弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

仕事でパソコンや工具、ハサミなどを繰り返し使う方の場合、「腱鞘炎(けんしょうえん)」を発症することがあり、仕事が原因であると認められると労災に認定されます。
腱鞘炎とは、筋肉と骨をつなぐ「腱」とそれを包む「腱鞘」がこすれ合うことで痛みが発生する病気です。
そして、業務が原因で腱鞘炎を発症した場合には、厚生労働省の定める認定基準を満たせば労災(労働災害)として認められ、治療費や休業補償などの給付を受けられる可能性があります。
しかし、腱鞘炎は慢性的な負担の蓄積によって生じるものであるため、「業務が直接の原因か」が厳しく問われ、会社から「腱鞘炎で労災は下りない」と拒否されてしまうケースも少なくありません。
腱鞘炎で適切な補償を受けるためには、過重業務の客観的な証拠を集め、正しい手順で申請を行うことが重要です。
この記事では、腱鞘炎が労災と認められる認定基準やもらえる給付金の計算方法、会社から拒否された場合の対処法などについて、弁護士がわかりやすく解説していきます。
腱鞘炎(けんしょうえん)で労災は認められる?認定確率と実態
仕事が原因の腱鞘炎は労災(労働災害)になる
業務における手指や手首の酷使が原因で発症した腱鞘炎は、労災(労働災害)として認められます。
「腱鞘炎は事故やケガとは言えないから労災適用は無理だろう」と諦めてしまう方が少なくありません。
しかし、厚生労働省が定める職業性疾病の一覧(いわゆる職業病リスト)においても、身体に過度の負担がかかる作業の継続による運動器疾患として、上肢障害や腱鞘炎が対象として明記されています。
労災制度における労働災害は、業務起因性のある外傷などだけでなく、日々の業務負担の蓄積によって生じた病気(職業病)も幅広くカバーしています。
したがって、日頃の仕事内容や作業環境と腱鞘炎の発症に相当な因果関係が認められれば、治療費(療養補償給付)や、休業中の生活費をサポートする給付(休業補償給付)を受ける権利が発生します。
まずは仕事が原因の疾病として労災申請が可能であることを正しく理解することが第一歩となります。
そもそも腱鞘炎とは?

そもそも「腱鞘炎(けんしょうえん)」とは、骨と筋肉をつなぐ「腱」と、それを包むトンネル状の「腱鞘」がこすれ合い、痛みや腫れを引き起こす炎症のことです。
人の体には、筋肉が発揮した力を骨に伝えて関節を動かす「腱(けん)」というバンド状の組織が存在します。
この腱が浮き上がったりずれたりしないよう、固定してスムーズな動きをサポートしているトンネル状の組織が「腱鞘(けんしょう)」です。
腱鞘炎を発症すると、以下のような症状が表れます。
- 手首や指の付け根付近の強い痛み・腫れ
- 関節を曲げ伸ばしする際の引っかかり感(バネ指現象)
- スムーズに手指を動かせなくなる可動域制限
- ペンを持つ、キーボードを叩く、荷物を持つといった基本動作における激痛
また、労災保険の運用上、腱鞘炎は単なる局所の痛みにとどまらず、「上肢障害(じょうししょうがい)」という大きな疾患分類の一種として取り扱われます。
厚生労働省のガイドラインにおいて、上肢障害とは「外傷、病気、あるいは過度な負担のかかる業務遂行によって、後頭部・頸部・肩甲帯・上腕・前腕・手・指などの部位に発生した運動器の障害」と定義されています。
この上肢障害の代表例には、腱鞘炎のほかにも「手根管症候群」、「上腕骨内外上顆炎」、「頸肩腕症候群」などが含まれます。
業務遂行によってこれらの部位に過度な負担が加わり、療養が必要な状態に至ったと判断された場合、労災保険の保護対象となるのです。
腱鞘炎が労災になる確率はどのくらい?
腱鞘炎の明確な労災認定率は公表されていませんが、実務上、腱鞘炎の労災認定のハードルは決して低くありません。
むしろ、一般的な機械への巻き込まれ事故や転倒による骨折などの突発的な労働災害と比較すると、認定を受ける難易度は高いと言わざるを得ません。
では、なぜ腱鞘炎をはじめとする上肢障害の労災認定は難しいとされているのでしょうか。
まず、慢性疾患のため、業務起因性の立証が難しいという点が挙げられます。
ケガのように事故が発生した日時・場所が明確なケースとは異なり、腱鞘炎は長期間にわたる継続的な負荷の蓄積によって徐々に悪化する「慢性障害」です。
そのため、「いつ、どの業務の瞬間によって発症したのか」を客観的に確定しにくく、仕事と症状との結びつき(業務起因性)を証明することは容易ではありません。
次に、私生活や加齢・体質などの「業務外要因」と区別しにくい点が挙げられます。
手や指は仕事中だけでなく、家事、育児、スマートフォンの操作、趣味の楽器演奏やスポーツなど日常生活でも頻繁に使用します。
さらに、更年期や出産後のホルモンバランスの変化、加齢に伴う組織の変性などによっても発症することがあります。
労働基準監督署の審査では、「仕事ではなく私生活の手の酷使や、個人差・加齢が原因ではないか?」と疑われやすいため、業務のみが主因であることを論理的に絞り込む必要があります。
さらに、客観的なデータと証拠の収集にも高いハードルがあります。
「仕事が忙しくて手が痛くなった」という本人の感覚的な主観だけでは労災として認められません。
労働基準監督署の厳しい認定基準を満たすためには、従事していた作業の具体的内容、1日あたりの作業時間や反復回数、発症前数ヶ月間の業務量の推移などを、タイムカードや業務日報などの客観的資料によって数字で提示しなければなりません。
また、同じ業務を行う同僚の発症状況や、医師の専門的な診断内容の確保も不可欠となります。
このように、腱鞘炎の労災申請には立証の困難さがつきまといますが、「労災認定を受けるのが無理である」という意味ではありません。
厚生労働省が定める認定要件を精査し、作業環境や労働時間を客観的な証拠資料に基づいてしっかりと証明することができれば、労働基準監督署から労災として認定されます。
諦めて泣き寝入りする前に、どのような証拠を集め、どのように主張を組み立てるべきかを正しく把握することが非常に重要となります。
腱鞘炎(けんしょうえん)の労災認定基準と具体的な事例
厚生労働省が定める認定基準(上肢障害)
厚生労働省は、腱鞘炎をはじめとする手首や腕の疾患を「上肢障害(じょうししょうがい)」と位置づけ、労災認定のための専門的な判断基準を設けています。
上肢障害とは、首・肩・腕・手首・手指などの「上肢等」に過剰な身体的負担がかかることで生じる運動器の障害全般を指します。
労災認定を受けるためには、以下の3つの条件を満たさなければなりません。
- ① 上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に「相当期間」従事した後に発症したこと
日常業務において、反復動作、上方に腕を上げ続ける作業、固定姿勢での作業、特定部位への持続的負荷など手指や腕を頻繁に使用する動作を行っていることが前提となります。 - ② 発症前に「過重な業務」に就労したこと
症状が現れる前の一定期間において、通常の労働負荷を著しく超える過重な業務を行っていたという事実が必要です。 - ③ 過重な業務への就労と発症までの経過が「医学上妥当」と認められること
作業負荷の開始や増大から症状発現までの時間的流れについて、医師の解剖学的・生理学的な知見から見て不自然さがない(因果関係の説明がつく)ことが厳しくチェックされます。
これら3要件は、業務以外のプライベートな要因(家事や育児、加齢による影響など)を排除し、純粋に「仕事が原因で病気になった(業務起因性)」と評価できるかを客観的に確認するために設定されています。
発症前の業務量や期間の目安について
原則として、上肢等に負担がかかる業務に「おおむね6か月以上」従事してきた実績が求められます。
ただし、従事期間が6か月未満であっても、短期間の間に高い強度の労働が集中した場合には、例外的に業務との関連性が評価されるケースもあります。
発症直前の3か月間において、主に以下のいずれかの状況が発生していたかが審査されます。
「過重な業務」の目安(発症直前3か月間)
| 業務量が一定である場合 | 同じ職場・職種で同年代の労働者(同種の労働者)と比較し、1日あたりの作業量や作業ペースが「概ね10%以上多い状態」が3か月程度継続していたこと。 |
|---|---|
| 業務量に変動・ばらつきがある場合 | 「1日の業務量が通常より20%以上増える日が1か月に10日程度あり、それが3か月続いた」あるいは「1日のうち労働時間の3分の1にわたる時間帯で作業量が20%以上増加する日が月に10日程度あり、それが3か月続いた」こと。 |
また、単なる「作業件数・量」だけでなく、連続作業時間や休憩の有無、取扱物の重量、作業姿勢の拘束度、作業環境の温湿感、精神的緊張の程度なども負担増大の要素として総合的に勘案されます。
労災認定されやすい職業と事例
手首や指の反復動作・過剰負荷が避けられない職業では、客観的データや状況証拠を揃えることで労災認定を受けられる可能性が高まります。
労災認定されやすい代表的な職業には、ハサミやドライヤーを連日長時間使用する「美容師・理容師」、製品の組み立て・仕上げ・解体作業を反復して行う「工場・製造業従事者」、連日の大量タイピング業務をこなす「ITエンジニア・デスクワーカー」、患者や乳幼児の抱き起こしで手を酷使する「介護士・保育士」などが挙げられます。
例えば、デスクワークで日常的にキーボード入力を行っている職場で、同じ部署で同じ作業をしている同僚に対し、特定の従業員だけが常に多い業務量を継続してこなしていたという場合には、労災認定を受けられる可能性が高まります。
労働時間が極端な長時間残業に達していなかったとしても、1分間あたりの打鍵数や処理した伝票の枚数といった「作業密度」が同僚より明らかに高く、その状態が発症前3か月間にわたって続いていたことが客観的データ(PCの操作ログや業務システム上の処理記録など)から確認できれば、過重な業務として労災認定されやすくなります。
このように、単に「仕事をしていた」という事実だけでなく、「同僚と比較して作業が突出していた」あるいは「過去の自分の通常業務より負荷が急激に跳ね上がっていた」といった具体的な比較根拠をデータとして提示できるかどうかが、認定を左右するポイントとなります。
労災認定されにくいケースとは
業務外の要因による発症を排除できない場合には、労災認定が否定されます。
例えば、日常的にスマートフォンで長時間ゲームをしている、趣味でピアノやギターなどの楽器演奏を行っている、テニスやゴルフなどのスポーツを頻繁に行っている、あるいは育児・家事で手を頻繁に使っているといった要素がある場合、「仕事ではなく私生活が主原因である」と判断されるリスクが高まります。
また、更年期障害や妊娠・出産に伴うホルモンバランスの乱れ、加齢による組織の退行性変化(いわゆる五十肩等)が発症に関与していると判定された場合も、認定は難しくなります。
さらに、仕事と症状の間の因果関係を証明できない場合も同様です。
「最近仕事が忙しく、手が痛くなった」という主張や診断書だけでは審査を通りません。
発症前3か月間の作業時間や反復回数、扱っていた重量物、同僚との作業量比較などを客観的に立証するデータ(タイムカード、業務日報、パソコンのログデータ、作業工程表など)が存在しない場合、労基署は「過重な業務」が行われていたと判断できず、不認定となります。
また、痛みを我慢して長期間放置した後に受診した場合や、職場で手首に負担のかかる作業が終了してから何ヶ月も経った後に発症・受診したようなケースでは、業務と疾病との時間的経過の整合性が否定され、不支給となるケースが目立ちます。
腱鞘炎の労災でいくらもらえる?休業補償の金額

治療費が無料になる「療養補償給付」
仕事が原因で発症した腱鞘炎の治療を受ける際、労災保険から支給されるのが「療養補償給付」です。
この制度を利用することで、診察料や検査費、投薬代、さらには整骨院等での必要な施術費用に至るまで、治療にかかる自己負担額が原則として全額補償されます。
具体的な受け取り方には、受診する医療機関の種類によって2つの形式があります。
労災病院や労災指定医療機関で治療を受ける場合は、窓口で必要書類(様式第5号など)を提出すれば、最初から治療費を支払うことなく無料で治療を受けられます(現物給付)。
一方、労災指定以外の一般的な病院で受診した場合は、一度全額を自分で立て替えて支払う必要がありますが、後から労働基準監督署へ請求手続きを行うことで、支払った費用の全額が口座へ還付されます(現金給付)。
なお、療養補償給付には支給金額の上限が定められておらず、医師によって「治癒(これ以上治療を続けても効果が期待できない症状固定の状態を含む)」と判断されるまで、必要な治療費の全額が補償され続けます。
仕事を休んだ時の生活費「休業補償給付」
腱鞘炎の悪化により仕事ができず、会社から給与が支払われない期間中の生活費をカバーする仕組みが「休業補償給付」です。
働けない期間が4日以上になった場合に支給対象となり、休業4日目から労災保険からの手当が発生します(初日〜3日目の待期期間については、労働基準法に基づき会社側が平均賃金の60%以上の休業補償を行わなければなりません)。
給付額は、過去3か月間の給与実績から算出する「給付基礎日額(平均賃金に相当)」を基準に計算されます。
具体的には、基本給付である「休業補償給付(日額の60%)」に、社会復帰促進事業から支給される「休業特別支給金(日額の20%)」が上乗せされるため、実質的に直前給与の約8割相当が補償される仕組みです。
休業日数には土日祝日などの所定休日もカウントに含まれます。
労災申請を行ってから実際に給付金が指定口座へ振り込まれるまでの期間は、労働基準監督署による労災認定の審査が必要となるため、請求書を提出してからおおむね1か月〜2か月程度が目安となります。
休業補償の具体的な計算シミュレーション
ここでは、月給30万円(基本給・諸手当含む)のデスクワーカーが、腱鞘炎の療養のために1か月(30日間)仕事を完全に休んだ場合の休業補償の具体的な支給金額をシミュレーションしてみましょう。
まず、給付の基準となる「給付基礎日額」を算出します。
発症直前3か月間の総支給額(90万円)をその期間の暦日数(例:92日)で割ると、1日あたりの給付基礎日額は約9,783円となります。
次に、支給対象となる日数を計算します。休業期間30日のうち、最初の3日間は会社負担の待期期間となるため、労災保険から支給される対象は残りの27日間です。
この条件を計算式に当てはめると、休業補償給付(60%分)として「9,783円 × 0.6 × 27日 = 約158,485円」、休業特別支給金(20%分)として「9,783円 × 0.2 × 27日 = 約52,828円」が弾き出されます。
これらを合算すると、労災保険から口座へ振り込まれる総額は約211,312円となります。
給料の満額とまではいかないものの、非課税で支給されるため手取りベースでは生活を維持できる水準が補償されます。
労災だけではない!腱鞘炎で請求できる賠償金
傷病手当金
業務外の原因で疾病にかかり就労不能となった労働者を支援する制度として、健康保険の「傷病手当金」が存在します。
1日あたりの支給額は直近1年間の標準報酬月額平均の30分の1に相当する額の3分の2(給与の約67%)であり、最大で1年6か月間にわたって手当を受けることが可能です。
本来、労災保険(給付率約80%)と傷病手当金(給付率約67%)は対象が異なるため二重受給(併用)は認められません。
しかし、腱鞘炎の「業務起因性」の判断が難しく、労働基準監督署の認定審査に長時間を要するような局面では、生活費を早期に確保する目的で傷病手当金を先行して申請・受給する手法が用いられます。
その後、労災認定が正式に下りた段階で過去に受給した傷病手当金を健康保険組合へ返還し、差額を含めた労災補償へと切り替える運用(振替手続き)を行います。
業務上の理由かどうかの判定に時間がかかり生活に困窮するリスクがある場合は、まず傷病手当金の活用を検討するのが実務上有効な選択肢となります。
安全配慮義務違反や不法行為に基づく慰謝料
労災保険給付は被災労働者の最低限の生活を補償する公的な制度であり、精神的苦痛に対する「慰謝料」は一切給付されません。
また休業損害についても約80%相当にとどまるため、生じた損害全額が埋め合わせされるわけではありません。
労災補償でカバーされない残りの損害や慰謝料については、勤務先企業に対して民事上の損害賠償を直接請求することになります。
会社は労働契約に伴い、従業員が身体の安全や健康を確保しながら働けるよう配慮すべき法的な責務(安全配慮義務)を負っています。
もし企業側が、現場で手の痛みを訴える声や過重な労働負荷を認識しながらも、作業人員の追加、配置転換、作業工程の改善といった対策を怠り、結果として腱鞘炎を発症・悪化させた場合、安全配慮義務違反(債務不履行)や不法行為責任が追及可能です。
民事責任が認められれば、治療に伴う入通院慰謝料や後遺障害慰謝料、不支給となった休業損害の残額などを請求できます。
企業の法的責任を立証するには専門的な法律知識と証拠の分析が必須となるため、弁護士へ早期に相談することをおすすめします。
会社が「腱鞘炎は労災にならない」と言う場合の対処法
会社が手続きをしてくれない(労災隠し)場合
腱鞘炎の症状を会社に訴えても、「手首の痛みは自己責任」、「慢性疾患だから労災にはならない」などと言われ、労災申請の手続きを拒否されるケースがあります。
しかし、労災保険の給付を請求する権利は労働者自身に与えられているため、事業主の同意や申請書への証明印が得られない場合であっても、労働者単独で労働基準監督署へ直接書類を提出して申請を強行することが可能です。
会社側の協力が得られない場合は、請求書の「事業主証明欄」を空欄にしたうえで、証明を拒否されている旨の理由書を添えて管轄の労働基準監督署の窓口に提出します。
なお、仕事が原因の疾病に健康保険を使用することは法律上認められていないため、受診初期に誤って健康保険証を提示して治療を受けた場合は、後に労働基準監督署へ事情を説明し、医療機関や健康保険組合との間で労災保険(療養補償給付)への切り替え手続きを行うことになります。
会社からの圧力に屈せず、弁護士などに相談のうえ適正な手続きを選択することが重要です。
腱鞘炎の労災を弁護士に依頼するメリット
突発的な事故とは異なり、徐々に悪化する腱鞘炎は「業務が原因であること(業務起因性)」の立証が難しく、労働者個人の力だけで労働基準監督署や会社と対峙するのは大きな困難を伴います。
労災問題に詳しい弁護士へ依頼することで、こうした負担を大幅に軽減しながら、手続き全般を有利に進めることが可能となります。
弁護士は、タイムカード、PC操作のログ、業務日報などの客観的データを精査し、行政の認定基準に適合する論理的な主張・立証資料を作成します。
さらに、医師への打診や医学的観点からの意見書収集をサポートするため、手首の痛みや可動域制限が後遺障害として残った際にも、適切な後遺障害等級(障害補償給付)の認定を受けられる確率が高まります。
加えて、会社側に安全配慮義務違反などの法的落ち度が存在する場合には、労災保険の補償枠を超えた「入通院慰謝料」や「休業損害の差額分」について、労働者の代理人として企業側と直接交渉を行い、民事上の損害賠償を請求できる点も大きなメリットです。
腱鞘炎と労災についてのQ&A

腱鞘炎の労災認定で美容師のケースは認められますか?
美容師のようにハサミやドライヤーを連日頻繁に使用し、手首や指へ継続的に強い負荷がかかる職種では、労災認定を受けられる可能性があります。厚生労働省の基準では、同一部位の反復動作や不自然な姿勢での作業が6か月以上続いたことなどが認定の目安とされています。
ポイントとなるのは、日常生活ではなく業務が原因で発症したという「業務起因性」の証明です。
1日の施術人数、連続作業時間、使用した器具の重さやカット時の姿勢などを客観的に記録しておくことが重要になります。勤務状況のデータや担当医の所見を揃えて適切に申請を行うことで、美容師の方でも認定へとつながります。

知恵袋などで「腱鞘炎の労災は無理」と見ましたが本当ですか?
客観的なデータを示して業務上の過度な負担を証明できれば、労災認定を受けるのは決して無理ではありません。ネット上で「腱鞘炎で労災認定は無理」と指摘されることが多いのは、加齢やスマートフォンの操作、家事といったプライベートな要因との判別が難しく、不支給になる例が多いためです。
そのため、直近の残業時間や業務量の増加、作業姿勢などを示す証拠を精査し、労災の認定基準を満たしていることを労働基準監督署へ論理的に主張することが重要です。
個人での立証が難しいケースでも、労災問題に詳しい弁護士などの専門家に相談しながら説得力のある申請書類を準備することで、認定を獲得できる可能性は大きく高まります。

腱鞘炎で仕事を休む期間は?
腱鞘炎による休業期間は症状や職種により異なりますが、一般的には3週間から6週間程度が一定の目安となるでしょう。ただし、手首への負担を抑えられる業務への配置転換や作業量の削減が可能であれば、必ずしも仕事を完全に休む必要はありません。
痛みが強く業務に支障が出る場合には、医師の指示や診断書に基づき、しっかりと療養やリハビリに専念することが再発防止につながります。
休職後は会社や産業医と相談しながら、負担の少ない作業から段階的に職場復帰を目指す形が一般的です。症状にあわせた適切な治療計画と職場環境の調整を行いつつ、復職を進めていくことになります。
まとめ
腱鞘炎は業務起因性の立証が難しく労災認定のハードルが高い障害ですが、発症前における業務量や使用期間などの基準をクリアしていれば、治療費(療養補償)や休業中の生活費(休業補償)をしっかりと受給できます。
もし会社が手続きに協力してくれない場合や「労災にはならない」と思える場合でも、労働者自身で労働基準監督署へ申請することは可能です。
また、過度な長時間労働が原因である場合は、安全配慮義務違反として会社に対して損害賠償や慰謝料を請求できる可能性もあります。
会社との交渉や労災申請でお困りの方は、一人で悩まずにぜひ弁護士へご相談ください。
デイライト法律事務所では、労災問題を多く取り扱う人身傷害部の弁護士が相談から受任後の事件処理を行っています。
また、オンライン相談(LINE、ZOOM、Meetなど)により、全国対応が可能ですので、お気軽にご相談下さい。


