弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

アスベスト(石綿)の事前調査は、2021年4月から段階的に義務化され、現在では建築物の解体・改修工事において原則すべての現場で有資格者による調査が必須となっています。
さらに、2026年1月からは「工作物(特定の設備など)」についても有資格者による調査が義務化されるなど、規制は年々強化されています。
アスベスト調査の義務に反した場合、30万円以下の罰金が科せられるリスクがあります。
この記事では、アスベスト調査が「いつから義務なのか」「対象となる工事や不要なケース」「罰則の内容」について、弁護士が分かりやすく解説します。
目次
アスベストの調査の義務化はいつから?
2026年1月から工作物の解体・改修も有資格者の調査が必須に
工作物の解体、改修の工事を行う場合、「工作物石綿事前調査者」によって、石綿等が使用されていないか、事前に調査することが義務付けられます。
「工作物」とは、建築物以外のものであって、土地、建築物又は工作物に設置されているもの又は設置されていたものの全てをいいます。
例えば、以下のものが該当します。
参考:令和2年10月28日付 基発1028第1号「石綿障害予防規則の解説について」
この事前調査は、「工作物石綿事前調査者」が実施しなければならず、無資格者が行っても義務を果たしていることにはなりません。
これまでの義務化の流れ

2021年4月|事前調査の義務化
建物の解体・改造・補修工事を行う際、原則として、全ての工事で事前にアスベストの含有の有無を調査することが義務付けられました。
義務化の対象は、工事の規模や金額にかかわらず、全てが対象になりました。
2022年4月|結果報告の義務化
以下の規模の工事の場合に、調査結果の報告義務が課されることになりました。
結果の報告は、都道府県等および労働基準監督署に行うことになりました。
- 80㎡以上の解体工事
- 請負金額100万円以上の改修工事
2023年10月|有資格者による事前調査の義務化
調査漏れや不適切な見落としを防ぐために、資格者が事前調査を行うことが義務付けられました。
必要になる資格は、建物の種類によって異なります。
- 特定建築物石綿含有建材調査者
- 一般建築物石綿含有建材調査者
- 一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て住宅等の場合のみ)
アスベスト調査の義務化の対象となる工事
アスベスト調査は、原則として全ての建築物等について義務化されています。
ただし、報告義務が課されている建築物等は限定されており、詳しくは石綿障害予防規則4条の2に規定があります。
結果報告の義務が課されている工事は、以下の通りです。
| 建築物の解体工事 | 床面積の合計が80㎡以上の建造物 |
|---|---|
| 建築物の改修工事 | 工事の請負代金の額が100万円以上のもの |
| 工作物の解体・改修工事 | アスベストが使用されているおそれが高いものとして環境大臣が定めるもので、工事の請負代金の額が100万円以上のもの |
| 船舶の解体・改修工事 | 総トン数20トン以上の船舶(鋼製のものに限る) |
アスベスト調査が不要になるケースはある?
アスベスト事前調査の対象外となるのは、アスベストの飛散のおそれが少ないと考えられる工事です。具体的には、以下のケースが該当します。
①アスベストを含まない素材・製品のみの工事
「工事対象の建材が木材、金属、石、ガラスなど、アスベストを明らかに含まない素材のみの場合」や「畳や電球など、アスベストを含むことがない製品の取り外しの場合」など、隣接する建材に損傷を与える可能性がない場合は、調査は不要です。
②飛散の可能性がほとんどない軽微な作業
釘による固定や釘を抜くなど、アスベストが飛散する可能性がほとんどない作業についても、事前調査は不要となります。
ただし、これらの作業であっても、周辺の建材にアスベストが含まれている可能性がある場合や、作業によって周辺建材に影響を与える可能性がある場合は、調査が必要となることがあります。
③2006年9月1日以降に着工・建設された建築物
アスベストの使用が禁止された2006年(平成18年)9月1日以降に着工・建設された建築物についても、アスベスト事前調査は不要です。
アスベスト調査に違反した場合の罰則
アスベストの事前調査を実施しなかった場合や、行政への報告をしなかった場合、以下の罰則が科される可能性があります。
| 結果の報告義務違反 (未報告・虚偽報告) |
30万円以下の罰金 |
| 事前調査の実施義務違反 | 50万円以下の罰金 |
アスベストの飛散を防ぐための適正な除去・封じ込め作業を行わなかった場合、以下の罰則が科される可能性があります。
| 作業基準の違反 (飛散防止措置を怠るなど) |
3ヶ月以下の拘禁刑 または 30万円以下の罰金 |
| 労働者の安全保護違反 (防塵マスクを使用させないなど) |
6ヶ月以下の拘禁刑 または 50万円以下の罰金 |
アスベストの事前調査から結果報告までの流れ

アスベスト調査では、大きく分けると「事前調査」と「結果報告」という2つの作業を行う必要があります。
事前調査は、原則として全ての建築物等に対して行わなければなりません。
事前調査は、書面調査→目視調査→(分析または石綿みなし判定)という流れで行います。
書面調査と目視調査は、セットで必ず実施する調査です。
書面および目視調査でアスベスト含有の有無が判明しなかった場合、分析または石綿みなし判定を行うこととなります。
事前調査が完了したら、結果報告書を作成し、都道府県および労働基準監督署へ結果を報告します。
アスベスト事前調査とは
アスベストの事前調査とは、建物の解体・改修などの工事をする前に、建築物等に使用されている建材にアスベストが含まれているかどうかを調査することをいいます。
調査は、原則として全ての建築物等について行う必要があります。
ただし、工事対象の建材が木材、金属、石、ガラスなど、アスベストを明らかに含まない素材のみの場合など、アスベスト飛散の可能性がない場合には、一部調査が免除されることがあります。
事前調査を行う際は、書面調査と目視調査の2つを必ず行わなければなりません。
書面調査では、以下のような書類を確認し、文書内のアスベストに関する記載や建築年次などから、アスベストが含有されているかどうかを確認します。
書面調査を行うにあたっては、以下のような書類を確認することとなります。
- 設計図(確認申請書、確認済証)
- 竣工図
- 改修図
- 対策工事記録
- 過去の維持管理のための調査記録、改造補修時の記録
- 過去の石綿含有に関する調査記録
また、目視調査では、建築物の外観から内装や下地等の内側まで、一通り確認することとなります。
書面調査と目視調査でアスベスト含有の有無が判明しなかった場合には、分析または石綿みなし判定のいずれかを行います。
分析は、建築物の建材ごとにサンプルを採取し、分析会社にてアスベストが含有されているかを調べるものです。
石綿みなし判定は、アスベスト含有の有無を問わず、アスベストが含有されているとみなして、法令に基づく石綿飛散防止措置等を講じた上で工事を行うものです。
結果報告とは
事前調査が完了したら、「結果報告書」を作成します。
結果報告書には、以下のような事項を記載します。
- 工事の概要
- アスベスト含有建材の有無
- 調査方法
- 調査結果
- 分析結果(分析を行った場合)など
結果報告は、都道府県と労働基準監督署の両方に元請業者が提出しなければなりません。
結果報告をするにあたっては、厚生労働省および環境省が提供する「石綿事前調査結果報告システム」から行います。
このシステムを利用することで、都道府県と労働基準監督署の両方に1度の操作で報告をすることができます。
システムの利用が難しい方の場合は、紙で提出することもできます。
アスベスト調査の義務化についてのQ&A
アスベスト調査の義務化に関するご質問にお答えしていきます。

アスベストの調査資格は義務化されますか?
2023年10月1日より、アスベストの事前調査は、「石綿含有建材調査者」の資格を持つ有資格者が実施することが義務付けられました。
一部、事前調査を必要としない例外的な場合を除き、有資格者による事前調査が必要です。
2023年10月1日以降は、無資格者による事前調査は法令違反となります。
アスベストの事前調査を行っていないとして、罰則の対象にもなりますので、注意しましょう。

アスベスト事前調査はいつまでに報告する必要がありますか?
アスベスト事前調査の結果については、工事を開始する14日前までに報告する必要があります。
調査の報告は、「石綿事前調査結果報告システム」から24時間いつでも行うことができますので、先延ばしにせず、調査の結果がまとまり次第、忘れないうちに報告することをおすすめします。
また、書類調査や目視調査でアスベスト含有の有無が判明しない場合は、専門業者に分析を頼む必要があるため、その期間も考慮して早めに調査に着手しましょう。

エアコンの設置や交換でもアスベストの事前調査は必要ですか?
エアコンの設置や交換でも、建物の着工日が2006年(平成18年)9月1日以前の場合には、事前調査が必要になる可能性があります。例えば、新規の配管穴あけ工事を行う場合、既存の配管穴のサイズを拡張する場合など、壁や天井の建材を削ったり壊したりする作業が伴う場合には、事前調査が必要になる可能性があるので、業者に十分確認するようにしましょう。
まとめ
アスベストは、耐久性や耐熱性の高さから、かつては建材や断熱材として広く使用されていましたが、アスベストが体内に入ると肺がんや悪性中皮腫といった重篤な病気が引き起こされることがのちに判明し、2006年以降は建材として使用されることはなくなりました。
しかし、当時建築された建築物等に使用されたアスベストは除去されることなく、今でも現存しています。
2020年代以降は、アスベストを使用した建築物等が耐用年数を迎えることもあり、取壊し工事などを行う際の健康被害を防ぐ必要があります。
このような経緯から、国は段階的に法改正を行い、現在では有資格者による事前調査と行政への結果報告が完全に義務化されています。
特に2026年1月からは、建築物だけでなく「工作物」についても有資格者による調査が必須となりました。
これらの義務に反した場合、3ヶ月以下の拘禁刑や30万円以下の罰金などが科されるおそれがあります。
アスベストに関しては、これからも法令改正が行われる可能性もありますので、今後の国の動きを注視しておく必要があります。




