょう。
  • B型肝炎の給付金請求を自分でする場合、弁護士に依頼する費用を抑えることができます。
  • B型肝炎の給付金請求を自分でする場合のデメリットとしては、必要資料の準備に時間と労力がかかること、訴状などの裁判書類を自分で作成しなければならないこと、平日の日中に裁判所に出廷しなければならないこと、証拠資料に不足があった場合の対応が大変であること、などがあげられます。
  • 特に、証拠資料の収集には時間と労力がかかるだけでなく、どのような証拠を収集すべきかの判断には難しい面があることから、訴訟を提起した後に資料の不足を指摘され、最終的な給付金の受給までに時間がかかってしまう可能性があります。
  • B型肝炎の給付金請求を弁護士に依頼しない場合でも、無料の法律相談を利用することができます。

資料収集のやり直しなどを防ぎ、訴訟手続きをスムーズに進めるためにも、無料の法律相談を積極的に活用することをおすすめします。

 

 

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