性同一性障害とは

性同一性障害のイメージイラスト性同一性障害のイメージイラスト性同一性障害とは、生物学的性と性自認が一致しないことから、自己の性別に疑問をもつ状態のことで、医学的な用語とされています。
簡単に言ってしまえば、外見上の性と自分で思っている性が異なるという状態です。
ちなみに、現在では性同一性「障害」という言葉に疑問が呈され、日本精神神経学会では「性別違和」という用語を用いています。

一方、平成15年成立の「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」では、2条において、「性同一性障害者」の定義が明確に定められています。

 

性同一性障害者

男女のイメージ画像①生物学的には性別が明らかであるが、心理的には別の性別との持続的な確信を持っていること

②身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有すること

③①及び②について、的確な診断のできる医師二人以上の診断が一致していること

 

つまり、法律上はこれらの要件を満たす者のみが性同一性障害者と呼ばれることになります。
しかし一方で、これらの要件、特に医師の診断の要件がなくとも性別の不一致に悩む方は少なくないのであって、上記の定義はあくまで「法律上の」性同一性障害者にすぎません。

 

 

性別取扱変更の要件

法律上の性同一性障害者に該当したとしても、性別の取扱いを変更してもらうためには、以下の要件も満たし、かつ、性同一性障害者の住所地を管轄する家庭裁判所に「性別取扱の変更の審判」を申し立てる必要があります。

 

性別取扱変更の要件

チェックリストのイメージイラスト①20歳以上であること
②現に婚姻をしていないこと
③現に未成年の子がいないこと
④生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
⑤その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えること

これらの要件を満たしていなければ、性別取扱変更はしてもらえません。

性別のイメージ画像しかし、④や⑤については、性別適合手術を受けることが必要であり、そのためには身体的にも金銭的にも負担を強いられることになるため、性同一性障害者の方にとって大きなハードルとなっています。

また、自認する性別に違和感があったとしても、必ずしも外観を自認する性別に変えようと思うわけではありませんし、性器を見せる場面は日常生活でほとんどありませんから、上記の要件のように性器の外観まで備える必要があるかは疑問が呈されています。

今後、これらの要件については、改正される余地がありますが、現状では上記の5要件を満たさなければ、性別の取扱いを変更してもらうことはできません。

 

 

性別の取扱い変更をしてもらえた場合

性別のイメージイラスト健康保険証やパスポートなどの公的な証明書の性別欄は、変更後の性別に変更されることになります。

当然、その他の生活も変更後の性別で行うことになりますし、特に性別変更後に不自由はないといえます。
婚姻も、変更後の性別を基準としてすることになりますので、MTF(男性から女性に変更した人のこと)の場合には、変更後は男性と結婚することができるようになります。

 

 

性別取扱の変更の審判以外の方策

2の要件を満たせない場合にも、性同一性障害者にとって何かできることはないのでしょうか。

 

①名前を変える

まず、名を変更することが考えられます。

性同一性障害の方にとって、名前は日常生活で性別の違和感を感じる大きな原因となっていますので、性別を変えられなくとも、名前くらいは変更したいと思う方は少なくないとも思います。

しかし、役所に行って簡単に手続きが終わるというわけではありません。
名を変更するためには「正当な事由」が必要であり、家庭裁判所に申し立てをする必要があるのです。

裁判所のイメージ画像正当な事由があることを証明するためには、その事由について説明する書面を作成する等が必要となります。

性同一性障害との診断を受けたことや、すでに通称名で戸籍上の名前と異なる名前を使用していること等があれば、正当な事由も認められやすいです。
しかし、それらがなくとも、今まで名前に違和感を持っていたことでどれだけ辛い思いをしたかの陳述書などを作成することも考えられるところです。

なお、名を変えるための家庭裁判所に対する申し立てについては、15歳以上であれば可能です。
しかし、名を一度変えると、そのあとに戻したいと思っても正当な事由が認められるかはわかりません。
一度、両親や専門家に相談するのがよいでしょう。

②健康保険証の性別を表面に記載しないでもらう

保険証のイメージ画像健康保険証を見ると、性別が表面に記載されていると思います。
昨今では、性別記載について配慮が深まっていますが、健康保険証は医療の前提として男女どちらの身体なのかを把握するのに性別の記載が必要なため、その記載を一切なくすことが難しいという問題があります。

しかし、市町村や健康保険組合に求めれば、比較的簡単に健康保険証の表面から記載をなくし、裏面にのみ記載するなどの配慮をしてくれます。

裏面になっても記載があることには変わりないと思われるかもしれませんが、身分証明書として用いられることも多い保険証ですので、よく見られる表面に性別の記載がないというのはそれだけでも意味のあることです。

まずは問い合わせをしてみるのが良いと思います。

③健康保険証の氏名を通称名にしてもらう

健康保険証については、最近(平成29年2月7日現在)、京都府酒販国民健康保険組合が、性同一性障害と診断された方の保険証記載の氏名を通称名で記載していたことが判明しました。

同組合は、厚生労働省に照会して保険証に通称名を用いることを保険組合の方で認めることは差し支えないとの回答をもらっていたようです。

どの組合でも通称名を認めているというわけではありませんが、このような事例がある以上、変更に応じてくれる可能性はあります。

一度組合に問い合わせてみるのがよいでしょう。

 

   

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