アスベスト調査が義務化!対象・調査の流れや罰則を解説

2021年から2023年にかけて行われた「大気汚染防止法」と「石綿障害予防規則」の改正により、アスベストの事前調査と結果報告が義務化されました。

また、事前調査については「建築物石綿含有建材調査者」の資格を取得している者のみ行うことができます。

アスベスト調査の義務に反した場合、大気汚染防止法に基づいて、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります

この記事では、アスベスト調査義務化の対象建築物や調査の流れなどについて詳しく解説を行います。

アスベストの調査が法律により義務化!

アスベストの調査が法律により義務化

アスベストの有資格者(建築物石綿含有建材調査者)による事前調査と結果報告は義務化されているのでご注意ください。

事前調査とは、建物の解体・改修の工事をする前に、その建物の建材にアスベストが含まれているかどうか調査することです。

その調査結果をまとめた結果報告書を都道府県と労働基準監督署の両方に提出しなければなりません。

事前調査と結果報告を怠ると罰則もありますので、ご注意ください。

 

アスベスト調査の義務化はいつから?

アスベスト調査の義務化は、2021年から2023年にかけて行われました。

アスベスト規制に関する法令には「大気汚染防止法」と「石綿障害予防規則」があります。

これらの法令が改正され、以下を内容とする新規規定が作られました。

2021年4月1日〜 事前調査の義務化
2022年4月1日〜 結果報告の義務化
2023年10月1日〜 有資格者による事前調査の義務化

2021年4月1日以降には、アスベストの「事前調査」が義務化されました。

事前調査には、「書類調査」「目視調査」「分析」「石綿みなし判定」があります。

2022年4月1日以降には、アスベスト調査の「結果報告」が義務化されました。

この報告は工事開始の14日前までに行わなければならず、調査資料等は3年間保存しておく必要があります。

そして、2023年10月1日以降には、「有資格者による事前調査」が義務化されています。

これらの義務に従わなかった場合は、罰則を科されるおそれがあります。

 

建築物石綿含有建材調査者とは?

建築物石綿含有建材調査者とは、建材や建築物に含まれるアスベスト(石綿)について調査するための資格のことです。

建築物石綿含有建材調査者は、建築物石綿含有建材調査者講習を受講して、修了考査に合格することで資格を得ることができます。

日本アスベスト調査診断協会に登録している者も有資格者と「同等以上の能力を有する者」として調査をすることが認められています。

 

 

アスベスト調査の義務化の対象となる工事

アスベスト調査は、原則として全ての建築物等について義務化されています。

ただし、報告義務が課されている建築物等は限定されており、詳しくは石綿障害予防規則4条の2に規定があります。

結果報告の義務が課されている工事は、以下の通りです。

建築物の解体工事 床面積の合計が80㎡以上の建造物
建築物の改修工事 工事の請負代金の額が100万円以上のもの
工作物の解体・改修工事 アスベストが使用されているおそれが高いものとして環境大臣が定めるもので、工事の請負代金の額が100万円以上のもの
船舶の解体・改修工事 総トン数20トン以上の船舶(鋼製のものに限る)

引用:石綿障害予防規則|e−GOV法令検索

 

アスベスト事前調査の対象外となる工事

アスベスト事前調査の対象外となる工事はアスベストの飛散のおそれが少ないと考えられる工事です。

具体的には、「工事対象の建材が木材、金属、石、ガラスなど、アスベストを明らかに含まない素材のみの場合」や「畳や電球など、アスベストを含むことがない製品の取り外しの場合」など、隣接する建材に損傷を与える可能性がない場合が挙げられます。

また、釘による固定や釘を抜くなど、アスベストが飛散する可能性がほとんどない作業についても、事前調査は不要となります。

ただし、これらの作業であっても、周辺の建材にアスベストが含まれている可能性がある場合や、作業によって周辺建材に影響を与える可能性がある場合は、調査が必要となる場合があります。

また、アスベストの使用が禁止された2006年9月1日以降に着工・建設された建築物についても、アスベスト事前調査は不要です。

 

 

アスベスト調査を実施しないとどうなる?

アスベスト調査を実施しなかった場合、大気汚染防止法に基づいて、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります(大気汚染防止法35条の4)。

また、アスベスト除去などの措置義務に違反した場合は、3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

参考:大気汚染防止法|e−GOV法令検索

 

 

アスベストの事前調査から結果報告までの流れ

アスベスト調査の流れ

アスベスト調査では、大きく分けると「事前調査」と「結果報告」という2つの作業を行う必要があります。

事前調査は、原則として全ての建築物等に対して行わなければなりません。

事前調査は、書面調査→目視調査→(分析または石綿みなし判定)という流れで行います。

書面調査と目視調査は、セットで必ず実施する調査です。

書面および目視調査でアスベスト含有の有無が判明しなかった場合、分析または石綿みなし判定を行うこととなります。

事前調査が完了したら、結果報告書を作成し、都道府県および労働基準監督署へ結果を報告します。

 

アスベスト事前調査とは

アスベストの事前調査とは、建物の解体・改修などの工事をする前に、建築物等に使用されている建材にアスベストが含まれているかどうかを調査することをいいます。

調査は、原則として全ての建築物等について行う必要があります。

ただし、工事対象の建材が木材、金属、石、ガラスなど、アスベストを明らかに含まない素材のみの場合など、アスベスト飛散の可能性がない場合には、一部調査が免除されることがあります。

事前調査を行う際は、書類調査と目視調査の2つを必ず行わなければなりません。

書類調査では、以下のような書類を確認し、文書内のアスベストに関する記載や建築年次などから、アスベストが含有されているかどうかを確認します。

書類調査を行うにあたっては、以下のような書類を確認することとなります。

  • 設計図(確認申請書、確認済証)
  • 竣工図
  • 改修図
  • 対策工事記録
  • 過去の維持管理のための調査記録、改造補修時の記録
  • 過去の石綿含有に関する調査記録

また、目視調査では、建築物の外観から内装や下地等の内側まで、一通り確認することとなります。

書類調査と目視調査でアスベスト含有の有無が判明しなかった場合には、分析または石綿みなし判定のいずれかを行います。

分析は、建築物の建材ごとにサンプルを採取し、分析会社にてアスベストが含有されているかを調べるものです。

石綿みなし判定は、アスベスト含有の有無を問わず、アスベストが含有されているとみなして、法令に基づく石綿飛散防止措置等を講じた上で工事を行うものです。

 

結果報告とは

事前調査が完了したら、「結果報告書」を作成します。

結果報告書には、以下のような事項を記載します。

  • 工事の概要
  • アスベスト含有建材の有無
  • 調査方法
  • 調査結果
  • 分析結果(分析を行った場合)など

参考:事前調査結果報告書(様式)

結果報告は、都道府県と労働基準監督署の両方に元請業者が提出しなければなりません。

結果報告をするにあたっては、厚生労働省および環境省が提供する「石綿事前調査結果報告システム」から行います。

このシステムを利用することで、都道府県と労働基準監督署の両方に1度の操作で報告をすることができます。

システムの利用が難しい方の場合は、紙で提出することもできます。

参考:石綿事前調査結果の報告について|環境省

 

 

アスベスト調査の義務化についてのQ&A

アスベスト調査の義務化に関するご質問にお答えしていきます。

アスベストの調査資格は義務化されますか?

2023年10月1日より、アスベストの事前調査は、「石綿含有建材調査者」の資格を持つ有資格者が実施することが義務付けられました。

一部、事前調査を必要としない例外的な場合を除き、有資格者による事前調査が必要です。

2023年10月1日以降は、無資格者による事前調査は法令違反となります。

アスベストの事前調査を行っていないとして、罰則の対象にもなりますので、注意しましょう。

 

アスベスト事前調査はいつまでに報告する必要がありますか?

アスベスト事前調査の結果については、工事を開始する14日前までに報告する必要があります。

調査の報告は、「石綿事前調査結果報告システム」から24時間いつでも行うことができますので、先延ばしにせず、調査の結果がまとまり次第、忘れないうちに報告することをおすすめします。

また、書類調査や目視調査でアスベスト含有の有無が判明しない場合は、専門業者に分析を頼む必要があるため、その期間も考慮して早めに調査に着手しましょう。

 

 

まとめ

アスベストは、耐久性や耐熱性の高さから、かつては建材や断熱材として広く使用されていましたが、アスベストが体内に入ると肺がんや悪性中皮腫といった重篤な病気が引き起こされることがのちに判明し、2006年以降は建材として使用されることはなくなりました。

しかし、当時建築された建築物等に使用されたアスベストは除去されることなく、今でも現存しています。

2020年代以降は、アスベストを使用した建築物等が耐用年数を迎えることもあり、取壊し工事などを行う際の健康被害を防ぐ必要があります。

このような経緯から、国は2021年から2023年にかけてアスベストに関する法令を改正し、事前調査や調査の結果報告を義務付けることとしました。

これらの義務に反した場合、30万円以下の罰金などが科されるおそれがあります。

アスベストに関しては、これからも法令改正が行われる可能性もありますので、今後の国の動きに注視しておく必要があります。

弁護士への相談や依頼を考えている場合は、アスベスト問題に詳しい弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

アスベスト問題を法的に解決しようとする場合、アスベストに関する法令等を正確に理解する必要があります。

アスベスト問題に詳しい弁護士であれば、最新の裁判所の判断なども踏まえて、適切なアドバイスを行うことができます。

弁護士法人デイライト法律事務所では、アスベスト問題に注力している弁護士が在籍しております。

アスベストの法的問題について、弁護士に相談したいと考えている方は、ぜひ1度お問い合わせください。

 

 

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