弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

椎間板ヘルニア手術では、術後5年の間に約1.5~8.5%が再手術をしています。
ヘルニア(椎間板ヘルニア)では、多くの場合、手術によらない保存的治療が行われますが、中には、手術が必要になるケースもあります。
手術をすると聞くと「失敗したらどうなるのだろう」「失敗してしまう確率はどの程度あるのだろうか」と心配に思う方も多いと思います。
また、「もし手術に失敗してしまったら、どこに相談すればよいのだろうか」と思われる方もおられるかと思います。
今回の記事では、椎間板ヘルニアを中心に、ヘルニアとは何か、ヘルニア手術の種類、ヘルニア手術の失敗例、ヘルニア手術の失敗を避けるためのポイント、ヘルニア手術が失敗した時の対処法、相談窓口などについて解説していきます。
目次
そもそもヘルニアとは何か?

ヘルニアとは、臓器が本来の位置からはみ出してしまっている状態のことをいいます。
そのため、ヘルニアは、様々な場所で生じる可能性があります。
身近によく聞く「ヘルニア」に、椎間板ヘルニアがあります。
椎間板は、背骨を構成している一つ一つの骨(椎骨)の間に挟まっているものです。
この椎間板が変形し、外側にはみ出してしまった状態が、椎間板ヘルニアです。
椎間板ヘルニアになると、はみ出した椎間板に神経根や脊髄が圧迫されて神経根症・脊髄症になることがあります(無症状の場合もあります)。
神経根症・脊髄症になった場合、脚の痛み、しびれ、麻痺などの症状が現れます。
重症になると、排尿・排便障害になる、歩くこともできなくなるといったこともあります。
ほかにも、代表的な「ヘルニア」には、次のようなものがあります。
- 脳ヘルニア
- 鼠径部ヘルニア
- 腹壁ヘルニア
上記以外にも、臍(へそ)ヘルニア、大腿ヘルニアなど様々なヘルニアがあります。
今回の記事では、ヘルニアのうちでも、椎間板ヘルニアについて取り上げていきます。
以下では、単に「ヘルニア」という場合、「椎間板ヘルニア」を指します。
ヘルニア手術が失敗する確率とは?
ヘルニア手術が失敗する確率については、調査した限り、統計資料などはありませんでした。
ただ、手術後にヘルニアの再手術を行う頻度については、日本整形外科学会診療ガイドライン委員会ほか「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版」(南江堂)p72に記載があります。
これによると、再発ヘルニアに対する再手術の累積発生率は、術後1年で0.5~4.0%、術後2年で1.6~9.6%、術後5年で1.5~8.5%だったとのことです。
このように、ヘルニア手術では、術後5年の間に1.5~8.5%が再手術を必要とするようになります。
ヘルニア手術の種類
椎間板ヘルニアの手術には、主に次のものがあります。
椎間板摘出術
椎間板摘出術は、ヘルニアなどを摘出する術式です。
椎間板摘出術には、肉眼で行うもの、顕微鏡を使用するもの、内視鏡を使用するものの3種類があります。
顕微鏡を使用して行う術式のメリットは、傷口が小さくて済み、回復が早いことです。
内視鏡を使用すると、傷口はさらに小さくなり、身体への負担はより小さくなります。
内視鏡を使用した手術の種類
内視鏡を使用した手術には、現在、主に以下の2つがあります。
- MED法(内視鏡下椎間板摘出術) 切開創の幅が2センチ程度
- FED法(完全内視鏡下脊椎手術。旧PED) 切開創の幅が8ミリ程度
どの方法での手術が実施できるかは、ヘルニアの状態や手術を行う病院によって異なります。
詳しくは、受診する病院で、医師にお尋ねください。
固定術
ヘルニアの摘出に加え、背骨を金属等で固定する方法(固定術)を用いる場合もあります。
固定術を行うと、骨同士を固定して、神経の通り道を広げた状態を保つことができるので、痛み等の症状を改善できることが期待できます。
手術以外の治療法もある
ヘルニアになったからといって、必ずしも手術が必要になるわけではありません。
むしろ、多くの場合、まずは手術以外の以下のような治療法(保存的治療)が試みられます。
- コルセットなどの装具を使う治療
- 牽引療法
- 薬物療法
- 神経ブロック治療 など
ヘルニアは、多くの場合、3か月程度で吸収されていくので、急いで手術をするのではなく、保存療法をしながら様子を見ることが多いのです。
ただ、上のような治療の効果が乏しい場合や、足の運動麻痺が進行している場合、排尿・排便障害がある場合、痛みのために歩行が難しくなって日常生活に支障が出ている場合などには、手術が選択されることが多くなっています。
ヘルニア手術の失敗例とその原因
ヘルニア手術の失敗としては、次のようなケースがあります。
- ① 手術によって何らかの問題が生じた
- ② 手術をしたのにヘルニアが再発した
- ③ 手術をしたのに症状が改善しなかった
①については、具体的に次のような問題が生じることがあります。
- 神経損傷
- 感染症
- 硬膜の損傷 など
神経損傷、硬膜の損傷は、手術中に傷つけてはいけない箇所(神経、硬膜)を傷つけてしまうことで起こります。
感染症は、手術をした傷口から細菌等が入り込むことで起こります。
ほかにも、ヘルニア手術に伴い、血栓症、麻酔中のトラブル(全身麻酔時の気管挿管の失敗、麻酔中毒、アナフィラキシーショックなど)などが起こることもあります。
また、②、③のとおり、椎間板ヘルニアは、手術をしたからといって完治するとは限りません。
場合によっては、症状が十分に改善しない、一度は改善したけれども再発する、という可能性もあります。
症状が十分改善しないケースには、飛び出した部分(ヘルニア)を完全に取り除けなかったケースなどがあります。
また、ヘルニアが再発するケースの中には、同じ場所に再発するケースも、異なる場所でヘルニアが生じるケースもあります。
ヘルニア手術には避けられない合併症もある
上のようなヘルニア手術の失敗の中には、医師が十分に注意していても避けようがないもの(合併症)があります。
こうした合併症については、医者の過失によって被害が生じたとはいえないとして、原則として損害賠償請求は認められません。
ヘルニア手術の失敗を避けるポイント

病院選びを入念に行う
椎間板ヘルニアの手術は、知識と経験が豊富で高度な技術を有する医師の方が、成功する確率が高くなります。
そのため、ヘルニア手術の失敗を避けたいのであれば、病院選びを入念に行うことが重要になります。
HPの記載やインターネット・近所での評判を確かめ、入念に調査して病院を選ぶようにしましょう。
セカンドオピニオンを活用する
ヘルニア手術の必要性を慎重に検討するためにも、セカンドオピニオンを活用し、他の医師からも手術の必要性についての意見をもらうとよいです。
ヘルニアで手術が必要かどうかは、医師によっても見解が分かれる場合があります。
そのため、受診した医師からヘルニア手術を勧められた場合でも、他の医師に診てもらえば違う診断になるかもしれません。
手術以外の方法で治療することができれば、ヘルニア手術の失敗を避けられることにもなります。
術後のリハビリを入念に行う
ヘルニア手術をした場合、手術後に、必要とされるリハビリを怠らないことが大切です。
リハビリをしっかりと行わないと、症状が改善しなくなったり、日常生活にスムーズに戻れなくなったりしてしまう可能性があります。
医師や理学療法士とリハビリの計画を立て、最後まできちんと継続して通うようにしましょう。
ヘルニア手術が失敗したときの対処法

医師の診察を受ける
ヘルニア手術に失敗したと思われる場合は、まずは医師の診察を受け、現在どのような状態にあるのかを確認してもらいます。
必要な場合は、CT・MRIなどの検査もしてもらいます。
そうすれば、現在生じている症状が何に起因するのか、今後どのように対応したらよいのかについて説明してもらうことができます。
損害賠償請求を検討する
ヘルニア手術に失敗したケースの中には、医師に過失があったケース(医療過誤・医療ミス)もあります。
そのような場合には、病院に対して損害賠償を請求することができます。
「ヘルニア手術の失敗は医療過誤によるものではないか」との疑いがある場合は、医療過誤にくわしい弁護士に相談し、損害賠償請求を検討することをおすすめします。
【注意!】ヘルニア手術に失敗しても損害賠償を請求できないこともある
ヘルニア手術に失敗したからといって、必ずしも損害賠償を請求できるわけではありません。
ヘルニア手術の失敗について損害賠償を請求するためには、次の全ての要件を満たす必要があります。
- 医師に注意義務違反(過失)がある
- 何らかの健康被害(損害)が発生している
- 過失と損害の間に因果関係がある
そのため、次のような場合には、ヘルニア手術に失敗していても、病院に損害賠償を請求することができません
- 医師に注意義務が課されていたことが認められない場合
- 医師の行為が注意義務に違反していた(過失があった)と認められない場合
- 健康被害(損害)の発生が認定されない場合
- 医師の過失によって損害が生じたと認められない場合
- 医師の過失がなくとも損害が生じた可能性を否定できない場合
弁護士としての経験からしても、実際の病院との交渉や訴訟の場面で、病院側が、「医師に過失はなかった」「ヘルニア手術に伴う避けられない合併症だった」などと主張し、病院側に責任はない、と争ってくることが少なくありません。
損害賠償を請求するために必要な準備は?
上のような病院側の主張に対抗し、病院に損害賠償を請求するための要件(過失・損害・因果関係の存在)を主張・立証するためには、次のような準備が必要になります。
- カルテを入手・分析する
- 医学文献・各種ガイドラインを収集・分析する
- 協力してくれる医師(協力医)を探す
- 関連する裁判例を調査する
こうした準備を適切に進めていくには、医療と法律の両分野についての知識を備えた、医療過誤問題にくわしい弁護士のサポートを受けることが重要になります。
ヘルニア手術が失敗したときの相談窓口
病院で説明を聞く
ヘルニア手術に失敗した場合、まずは、現在の症状が生じた原因やこれからの治療などについて病院で説明を聞きます。
医師に直接説明を求めることもできますが、直接は話しにくいようであれば、病院の窓口を通じて申し入れることもできます。
医療ミスが疑われる場合は、病院に説明を求める段階から弁護士に依頼し、弁護士から病院に対して説明を求める申入れをしてもらうことも考えられます。
病院からの説明の場にも弁護士に同席してもらえば、分からないところを弁護士から質問してもらうこともできますし、患者側の意見や思いを病院に伝えてもらうことも可能です。
医療安全支援センター
医療安全支援センターは、医療に関する不満や心配についての相談に対応してくれる窓口です。
全国に設置されていますので、お住まいの近くにある医療安全支援センターに相談することができます。
参考:全国の医療安全支援センター|医療安全支援センター総合支援事業
医療安全支援センターには、医療に関する様々な疑問や悩みを相談することができます。
【例】
- 検査の必要性が分からない
- カルテ開示を求める方法を知りたい
- セカンドオピニオンを求めるにはどうしたらよいのか など
ただし、医療安全支援センターはあくまでも中立の立場ですので、必ずしも患者側に立って対応してくれるわけではありません。
また、ヘルニア手術が失敗だったかどうかについて判断してくれるわけでもありませんし、病院との間に立ってくれるわけでもありませんので、その点についてはご理解ください。
医療安全支援センターについては、以下のページをご覧ください。
医療過誤に強い弁護士
ヘルニア手術の失敗が医療過誤によるものではないかと思われる場合には、一度、医療過誤に強い弁護士に相談することをお勧めします。
医療過誤に強い弁護士に相談・依頼すれば、次のようなメリットがあります。
- カルテの入手、分析を任せることができる
- 医療過誤と認められるかどうかの見通しを示してくれる
- 損害賠償額を算定してくれる
- 医療文献・ガイドラインなどの証拠を集めてくれる
- 病院との交渉の窓口になってもらえる
- 病院の責任を追及する方法についてアドバイスしてくれる
医療過誤問題について弁護士に相談することのメリットについては、以下のページをご覧ください。
弁護士探しには医療事故情報センターを活用することもできる
医療過誤について弁護士に相談しようと思った時に困るのが、「どの弁護士に相談すればよいかわからない」ということです。
医療過誤問題は、一般的な民事事件とは違い、経験したことのある弁護士が限られます。
しかも、医療過誤問題は、医療と法律の両分野にまたがる知識が必要な、弁護士にとってはかなり特殊な分野です。
そのため、医療過誤問題の経験が浅い弁護士に依頼してしまうと、次のような不都合が生じてくるおそれがあります。
- 医師の過失に関する主張を的確に設定できず、損害賠償請求が難航する
- 医学文献等について、それぞれの文献の証拠としての価値の高低を判断することができず、的確な立証ができない(例:少数説を唱える論文を立証の柱としてしまう)
- 適切な協力医を探すことができない
このようなことのないようにするには、医療過誤問題に患者側の立場で取り組んでいる弁護士を探して相談することが大切です。
こうした弁護士を見つけるためには、インターネットでHPを見るなどして調べることが有効です。
また、インターネット上の情報だけでは不安がある、住まいの近くの弁護士の情報が知りたい、という場合には、医療事故情報センターを活用することもできます。
医療事故情報センターは、医療事故の被害者の代理人として活動する弁護士の団体です。
医療事故情報センターのHPには、全国各地の相談窓口が掲載されています(ただし、医療事故情報センターとは別組織です。)。
掲載されている地域に相談窓口がない場合は、医療事故情報センターに依頼すれば、個人的に医療事故を扱う弁護士の連絡先も掲載された一覧表を送付してもらうことができます。
ご自身では依頼する弁護士を見つけることが難しい場合は、医療事故情報センターもご活用ください。
ヘルニア手術の失敗で弁護士に相談した方が良いケース

重度の後遺症が生じた場合
ヘルニア手術の失敗で重度の後遺症が生じてしまった場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
重度の後遺症とは、たとえば次のようなものです。
- 植物状態になった
- 手足の1本以上が完全に麻痺した
- 手足の1本以上を切断することになった
- 失明した
- 聴力を失った など
このような重度の後遺症が生じてしまった場合、治療費・介護費など多額の費用が必要になります。
そのため、医師に過失があるのであれば、被害者の方が安心して生活していくためにも、病院側に十分に損害賠償責任を果たしてもらうことがとても重要になるのです。
患者が死亡した場合
ヘルニアの手術でも、以下のように、患者が死亡する可能性があります。
- 麻酔時のアナフィラキシーショックや麻酔中毒で呼吸停止等となった
- 全身麻酔の際に気管挿管の方法を誤った(食道に挿管してしまったなど)
- 感染症により死亡した など
ヘルニア手術の失敗でご家族が亡くなってしまった場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
患者の死亡という重大な結果が生じている場合には、医師の説明を聞くだけでなく、法律の専門家である弁護士にも意見を聞き、慎重に対応した方がよいのです。
それに、ご家族を亡くされたご遺族は、葬儀・死亡届・相続・税金等に関わる様々な手続きで忙しくなります。
ご家族の死に大きなショックを受けている中で、こうした用件をこなしつつ、さらにヘルニア手術の失敗に関する対応まで行おうとすると、あまりにも負担が大きくなります。
ヘルニア手術の失敗についての対応は、専門家である弁護士に対応を依頼することで、残されたご家族の負担は大きく軽減されます。
ヘルニア手術の失敗でご家族を亡くされた場合は、ぜひ一度、弁護士までご相談ください。
医療機関が過失を認めている場合
医療機関がヘルニア手術の失敗について過失があったことを認めている場合も、弁護士に相談することをおすすめします。
「病院が過失を認めているのに、弁護士が必要なのか?」と疑問に思われる方も多いかもしれません。
しかし、病院が過失を認めている場合も、損害額の算定の場面で、弁護士が重要な役割を果たすのです。
ヘルニア手術に失敗した場合のように人身損害が生じているケースでは、損害の算定がかなり複雑になり、どのような算定方法をとるかによって算定額自体も変わってしまう場合があります。
そのため、病院側に損害算定を任せてしまうと、病院側に有利なように、損害額を低く抑える算定方法をとられてしまいかねません。
適正な損害賠償額を得るためには、患者側が自ら損害額を算定することが大切です。
しかし、上でもご説明したとおり、人身被害が生じている場合の損害額の算定は大変複雑なので、損害賠償請求に不慣れな方では適切な損害額を算定することが難しいのが実情です。
損害額を適切に算定するためには、患者自ら弁護士に相談し、患者側の立場に立って損害額を算定してもらうことが重要になります。
医師が過失を認めないケース
医師が過失を認めないケースでも、弁護士に相談した方が良いです。
「医療過誤ではないかと思われるのに、医師が過失を認めない」という場合、医師の過失の有無は、患者側で調査する必要があります。
【例】
- カルテを収集、分析する
- 各種医学文献・論文・ガイドラインを入手し、精査する
- 協力医を探し、意見を求める
- 関連する裁判例を調査する など
こうした調査を適切に行うためには、医療と法律の両分野に通じている、医療過誤問題に詳しい弁護士のサポートを受けることが大切です。
さらに、こうした調査の結果に基づいて、適切な主張・立証を行うためにも、弁護士の力を借りることが重要になります。
ただし、医療過誤事件については、法律事務所によって取り扱っている内容が異なる場合があります。
詳しくは、ご相談の際、弁護士にお尋ねください。
ヘルニア手術の失敗についてのQ&A

ヘルニア手術が失敗したら車椅子となりますか?
ヘルニア手術の失敗には様々なものがありますので、必ずしも車椅子が必要になるとは限りません。
まとめ
今回は、ヘルニア手術の失敗について解説しました。
ヘルニアで手術をする場合、上手くいかずに失敗してしまうこともありえます。
ヘルニア手術が失敗してしまった場合には、まずは、医師に相談し、これからの治療のことを考えることが必要になります。
加えて、ヘルニア手術の失敗が医療ミスによるものだと思われる場合は、早いうちに弁護士に相談し、カルテの入手などを進めていくことが大切です。
当事務所でも、各種事件への対応を通して医療知識を培ってきた人身障害部の弁護士が、ヘルニア手術の失敗など医療過誤で苦しんでおられる方々のご相談に対応しております。
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お困りの方はぜひ一度、当事務所までご連絡ください。


