弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

ブロック注射の失敗例には、針で神経を損傷したケース、血腫ができてしまったケース、麻酔を投与する場所を間違えたケースなど様々なものがあります。
ブロック注射は、痛みを取り除くことができる有効な治療法です。
その一方で、失敗した場合には、後遺症が生じたり、最悪の場合には命を落としたりすることもある、という側面もあります。
今回の記事では、ブロック注射とは何か、ブロック注射の失敗例にはどのようなものがあるか、ブロック注射に失敗したときの対処法、弁護士に相談すべき場合などについて解説していきます。
目次
そもそもブロック注射とは?

ブロック注射とは、主に、痛みが伝わる特定の神経の伝達経路を遮断し、痛みのない状態にする注射です。
ブロック注射は、痛みをなくすための治療として、ペインクリニックなどで行われています。
がんによる疼痛をなくすためにも、ブロック注射が使われることがあります。
また、ブロック注射は、痛みを無くすためだけではなく、血流改善を目的として行うこともあります(この場合、交感神経ブロックのみ行います)。
【例】:顔面神経麻痺、アレルギー性鼻炎、突発性難聴など
ブロック注射には、神経の伝達機能の遮断が一時的なものと長期的なものがあります。
一時的に遮断する場合は、ブロック注射は局所麻酔の一種となり、リドカインなどの局所麻酔薬が使われます。
長期的に遮断する場合は、神経破壊薬(フェノールグリセリンなど)や高周波熱凝固法などが用いられます。
ブロック注射をする意味は?
痛みをなくす
ブロック注射をする意味の第一は、痛みを伝達する神経の伝達機能を遮断することにより、痛みをなくすことにあります。
ブロック注射によって痛みをなくすことで、痛みがあることによって生じる「痛みの悪循環」も断つことができます。
「痛みの悪循環」とは、次のようなものです。
- ① 痛みが生じる
- ② ①に反応して交感神経(血管の拡張・収縮を司る神経)・運動神経が興奮する
- ③ ②によって、血管が収縮して血流が悪くなり、筋肉が固くなる
- ④ ③によって組織の虚血、酸素欠乏などが生じる。
- ⑤ ④によって痛みを悪化させる物質が作り出される。
- ⑥ ⑤によって痛みが生じる。→①に戻る

痛みを感じる(①)ことをブロック注射によって遮断すれば、この「痛みの悪循環」も断つことができるので、痛みがなくなっていきます。
血流を改善する
交感神経へのブロック注射を行う場合は、血流改善が目的になります。
交感神経は血管を収縮させる機能を担っているので、交感神経の働きを抑えると、血流が改善するのです。
診断に用いる
ブロック注射は、診断に用いられることもあります。
ブロック注射によって痛みが消えたのであれば、その神経が痛みに関与していたと判定することができるためです。
逆に、ブロック注射を行っても痛みが消えないようであれば、その神経は痛みに関わっていなかった可能性があることがわかります。
ブロック注射の失敗例とは?
ブロック注射の失敗例としては、次のようなケースが考えられます。
- 血腫ができる
- 針による神経損傷・臓器損傷が起こる
- 麻酔中毒・アナフィラキシーショック・迷走神経反射を起こす
- 麻酔薬を投入する場所を間違える
- 感染症になる
なお、上記で挙げている例に当てはまる症状が起こっても、医師に過失がなくとも生じてしまう合併症に当たるものもあります。
そのため、上記の例に当てはまるからといって、必ずしも医療ミスや医療過誤(医師の過失による失敗)となるわけではありませんので、ご注意ください。
血腫ができる
ブロック注射によって血管が破れて出血し、体内に血腫ができてしまうことがあります。
特に、血液が固まりにくくなる薬(抗凝固薬。【例】:ワーファリンなど)を飲んでいる場合には、血腫ができるおそれが大きくなります。
体内に血腫ができると、感覚が鈍くなる、痛みが続く、筋力が低下する、視力障害が起こるなどといった症状が出てきます。
場合によっては、血腫によって気道が閉塞して呼吸ができなくなるという重篤な症状が引き起こされることもあります。
そのため、ブロック注射の種類、服用している薬などによっては、抗凝固薬の服用をお休みしてからブロック注射を実施することが必要になります。
なお、血腫による気道閉塞は、病院を出た後に生じることもありますので、体調がおかしくなったら、すぐに病院に連絡するようにしましょう。
針による神経損傷・臓器損傷が起こる
針を刺した際に神経を損傷し、麻痺などが生じてしまうことがあります。
また、注射をする部位によっては、周辺の臓器を針によって損傷してしまうこともあります。
麻酔中毒・アナフィラキシーショック・迷走神経反射を起こす
ブロック注射では麻酔薬を使用するため、麻酔中毒やアナフィラキシーショックを起こすことがあります。
そうすると、呼吸困難となる、呼吸が止まる、けいれんする、脈が速くなる、不整脈が生じるなどの症状が現れます。
また、針を刺す際の痛みの刺激により、迷走神経反射が起こり、脈が遅くなったり血圧が低下したりすることがあります。
麻酔薬を投入する場所を間違える
麻酔薬を誤った場所に投入してしまい、トラブルが生じることもあります。
たとえば、硬膜外ブロックを行おうとしていたのに硬膜の中に麻酔薬を投入してしまうと、血圧が低下する、脈が遅くなる、呼吸停止するといった症状が起こる可能性があります。
ほかにも、血管内に麻酔薬を注入してしまい、けいれんなどの症状が出る場合があります。
感染症になる
ブロック注射を行うと、針を刺した部位から感染症を起こすことがあります。
なかには、発熱、運動神経麻痺などの症状が現れ、抗菌薬の投与や緊急手術が必要になるケースもあります。
上にみたように、ブロック注射をすると様々な症状が起こる可能性があります。
そのため、病院側は、ブロック注射を行う際には、こうした症状に対応できるよう、人工呼吸などの準備を整えておく必要があります。
ブロック注射の痛みはどれくらい?
ブロック注射については、「とても痛いのではないか」と思う方がおられます。
しかし、ブロック注射が一般的に強い痛みを伴うわけではありません。
針も細いものが使われていますので、ほとんど痛みを感じない方も多いです。
ただ、注射の種類などによっては、痛みを伴う場合がありますので、気になる方は医師にお尋ねください
ブロック注射失敗時の対処法

医師に相談する
ブロック注射を受けた後、身体に痺れや痛み、動かしにくさ、息苦しさなどを感じた場合は、すぐにブロック注射を行った医師に相談しましょう。
血腫による気道閉塞など、病院から出た後に発生する致命的な問題もありますので、違和感を覚えたときには、出来るだけ早く医師に連絡することが重要です。
医師に診察してもらったら、現在の状態やそのような状態になった理由、今後の治療の見通しなどについて説明を受けましょう。
こうした説明の際、医師から、「避けようがないことだった」「原因は分からない」などと言われることがあります。
しかし、こうした説明をされたケース中には、「実際には医療ミスがあったが、そのことを医師が認めていないだけ」ということもあります。
診察をした医師の説明に納得できない場合や疑問が残る場合は、別の病院でセカンドオピニオンを受けたり、医療過誤に強い弁護士に相談したりすることが大切です。
治療・リハビリを受ける
症状が自然に良くなっていかない場合は、治療やリハビリを受けることが必要になります。
こうした治療やリハビリは、ブロック注射を行った病院で引き続き受けられることも多いです。
しかし、「ブロック注射に失敗した病院を信用できない」「麻痺などを専門にする別の病院で治療を受けたい」という場合もあります。
そのような場合には、転院を検討することになります。
症状や生活への影響を記録する
ブロック注射に失敗して麻痺・痛みなどの症状が残った場合には、症状の具体的な状況や生活への影響、症状によって余儀なくされた出費などについて記録しておくとよいです。
【例】
- どのような動作をするときに、どのような痛みが出るか
- 麻痺によってどのように身体が動かせなくなったのか
- 仕事ができなくなって欠勤・遅刻した日時、回数
- 家事ができなくなり、外食・家事代行を利用した日時、回数、費用 など
こうした記録は、病院に請求する損害賠償額を算定する際に役に立ちます。
簡単にでも構いませんので、日記などに症状等の経過を記録しておくことをおすすめします。
損害賠償請求を検討
ブロック注射の失敗が医療過誤によるものであれば、損害賠償を請求できる可能性があります。
ただし、ブロック注射に失敗したケースの全てで、損害賠償を請求できるわけではありません。
ブロック注射の失敗で損害賠償を請求できるのは、次の条件を全て満たす場合になります。
- 医師に注意義務違反(過失)があった
- 何らかの健康被害(損害)が発生した
- 過失と損害の間に因果関係がある
上の条件を満たす場合は、医療過誤(医療ミス)があったとして、病院側に損害賠償を請求することができます。
ここで大切なのは、次のポイントです。
医師に過失がなければ損害賠償は請求できない
医療行為によって健康被害が生じた場合でも、医師に過失(注意義務違反)がなければ、損害賠償は請求できません。
医療行為の中には、薬の副作用や手術の合併症などのように、注意していても避けられない被害をもたらしてしまうものがあります。
また、個人の体質などにより、予測が非常に難しい健康被害が生じることなどもあります。
そのような場合には、医師がどんなに注意していても結果の発生を避けることができないため、医師に損害賠償責任を負わせることは適切ではないと判断されます。
そのため、医師が注意義務を果たしていれば(= 医師に過失がなければ)、何らかの健康被害が生じたとしても、医師の責任を問うことはできないこととなります。
この注意義務違反(過失)は、患者側で主張・立証しなければなりません。
そのためには、次のような準備が必要になります。
- 各種ガイドライン・医療文献・論文などを収集し、医師の注意義務の存在を主張・立証する
- カルテを読み解き、医師が注意義務に違反したことを主張・立証する
- 関連する裁判例を分析する
過失と損害の間に因果関係があることが重要
医師に過失があり、損害(健康被害)が発生していても、両者の間に因果関係がないと、損害全額についての賠償を求めることは難しくなります。
因果関係が認められない場合としては、次のようなものがあります。
- 「ブロック注射の際の過失が原因となって損害が生じた」と立証できない
- ブロック注射以外の原因で損害が生じた
- ブロック注射に伴う避けられない損害だった
実際の医療訴訟などでも、病院側は、「ブロック注射をする場合、この合併症は避けられない」「被害が生じたのは、元から患者が有していた疾患のせいである」など主張として、因果関係を否定してくることが少なくありません。
こうした主張に対抗して患者側が因果関係を立証するためには、以下のような準備が必要になります。
- 各種検査結果、医学文献などを精査する
- 他の医師(協力医)の意見を求める
- 関連する裁判例を調査する など
医療ミスに強い弁護士に相談する
上に見たように、過失や因果関係について主張・立証するには、医療と法律の両分野に関する知識が必要になります。
そのため、医療ミスがあったのではないかと思われる場合には、早いうちに、医療過誤にくわしい弁護士に相談することが重要になります。
医療過誤にくわしい弁護士に相談すれば、次のようなメリットが得られます。
- 病院に説明を求める申入れを代わりに行い、説明の場にも同席してもらえる
- カルテや各種医療文献等の入手、分析を頼める
- 医療過誤に当たるかどうかの見通しを示してくれる
- 損害賠償額の相場を示してくれる
- 病院の責任を追及する手段を教えてくれる
医療過誤について弁護士に相談することのメリットについては、以下のページもご覧ください。
ブロック注射失敗時に弁護士に相談した方が良いケース

重度の後遺症が生じた場合
ブロック注射に失敗して重度の後遺症が生じた場合には、弁護士に相談して対応することをおすすめします。
重度の後遺症とは、たとえば次のようなものです。
- 植物状態(遷延性意識障害)になった
- 手又は足の1つ以上が完全に麻痺した
- 手又は足の1つ以上を切断することとなった
- 失明した
- 聴力がなくなった など
このような後遺症が生じた場合、今後の生活を維持するために、治療費・介護費・リハビリ費など多額の費用が必要になります。
そのため、ブロック注射の失敗について医療ミスがあったのであれば、病院側に十分な損害賠償責任を果たしてもらうことが重要になるのです。
病院側に十分な損害賠償責任を果たしてもらうためには、早いうちから医療ミスに強い弁護士に相談し、証拠の確保・損害の算定・主張の組み立てなどを行ってもらうことが大変重要になります。
死亡した場合
ブロック注射の失敗で、以下のように死亡してしまう例があります。
- ブロック注射後に血腫が生じ、それによって気道が閉塞して呼吸ができなくなる
- 硬膜外ブロックを行った際に、麻酔薬が誤って硬膜の中に流入し、呼吸が止まってしまう
- 麻酔薬によってアナフィラキシーショックを起こす など
このようにブロック注射の失敗で患者さんが亡くなるケースの中には、次のように、医療ミスが介在している可能性があるものもあります。
- 血が固まりにくくなる薬(抗凝固薬)を飲んでいるのに、薬の服用を止めることなくブロック注射を行い、血腫を生じさせた
- 硬膜外ブロックの際に、誤って針先を硬膜の中にまで進めた
- 呼吸停止などのトラブルが起こった際に、適切に対応しなかった など
ご家族がブロック注射で亡くなり、医療ミスがあったかもしれないと思われる場合には、一度弁護士に相談してみましょう。
ご家族が突然亡くなった場合、ご遺族の方は、非常に大きなショックを受けておられますし、葬儀、死亡届、相続、税金などに関する様々な手続き等で大変忙しくもなります。
そのような中、医療ミスに関する対応までご自身だけで行おうとすると、あまりにも負担が大きくなってしまいます。
医療ミスに関しては、早いうちに弁護士に相談し、専門家によるサポートを受けることをおすすめします。
医療機関が過失を認めている場合
医療機関が過失を認めている場合も、早いうちに弁護士に相談してサポートを受けることが大切です。
医療機関が過失を認めている場合には、通常、損害賠償に関する話し合いがもたれます(病院が過失と損害の因果関係を争っている場合は除く)。
その際、患者側が弁護士を付けないままでいると、病院側が提示する示談金額をベースとした交渉が進められることになります。
しかし、この病院側の提示額は、常に十分な金額となっているとは限りません。
人身損害に対する損害賠償額の算定は大変複雑で、どのように算定するかによって金額が大きく変わってしまいます。
そのため、病院側の提示額では、病院側に有利なように、損害賠償額を低く抑える算定方法が用いられることが少なくないのです。
患者側が適正かつ十分な補償を得るためには、自ら弁護士に相談し、損害額の算定や病院側との交渉についてサポートを受けることが重要になります。
医療機関が過失や因果関係を認めない場合
医療ミスがあると思われるのに、病院側が過失や因果関係を認めない場合も、弁護士に相談して対応することが大切です。
医療機関が過失・因果関係を認めない場合には、患者側で、過失・因果関係の有無を調査し、主張・立証する必要があります。
そのためには、次のようなことが必要になります。
- カルテを取り寄せ、内容を検討する
- 各種ガイドライン・医学文献を精査する
- 協力医を探す
- 関連する裁判例を調査する など
こうした調査等を適切に行うには、医療と法律についての知識を有していることが重要になります。
そのため、患者さんが独力で対応するのではなく、医療と法律の両分野にくわしい、医療ミスに強い弁護士に相談してサポートを受けることが大切になるのです。
なお、医療ミスに関連する事件については、法律事務所ごとに扱っている内容が異なりますので、相談の際、取扱業務となっているかを弁護士にご確認ください。
ブロック注射についてのQ&A

ブロック注射はめちゃくちゃ痛いって本当?
ブロック注射は、基本的に、特別強い痛みがあるものではありません。ただ、注射の種類によっては痛みがあるとしている病院もありますので、詳しくは、受診する病院で聞いてみてください。

ブロック注射が効かない理由とは?
ブロック注射が効かない理由としては、ブロック注射をした神経が痛みに関与していなかったという可能性があります。その場合には、他の神経に対してブロック注射を行うなどし、痛みの解消を図ることが考えらえます。
ほかにも、痛みが慢性化しておりブロック注射が効きにくい、ということなども考えられます。
詳しくは、医師にお尋ねください。

ブロック注射の副作用で歩けないことがある?
ブロック注射の種類によっては、注射後しばらく歩けなかったり、安静に横になっている必要がある場合があります。
まとめ
今回の記事では、ブロック注射とその失敗例について取り上げました。
ブロック注射は、痛みをとるために有効な治療法ですが、残念ながら失敗してしまう例もあります。
ブロック注射に失敗した場合で、その失敗が医療ミスによるものではないかと思われる場合には、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
当事務所でも、各種事件への対応によって医学的知識を身に付けた人身障害部の弁護士が、ブロック注射に失敗したなどの医療過誤問題にお悩みの方からのご相談に対応しております。
電話やオンラインによる全国からのご相談もお受けしております。
ブロック注射の失敗に関する医療過誤についてお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所までお気軽にご相談ください。

