アスベストは労災の対象?認定基準・給付金・救済制度を解説

執筆者:弁護士 西崎侃
弁護士法人デイライト法律事務所

仕事でアスベスト(石綿)を吸い込み、中皮腫や肺がんなどの健康被害が起きた場合、それは「労災(労働災害)」として補償の対象になります。

労災に認定されると、治療費や休業中の補償、遺族年金などの給付金を受け取ることができます。

また、場合によっては「建設アスベスト給付金」や「石綿健康被害救済制度」といった別の支援制度を併用できるケースもあります。

この記事では、アスベストが労災の対象となる認定基準、労災保険で受け取れる給付金の内容と金額、労災が認められなかった場合に使える救済制度などを、アスベスト問題に注力する弁護士がわかりやすく解説します。

アスベストによる健康被害でお悩みの方、あるいはご家族が補償を受けられるか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

アスベストは労災の対象になる?

仕事でアスベストを吸い込んでしまい健康被害に遭った場合には、労災の対象となります。

ここでいう「健康被害」とは、中皮腫(ちゅうひしゅ)や肺がん、石綿肺など、アスベストを長期間吸い込むことで発症する病気のことを指します。

労災に認定される基準については、以下の「アスベストの労災認定の基準」にて詳しく解説していますので、ご覧ください。

 

アスベストが原因で労災が認められるケース

業務中にアスベストを吸い込んで発症した場合

労災は、仕事が原因で負傷したり、何らかの病気を発症した場合に認められるものです。

したがって、業務中にアスベストに吸い込んだ結果、中皮腫(ちゅうひしゅ)や肺がん、石綿肺などの病気を発症した場合には、労災が認められます。

 

退職後に発症した場合でも労災の対象になる

アスベストが原因による肺がんや中皮腫などの発症の潜伏期間は、15年以上を要し、長いときには50年程度になるケースもあるなど、非常に長いです。

したがって、アスベストを吸い込んだ時に働いていた会社を退職しているケースは非常多いです。

こうした場合であっても、仕事でアスベストを吸い込んだこと、アスベストが原因で中皮腫や肺がん、石綿肺を発症したことを証明すれば労災の対象になります。

 

建設アスベスト給付金と労災保険給付金はどちらも請求できる!

建設アスベストの給付金と労災保険給付金は、どちらも請求することができます

労災認定を受けている場合には、「労災支給決定等情報提供サービス」制度を利用することができ、建設アスベスト給付金のために準備する書類が減ります。

どちらを先に申請すべきか決まりはありませんが、労災の請求期限(消滅時効)の方が先に到来する可能性が高いので、労災から申請された方がいいでしょう

 

 

アスベストの労災認定の基準

アスベストが原因で健康被害が出た者が、労災として認定されるためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

  • ①「石綿ばく露労働者」であること
  • ② 疾病の認定要件を満たすこと
民法第719条(共同不法行為)
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

引用元:(共同不法行為者の責任)| e-Gov 法令検索

 

①「石綿ばく露労働者」であること


「石綿ばく露労働者」とは、石綿ばく露作業に従事しているか、または、従事したことのある労働者のことをいいます。

石綿ばく露作業とは、次のいずれかの作業に該当するものをいいます。

  • 石綿鉱山またはその附属施設において行う石綿を含有する鉱石または岩石の採掘、搬出または粉砕その他石綿の精製に関連する作業
  • 倉庫内などにおける石綿原料などの袋詰めまたは運搬作業
  • 石綿製品の製造工程における作業
  • 石綿の吹付け作業
  • 耐熱性の石綿製品を用いて行う断熱もしくは保温のための被覆またはその補修作業
  • 石綿製品の切断などの加工作業
  • 石綿製品が被覆材または建材として用いられている建物、その附属施設などの補修または解体作業
  • 石綿製品が用いられている船舶または車両の補修または解体作業
  • 石綿を不純物として含有する鉱物(タルク(滑石)など)などの取り扱い作業

※上記のような作業のほか、

  • 上記作業と同程度以上に石綿粉じんのばく露を受ける作業
  • 上記作業の周辺などにおいて、間接的なばく露を受ける作業

も該当します。

数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

引用元:石綿による疾病の労災認定 |厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

 

②疾病の認定要件を満たすこと

アスベストによる健康被害として、アスベストとの関連が明らかな疾病としては、次の5つが挙げられます。

  1. 石綿肺(せきめんはい)
  2. 中皮腫(ちゅうひしゅ)
  3. 肺がん(はいがん)
  4. 良性石綿胸水(りょうせいせきめんきょうすい)
  5. びまん性胸膜肥厚(びまんせいきょうまくひこう)

※実際に、中皮腫が 14,248 件、肺がんが 2,421 件、石綿肺が 85 件、アスベストによる令和3年度の健康被害としてはびまん性胸膜肥厚が 227件となっています。
令和3年度石綿健康被害救済制度運用に係る統計資料

引用元:令和3年度石綿健康被害救済制度運用に係る統計資料

そのため、疾病の認定要件は、このような疾病ごとに異なります。

以下では、疾病ごとに認定要件を記載しているので、ご覧ください。

※なお、以下に示す疾病の認定要件を満たさない場合でも、総合的な判断で業務上疾病と認定される可能性があります。

 

1.石綿肺の認定要件

アスベストで石綿肺(せきめんはい)になった方は、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

(a)じん肺法に規定するじん肺管理区分に基づく管理4であること

(b)管理2、管理3、管理4の石綿肺に「一定の疾病」が合併したこと

※「一定の疾病」とは、次のような疾病のことをいいます。
・肺結核
・結核性胸膜炎
・続発性気管支炎
・続発性気管支拡張症
・続発性気胸

 

2.中皮腫の認定要件

アスベストで中皮腫(ちゅうひしゅ)になった方は、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

(a)胸部エックス線写真で、じん肺法に定める胸部エックス線写真の像の区分が第1型以上の石綿肺所見があること

(b)石綿ばく露作業に1年以上従事していたこと

※ただし、最初の石綿ばく露作業(労働者として従事したものに限りません)を開始したときから10年未満で発症したものは含まれません。

 

3.肺がんの認定要件

アスベストで肺がん※になった方は、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

※他の部位から肺に転移したがんではないものに限ります。

(a)石綿肺についての所見があること

(b)胸膜プラーク所見があり、かつ、石綿ばく露作業に10年以上従事していたこと

(c)広範囲の胸膜プラーク所見があり、かつ、石綿ばく露作業に1年以上従事していたこと

(d)石綿小体または石綿繊維の所見があり、かつ、石綿ばく露作業に1年以上従事していたこと

(e)びまん性胸膜肥厚に併発したこと

(f)特定の石綿ばく露作業に従事し、かつ、石綿ばく露作業に5年以上従事していたこと

※「特定の石綿ばく露作業」とは、次のいずれかの作業のことをいいます。
・石綿紡織製品製造作業
・石綿セメント製品製造作業
・石綿吹付作業

※ただし、最初の石綿ばく露作業(労働者として従事したものに限りません)を開始したときから10年未満で発症したものは含まれません。

 

4.良性石綿胸水の認定要件

良性石綿胸水(りょうせいせきめんきょうすい)の症状が出ている場合、疾病の認定要件を満たすかどうかは、労働基準監督署長が厚生労働本省と協議して判断します。

なぜなら、胸水は、アスベスト以外にもさまざまな原因(結核性胸膜炎、リウマチ性胸膜炎など)で発症するもので、診断が非常に困難であるからです。

 

5.びまん性胸膜肥厚の認定要件

アスベストでびまん性胸膜肥厚(びまんせいきょうまくひこう)になった方は、次のすべての要件を満たす必要があります。

(a)石綿ばく露作業に3年以上従事していること

(b)著しい呼吸機能障害があること

(c)一定以上の肥厚の広がりがあること
※「一定以上の肥厚の広がり」とは、胸部CT画像上に、次のような状態がみられることをいいます。
・片側のみ肥厚がある場合→側胸壁の1/2以上
・両側に肥厚がある場合→側胸壁の1/4以上

アスベストの労災認定の基準について、詳しく確認されたい場合は以下をご覧ください。

参考:石綿による疾病の労災認定|厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署

 

アスベストで労災が認定されない主なケース

アスベストで労災に認定されないケースとしては、大きく以下の2つが考えられます。

  • アスベストを吸い込んだことを証明できない
  • 中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水の発症が証明できない

 

アスベストを吸い込んだことを証明できない

労災の認定を受けるには、過去にアスベストを吸い込んだことを証明する必要があります。

証明にあたっては、働いていた会社を証明し、その会社がアスベストを取り扱う仕事をしていたこと、その作業を自分も行っていたことなどを証明していくことになります。

証明にあたっては、本人の記憶のみでは難しく、客観的な資料を準備する必要があります。

アスベストによる健康被害(中皮腫、肺がん、石綿肺など)は、潜伏期間が長いため、こうした事情を証明することが困難な場合がありますが、こうした事情を証明できない場合には、労災認定を受けることができません。

 

中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水の発症が証明できない

アスベストによって労災認定を受けるには、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水などの病気を発症していることが必要です。

これらの病気の発症について、レントゲンやCTなどで証明する必要がありますが、その証明ができない場合には、労災の認定を受けることはできません。

 

 

労災で受けることができる給付内容とは?

アスベストで健康被害にあった方は、その健康被害が業務上疾病と認定された場合、労災保険から次のような給付を受けることができます。

種類 内容
療養(補償)給付 治療費など医療費の補償
休業(補償)給付 仕事を休んだときの収入の補償
傷病(補償)給付 長期間治らない重い病気の場合の年金
障害(補償)給付 障害が残った場合の年金・一時金
介護(補償)給付 介護が必要になった場合の補償
遺族(補償)給付 亡くなった方のご家族への補償
葬祭料(葬祭給付) 葬儀費用の補償

療養(補償)給付

アスベストによる健康被害の療養のために必要な場合に給付されるものです。

具体的には、治療費、入院の費用、診察代などが含まれています。

※労災病院または労災指定病院で治療を受けた場合、アスベストによる健康被害にあった方は、病院の窓口で治療費を支払う必要がありません。
他方、労災病院または労災指定病院以外のその他の病院で治療を受けた場合、アスベストによる健康被害にあった方は、一旦、病院の窓口で治療費を全額支払う必要があります(後日、かかった費用が支給されます。)。

 

休業(補償)給付

アスベストによる健康被害のため、仕事を休まざるを得なくなり、賃金を受け取ることができない場合に給付されるものです。

具体的には、休業4日目から、①休業補償給付(給付基礎日額の60%相当)と②休業特別支給金(給付基礎日額の20%相当)が支給されます。

※給付基礎日額⋯1日あたりの賃金の基準となる金額

 

傷病(補償)給付

アスベストによる健康被害の治療を開始して1年6ヶ月を経過しても治らず、その傷病による障害の程度が傷病等級表の傷病等級に当てはまるくらい重い場合に給付されるものです。

具体的には、傷病の程度によって、給付基礎日額の245日から313日分の年金が、休業(補償)給付の代わりに支給されます。

 

障害(補償)給付

アスベストによる健康被害が原因で、症状固定後に、一定程度の障害が残った場合に支給されるものです。

具体的には、①障害(補償)年金、または、②障害(補償)一時金が支給されます。

※①障害(補償)年金は、障害の程度が1級から7級に該当する場合に支給されます。
②障害(補償)一時金は、障害の程度が8級から14級に該当する場合に支給されます。

 

介護(補償)給付

①一定の障害により傷病(補償)年金または障害(補償)年金を受け取っており、かつ、②介護を受けている場合に支給されるものです。

具体的な支給額の上限は次のとおりです。

  • 常時介護:上限17万1650円/月
  • 随時介護:上限8万5780円/月

 

遺族(補償)給付

アスベストによる健康被害にあった者が死亡した場合に、一定範囲の遺族に対して支給されるものです。

具体的には、①遺族補償年金、または、②遺族補償一時金が支給されます。

 

葬祭料(葬祭給付)

アスベストによる健康被害にあった者が死亡し葬祭を行った場合には、次のうちいずれか高いほうが支給されます。

(a)31万5000円+給付基礎日額の30日分

(b)給付基礎日額の60日分

アスベストの労災認定で受け取ることができる給付について、詳しく確認されたい場合は以下をご覧ください。

参考:建設アスベスト給付金制度の概要|厚生労働省

労災保険の仕組みや申請の流れについて、より詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。

 

 

アスベストの労災手続の流れ

以下、労災保険から給付を受け取るための手続きの流れについて図示します。

労災保険から給付を受け取るための手続きの流れ

 

① 請求書のダウンロード

労災保険給付の請求書をダウンロードし、必要事項を記載します。

請求書は、請求する補償内容ごとに書式が分かれています。

なお、請求書は、厚生労働省のホームページからダウンロードして使用することができます。

参考:厚生労働省労災保険給付関係請求書等ダウンロードページ

 

② 従業員が、請求書に、会社の証明をもらう

①の請求書に必要事項を記載した後は、労働基準監督署に対し、会社の証明がある①の請求書を提出することになります(下記「③労働基準監督署に請求書等を提出」を参照。)。

※会社の証明が得られない場合には、証明が得られない事情を記載した書面を提出することになることが多いです。

 

③ 労働基準監督署に請求書等を提出

労働基準監督署に次のような書類を提出します。

提出する書類は、事案によって異なる場合があるため、詳しくは労働基準監督署または弁護士等に相談するようにしましょう。

  • ①の請求書
  • 医学的資料(診断書、レントゲン・CT・MRI等の画像)

なお、請求書や診断書等の医学的資料の提出先である労働基準監督署は、石綿ばく露作業に従事した事業場を管轄する労働基準監督署となります。

 

④ 労働基準監督署が、病院に、意見書等を依頼

労働基準監督署は、③により、従業員から請求書や診断書等の医療記録を受け取った後、病院に対し、主治医の意見書や追加の医学的資料の依頼を求めます。

労働基準監督署から依頼を受けた病院は、労働基準監督署からの依頼に応じて、労働基準監督署に対し、主治医の意見書や追加の医学的資料を提出します。

 

⑤ 労働基準監督署による書面審査・調査

労働基準監督署長が、③で提出された請求書や診断書等の医学的資料を審査・調査し、保険給付の支給または不支給が決定されます。

支給決定が出た場合、従業員は、労災保険給付を受けることができます。

不支給決定が出た場合、従業員は、原則として、労災保険給付を受けることができません。

 

必要書類

労災申請をするために必要な書類は以下のとおりです。

  • 請求書
  • 職歴や作業内容を裏付ける資料
  • 診断書、CTなどの医学的資料

請求書に関しては、治療費を請求する場合は「療養補償給付たる療養の費用請求書」(様式第5号)、休業補償を請求する場合は「休業補償給付支給請求書」(様式第8号)、遺族の方が一時金や年金を請求する場合は、「遺族(補償)給付支給請求書」様式第12号を使用します。

職歴や作業内容を裏付ける資料については、雇用保険被保険者証、作業日報、名刺、当時の現場の写真、日記、同僚の証言、亡くなっている場合は本人の聞き取り書面などが考えられます。

診断書については、病気の発症に関する診断書、死亡診断書、病理検査報告書などが重要になります。

 

手続きにかかる期間の目安

労災申請の手続きにかかる期間は、受け取る給付の内容によって異なります。

具体的には、次のような期間がかかることが多いでしょう。

  • 療養(補償)給付・・・約1ヶ月程度
  • 休業(補償)給付・・・約1ヶ月程度
  • 障害(補償)給付・・・約3ヶ月程度
  • 遺族(補償)給付・・・約4ヶ月程度

※事案によっては、上記期間の目安以上に時間がかかる場合もあります。

 

 

アスベストの労災申請を弁護士に依頼するメリット

アスベストの労災申請を弁護士に依頼した場合、以下のメリットがあります。

  • 手続きをする手間が省ける
  • 適切かつ迅速な労災申請手続きが実現できる
  • 様々な不安から解放され、治療に専念することができる

 

手続きをする手間が省ける

労災の請求を行うにあたっては、所定の様式で書類を作成し、その他必要書類をとりまとめて所轄の労働基準監督署に送付しなければなりません。

慣れていない方がすれば、書き方で迷ったり、必要書類が分からなかったりなど、その都度調べながら準備する必要があり大変です。

弁護士に依頼した場合には、弁護士が書類作成や収集を行うので、こうした手間を省くことができます。

 

適切かつ迅速な労災申請手続きが実現できる

アスベストの労災申請に当たっては、アスベストに接した時期が数十年前ということも多く、必要書類を集めるのが大変です。

また、アスベストの被害を示す十分な証拠を集めることができないまま申請すると適切な補償を受けられない可能性があります。

弁護士に依頼した場合には、必要な証拠を検討し収集し適切な補償が受けられるようサポートしてもらえます。

 

様々な不安から解放され、治療に専念することができる

アスベストによる病気で治療をしながら労災の手続きの準備をすることは大変です。

ただでさえ不安やストレスを抱えている中での準備は酷なことです。

弁護士に依頼した場合は、弁護士が手続きのサポートを行い、ご不安や疑問点がある場合には、適宜、ご相談頂き解消することができます。

 

弁護士に依頼するデメリットはある?

弁護士に依頼する場合には、弁護士費用が必要になります。

したがって、弁護士費用の分だけ手元に残る金額は少なくなります。

もっとも、弁護士に依頼することで、上記のようなメリットもありますので、依頼するかどうかは別として、一度、弁護士に相談した方がいいでしょう。

 

 

アスベスト労災の手続きをスムーズに進めるためのポイント

アスベスト健康被害の3つのポイント

労災の請求期限に注意する

労災給付を受け取るための請求権には、受け取る給付の種類によって、以下のように請求できる期限が異なります。

そのため、できるだけ早く手続きを進めるようにしましょう(なお、傷病(補償)年金は、労働基準監督署長の職権で支給決定するため、期限の問題はありません。)。

  • 療養(補償)給付 ・・・起算日から2年
  • 休業(補償)給付 ・・・起算日から2年
  • 傷病(補償)年金 ・・・期限なし
  • 障害(補償)給付 ・・・起算日から5年
  • 遺族(補償)給付 ・・・起算日から5年
  • 介護(補償)給付 ・・・起算日から2年
  • 葬祭料(葬祭給付)・・・起算日から2年
  • 二次健康診断等給付・・・起算日から2年

 

ワンポイント!起算日とは?

ここでいう「起算日」とは、けがや病気が発生した日、または死亡した日など、給付の原因となる事実が起きた日を指します。
つまり、「いつから期限を数え始めるか」というスタートの日のことです。

 

 

建設アスベスト給付金の申請も検討する

アスベストによる健康被害が生じている場合には、労災の申請だけでなく建設アスベスト給付金の申請も検討しましょう。

建設アスベスト給付金は、条件を満たせば、550万円〜1300万円の給付金が支給される制度です。

労災保険からの給付と建設アスベストの給付は、どちらか一方ではなく、いずれも給付を受けることができるので、忘れずに申請するようにしましょう。

建設アスベスト給付金について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

アスベストに詳しい弁護士へ相談する

弁護士への相談・依頼を考えている場合、アスベスト問題に詳しい弁護士に相談・依頼するようにしましょう。

なぜなら、アスベストによる健康被害にあったために、労災申請やその他の制度を利用する場合、必要資料の収集をする必要がありますが、アスベスト問題に詳しい弁護士であれば、この収集手続きをスムーズに行うことができるからです。

また、国への賠償金請求を検討する場合、どのような要件に該当すれば請求が認められやすいか、そのためにはどのような証拠を集める必要があるかなど、高度な専門的判断が必要になります。

そのため、弁護士への相談・依頼を考えている場合、その法律事務所がアスベスト問題を取り扱っているかどうかを確認するようにしましょう。

 

 

労災の対象とならない場合は石綿健康被害救済制度の活用を!

アスベストの健康被害を受けているものの、労災の対象とならない人は石綿健康被害救済制度を利用できないか検討しましょう。

例えば、アスベストを取り扱っていた中小事業主、アスベスト工場の周辺住民、家族がアスベストを扱っていた方などが石綿健康被害救済制度の対象になる可能性があります。

 

石綿健康被害救済制度とは

石綿健康被害救済制度は、労災保険給付の対象とならない方を保護するために、「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づき創設されたものです。

そのため、労災保険給付と石綿健康被害救済制度に基づく給付の両方を受けることはできません

また、アスベストによる健康被害を受けられた方、及び、疾病が原因でお亡くなりになった場合にはそのご遺族の方が、石綿健康被害救済制度に基づく給付の申請・請求をすることができます。

 

石綿健康被害救済制度の給付内容

救済給付

なお、以下の「指定疾病」とは、中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚のいずれかの疾病のことをいいます。

医療費 指定疾病に関する医療費の自己負担分が支給されます。
療養手当 1ヶ月あたり10万3870 円(治療に伴う医療費以外の費用負担に対する給付になります。)
葬祭料 19万9000円(指定疾病が原因でお亡くなりになった方の葬祭に伴う費用負担に対する給付になります。)
救済給付調整金 アスベストによる健康被害にあった方が指定疾病が原因でお亡くなりになるまでに給付を受けた医療費と療養手当の合計が、特別遺族弔慰金の額に満たない場合に、ご遺族に支給される給付になります。
特別遺族弔慰金 280万円(指定疾病が原因でお亡くなりになった方のご遺族に対する給付になります。)
特別葬祭料 19万9000円(指定疾病が原因でお亡くなりになった方の葬祭に伴う費用負担に対する給付になります。)

 

特別遺族給付

次の要件を満たす方は、石綿健康被害救済制度に基づく特別遺族給付の申請・請求をすることもできます。

(a)アスベストによる疾病が原因でお亡くなりになった方のご遺族であること

(b)時効により労災保険法に基づく遺族(補償)給付の支給を受けることができなくなったこと

対象者には、以下の給付金のいずれかが支給されます。

  • 特別遺族年金:遺族1人の場合、1年あたり240万円
  • 特別遺族一時金:1200万円

なお、特別遺族給付金の請求期限は令和14年3月27日までとなりますので、ご注意ください(令和4年6月17日改正施行)。

詳しくは以下をご覧ください。

参考:令和4年改正リーフ|厚生労働省

 

 

まとめ

  • アスベストとは、天然に産出される鉱石の一種で、繊維状の鉱物のことをいいます(別名:石綿(いしわた・せきめん))。
    労災(労働災害)とは、従業員が、仕事中または出退勤中の事故により被った負傷、疾病、障害、死亡などのことをいいます。
  • アスベストが原因で健康被害が出た者が、労災として認定されるためには、①「石綿ばく露労働者」であること、②疾病の認定要件を満たすことの2つを満たす必要があります。
    そして、②疾病の認定要件は、疾病ごとに異なります。
  • 労災で受けることができる給付内容には、①療養(補償)給付、②休業(補償)給付、③傷病(補償)給付、④障害(補償)給付、⑤介護(補償)給付、⑥遺族(補償)給付、⑦葬祭料(葬祭給付)があります。
  • 労災申請の手続きの流れは、①請求書のダウンロード→②請求書に会社の証明をもらう→③労働基準監督署に請求書等を提出→④労働基準監督署が、病院に、意見書等を依頼→⑤支給決定・不支給決定、ということが多いです。
  • アスベストによる健康被害にあった方が利用することができる制度は、労災申請以外にも、石綿健康被害救済制度に基づく申請・請求や国への賠償金請求があります。

当法律事務所には、アスベストなどの人体への影響があった場合に、これを法的に解決することに精通した弁護士で構成された人身障害部があり、アスベストの問題について悩んでいる被害者をサポートしています。

当法律事務所では、初回無料のオンライン相談(LINEやZoomを使った相談も可能です。)や電話相談を活用した全国対応も行っていますので、アスベストに関してお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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