B型肝炎の血液検査|検査項目と数値について弁護士が解説

B型肝炎とは

B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる肝臓の病気です。

B型肝炎ウイルスは、継続的に感染状態が続く場合(持続感染)と、一過性の感染で終わる場合(急性肝炎など)があります。

B型肝炎ウイルスに持続感染している場合、85%〜90%の人は無症状ですが、10%〜15%の人は慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進行していく可能性があります。

日本では約110万人から140万人(およそ100人に1人)の人々がB型肝炎ウイルスに持続感染していると推定されています。

 

 

B型肝炎の血液検査【項目・数値】

肝臓にかかわる血液検査は、大きく、「肝機能検査」、「ウイルスマーカー検査」、「腫瘍マーカー検査」の3つに分けられます。

B型肝炎ウイルスへの感染や感染の状態を調べるための検査は、「ウイルスマーカー検査」です。

会社の健康診断などで行われるのは主に「肝機能検査」で、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP(γ-GT)などの項目により、肝機能の異常を調べます(一部ウイルスマーカー検査を含む場合もあります)。

「腫瘍マーカー検査」は、肝がんの可能性を調べるための検査です。

ウイルスマーカー検査を行う目的には、①B型肝炎ウイルスの感染有無を調べる、②B型肝炎ワクチンの効果を確認する、③B型肝炎の治療経過を確認する、④B型肝炎訴訟(後で説明します。)の証拠として提出する、などがあります。

 

ウイルスマーカー検査の項目と数値

B型肝炎のウイルスマーカーは、主に「抗原」「抗体」「ゲノム」に分類されます。

抗原:B型肝炎ウイルスを構成し、生体の免疫反応を引き起こす物質
  • HBs抗原
  • HBe抗原
  • (HBc抗原(検出が難しく、日常検査には取り入れられていません))
抗体:抗原を体内から除去するために、体内で作られる物質
  • HBs抗体
  • HBe抗体
  • HBc抗体(IgM-HBc抗体・IgG-HBc抗体の2型)
ゲノム:B型肝炎ウイルスのDNAに関する情報(遺伝情報
  • HBV-DNA
  • HBVジェノタイプ / サブジェノタイプ

以下では、それぞれのウイルスマーカーについて説明していきます。

HBs抗原

HBs抗原は、B型肝炎ウイルスの外殻を構成するたんぱく質の1つで、ウイルスが増殖する際に作られて血液中に分泌されます。

一般に、B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べるために検査されます。

HBs抗原が陽性の場合、B型肝炎ウイルスに感染していることを示しています。

また、HBs抗原が6ヶ月以上にわたって陽性である場合、B型肝炎ウイルスに持続感染していることを意味します。

CLIA法による検査の場合、HBs抗原が0.05IU/ml未満であれば陰性、0.05IU/ml以上であれば陽性※となります。

※検査方法により基準値は異なります。

 

HBe抗原

HBe抗原は、もともとB型肝炎ウイルスの内側にあるたんぱく質の1つで、ウイルスが増殖する際に過剰に作られ、血液中に分泌されます。

HBe抗原が陽性の場合、B型肝炎ウイルスに感染していること、また、B型肝炎ウイルスの増殖力が強いことを示しています。

また、HBe抗原が6ヶ月以上にわたって陽性である場合、B型肝炎ウイルスに持続感染していることを意味します。

CLIA法による検査の場合、HBe抗原が1.0 s/co未満であれば陰性、1.0 s/co以上であれば陽性※となります。

※検査方法により基準値は異なります。

 

HBc抗原

HBc抗原は、HBs抗原に覆われているため、通常は測定することができません。

そのため、日常検査には取り入れられていません。

 

HBs抗体

HBs抗体は、HBs抗原に対抗するために体内で作られる抗体で、B型肝炎ウイルスの感染を防御する働きがあります。

HBs抗体が陽性の場合、過去にB型肝炎ウイルスに感染したが現在はB型肝炎ウイルスに対する免疫ができていること、あるいはB型肝炎ワクチンの接種によって免疫ができていることを示します。

CLIA法による検査の場合、HBs抗体が10.0IU/ml未満であれば陰性、10.0IU/ml以上であれば陽性※となります。

※検査方法により基準値は異なります。

 

HBe抗体

HBe抗体は、HBe抗原に対して体内で作られる抗体です。

HBs抗体と異なり、B型肝炎ウイルスの感染を防御する働きはありません。

HBe抗体は、B型肝炎ウイルスの増殖力が強いことを示すHBe抗原が存在する場合には検出されず、HBe抗原の分泌が停止した場合にのみ陽性となります。

したがって、HBe抗体が陽性の場合、B型肝炎ウイルスの増殖力が低下しており、感染力が弱くなっていること(肝炎が鎮静化しやすい状態であること)を示します。

CLIA法による検査の場合、HBe抗体の「阻害率」が50%未満であれば陰性、50%以上であれば陽性※となります。

※検査方法により基準値は異なります。

 

HBc抗体(IgM-HBc抗体・IgG-HBc抗体)

HBc抗体は、HBcに対して体内で作られる抗体で、IgG、IgM、IgAの3種類の型があります。

一般的には、IgM型とIgG型の2つが検査項目とされます。

HBe抗体と同様に、HBc抗体にはB型肝炎ウイルスの感染を防御する働きはありませんが、B型肝炎ウイルスの増殖状況を反映するため、B型肝炎の診断において重要なマーカーとされています。

IgM-HBc抗体

IgM-HBc抗体は、B型肝炎ウイルス感染初期(3〜12ヶ月間)に、一時的に現れる抗体です。

IgM-HBc抗体が陽性かつ高値(10.0 s/co以上)の場合、急性肝炎劇症肝炎を発症している可能性を示します。

IgM-HBc抗体が陽性かつ低値の場合、慢性肝炎の急性憎悪(一過性の強い肝障害)が発生している可能性を示します。

CLIA法による検査の場合、IgM-HBc抗体が1.0 s/co未満であれば陰性、1.0 s/co以上であれば陽性※となります。

※検査方法により基準値は異なります。

IgG-HBc抗体

IgG-HBc抗体は、IgM-HBc抗体より少し遅れて現れる抗体で、ほぼ生涯にわたって血中に存在し、消失することはありません。

IgG-HBc抗体が陽性かつ高値(10.0 s/co以上)の場合、B型肝炎ウイルスに持続感染していることを示します。

IgG-HBc抗体が陽性かつ低値の場合、B型肝炎ウイルスに過去に感染していたことを示します。

CLIA法による検査の場合、IgM-HBc抗体が1.0 s/co未満であれば陰性、1.0 s/co以上であれば陽性※となります。

※検査方法により基準値は異なります。

なお、B型肝炎ウイルスのワクチンを接種してもIgG-HBc抗体は陽性となりません。

 

HBV-DNA

HBV-DNAは、B型肝炎ウイルスの遺伝子で、体内のB型肝炎ウイルス量を反映します。

HBV-DNAが陽性の場合、B型肝炎ウイルスに感染していることを示します。

また、HBV-DNAが6ヶ月以上にわたって検出される場合、B型肝炎ウイルスに持続感染していることを意味します。

さらに、血液中から検出されるHBV-DNAの量が多いほど、感染力が強く、肝炎の活動が活発であることを示しています。

HBV-DNAは、病態の把握や予後(重症化リスクなど)の予測、抗ウイルス薬の決定や治療効果の判定などに用いられます。

リアルタイムPCR法による検査の場合、わずかでもHBV-DNAが検出されれば陽性※となります(単位はLogIU/mL)。

※検査方法により基準値は異なります。

 

HBVジェノタイプ(遺伝子型) / サブジェノタイプ

B型肝炎ウイルスには、塩基配列の違いによって、A型からJ型まで10種類の遺伝子型(ジェノタイプ)があります。

さらに、それぞれの型についてサブタイプ(サブジェノタイプ)があり、たとえば「A型」には「Aa型(アフリカ型)」「Ae型(ヨーロッパ型)」などのサブジェノタイプがあります。

遺伝子型(ジェノタイプ・サブジェノタイプ)によってそれぞれ特性(薬の効き目など)があります。

遺伝子型の判定は、感染経路や予後の推定、治療方法の選択に役立てられています

 

 

B型肝炎の血液検査はどこで受けられる?

B型肝炎の感染有無を調べるための血液検査(HBs抗原の検査)

HBs抗原の検査は、地方自治体(都道府県、市町村等)の実施するウイルス検査、妊婦検診、手術前検査などのほか、任意の医療機関で受けることができます。

地方自治体の実施するHBs検査は、保健所や保険センター、地方自治体の指定する医療機関などで受けることができ、ほとんどの場合、対象者は無料で検査を受けることができます。

対象者は各自治体により異なる場合がありますので、詳細は各自治体にお問い合わせください。

職場が実施する健康診断や人間ドックにおいては、HBs抗原やHBs抗体が検査項目に含まれていることもありますが、含まれていない場合にはオプションで追加できる可能性があります。

HBs抗原以外のウイルスマーカー検査

検査項目によっては、職場の健康診断や人間ドックの際にオプションとして追加できる場合があります。

ただし、ゲノム(HBV- DNAやHBVジェノタイプ / サブジェノタイプ)などの専門的なウイルスマーカーについては、専門の医療機関に検査を依頼する必要があります。

 

血液検査の費用 無料で受けられる?

B型肝炎ウイルスへの感染の有無を調べる血液検査(HBs抗原検査)については、上で説明したとおり、地方自治体の実施するウイルス検査において無料で受けられる場合がほとんどです。

HBs抗原検査以外のウイルスマーカー検査については、基本的に自己負担が発生します。

もっとも、B型肝炎(疑いを含む)や他の病気の治療の一環として検査を受ける場合には、健康保険の適用により、自己負担額が軽減される可能性があります。

血液検査にかかる費用の相場は、次のとおりです。

検査項目 自己負担額(保険適用なし)
HBs抗原検査
    • 地方自治体の検査:無料
    • 健康診断のオプション:1000円〜4000円程度
    • 任意の医療機関:1000円〜4000円程度(初診料等別途)
HBs抗体検査・HBe抗原検査・HBe抗体検査・HBc抗体検査 各2000円〜5000円程度(初診料等別途)
HBV-DNA検査 3000円〜5000円程度
HBVジェノタイプ検査 5000円〜1万円程度
HBVサブジェノタイプ検査 1万5000円〜2万円程度

※一度の採血で複数の検査を行う場合には、割安となることがあります。
※B型肝炎訴訟を提起するための資料とするために、血液検査(HBs抗原、HBe抗原、HBc抗体、HBV-DNA、HBVジェノタイプ及びHBVサブジェノタイプの検査)を受けた場合、国との間で和解が成立したときは、国から一定額が支給されます。

 

 

B型肝炎ウイルスへの感染が疑われる場合

B型肝炎の血液検査(HBs抗原検査)の結果、感染が疑われる場合には、次のような対応が考えられます。

専門医の診断や治療を受け、医療費の助成を申請する

HBs抗原検査で陽性と判定された方は、一定の条件を満たす場合、検査費用(初回精密検査と定期検査に関する費用)や治療費(インターフェロン治療と核酸アナログ製剤治療)に関する医療費の助成を受けることができます。

※助成の内容や条件は都道府県によって異なる可能性がありますので、詳細は各都道府県の窓口にお問い合わせください。

 

B型肝炎給付金の請求を検討する

B型肝炎に感染した原因が、過去に国の施策として行われた集団予防接種やツベルクリン反応検査にある場合、B型肝炎給付金をもらえる可能性があります。

給付金の金額は、病状等に応じて50万円から3600万円です。

B型肝炎給付金の対象者は法律によって定められており、給付金をもらうためには、国を相手に訴訟を提起し、対象者として認められることが必要です。

B型肝炎給付金の請求には期限があることから、心当たりがある場合は、お早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

 

 

まとめ

  • B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる肝臓の病気で、日本では約110万人から140万人(およそ100人に1人)の人々がB型肝炎ウイルスに持続感染しているといわれています。
  • B型肝炎ウイルスの感染有無や感染の状態を調べるための血液検査を、「ウイルスマーカー検査」といいます。
  • ウイルスマーカーには、抗原(B型肝炎ウイルスを構成し、生体の免疫反応を引き起こす物質)、抗体(抗原を体内から除去するために、体内で作られる物質)、ゲノム:B型肝炎ウイルスのDNAに関する情報(遺伝情報)があります。
  • ウイルスマーカーのうち、「HBs抗原」が陽性の場合には、B型肝炎ウイルスに感染していることを意味します。
  • HBs抗原の検査は、地方自治体(都道府県、市町村等)の実施する検査、妊婦検診、手術前検査などのほか、任意の医療機関で受けることができます。
  • HBs抗原以外のウイルスマーカーについては、肝臓専門の医療機関でなければ検査することができない可能性がありますので、検査を希望する場合には事前に医療機関に問い合わせることをおすすめします。
  • HBs抗原検査の結果、B型肝炎ウイルスへの感染が疑われる場合には、専門医の診断や治療を受け、医療費の助成を申請しましょう。
  • B型肝炎の感染が過去の予防接種やツベルクリン反応に起因することが疑われる場合には、B型肝炎給付金の請求を検討しましょう。

 

 

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