B型肝炎給付金は母子感染でももらえる?要件や給付金額を解説

母子感染によってB型肝炎ウイルス感染した方(二次感染者)は、給付金の対象者となります。

B型肝炎給付金がもらえる対象者(二次感染者)として認められるためには、以下の3つの要件をすべて満たし証明することが必要です。

  1. ① 母親が一次感染者の要件をすべて満たすこと
  2. ② ご自身がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
  3. ③ 母子感染であること

このページでは母子感染でB型肝炎ウイルスに感染した方が、給付金を受け取るために必要な要件や必要な証明などについて弁護士が詳しく解説いたします。

B型肝炎の母子感染とは?

B型肝炎の母子感染とは、B型肝炎ウイルスに持続感染(6カ月以上継続してB型肝炎ウイルスに感染していることをいいます。)している母親から出産時に感染することをいいます。

母子感染は「垂直感染」ともいわれます。

これに対し、性交渉や輸血による感染、父子間の感染等、母子感染以外の感染は「水平感染」といわれます。

B型肝炎ウイルスは血液や体液を介して感染するウイルスで、母子感染の場合、出産の際に産道で血液を介して子に感染します。

乳児は免疫機能が発達しておらず、B型肝炎ウイルスを異物として認識し排除する能力が弱いため、母子感染によってB型肝炎に感染した場合、その90%は症状のないまま体内にウイルスを持ち続ける「無症候性キャリア」となります。

なお、1985年に国による母子感染防止事業が行われるようになってからは、母子感染の発生率は急速に低下しており、現在では新たな母子感染はほとんど発生していません。

 

 

母子感染でB型肝炎給付金を受け取るために必要な要件

B型肝炎給付金とは、過去に国の施策として行われた集団予防接種やツベルクリン反応検査(これらを合わせて「集団予防接種等」といいます。)における注射器の使いまわしによってB型肝炎に感染した患者またはその遺族に支給される給付金のことです。

給付金の制度趣旨から、母親が集団予防接種等によってB型肝炎に感染し(一次感染者)、その母親からの母子感染によって感染した方(二次感染者)は、給付金の対象者となります。

これに対し、母子感染によってB型肝炎ウイルスに感染した場合でも、母親が集団予防接種等の影響でB型肝炎に感染したと認められない場合、給付金をもらうことはできません。

B型肝炎給付金がもらえる対象者(二次感染者)として認められるためには、次の3つの要件をすべて満たすことを証明することが必要です。

母子感染でB型肝炎給付金を受け取るために必要な要件
  1. 母親が一次感染者の要件をすべて満たすこと
  2. ② ご自身がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
  3. 母子感染であること

 

 

B型肝炎給付金はいくらもらえる?

B型肝炎給付金は、病状によって金額が異なります。

また、「除斥期間(じょせききかん)」という一定の期間が定められており、この期間を過ぎるともらえる給付金の額が大幅に減ってしまうので、注意が必要です。

具体的な給付金の金額は、次のとおりです。

 

死亡・肝がん・肝硬変(重症)

  • 除斥期間(死亡 / 発症日から20年間)経過前:3600万円
  • 除斥期間経過後:900万円

 

肝硬変(軽症)

  • 除斥期間(発症日から20年間)経過前:2500万円
  • 除斥期間経過後:① 現に治療を受けている⽅:600万円
    ② 上記以外の方:300万円

 

慢性B型肝炎

  • 除斥期間(発症日から20年間)経過前:1250万円
  • 除斥期間経過後:① 現に治療を受けている⽅:300万円
    ② 上記以外の方:150万円

 

 

無症状キャリア

  • 除斥期間(出生から20年間)経過前:600万円
  • 除斥期間経過後:50万円

 

 

給付金をもらうための手続き(B型肝炎訴訟)の流れ

B型肝炎給付金を受け取るまでの手続きとそれに要する時間の目安は、以下のとおりです。

給付金をもらうための手続き(B型肝炎訴訟)の流れ

このように、準備期間を合わせると、1年6か月から2年ほどかかり、場合によっては2年以上かかることもあります。

また、B型肝炎給付金の請求には期限があり、2027年(令和9年)3月31日までに訴訟を提起する必要があり、この期間をすぎると給付金をもらうことができなくなります。

訴訟の準備には時間がかかることを考えると、早めに準備を始めることをおすすめします。

 

 

母子感染を証明する方法は?

母子感染を証明する方法

必要な資料・必要な検査

上で説明したように、B型肝炎給付金の対象者である二次感染者として認められるためには、

  1. ① 母親が一次感染者の要件をすべて満たすこと
  2. ② ご自身がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
  3. ③ 母子感染であること

といった3つの要件を満たすことを証明することが必要です。

ここでは、それぞれの要件を証明するために必要な資料・必要な検査について解説します。

 

母親が一次感染者の要件をすべて満たすことを証明するための資料

母親について、以下の資料をすべて準備する必要があります。

ア 母親がB型肝炎ウイルスに持続感染していることを示す資料

具体的には、母親について、下記A)またはB)のいずれかの資料を準備する必要があります。

A) 6か月以上の間隔をあけた連続した2時点における、以下のいずれかの検査結果

  • HBs抗原陽性
  • HBV-DNA陽性
  • HBe抗原陽性

B) HBc抗体陽性(高力価)を示す検査結果

 

イ 母親が満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていることを示す資料

具体的には、母親について、下記A)~C)のいずれかの資料を準備する必要があります。

A) 母子健康手帳

B) 予防接種台帳(市町村が保存している場合)

C) 上記A)およびB)のいずれもない場合、下記すべての資料

  • 母子健康手帳を提出することができない事情を説明した陳述書(親や本人が作成)
  • 予防接種台帳に接種記録がない旨の証明書(市町村が作成)
  • 集団予防接種等に関する陳述書(親や本人が作成)
  • 接種痕(予防接種をした傷跡)が確認できるという内容の医師の意見書(医療機関で作成)
  • 満7歳になるまでの居住歴が確認できる住民票または戸籍の附票(市区町村が発行)

 

ウ 母親のB型肝炎ウイルスが母子感染によるものでないことを示す資料

母親について、下記A)~D)のいずれかの資料を準備する必要があります。

  1. A) 母親が生存している場合、母親のHBs抗原が陰性 かつ HBc抗体が陰性(または低力価陽性)の血液検査結果
  2. B) 母親が死亡している場合、㋐母親が80歳未満の時点のHBs抗原陰性の血液検査結果または㋑80歳以上の時点のHBs抗原陰性かつHBc抗体陰性の血液検査結果
  3. C) 母親が死亡している場合、年長のきょうだいのうち一人でも持続感染者でない者がいることを示す資料(血液検査結果)
  4. D) 母親が死亡している場合、医学的知見に基づいて母子感染によるものではないことを推認させるその他の資料(原告が双子の兄であり、双子の弟が未感染であることを示す資料など)

 

エ 母親のB型肝炎ウイルスが、父親からの感染によるものでないことを示す資料

㋐父親が持続感染者でないことを示す資料、または㋑父親が持続感染者の場合、母親と母親の父親のB型肝炎ウイルスの塩基配列が同一でないことを示す資料

 

オ 母親のB型肝炎ウイルスが「ジェノタイプAe型」でないことを示す資料

 

カ その他集団予防接種等以外の感染原因がないことを示す資料(カルテ等の医療記録)

 

ご自身がB型肝炎ウイルスに持続感染していることを証明するための資料

ご自身について、下記アまたはイのいずれかの資料を準備する必要があります。

ア 6か月以上の間隔をあけた連続した2時点における、以下のいずれかの検査結果

  • HBs抗原陽性
  • HBV-DNA陽性
  • HBe抗原陽性

イ HBc抗体陽性(高力価)を示す検査結果

 

ご自身について、母子感染であることを証明するための資料

ご自身について、下記ア~ウのいずれかの資料を準備する必要があります。

ア ご自身が生まれた直後にすでにB型肝炎ウイルスに持続感染していたことを示す資料

イ  ご自身と母親のB型肝炎ウイルスの塩基配列を比較した血液検査(HBV分子系統解析検査)結果

ウ 母子感染とは異なる原因の存在が確認されないことを示す資料(以下のA)~E)の条件をすべて満たすことを示す資料)

  1. A) ご自身の出生前に母親の感染力が弱かったこと(HBe抗原が陰性であったこと)が確認されないこと
  2. B) ご自身が1985(昭和60)年12月31日以前に生まれていること
  3. C) 医療記録などに母子感染とは異なる原因の存在をうかがわせる具体的な記載がないこと
  4. D) ㋐父親が持続感染者でないこと、または㋑父親が持続感染者の場合、ご自身と父親のB型肝炎ウイルスの塩基配列が同一と判断されないこと
  5. E) ご自身のB型肝炎ウイルスがジェノタイプAeでないこと

 

 

母子感染の疑いがある場合、どうしたらいい?

 

病院で検査を受ける

B型肝炎に感染している疑いがある場合、まずは病院で検査を受けましょう。

B型肝炎に感染しているかどうかは血液検査で調べることができます。

 

弁護士に相談する

さらに、感染の原因が母子感染によるものであるかどうか、B型肝炎給付金の対象になるかどうかを知るためには、上で説明したような要件を満たすかどうかという専門的な判断が必要となります。

判断に迷ったら、B型肝炎訴訟に精通している弁護士(法律事務所)に相談することをおすすめします。

 

厚生労働省の相談窓口を利用する

弁護士に相談するのはハードルが高いという場合には、厚生労働省の電話相談窓口を利用してみるのもよいでしょう。

厚生労働省 電話相談窓口
03-3595-2252 (受付時間:年末年始を除く平日の9時~17時)

引用元:B型肝炎訴訟に関する電話相談窓口|厚生労働省

 

 

まとめ

  • B型肝炎の母子感染とは、B型肝炎ウイルスに持続感染している母親から出産時に感染することをいいます。
  • 母親が集団予防接種等によってB型肝炎に感染し(一次感染者)、その母親からの母子感染によって感染した方(二次感染者)は、B型肝炎給付金の対象者となります。
  • B型肝炎給付金は、①病状と②除斥期間経過の有無によってもらえる金額が異なり、除斥期間経過前は600万円~3600万円、除斥期間経過後は50万円~900万円です。
  • B型肝炎給付金を受け取るためには、国を相手に訴訟を定期する必要があり、これに要する時間は、準備期間を含めて1年6カ月から2年ほどといわれています。
  • B型肝炎給付金の対象者である二次感染者として認められるためには、①母親が一次感染者の要件をすべて満たすこと、②ご自身がB型肝炎ウイルスに持続感染していること、③母子感染であること、といった3つの要件を満たすことを証明することが必要です。
  • さらに、上の3つの要件を満たすことを証明するためには、母親やご自身に関する血液検査結果当等の資料を集める必要があります。
  • B型肝炎ウィルスに感染している疑いがある場合、まずは病院で血液検査を受けましょう。
  • B型肝炎給付金の対象となる母子感染に該当するのかどうかについては、専門的な判断が必要となるため、弁護士等の専門家に相談してみることをおすすめします。

 

 

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