アスベスト肺(石綿肺)とは?弁護士が問題点を解説

アスベスト肺とは、長期間アスベストを吸い続けることにより、肺胞の変質が起こり、肺が硬くなり、呼吸がうまくできなくなる病気です。

アスベスト肺にかかってしまった場合には、国からの各種給付金を受け取ることができる可能性があります。

以下では、アスベスト肺について解説いたします。

 

 

アスベスト肺とは?

アスベスト肺とは、長期間アスベストを吸い続けることにより、肺胞の変質が起こり、肺が硬くなり、呼吸がうまくできなくなる病気です。

肺胞とは、肺の中にある、吸い込んだ空気中の酸素と体の中にあった二酸化炭素を交換する器官です。

肺胞がうまく動くことによって体内の酸素を確保することができますが、アスベストが原因で肺胞が変質し、うまく体内の酸素を確保することができなくなってしまいます。

その結果が、アスベスト肺による息苦しさに繋がります。

一度アスベスト肺になってしまと、治療を行うことで症状が緩和されることはありますが、完治することはなかなかないようです。

アスベストとは?

アスベストは、天然繊維状鉱物で、極めて軽い繊維で、熱、摩擦、化学変化に強く変化しにくく、断熱性にも優れているという特性があります。

アスベストの歴史は古く、中国では、燃やせば汚れが取れる服として重宝されたとのことです。

日本においても、その存在は古くから知られ、竹取物語でかぐや姫が要求した幻の品の一つ「火鼠の皮衣」がアスベストではないかと言われています。

現代日本では、昭和中期から、アスベストは、断熱材として広く用いられてきました。

その後、アスベストの吸引が原因と考えられる肺の病気が多数発生するなどの健康被害が社会問題となり、昭和50年から徐々にアスベストの使用に関する規制がされるようになりました。

アスベストと石綿の違い

結論として、アスベストと石綿は同じものを指します。

石綿のことをオランダ語でいうとアスベストといいます。

アスベストの大元の語源は古代ギリシア語で消滅しないものを意味する「asbestos」です。

また、アスベスト肺のことを石綿肺と呼ぶこともあり、両方とも同じ病気を指します。

アスベストの肺への影響は?

アスベストを吸い込むと、肺に悪影響を及ぼす可能性があります。

先ほどご説明しましたとおり、アスベスト(石綿)の材質は軽く丈夫で、保温性に優れていることから、かつては、断熱目的などで建設の現場に使われていました。

アスベストは、その細さが0.04〜0.35マイクロメートルと非常に繊維が細かく、丈夫です(なお、人の髪の毛が50〜100マイクロメートルです)。

そのため、空中に舞い散ると空気中に浮遊しやすく、吸ってしまいやすい性質となっています。

また、アスベストは丈夫なので、肺の中でも化学変化せず、肺の中で長期間排出されずに、肺の中にとどまることもあります。

アスベストは、人体にとって異物であるため、アスベストが肺の中にとどまると、アスベスト肺などの病気を引き起こす可能性があります。

アスベスト肺の寿命は?

結論として、アスベスト肺だけが原因で寿命が縮まることはないようです。

職業上、アスベスト粉塵を10年以上吸入した労働者に起こるといわれており、潜伏期間は15~20年と言われています。

長期間アスベストの吸入すると、その後、アスベストの吸入を止めたとしても、症状が発生は回避できないようです。

もっとも、アスベスト肺は、アスベストが原因で発症する原発性肺がんなどと異なり、余命が著しく縮まるということはないようです。

そのため、アスベストが原因でおこる、肺がんなどの他の病気を早期に発見できるように定期的に検査を行うことが寿命を伸ばすために大事です。

アスベスト肺の治療方法は?

アスベスト肺の治療方法は、主に症状の緩和を目的とすることが多いようです。

体内に不足している酸素を補うために酸素吸引したり、せき止め、痰切りの薬が処方され、少しでも呼吸を楽にする治療が行われるようです。

アスベスト肺の初期症状は?

アスベスト肺の初期症状は、運動時に息切れしやすくなることや、せき、痰が出てくることです。

症状が進行すると、運動をしていない時にも息苦しくなり、日常生活へ支障をきたすこともあります。

 

 

アスベストによる他の病気の可能性


アスベストを吸い込むことによって、原発性肺がん(げんぱつせいはいがん)、中皮腫(あくせいちゅうひしゅ)、びまん性胸膜肥厚(びまんせいきょうまくひこう)、良性石綿胸水(りょうせいいしわたきゅうすい)といった病気にかかる可能性もあります。

原発性肺がん(げんぱつせいはいがん)

原発性肺がんとは肺がんのうち、肺および気管支の細胞から発生するがんのことを指します。

潜伏期間は非常に長く、30年〜40年と言われています。

原発性肺がんは、アスベスト以外でも喫煙などが原因にもなります。

原発性肺がんは発見が遅れると、寿命が著しく縮まります。

胸部のX線検査やCT検査を定期的に行い早期に発見して治療を行うべきでしょう。

中皮腫(あくせいちゅうひしゅ)

中皮腫とは、中皮の細胞が発生する悪性の腫瘍のことを言います。

中皮は、内臓を覆っている膜の外側の部分です。

症状としては、胸の痛み、せき、大量の胸水による呼吸困難や胸部の圧迫感です。

潜伏期間は非常に長く、30年〜40年と言われています。

中皮腫は、かなり重い病気で、診断されてから、7か月〜17か月程度の余命になりますが、早期の発見ができれば、より長く生存できるようです。

胸部のX線検査やCT検査を定期的に行い早期に発見して治療を行うべきでしょう。

びまん性胸膜肥厚(びまんせいきょうまくひこう)

びまん性胸膜肥厚は、臓側胸膜(肺を覆う膜)の慢性線維性胸膜炎の状態であり、通常は壁側胸膜(胸壁を覆う膜)にも病変が及んで両者が癒着していることがほとんどです。

症状は、呼吸困難、反復性の胸痛、反復性の呼吸器感染です。

潜伏期間は非常に長く、30年〜40年と言われています。

胸部の画像検査や呼吸量の検査を定期的に行い早期に発見して治療を行うべきでしょう。

良性石綿胸水(りょうせいいしわたきょうすい)

胸水とは胸腔内に体液が貯留することです。

アスベスト粉じんを吸入することによって、胸腔内に胸膜炎による滲出液(胸水)が生じる場合を良性石綿胸水(りょうせいいしわたきょうすい)と呼びます。

症状としては、呼吸困難や胸痛となります。

潜伏期間は、15年以内のこともあれば、40年を超える場合もあるようです。

アスベスト肺以外の病気について詳しくはこちらをご覧ください。

 

アスベスト肺と肺がんとの関係

肺がんが発生した場合、アスベスト肺の症状もあるときには、アスベストによる疾病と認定されます。

また、アスベスト肺となるほど、アスベストに被曝しているのであれば、肺がんのリスクも非常に高いので、両者は併発する可能性は低くはないと思われます。

 

 

アスベスト肺になったらどうすればいい?


アスベスト肺と診断されたら、まずは、アスベスト肺の治療を取り扱っている病院で治療を受けるべきです。

また、治療と同時並行で、アスベストに詳しい弁護士に相談して各種給付金の請求の準備を進めましょう。

アスベスト肺になった場合には、労災保険の給付、政府のアスベストによる健康被害救済給付、建設アスベスト給付金を受けることができる可能性があります。

それぞれの給付を受けるには、認定を受けて、仕事上でアスベストを長期間吸っていたことが原因でアスベスト肺になったことの認定を受ける必要があります。

これから、それぞれの給付ごとに認定の流れ、認定の要件、給付の内容の概要をご説明します。

労災保険給付

アスベストは、かつては断熱材などとして広く使われていました。

労働者としてかつてアスベストを吸い込んで、アスベスト肺などの病気になった場合には、労災保険給付を受けられる可能性があります。

給付を受けるまでの流れ

労災保険給付を受けるには、労働基準監督署に申請を行って、労災と認定される必要があります。

労働基準監督署長により、調査が行われ、労災認定をするかどうか決定します。

認定要件

アスベストを吸い込む危険性の高い仕事をしているか、かつてしていた人について、アスベスト肺によって、下記の表に記載のあるように著しい呼吸困難となっている場合に、労災給付の対象となります。

給付内容

労災保険の給付の内容は以下の表のとおりです。

項目 支給内容
療養補償給付 治療費の支給
休業補償給付 休業4日目から休業1日につき給付基礎日額の60%分を支給
傷病補償年金 休業補償給付を受けていた人が1年6か月経過後に傷病等級に該当したときに支給される年金
障害補償給付 身体に障害が残った場合に支払われる一時金
介護補償給付 介護費用の支給
(遺族補償給付・葬祭料) (遺族に年金又は一時金及び葬祭料の支給)

 

アスベスト(石綿)健康被害救済給付

先ほど、労災保険給付について解説してきましたが、労災保険給付の対象者は、アスベストを吸い込む危険性の高い仕事に従事をしているか、かつてしていた人に限定されています。

反対に、そのような仕事に従事をしていない人は労災保険給付の対象外になります。

また、労災保険の申請には時効があり、対象者であった人も時効の経過で労災保険給付を受けられないこともあります。

このような労災保険給付の対象外の人に対する補償がアスベスト(石綿)健康被害救済制度です。

(石綿)健康被害救済制度について詳しくは、こちらをご覧ください。

 

建設アスベスト給付金制度

アスベストにさらされる建設業に従事した人がアスベストを吸い込んだことが原因でアスベスト肺になった場合には、建設アスベスト給付金を受けられる可能性があります。

給付を受けるまでの流れ

  1. ① 厚生労働省に対して、給付金の請求をします。
  2. ②③ 厚生労働省は、認定審査会に、給付金の対象者かどうかの審査を依頼します。
  3. ④⑤ 認定審査会が審査し、厚生労働省へ審査結果を回答します。
  4. ⑥⑦ 厚生労働省が認定し、申請をした方と労働者健康安全機構へ審査結果を通知します。
  5. ⑧ 労働者健康安全機構から給付を受けることができます。

認定要件

アスベストを吸い込む危険性の高い仕事をしているか、かつてしていた人について、アスベスト肺によって、下記の表に記載のあるように著しい呼吸困難となっている場合に、労災給付の対象となります。

これからご説明します要件①、②、③の全てを満たす場合に労災認定されます

  • 要件① 以下の表の期間ごとに表に記載の建設業務を行っていたこと
    ■昭和47年10月1日〜昭和50年9月30日:アスベストの吹き付けに関する作業に係る業務
    ■昭和50年10月1日〜平成16年9月30日:一定の屋内作業場で行われた作業に係る業務
  • 要件② じん肺管理区分での管理2以上の症状であること。
  • 要件③ 労働者や一人親方、中小事業主であること。

アスベスト(石綿)工場型の給付

アスベスト工場で勤務をしていた人がアスベストを吸い込んだことが原因でアスベスト肺になった場合には、アスベスト(石綿)工場型の給付金を受けられる可能性があります。

給付を受けるまでの流れ

  1. ① 工場で勤務をしていた人やその遺族が国に対して訴訟を提起する
  2. ② 国が一定の要件を満たすことが確認する
  3. ③ 国は、訴訟の中で和解手続を進め、損害賠償金が支払われる

認定要件

  • 要件① 昭和 33 年 5 月 26 日から昭和 46 年 4 月 28 日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと
  • 要件② 石綿粉じんにばく露する作業に従事した結果、石綿によるアスベスト肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚など健康被害を被ったこと
  • 要件③ 訴訟を提起した時期が損害賠償請求権の期間内であること

 

 

まとめ

これまで、アスベスト肺について解説いたしました。

アスベスト肺は、発見されると余命が短いというまでのものではありませんが、呼吸への大きな影響、ひいては日常生活への影響があり、決して軽い病気ではありません。

アスベスト肺に加えて、原発性肺がんなども発症すると、著しく寿命が縮まりますので、胸部のX線などの検査は定期的に行うべきでしょう。

また、アスベスト肺は、給付金の対象となる可能性がありますので、アスベスト肺と診断された場合には、治療と合わせてアスベストに詳しい弁護士に相談するべきでしょう。

デイライトでは、人身障害チームを設け、アスベストを含む労災事故を取り扱っております。

アスベスト被害に関するご相談は、初回無料でご相談いただけます。

当事務所は、ZOOMやスカイプを活用して、全国に対応を行っておりますので、まずは一度ぜひご相談ください。

 

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