B型肝炎訴訟でカルテがない場合どうしたらいい?|対処法を解説

B型肝炎訴訟とは?

B型肝炎訴訟とは、過去に国の施策として行われた集団予防接種等(予防接種またはツベルクリン反応検査)をきっかけとして、B型肝炎ウイルスに持続感染した方が、B型肝炎給付金の対象者として認められるために提起する訴訟のことです。

 

B型肝炎給付金の対象者として認められるためには、一定の要件を満たすことを訴訟手続の中で証明し、国との間で和解することが必要です。

 

 

B型肝炎訴訟で必要なカルテとは

B型肝炎給付金の対象者として認められるためには、国と全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団との間で調印された「基本合意書」に定められた証拠(資料)によって、「基本合意書」に定められた一定の要件を満たすことを証明することが必要です。

「基本合意書」に定められた証拠(資料)のひとつに、医療記録(カルテ等)があります。

「医療記録」とは、カルテ(診療録)、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院期間中の診療経過の要約など、診療の過程で作成、記録又は保存された記録のことをいいます。

その中でも、カルテ(診療録)は医師が直接記入することが義務づけられている記録であり、もっとも重要な証拠のひとつです。

一次感染者に必要な医療記録(カルテ等)

一次感染者の場合、以下のような事実を証明するために、医療記録(カルテ等)の提出が求められます。

病態等について

B型肝炎給付金は病態によってもらえる金額が異なるため、病態(病気の状態)やその原因がB型肝炎ウイルスの感染にあることを証明するために、医療記録(カルテ等)を提出する必要があります。

集団予防接種等以外の感染原因がないこと

一次感染者は、集団予防接種等以外の感染原因がないことを示す資料として、以下の医療記録(カルテ等)を提出する必要があります。

  • 提訴日前1年分の医療記録
  • 持続感染の判明から1年分の医療記録
  • 最初の発症から1年分の医療記録(発症者のみ)
  • ⼊院歴がある場合には、⼊院中のすべての医療記録または退院時要約(サマリー)

例えば、カルテの中に、過去に手術を行ったことや、その際に輸血を行った等の記載がある場合、この輸血がB型肝炎ウイルスの感染原因となった可能性が疑われることになります。

この場合、給付金の対象者として認められるためには、輸血がB型肝炎ウイルスの感染原因ではなかったことを示す証拠(他の医療記録等)の追加提出を求められる可能性があります。

母子感染でないこと

さらに、母子感染でないこと確認するために、母親の医療記録(カルテ等)の提出を求められる場合があります。

 

二次感染者に必要な医療記録(カルテ等)

二次感染者の場合、以下のような事実を証明するために、医療記録(カルテ等)の提出が求められます。

病態等について

一次感染者と同様、病態(病気の状態)やその原因がB型肝炎ウイルスの感染にあることを証明するために、医療記録(カルテ等)を提出する必要があります。

母親が一次感染者の要件(集団予防接種等以外の感染原因がないこと)を満たすこと

二次感染者は、母親が一次感染者に該当することを証明する必要があります。

そのため、母親について、集団予防接種等以外の感染原因がないことを確認するための医療記録(カルテ等)を提出する必要があります。

提出する医療記録(カルテ等)の内容は、上で説明したとおりです。

母子感染とは異なる原因の存在が確認されないこと

二次感染者は、一次感染者である母親からの感染(母子感染)であることを証明する必要があります。

母子感染であることを直接的に証明する方法として、

  1. (ア)ご自身が出生直後に既にB型肝炎ウイルスに持続感染していたことを示す資料
  2. (イ) 原告と母親のB型肝炎ウイルスの塩基配列を比較した血液検査(HBV分子系統解析検査)結果

を提出する方法があります。

(ア)や(イ)の資料をいずれも提出できない場合、母子感染とは異なる原因の存在が確認されないことを立証することで、間接的に母子感染であることを証明することができます。

この場合、証拠の一部として、ご自身について以下の医療記録(カルテ等)を提出する必要があります。

  • 提訴日1年内の肝疾患に関する医療記録
  • 持続感染が判明した時点以降の1年分の医療記録
  • 肝疾患を発症して以降の1年分の医療記録
  • 肝疾患で入院した場合には入院の診療録又は退院サマリー

 

 

B型肝炎訴訟で必要な医療記録(カルテ等)の開示請求

開示請求の方法

医療記録(カルテ等)の開示請求は、基本的に、医療機関に対して書面(開示請求書)を提出して行います。

開示に際しては、各医療機関所定の開示手数料がかかります。

開示請求書には、開示を希望する医療記録の種類や、開示を希望する医療記録の対象期間などを記載する必要があります。

スムーズな開示を受けるためには、どの時期にどのような症状で通院していたのか、といった事実関係を事前に整理しておくことをおすすめします。

カルテ等は一定期間を過ぎると倉庫に移管して保管されることも多いため、事前の電話確認等の段階では、「保存期間を過ぎたているので処分した」、「カルテはない」等の回答を受ける場合があります。

そのような場合でもあきらめずに、書面による正式な手続きを踏んで開示請求をしてみることが大切です。

なお、厚生労働省が平成16年に公表したカルテ等の開示に関するガイドラインによって、本人からの開示請求に応じることは医療機関の義務であることが明確化されました。

 

データ化保存されていないか病院に確認する

医療記録(カルテ等)の保存義務については、健康保険法に基づく「保険医療機関及び保険医療養担当規則」により、診療が完結した日から5年間と定められており、診療が終わった日から5年以上が経っている場合には、すでに処分されている可能性があります。

もっとも、医療機関によっては、医療過誤を主張された場合などに備えて、5年の保存期間が経過した後も医療記録を保存しているところも少なくありません。

また、紙媒体の医療記録を処分した場合でも、データ化して保存しているというケースもあります。

開示請求を行う際には、仮に医療記録(カルテ等)の原本がない場合でもデータ化保存されていないか、という点をあわせて確認するのが良いでしょう。

 

 

B型肝炎訴訟で医療記録(カルテ等)がない場合の対処法

医療記録(データ化されたものを含みます。)が存在しない場合でも、これに代わる証拠を提出することで、給付金の対象者として認められる可能性があります。

以下では、医療記録(カルテ等)がない場合の対処法について説明します。

病態等に関する医療記録(カルテ等)がない場合

病態等に関する医療記録(カルテ等)がない場合、次のような方法で、これに代わる証拠を集めることが考えられます。

過去に保険会社へ提出した診断書等を取得する

B型肝炎に関連して保険金の請求等を行ったことがある場合、請求にあたり保険会社に提出した診断書等を保険会社に請求して取得することが考えられます。

診断書には、肝炎等を発症するまでの経緯や当時の病状などが記載されている可能性があり、その診断書の記載によって、病態やその原因がB型肝炎への持続感染にあること等を証明することができる場合があります。

主治医に意見書を書いてもらう

B型肝炎の治療を担当していた担当医や主治医に依頼して、当時の病状や治療内容等に関する意見書等を書いてもらうことが考えられます。

死亡診断書の写しを取得する

死亡診断書とは、亡くなった方の担当医や主治医等が作成する、人の死亡を医学的・法的に証明する書類をいいます。

人が亡くなった場合には、死亡診断書を医師から発行してもらい、死亡届とともにこれを市区町村役場に提出します。

死亡診断書には、直接の死因のみならず、原因となった病態に関する詳細な記載がなされることから、この記載により病態等を証明できる可能性があります。

死亡診断書の写しは、死亡届を提出した市区町村役場または本籍地を管轄する法務局で取得することができます(一定期間経過後は法務局に移管されます)。

なお、法務局における死亡診断書の保存期間は、27年間です。

健康診断の結果を確認する

勤務先の会社等で受診した健康診断の結果は、肝機能の数値(異常値等)の記載等によって、発症当初の病態等を証明できる場合があります。

会社は定期健康診断の結果を5年間保存する義務があるため、ご自身の手元に健康診断結果がない場合でも、勤務先の会社に保存されている可能性があります。

健康診断を受診した医療機関に直接問い合わせることも検討しましょう。

 

集団予防接種等以外の感染原因がないことを示す医療記録(カルテ等)または母子感染とは異なる原因の存在が確認されないことを示す医療記録(カルテ等)がない場合

提出できない医療記録(カルテ等)の内容や提出できない理由によって、それぞれ次のような対応が必要です。

  • 提訴日前1年分の医療記録
    提訴日前に通院していない等の理由で提出できない場合、その旨の陳述書を作成して提出することが必要です。
  • 持続感染の判明から1年分の医療記録
    入通院していたが、保存期間を経過している等の理由で提出できない場合、医療記録が存在しないことを医療機関に証明してもらうことが必要です。
    持続感染判明時から1年間に入通院していないため、医療記録を提出できない場合、その旨の陳述書を作成して提出することが必要です。
  • 最初の発症から1年分の医療記録(発症者のみ)
    入通院していたが、保存期間を経過している等の理由で提出できない場合、医療記録が存在しないことを医療機関に証明してもらうことが必要です。
    肝炎発症時から1年間に入通院していない等の理由で提出できない場合、その旨の陳述書をを作成して提出することが必要です。
  • ⼊院歴がある場合には、⼊院中のすべての医療記録または退院時要約(サマリー)
    入院していたが、保存期間を経過している等の理由で提出できない場合、医療記録が存在しないことを医療機関に証明してもらうことが必要です。

 

 

弁護士に相談・依頼するのがおすすめ

これまでの説明を読んでいただいて、「そもそもカルテの開示請求手続きが難しそう」、「本当に病院が開示に応じてくれるのか不安」、「カルテがない場合の対処法が難しそう」などと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そのような方は、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

おすすめの理由としては、医療記録(カルテ等)の開示請求がスムーズになることや、証拠収集の適切なアドバイスを受けられることなどがあげられます。

医療記録の開示請求がスムーズ

上で解説したように、B型肝炎に必要な医療記録(カルテ等)には様々なものがあり、さらに、ご自身が一次感染者または二次感染者のいずれであるかによって、収集する資料の種類が異なります。

開示請求のやり直しや追加の開示請求が発生すると、B型肝炎訴訟の提起や給付金を受け取るまでにより多くの時間がかかってしまいます。

このような事態を避けるためには、法的・医学的な見地から、B型肝炎訴訟に必要なカルテ等を的確に判断することが必要となります。

弁護士は依頼者に代わって開示請求書の作成や医療機関への請求を行うことができますので、B型肝炎訴訟に精通している弁護士に相談・依頼することで、開示請求手続きをスムーズに行うことができます。

また、ご本人や親族からの開示請求には応じなかった医療機関が、弁護士による開示請求には応じたという事例もあります。

資料収集のための適切なアドバイス

基本合意書で提出が求められている医療記録(カルテ等)がない場合、B型肝炎訴訟に精通している弁護士に相談することで、適切なアドバイスを受けることができます。

どのような資料ならば医療記録(カルテ等)に代わるものとして認められるのかという判断は、医学的な知識やB型肝炎訴訟に関する知見がなければ難しい側面があります。

いざ訴訟を提起した段階で証拠として認められなかった、あるいは追加の資料提出を求められ収集に時間がかかってしまった、といった事態を防ぐためには、事前に専門家の意見を聞くのがおすすめです。

また、医療記録(カルテ等)を提出することができず、さらに、保険会社に提出した診断書の取得や健康診断結果の確認などの対処法をいずれもとることができなかった場合でも、弁護士に相談した結果、他の方法が見つかったという事例もあるようです。

例えば、闘病日記が医療記録に代わる証拠として認められたという事例などです。

B型肝炎訴訟で和解が成立した場合には、「訴訟手当金」として、訴訟にかかった弁護士費用の一部(給付金額の4%)が支給されますので、ぜひ弁護士の活用も検討してみましょう。

 

 

まとめ

  • B型肝炎訴訟とは、過去に行われた集団予防接種等が原因でB型肝炎ウイルスに感染した方が、B型肝炎給付金の支給を受けるために、国を相手として提起する訴訟のことです。
  • B型肝炎給付金の支給を受けるためには、訴訟の中でB型肝炎給付金の支給対象者にあたることを証拠によって証明し、国と和解することが必要です。
  • B型肝炎給付金の対象者にあたることを証明するために、医療記録(カルテ等)の提出が必要となります。
  • 医療記録(カルテ等)の開示請求は、医療機関に対して書面を提出して行います。
  • 医療記録(カルテ等)の保存義務は、診療が完結した日から5年間と定められているため、この期間を過ぎた後は廃棄されている可能性があります。
  • 保存期間を過ぎた場合でもデータ化保存されている場合があるため、データ化保存されていないかどうかをあわせて確認することが大切です。
  • 病態に関する医療記録(カルテ等)がない場合には、①過去に保険会社へ提出した診断書等を取得する、②主治医に意見書を書いてもらう、③死亡診断書の写しを取得する、④健康診断の結果を確認する、等の方法が考えられます。
  • 集団予防接種等以外の感染原因がないこと(一次感染者の場合)や、母子感染とは異なる原因の存在が確認されないこと(二次感染者の場合)を証明するための医療記録(カルテ等)がない場合には、陳述書の作成や医療機関による証明などの手続きが必要となります。
  • 「医療記録(カルテ等)の開示請求をスムーズに行いたい」、「証拠収集に関する適切なアドバイスを受けたい」という場合には、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

 

 

 

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