
労災に関する弁護士費用は、事務所によって報酬体系が大きく異なります。
着手金を設けている法律事務所では11万円〜33万円程度が目安とされる一方、最近では着手金無料・完全成功報酬制を採用している法律事務所も増えています。
報酬金は、回収できた給付金や賠償金の11%〜22%程度を基準として設定されることが一般的です。
ただしこれらはあくまで一例で、実際の費用は依頼内容や弁護士の報酬体系によって大きく異なります。
この記事では、労災事件における弁護士費用の内訳や、実際のシミュレーション事例、費用を抑える方法や弁護士費用特約の活用方法まで、わかりやすく丁寧に解説します。
「弁護士はお金がかかりそうで相談しづらい…」「労災の弁護士費用がどのタイミングで発生するのか知りたい」と感じている方は、ぜひ最後までお読みください。
※なお、以下で説明する弁護士費用は、あくまで目安であり、全ての法律事務所に当てはまるものではありません。
目次
労災の弁護士費用とは?
労災に関する問題で弁護士に依頼する場合、発生する費用は次の5つに分けられます。
- ① 相談料
- ② 着手金
- ③ 報酬金
- ④ 日当
- ⑤ 実費
相談料
相談料とは、労災に関するお悩みについて弁護士に相談する際にかかる費用のことです。
多くの場合、正式な依頼を行う前に法律相談の時間が設けられます。
法律相談では、以下のような内容について、弁護士が法的な見通しや対応方針をお伝えします。
- 労災認定を受けられる可能性
- 会社への損害賠償請求が可能かどうか
- 手続きの進め方や注意点
こうした法律相談にかかる費用が「相談料」です。
着手金
着手金とは、弁護士に正式な依頼を行う際に支払う初期費用のことです。
事件の対応を開始するために必要な費用であり、事件の結果に関係なく支払う必要があります。
そのため、たとえ希望する成果が得られなかったとしても、原則として返金されることはありません。
報酬金
報酬金とは、弁護士の対応によって一定の成果が得られた場合に支払う費用です。
いわゆる「成功報酬」にあたり、得られた金銭的利益に応じて金額が決まるのが一般的です。
例えば、次のような場合に報酬金が発生します。
- 労災として正式に認定されたとき
- 後遺障害等級が認定されたとき
- 会社から損害賠償金を受け取れたとき
報酬金は、一般的に案件が終了した段階で支払います。
日当
日当とは、弁護士が裁判所などへ出向く必要がある場合に発生する費用のことです。
例えば、裁判の期日に出廷したり、現地調査や立会いを行ったりする場面で日当が必要となることがあります。
日当の金額や支払い方法(都度精算か一括精算か)は、法律事務所によって異なります。
実費
実費とは、労災に関する事件対応において発生する費用のことです。
弁護士報酬とは別に請求されるもので、具体的には以下のような費用が挙げられます。
- 書類の郵送費
- コピー代
- 診断書や医療記録の取得にかかる費用
- 裁判を起こす際にかかる費用
- 出張に伴う交通費など
これらの費用は、都度精算する場合もあれば、まとめて精算する場合もあります。
労災の弁護士費用の相場とは?
労災の弁護士費用は、依頼内容によって異なります。
そこで、次のようなケース別に弁護士費用の相場について、解説をしていきます。
- 会社に対して損害賠償請求する場合
- 労災保険から回収した場合
- 会社に対して損害賠償請求する場合
会社に対して損害賠償請求をする場合、弁護士費用総額の相場は「0円〜33万円 + 経済的利益の11%〜22%程度」です。
会社に対して損害賠償請求する場合の着手金
会社に対して損害賠償請求する場合の着手金の相場は、0円〜33万円程度です。
示談交渉や裁判といった依頼の内容ごとに着手金を一律で定めている事務所もあれば、事件の難易度などによって個別に着手金を決定する事務所もあります。
なお、労災に関する依頼の場合は従業員の方の金銭的な負担を考慮し、「完全成功報酬制」を採用する事務所が多くあります。
そのような事務所の場合には、着手金0円で事件処理を依頼することができます。
会社に対して損害賠償請求する場合の報酬金
会社に対して損害賠償請求する場合の報酬金の相場は、経済的利益の11%〜22%程度です。
報酬金は、得られた成果に応じて発生するお金のため、獲得できた金額によって大きく異なります。
例えば、「損害賠償として300万円の回収に成功した場合は、その11%〜22% = 約33万〜66万円が報酬金」となるイメージです。
なお、事務所によっては報酬金の最低額を定めているところもあります。
例えば、「報酬金は経済的利益の11%、ただし最低報酬額は22万円」といった形式です。
この場合、得られた成果が小さかった場合でも、最低額については支払う必要があります。
その他費用
着手金と報酬金の他に、交通費、郵送費、印紙代などの実費がかかります。
示談交渉で損害賠償請求をする場合には、主に手紙、電話、メールなどで交渉するケースが多いため日当はほとんどかかりません。
一方、裁判で損害賠償請求をする場合には、裁判所に出廷する日当がかかるケースもあります。
ですが、現在はオンラインで裁判に出席することも増えているため、詳しくは依頼を考えている弁護士に確認してください。
労災保険から回収した場合
労災保険から回収した場合、弁護士費用総額の相場は「0円〜33万円 + 経済的利益の6.6%〜22%程度」です。
労災保険から回収した場合の着手金
労災保険から回収した場合の着手金の相場は、0円〜33万円程度です。
先ほどご説明したとおり、労災に遭ってしまった方の負担を軽減するため、労災事件では完全成功報酬制を採用している事務所が少なくありません。
そういった事務所では、着手金の負担なく依頼をすることができます。
労災保険から回収した場合の報酬金
労災保険から回収した場合の報酬金の相場は、経済的利益の6.6%〜22%程度です。
しかし、労災保険からの給付金を回収する場合の報酬金は、給付金の種類や後遺障害の等級によって異なります。
詳しくは、以下の表をご覧ください。
障害(補償)給付 | 障害等級1〜7級 | 年金3〜5年分の6.6%〜11%程度 一時金の6.6%〜8.8%程度 |
障害等級8〜14級 | 経済的利益の11%〜16.5%程度 | |
遺族(補償)給付 | 年金3〜5年分の6.6%〜11%程度 一時金の6.6%〜11%程度 |
|
その他の労災保険給付 | 経済的利益の11%〜22%程度 |
その他費用
着手金と報酬金の他に、医療記録の取得費用や通信費などで1万円〜2万円程度の実費がかかるケースが一般的です。
また、労災保険の申請手続きだけであれば、日当はかからない事務所がほとんどです。
労災の弁護士費用のシミュレーション
労災事件を弁護士に依頼する場合、実際にどの程度の費用がかかるのかは、状況や請求内容によって大きく異なります。
ここでは、労災に関する代表的なケースをもとに、弁護士費用のシミュレーションを3つご紹介します。
ただし、実際にかかる費用は事務所ごとの報酬規定や料金体系によって異なるため、あくまで一例として参考にしてください。
会社に対して示談交渉で損害賠償請求を行い、300万円回収できたケース
前提としている費用体系
着手金:0円
報酬金:22万円 + 回収額の11%
依頼者:従業員 相手方:会社
依頼内容:代理交渉
得られた結果:300万円
→弁護士費用
着手金:0円
報酬金:55万円(税込)
労災保険の後遺障害申請サポートを受け、8級が認定されたケース
前提としている費用体系
着手金:0円
報酬金:受領額の16.5%
依頼者:従業員 申請先:労働基準監督署
依頼内容:申請サポート
得られた結果:障害等級8級の認定
- 障害補償一時金503万円
- 障害特別支給金65万円
- 障害特別一時金150万9000円
※給付基礎日額および算定基礎日額を3000円と仮定
→弁護士費用
着手金:0円
報酬金:118万6185円(税込)
労災保険の申請サポートを受け、遺族補償年金の支給が認められたケース
着手金:0円
報酬金:年金3年分の11% + 特別支給金の11%依頼者:従業員 申請先:労働基準監督署依頼内容:申請サポート得られた結果:遺族補償年金の支給
- 遺族補償年金153万円
- 遺族特別支給金300万円
- 遺族特別年金153万円
※給付基礎日額および算定基礎日額を1万円と仮定
→弁護士費用
着手金:0円
報酬金:133万9800円(税込)
【報酬金内訳】
年金:306万円 × 3年 × 11%
特別支給金:300万円 × 11%
労災と弁護士費用特約
労災事故に遭ったとき、弁護士に依頼したいけれど費用面が不安という方も多いのではないでしょうか。
そんなときに活用できるのが「弁護士費用特約」です。
これは保険契約などに付帯するオプションで、弁護士費用を補償してもらえる制度です。
ここでは特約の基本と、労災に使えるケースについて解説します。
弁護士費用特約とは?
弁護士費用特約は、事故やトラブルが起きた際の弁護士費用を保険会社などが補償してくれる制度です。
自動車保険や火災保険、クレジットカードなどのオプションとして加入しているケースが多くみられます。
弁護士費用特約といえば、車の事故の際にしか使えないと思われがちですが、日常生活のトラブルにも対応できる「日常生活賠償型」の特約もあります。
弁護士費用特約に加入している場合は、費用を抑えて専門的なアドバイスや対応を受けることができるため、早期解決につながる可能性があります。
労災で弁護士費用特約を使えるケース
労災に関するトラブルでも、加入している保険によっては弁護士費用特約が使える場合があります。
例えば、「日常生活賠償型」の特約では、会社への損害賠償請求など労災に関わる問題にも適用されることがあります。
また、自分の保険だけでなく、家族の保険に特約が付いていれば、それを使えるケースもあります。
意外と見落としがちですが、ご家族の保険も一緒に確認してみることをおすすめします。
なお、弁護士費用特約を利用したい場合は、あらかじめ保険会社に連絡して、適用できるかどうかを確認しておくと安心です。
労災の弁護士費用が払えない場合
労災でお困りの方の中には、「弁護士費用が高額で払えなかったらどうしよう」といった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
最近では、費用面の負担をできるだけ抑えられる制度を採用する弁護士も増えてきています。
費用面に不安がある方は、そういった弁護士に依頼をすることをおすすめします。
初回相談料無料サービスを利用する
労災に遭った方の中には、怪我や療養により収入が減ってしまっている方も少なくありません。
そうした状況に配慮して、初回相談料を無料としている弁護士もいます。
まずは、費用の心配をせずに相談できる弁護士を選び、「自分のケースは労災にあたるのか」「どのような手続きをすればよいのか」といった疑問や不安を整理することが大切です。
着手金無料・成功報酬制を利用する
初期費用に不安があるという方の場合は、「着手金無料・成功報酬制」を採用している弁護士に依頼をすることをおすすめします。
この制度では、依頼時に費用を支払う必要はなく、給付金や賠償金を実際に受け取れた場合に、その金額の一部を報酬として支払います。
基本的には、結果が出なければ費用がかからないため、経済的な負担を抑えながら弁護士にサポートを依頼できるのが大きなメリットです。
特に、治療や休業によって収入が減っている方にとっては、安心して法的手続きを進められる選択肢の一つとなります。
労災に強い弁護士を探すには
労災の問題は専門性が高く、対応を誤ると適切な補償を受けられないリスクもあります。
だからこそ、労災分野の実績がある弁護士に依頼することがとても大切です。
特に重要なポイントは、労災案件の対応経験があるかどうかです。
法律事務所のホームページなどで過去の事例や取り扱い分野をチェックしてみましょう。
また、実際に問い合わせてみて、話しやすさや説明の丁寧さを確認することもおすすめです。
労災と弁護士費用のよくあるQ&A
労災と弁護士費用について、よくあるご質問にお答えします。
労災申請の弁護士費用はいくらですか?

なお、労災保険の申請手続きでは、成功報酬型を採用している弁護士もいます。
この場合、着手金はかかりませんので、費用についての心配をせず依頼をすることができます。
労働訴訟の弁護士費用はいくらですか?

ただし、請求金額や裁判の複雑さによって費用が高額になるケースもあります。
そのため、依頼前には見積もりを取り、報酬の計算方法や支払いの時期についてしっかり確認しておくことが大切です。
まとめ
労災に関する弁護士費用は、事務所ごとに報酬体系が異なり、相談料・着手金・報酬金といった項目ごとに発生する金額もさまざまです。
中には、初回の相談料や着手金については費用がかからない完全成功報酬制を採用している法律事務所もあります。
費用が不安な方は、そういった事務所に依頼をしたり、弁護士費用特約を活用することで、経済的な負担を軽減することができます。
労災の補償を確実に受け取るためには、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
費用面で悩まれている場合には、まずは情報を整理し、ご自身に合った相談先を見つけてみてください。
弁護士法人デイライト法律事務所では、労災問題を多く取り扱う人身障害部の弁護士が相談から受任後の事件処理を行っています。
また、労災問題に関するご相談については、初回相談料・着手金ともに無料で承っております。
オンライン相談(LINE、ZOOM、Meetなど)により、全国対応も可能ですので、お困りの方はぜひお気軽にご相談下さい。